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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第97話 あなた達もありがとう

 氷雪地帯外周には旅人がよく通る事と、寒さで草木があまり生えない。ゆえに木の実を食べる小さな生き物がいない、それを食べる獣がいない、したがって大きな魔獣などもいない。

 安全地帯ではあるが、気を抜けば凍死してしまうらしい。氷雪地帯は日によって10メートルほど膨張や縮小する事があり、安全だからと夜に寝てて起きたら吹雪の中になってた。なんて事もあるらしい。


 しかし、俺らパーティにはスーパーエース、ノア様がおられる。


 ノアは2日ぐらいなら寝ないでも平気と言って夜を1人で担当し、逆に俺とダリアさんは、2日かけて昼夜逆転してる身体を元に戻す事となった。

 流石に1人は危険じゃないか? とフォルストから意見があったが、ノアから要望を受けてた俺はゴリ押しした。


 まぁ、コイツはアンドロイドだし。うっかりウトウトしてしまった。なんて事は絶対に無い。しかも目にはサーモグラフィー機能がついてるらしく、パーティ全員どころか騎乗獣も周囲の温度までバッチリ把握できるみたいだ。

 万が一に魔獣が現れても、ノアなら1人で対処できる。むしろ誰にも見られてない1人の方が本気が出せて安心まである。


 こうして氷雪地帯の外周に沿って旅すること2日の夕方、荷車の中から顔を出していたら、ようやく帝都テンルウの入口が見えてきた。


「おぉ~。なんか人が、いっぱいいるな!」

「本当っすね! デッカい橋も見えますよ。1つ、2つ」

「8本だ。入る用が6本で出て行く用が2本ある」

「どうして、入る用と出る用で数が違うんですか? シェンファは同じが良いと思います」

「入る時は街の治安維持の為に確認があるんだよ。だから時間がかかる。橋の前にいる奴等も大体は待ってる奴等だ。出るときは何もないから、すんなり進める。ユウツオも同じだろ?」


 なるほど。この世界もこの世界なりに、治安維持を頑張っているのか。


 帝都テンルウへは、目の前に見えている大きな長い橋を渡ってからしか入れないだろう。というのも、大平原と帝都は高低差がかなり激しく、断崖絶壁の上に帝都はあるらしい。この絶壁は、なんとかヒルズとかのビル以上に高く300メートル以上ありそうなので、ここからは帝都が見えない。

 なので橋は頂上から伸びているのでは無く、絶壁の下部に穴が空いていて、そこから橋が生えており谷を越えて大平原の岸側まで伸びている。あの穴は頂上まで掘られているらしく、抜けた向こうに帝都はあるそうだ。


 この絶壁は昨日の夜に氷雪地帯の折り返し地点から見え始めていた。その時は高さは6メートル程度だったらしく、上がれそうに思えるが。河幅が2キロはあり緑色した毒河の向こう岸にあって無理だった。


 その毒河、シコン河は変わってて上流である北側が河幅が広く、海に近くなる下流の方が河幅が狭くなる。その代わり深くなっていき谷みたいなってる。今、目の前に見えているのは幅200メートルぐらいだろうか? 深さは相当ありそうだ。

 目の前の光景は、帝都がある彼方の大地とそれを隔てるバカデカい絶壁があって、さらに深い谷があり大平原の大地がある。その2つを繋ぐ大きな上路式アーチ橋が8本もあって絶壁に掘られた穴へと向かってる。

 なんとも異世界的な光景だ。


「さて、どの列に並ぶか? ノアちゃん今後の予定は?」

「とりあえず、時間かかりそうだし、適当に並んでから予定を決めては?」

「マスターのおバカ」

「お、おバカって……」

「ノアの姉御は、タツキの兄貴には厳しいですね」

「マスターの指導も私の役目ですので」

「もう、お母さんと言っていいわね」


 ノアの余計な一言で周囲に笑いが起こる。何気に皆、旅をしてる間は気を張っていたからな。ここは笑われてあげましょう。


「マスター。入口となっている6つの橋は、それぞれ出口が違うのですよ? 行先によって橋を選ばないといけません」

「そうなのか」

「俺も知らなかったっす」

「シェンファも」

「帝都に入れば各々行先が違うかもしれませんが、とりあえすフォルスト様の目的地である南区のギルドに向かいましょう。訓練の札も1度ギルドに提出が必要ですから」

「そうか。ありがとな! なら1番南側にある橋だ。最後尾はあそこだな。行こうぜ」

「皆様、疲れているでしょう。私が馬獣を引きますので、荷車の中で休まれてはいかがですか?」

「俺は歩こうかな。ずっと荷車に乗ってるのも辛い。少し身体を動かしておきたい気分だから」

「おっ。俺もタツキに賛同だ。歩かせてもらおう」

「シェンファは馬獣に乗りたいです」

「俺も馬獣に乗ったままでいいっす。練習しときたいので」

「なら私は犬獣に乗るわ。もうすぐお別れなのに荷車なんて乗ってる場合じゃないわ!」


 それぞれがポジションを移動しながら列の最後尾に移動する。

 並んでる人達は色々いて、大荷物を抱えた商人や、近くで狩りしてきたのか、獲物を担いでる冒険者パーティや、帝都に仕事を探しに来たのか、軽装な人もいる。


「シャン・レン=ワンのお嬢ちゃん以外は帝都は初めてか?」

「俺もシェンファもユウツオから出るのが初めてです」

「俺は……」

「マスターと私はユウツオに来るまでは、屋敷の外には出た事が無かったです」


 そうか。そういう事になってたな。


「おーし。なら待ってる間にちょーっと帝都の話をしておくか」

「聞きたいっす!」

「俺も知りたい」

「帝都テンルウは、この断崖絶壁の上にさらに4段の断層地形がある」

「えっ? さらに4段もあるのか? すげーな。どうやって作ったんだ? 自然に出来た地形なのか?」

「実はな帝都は龍人が作ったんだ」

「「「えぇ?!」」」

「帝都の歴史は古い。およそ1,000年前の龍権戦争時代から始まる」


 フォルストが帝都テンルウについて話始めた。

 6源龍が世界を作り人族がこの地に住み始めて百年ぐらい経った頃、龍人達は権力争いをして自らの力で、自らの住む地を破壊してしまった。このまま争い続ければ龍人の住む世界アーカディアが荒廃してしまう事を危惧して、力の弱い人間達に、この世界エデンにて、代理戦争をさせる事となる。

 その時、土龍人の支配下となったのが、帝都テンルウの周辺で、戦う為の拠点として土龍人達が術を使い6段ケーキのような今の地形が出来上がったらしい。そして、その最上層に守護結晶龍を配置した。

 守護結晶龍はその名の通り、周辺を守る。背中から翼のように生えてる巨大な結晶から発生する特殊な魔力が、他の龍や魔獣を寄せ付けない。特殊な地形と守護結晶龍のおかげで、帝都テンルウは何百年もの間、人族が安全に生活してこれたらしい。


「だから最上層には誰も行くなよ? というか行けねぇようになってる。第2層は王族の地だから、ここも入れない。第3層は貴族の地だ。入れない事もないが、かつて龍人の奴隷だったくせに、龍人から人族を守った高貴なる血の末裔だとか言ってる厄介な連中だ。関わらない事をオススメするぜ?」

「悪かったわね!」


 あっ。そういや、ダリアさんは帝都の4大貴族シャン・レン=ワンの人だったわ。


「あぁ~。悪い! えっと貴族にも素晴らしい人いるからな。皆、よく覚えておくよーに! それから第4層が冒険者の地だ。武具屋、加工屋、宿、雑貨屋まで冒険者に必要な店や施設は全部この層にある。ギルドも此処にあるし、ギルドは3層と5層にまたがってるから、迷子になったらギルド目指すといいぞ」


 慣れるまでは、4層から移動しない方が良さそうだな。


「第5層は一般の人とか商人や農民の地になってる。1番広くて建物が多くて、道が狭くて入り組んでて、治安の悪い所も多い。あとは最下層と呼ばれる6層だな。他と違ってて貴族の管理になってるが、使われてない土地が多い。南の土地は王族の管理で労働者の地となってるな。子供でも働ける所が多くてガキがたくさんいる」

「南東にある海に出っぱった土地はシャン・レン=ワン家の管理地よ。王から与えられけど、使いづらいって父様が嘆いてたわ」

「次ーっ! お前ら中に入れー」


 フォルストの話を聞いていたら、いつの間にか橋を渡りきって絶壁の穴の前まで来ていた。

 穴自体も大きいが、中には広い部屋があって4人の兵士が待ち構えていた。


「身分を明かす物を出してもらおう。って、あれ? フォルストか?」

「そうだよ! こんな良い男、他に誰がいるってんだよ!」

「今年も帰ってきたかぁ~。今年は早くねぇーか?」

「今年のパーティは全員優秀でな。特に青髪のノアちゃんは、4ヶ月でD級冒険者になった逸材だ。実力は俺よりも上だ」

「本当かよ」


 やめろ~。ノアを有名人にするんじゃねぇ。


「じゃぁ。通ってイイか? 疲れてるから早くギルドに行きてぇんだ」

「いやぁ~。悪いけど決まりだ。さっさと冒険者証を出してくれ」


 フォルストは左腕に装着してる小手をかざした。冒険者の証である球体が付いてる。

 ノアは首から紐で付けてる冒険者証を胸の谷間から出した。何故か4人の衛兵が全員で確認してる。何故かは分かるけど。

 それからリーダーであるノアから訓練生4人分の札が渡された。衛兵達は何やら道具に札を刺して確認している。クレジット決済をしてるみたいに見える。


「ん? この1枚は魔力がこもってないぞ? 誰のか判別できん」

「あぁ~。それはタツキのだな。コイツ魔闘気が使えなくて…… ほらよ。ユウツオ領主からの書状だ。これで大丈夫だろ?」


 そんな物を用意してたのか!? なんか、お手間を取らせて、すみません。


「ちょっと、待った!」

「今度は何だよ?」

「ダリア=シャン・レン=ワンがいるのか?」

「あっ。私です」

「3日前からシャン・レン=ワン家の迎えの者が、兵団詰所にて待機しています。一緒に来てもらいたい」

「分かったわ」


 ダリアさんは、犬獣から降りると荷車の中へと入っていった。


「ユウツオを出発する日の朝に、家に連絡を飛ばしておいたの。まさか、迎えを用意してるとは思わなかったわ」


 すぐに、自分の荷物を担いで出てくると、1人1人と握手をしてきた。


「皆ありがとう。とても楽しい旅だったわ。帝都には、どのぐらい滞在する予定なの?」

「フォルスト様の要望がありまして最低でも2日はいます」

「そう。なら、2日以内には南のギルド支部に私の今後の事を連絡をしておくわ」


 最後に騎乗ケモノ達を抱きしめた。彼女らしい。


「あなた達もありがとう」


 ダリアさんは衛兵に連れられて横穴へと消えて行った。たぶん要人用の通路が別にあるんだろうな。


「よーし、行っていいぞ! フォルスト、南の奴等が待ってるぞ~」

「足止めしてるのは、お前らだろうがっ」


 フォルストが犬獣に跨った。


「ここから、ギルドの南支部までは足止めされる事は無い。騎乗獣で走った方が良いぞ? タツキ、跨ってるだけなら大丈夫だろ? お前も犬獣に乗れよ」

「えっ? だ、大丈夫かな? けっこうな速度出すんだろ?」

「お前なぁ~。ちょっとはノアちゃんを休ませてあげろよ」

「そうですよマスター。まったく。では、私は荷車の中で少しだけでも寝ておきます」


 コイツっ! 俺は気のかない男認定をされながら、犬獣に跨った。


「俺が全体を先導するから、心配するな! んじゃ行くぞ」


 勾配のキツい洞窟のような通路を、出口から見える赤い空に向かって走る。帝都への入り口なのに整備はされておらず、地面も壁も土と石だけだ。何故だろう?


 洞窟通路を出ると開けた場所に出た。広いの割には人が少なく、見たところ、大荷物を整理したり、地図を眺めたり、どうやら初めて帝都に来た人達のようだ。

 俺等にはスーパー地元民フォルスト様がいるので、問題ない。


 目の前の大きな坂を登って第5層から第4層に上がり、騎乗獣専用の片側3車線を南東に向けて走らす。ユウツオよりも道が2倍は広い。時折フォルストがアレはイイ武器屋だ。とか、アレは素材屋で品揃えが良い店だ。とか、おすすめのスポットを紹介してくれる。しかし、そこそこのスピードで走ってるし、そもそも建物が多すぎて、覚えれる気がしない。

 ちなみに、フォルストはあえて紹介しなかったんだろうが、例の結晶龍の結晶はどこからでも見えた。帝都の中心で最上層から空へと向かって巨大な青緑色の結構が2本立っているらいしいので、常に見える。


 しばらくすると、地元に近づいてきたのか、フォルストに声をかけてる人も多くなった。しかも半分以上は子供からだ。


「着いたぞー! ここが帝都テンルウのギルド南支部だ。俺のかつてのホームだな」


 2時間ぐらい走ってたので、日が落ちて暗くなってから着いた。

 さすがは帝都のギルド。ユウツオのギルドの3倍はデカい。ちゃんと騎乗獣の乗り付け場まである。しかも今、見えているのが南支部の一部だと言うのだ。


「大きいっすね! さすが帝都っす」

「皆さん、お疲れのところ申し訳ないのですが荷物を全て降ろしましょうか。この荷車と騎乗獣を届けないといけませんので」

「了解っす! 何処に下ろします?」

「2日間はギルドの宿泊施設を、2人で1部屋借りれるハズなので、フォルスト様は先に手続きをしてきてくれますか?」

「分かった。ささっと終わらせてくる」


 2日って事は、それ以上滞在するとなると自分で宿をとらないといけないのか。

 まぁ、とりあえず荷物を下ろすか。


「シャンウィ君、荷車の中身を全部こっちに寄せてくれ。俺がおろして邪魔にならない所に置くから」

「分かりました」

「シェンファは、2人に疲労激減と身体向上を行います」

「おぉ、いいなそれ。ありがとう」


 手間取ってるのか、フォルストが戻ってくる前に、3人と1機で全ての荷物を下ろし終わってしまった。


 ノアは馬獣に跨って返却の準備をすると、俺を手招きして、いつのまにターンシステムを起動させたのか、そこそこ金が入った財布を渡してきた。


「無事に帝都に着きましたし。皆さん疲れているでしょうから、コレで美味しい物でも食べてて下さい。荷車と騎乗獣を届けたら、すぐに戻ってきますので、フォルスト様と一緒にギルドで待ってて下さいね!」

「お、おう。分かった。でも、こんな大金使って大丈夫なのか?」

「マスターとは違いますから、ちゃんと計画的に使ってます。大丈夫です。それに今から臨時収入が入る予定なので」

「臨時収入? お前、また俺に内緒で何かやってんな?」

「私はD級冒険者ですよ? マスターと違って借金返済の為に頑張って働いているのです! ムダ使いしないで、ちゃんと待ってて下さいよ?」


 まったく反論出来ない事を言い残してノアは出発した。すると入れ替わりに、ギルドから若い女性が走ってきた。


「荷物を運ぶのを手伝います。部屋をちゃんと確保出来たので案内しますね!」


 ギルド職員の格好をしていないが、休憩中の職員が出てきたのかな? フォルストめっ。どんだけ急かしたんだよ。


 とりあえず、案内された部屋に荷物を運ぶ。フォルストも加わって作業はすぐに終わり、ギルドの中の食事場に皆で腰を下ろした。


「やーっと、一息つけるな。疲れたぁ」

「けど! すっごく良い経験が出来たっす」

「シェンファも楽しかった」

「そうだ。フォルストこれ、俺とノアからなんだけど、ここのメニューとか知らないから、食べ物と飲み物を皆の分、いい感じに注文してくれ」

「いいのか? 遠慮なく使わせてもらうぜ。ファランも何か食べてくだろ?」

「私も良いですか?」


 このギルド嬢、一緒に食べる気か? ノリが良いというか、遠慮が無いというか、フォルストに似てるな。なんか、どことなく、顔もフォルストに似てる気がしてきたぞ。


「フォルスト、帝都に着いたばっかりなのに、すぐギルド嬢を口説くなんて、元気な奴だな!」

「何言ってんだよ! こいつは俺の妹だぞ?」

「えっ?」

「えぇ? だってフォルストの兄貴、この間、学校で話してたのは?」

「最後の家族だよ。唯一のな。だから、毎年こうやって会いに来てるのさ」

「人伝に兄さんが帰ってきたのを知ったので、仕事を早めに切り上げてギルドで待ってたんです」


 フォルスト…… イイお兄ちゃんじゃねーか!


「よし! 飲むぞ! フォルストと妹さんの久しぶりの再会に祝して飲むぞ!」

「はぁっ? 何言ってんだよ!」

「兄さん、私、注文してきますね! エール3つと2人は果実水でいいかしら?」

「お願いします。シェンファは食べ物もたくさん欲しいの」

「いいぞ~。じゃんじゃん頼め! 俺とノアの奢りだから!」

「了解です! 兄さんの友達さんカッコイイですね! 行ってきます」

「タツキー、なにカッコつけてんだよ!」


 俺達は無事、帝都テンルウに着いて、最初の夜を宴会騒ぎにした。


 疲れと、昼夜逆転生活がまだ身体にひびいてのを気づかず、アルコールに身をゆだねた結果、俺は3杯目で意識を無くして、ノアが戻ってくる前に酔い潰れてしまった。

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