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第120話「暴走した欲望の末路」

 ルビアンとアンはアベンを追った。


 この島を救うべく、一心不乱にただひたすら森の奥へと――。


 その頃アベンは、数人ほどいる作業員たちと共に採掘作業を進めていた。サマリアン島の森の奥に質の高いエメラルドが埋まっているという情報を知っていたアベンは、この一連の騒動の責任をゲールに押しつけ、その間にエメラルドを持ち帰る計画だった。


 これだけのエメラルドを持ち帰ればぁ、パーティを再建するには十分だぁ。


 まあ、最悪この計画がばれたとしても、証拠は全て潰してしまえば問題ない。こいつらにも後で忘却の魔法をかけて全てを忘れてもらう。現場を見た部外者は焼却処分すれば良い。


 アベンはそんな事を考えながら採掘したエメラルドの原石を袋に詰め込んでいく。作業員たちも同様の作業を行い、袋の中は緑色の光沢を放つエメラルドの原石でいっぱいだった。


「よし、そろそろずらかるぞ」


 アベンが作業員たちを呼んだ時だった。


「そうはいかないぞ!」


 力強い制止の声にアベンと作業員たちが後ろを振り返った。


「――何故お前たちがここにいるぅ!?」

「力づくでこじ開けただけだが」

「倉庫で眠っていれば良いものを。馬鹿力め」

「どっちがだ」


 ルビアンは愛用の剣を、アンは聖槍をアベンに向けた。


 作業員たちもアベンの手下であり、元々は彼の親衛隊としてコリンティアで偵察の仕事をしていたが、コリンティアが消滅した事で職を失い、アベンの雇われ作業員となっていた。


「お前の悪事は女王も既に知ってるぜ。お前はもう終わりだ」

「たとえコリンティアが再建されたとしても、私は絶対に入らないぞ。アベン」


 アンがその決意の強さを誇示するように一歩前へと足を進めた。


「――まあいいだろう。冥土の土産に全て話してやろう。我の真の狙いはここのエメラルドだぁ。サマリアン島で採れたエメラルドは非常に高値がつく。あのグリーンヘルドラゴを討伐隊の奴らが時間をかけて疲弊させてくれたおかげでぇ、こうしてこんなにも輝くエメラルドを採掘できたわけだぁ」

「ジャガイモ独占はフェイクだったのかよ」

「お前がジャガイモを独占したせいで、危うく島民たちが大量に餓死するところだったんだぞ」

「そんな事は我の知った事ではなぁい。レストランモンドを再建するのに必要な犠牲だった。力なき者はそれだけで罪よぉ!」


 アンの聖槍を持っている手がプルプルと震えている。


「一瞬でもお前の討伐隊なんかにいた自分が恥ずかしい」

「アン、全てはお前のせいだぁ。お前さえ出ていかなければこんな事にはならなかったぁ!」

「新しい職場で地道に討伐隊を再建すれば良かっただろ!」

「そういう問題ではなぁい。我は最も次の王族に近いベルンシュタイン家の娘であるお前と結婚し、次の国王となる予定だったぁ! その計画を……ルビアン、貴様が台無しにしたのだぁ!」

「――可哀想な奴だな」

「ああ、まるで欲望の塊だ。お前は国王の器ではない」


 ルビアンもアンもアベンに対し虚しさと憐みの目で見つめている。


 アベンは隣にいる作業員たちを見ると、首をクイッと曲げて始末するように指示する。彼の意図を受け取った作業員たちはコクッと首を縦に振り、大剣を構えて一歩前へと出た。


 作業員たちが魔法によって作業服から黒い戦闘服へと変わり、アベンの親衛隊としての姿を現した。


「悪いがお喋りはここまでだぁ。お前たち、この2人を始末しろぉ!」

「「「「「おお~っ!」」」」」


 アベンは親衛隊にそう告げると、そそくさにその場から去っていく。


「ルビアン、お前はアベンを追え。こいつらは私1人で十分だ」

「分かった。すぐに来いよ」

「ああ」


 ルビアンは瞬間移動の魔法で親衛隊の後ろに回り、アベンの後を追っていく。だがアベンの動きが俊敏すぎてすぐに行方が分からなくなってしまった。


 ルビアンはアベンを見失いながらもがむしゃらにその後を追った。


「お前を始末したらアベン様から褒美にここのエメラルドを貰えるかもな」

「悪いが、お前たちが受け取るのはエメラルドではない。あの世への片道切符だ」

「ふざけやがって。こいつはずっと食堂にいたからなまってるはずだ。やっちまえ!」

「「「「「おお~っ!」」」」」


 親衛隊たちが一斉にアンに襲いかかった。


 なまっているだと……それはとんだ勘違いだ。


 何故なら――。


「フリーズフレイム!」

「「「「「うわあああああっ!」」」」」


 アンのフリーズフレイムが親衛隊たちに直撃すると、親衛隊たちの胴体から指先にかけて熱を出しながら徐々に凍っていった。


 そして全員が凍りつくと、氷となった全員が燃えるようにとけていった。


 ずっと()()()に鍛えられていたからな。


 おかげで炎の魔法と雷の魔法に加え、氷の魔法まで完全に習得できた。


「力なき者はそれだけで罪……か」


 アンは虚しそうな顔でルビアンの後を追っていった。


 その頃、ルビアンを振り切ったアベンは森の出口にまで辿り着く。目の前には青く輝く海があり、彼は重過ぎるエメラルドの原石が入った袋を一旦地面に下ろしていた。


 はぁはぁ、もう気配はなくなったか。さすがにここまでは追ってこれなかったようだぁ。


 すっかり安心しきったアベンが袋を持ち上げようとしたその時――。


「ぐわあああああぁぁぁぁぁっ! があああああっ! があっ!」


 アベンの死角から目にも止まらぬスピードでゲールの大きな口がアベンの胴体に思いっきりかぶりついた。その断末魔が尽きると共にゲールはアベンを噛み砕きながらペロリと飲み込んだ。


 無残にもその口からはアベンの血がポタポタと流れ落ちている。


 ゲールは雄叫びを上げると、そのまま森の奥にある巨木へと飛んでいった。

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