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第127話「仲間のために」

 カーネリアとアンがアナテとブルカを尋問する。


 ルビアンはその間、2人を見守りながら部屋を観察している。


「お前たちはうちで料理を完食していただろう」

「そ、そうだけど、食べた後で食中毒になったんだもん」

「そうそう、食後すぐに痛くなったんだから食堂のせいだよ」

「他の人には症状が出なかった。なのにお前たちだけが食中毒を起こすのは不自然だ。本当に食中毒なら無差別に症状が出ていたはずだ。誰が仕組んだ?」

「誰も仕組んでないよ。ねえ?」

「うん、ブルカの言う通りだよ」


 アナテもブルカも一向に口を割ろうとしない。そればかりか抵抗しようと大声を出すものの、カーネリアが仕掛けた防音の魔法によって声は全く外に聞こえない。


 アンは2人を殺すくらいの覚悟で尋問を続けた。いや、もはや拷問である。


 アナテとブルカは無抵抗のまま1人ずつ交互に顔をはたかれ、その威力は徐々に強くなっていく。アンは力いっぱい泣いている2人のほっぺをビシバシとはたき続けた――。


「アン、やりすぎだっ!」


 ルビアンがアンの右腕を握った。だがアンは干渉するなと言わんばかりにルビアンの手を優しく振りほどいた。


「なっ……何でこんな酷い事するの……?」


 アナテが泣きながらアンに尋ねた。2人共顔には痣ができており、既に体力は限界を超えていた。


「お前たちは嘘の告発でうちの店を営業停止に追いやったばかりか、こっちが先約したクエストまで横取りした。筋を全く通していない。こんな事をして無事で済むと本気で思っていたのか?」

「クエストを横取り? どういう事?」

「まだしらを切るか。よほど殺されたいようだな」

「まっ、待って。本当に知らないの。食中毒の件は謝るから殴らないで」

「だったら事の全容を話せ」

「「……」」


 アナテとブルカはついに自白した。


 スピネが作った腹痛剤を飲んで食中毒を装った事、それを考えたのはオパルである事、クエストを横取りした件については何も知らない事を話した。


「そのクエストの事自体は知ってる。今度みんなでそのクエストを受ける予定だから。でもルビアンたちから横取りしたなんて、そんなの本当に聞いてないの」

「あのクエストはあたしが先約した。アルカディアのメンバーが知らないはずはないと思うが」

「自分で言うのもあれだけど、私たちはアルカディアのメンバーの中でも立場が低い方なの」

「最近はずっと後衛に固定化されて、いつ追放されるかと思うと怖くって、こういう汚い役でも引き受けないとアルカディアにいられないって思ったから」

「「ごめんなさいっ!」」


 2人は同時に頭を下げた。事の全容を知ったアンはその両手で2人の胸ぐらを掴んだ。


「「ひいっ!」」

「モルガンに伝えろ。人間はな、大切なものを守るためならどんなにも残酷になれるんだ。お前たちがどう生きようと知った事ではないが、これ以上ルビアンの邪魔をするな。今度また同じような事をするようであれば……容赦はしない」

「「は……はいっ!」」


 アンが2人を解放すると、カーネリアは部屋にかかった防音の魔法を解くと、2人は部屋から去っていった。ルビアンは後から追うと言って1人だけ部屋に残る。


 すると、ルビアンが2人に回復の魔法を施した。


「「えっ!?」」


 アナテもブルカも目を点にして驚いている。まさかルビアンが回復魔法を施してくれるとは思わなかったからだ。しかも腹痛剤による腹痛まで治っており、2人はルビアンに感心する。


「アンが済まない事をしたな。あいつは俺のために情報を得たかっただけなんだ」

「――私、追放された時のルビアンの気持ちが分かった」

「うん。追放されるかどうかにビビってる時点で、もうあそこは――」

「「私たちの居場所じゃない」」


 2人は悲しそうな顔をルビアンに向けながら言った。


「「私たち、アルカディアを辞めて全てを告発してくる」」

「……そうか」


 その頃、カーネリアとアンは段々と病院から離れていき、王都の街中を闊歩している。


 彼女らは王都で買い物をしてから食堂へと帰宅する予定だ。病院へ行ったのは買い物のついでである。アンは顔を上に向けて雲を眺め、カーネリアはそんな彼女を見つめた。


「ルビアンは何をしているんだろうな?」

「あいつの事だ。きっと回復を施して改心でもさせているんだろうな」

「アン、あの2人が真相を吐かなかったら、本気で殺すつもりだったのか?」

「ああ、そのつもりだった。でもそうなったら、ルビアンが全力で止めていただろうな」

「コリンティアは弱い仲間を秘密裏に処分していたと聞いているが本当か?」

「あれは半分本当で半分嘘だ。コリンティアのメンバーはプライドの高い連中だった。戦闘でモンスターにとどめを刺されるくらいならと、自分の体にフラムを大量に巻きつけてモンスターと相打ちしていた。最初は私も含めて誰もが驚いた。あれをきっかけに、いざとなれば最も弱い仲間がモンスターと相打ちする事が暗黙の了解になっていった。そしてそれを指示していたのは――アベンだ」


 アンは虚しそうな顔で再び空を見つめた。


 カーネリアもまた元討伐隊の仲間として、彼女の心境は察するに余りあるものがあった。討伐隊の最強メンバーであった2人だからこそ分かるものがそこにはあるのだ。


 最強故に生き残り、多くの仲間の死を見届けてきた彼女はいったい何を思うのだろうかとカーネリアは案じた。


 後ろからルビアンが追いかけてくると、彼は2人と合流して買い物へと出かけるのであった。

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