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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第一章 旅立ちは機械少女と共に
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第9話 ギルドの受付嬢か。感動だ

 デカい男が俺を見下ろしている。

 身長は2メートルとちょっとはあるだろう。全身に筋肉が付いていて、ずんぐりとした体つきで、ボディビルダーではなくプロレスラーといった印象を受ける。

丸顔なのに、後頭部に髪を引っ張って、そこでお団子結びをしてる髪型が、さらに丸さを強調している。鼻も丸いが、目は細く口も小さく、お相撲さんの様だ。


「おはようございます?」


 状況がよく分からないが、とりあえず挨拶をしておく。さっきまでノアに膝枕をしてもらって…… アレ? もしかして、そのまま寝てたのか。だとすると…… コイツはノアか!?


「もしかして、その姿は戦闘モードですか!?」

「あぁん? 戦闘モードになって欲しいのか? 一発殴られないと目が覚めねぇってワケだな」

「待てノア! 起きるから。起きるから殴らないでくれ」

「ノア? 俺はバグボウだ。お前の侍女なら、とっくに起きてギルドマスターとの話を終わらしてたぞ。まったく、なんて野郎だよ。自分の寝心地の為なら、侍女の服を奪ってくもんなのか? せめて自分の屋敷内だけにしてもらいたいぞ。あの女が可哀そうだ」


 上半身を起こして自分が今、寝ていた所をみると。そこには枕があった。正確にはノアが腰に巻き付けていた長袖のニットが、折りたたまれて置かれていた。起きた拍子にスルリと落ちた白い物を取り上げてみると、それはYシャツだった。


「あの子…… 本当にいい子だ」

「分かってるなら、とっとと起きて、その服を返してやるんだぞ! その後にギルドマスターと話があるからな! さぁ立て」


 語尾に”ぞ“は女の子がやるから、かわいいんだぞ! 妙な喋り方する奴と思ったら、昨夜この土牢に入れた奴だ。あの時は鎧を着ていて顔も兜でよく見えなかったが、今日は軽装のようだ。

 軽装といっても胸当てや脛当てをしていて、腕や足には毛皮のようなファー装備がついている。暑くないのだろうか? 代わりに肩は筋肉が露出していて、腰もピッチリとしたズボンを一枚着てるだけだ。木材と革材が多いのか全体的に茶色い。

 ノアの戦闘形態とかじゃなくて安心したぞ!


 立ち上がって、両手でノアの服を抱きしめる。顔をうずめて、せいいっぱい感謝する。変態ではない。やはり、いい匂いはしないなぁ。

 そんな事してたら、後ろからバグボウに掴まれて、担がれた。なんとそのまま立て掛けてある階段を登っていくではないか。6m分はあるんだぞ。

 ノアもコイツに担がれて土牢を出たのだろうか? 私は自分で出られるので~とかやってないよな。


「俺は、自由になれるのですか?」

「知らないなぁ。ギルドマスターが決める事だ。話があるらしいぞ」


 今日はちゃんとマンガ肉のご飯食べて、土床じゃない所で眠りたいなぁ~。

 昨夜もちょっとだけ見たが、上からみると地面に穴がたくさんある。穴と穴の間隔はおよそ3mぐらいで、穴は横に5つ奥に向かって6つ計30個もある。端のほうから誰かの喚き声がするが、結構広いので気になる程ではない。

 それよりも気になるのは、上半身がブラだけのJKである。


「おはようございます。マスター」

「……」


 初めて見た。女性の生の下着姿を。


「あれ? 聞こえなかったですかね? それとも、まだ寝てますか? おーい」

「そら、自分で立て!」


 ノアの目の前に降ろされるが、そのまま直立不動で動けない。目が離せない。


「おーい。マスター? ちょっと~。見過ぎですよ~」

「……」

「こいつ、動かいないぞ?」


「まったく、枕と掛ける物に使うから、服を投げ渡せ! お前は裸で寝ろ! なんて酷いですよ~。早く服返して下さい」

「そんな事言ってないだろうがっ!!」


 こいつ、俺を変態扱いする気だ! いや、今の状況は変態か。しかし、そこに下着姿の女性がいたら見てしまうのが男ではないのか? 分からん。やはりもっと経験値のある紳士は自分の服を脱いで掛けてあげるのだろうか。

 落ち着け! おかしいぞ。それはおかしい。行動に移さず、気づけてよかった。危うく変態まっしぐらだった。

 本人の服を持ってるのに、俺が服を脱ぐのは、変態だ。服を返そう。


「いいか、お前ら。面倒だから、もう喋るな。拘束しないのは、ギルド側の誠意だぞ。逃げたり、暴れたりするんじゃないぞ!」


 服を返しつつ、黙って頷く。こちらは信用して対応してるから、そっちも誠意をもって応えろって事か。

 ノアに目を配らせてみる。袖に腕をを通しながらコクコク頷いている。エロい。 しばらく黙って、言う通りにした方が良いみたいだ。


「女、お前が先に歩け。朝と一緒の道だ。お前は後についていけ。俺は後ろから付いていく」


 戸惑う仕草なく、ボタンを留めながら直進していく。どうやらノアは道順を知ってるみたいだな。朝、ギルドマスターと話をしたらしいけど、アイツ下着姿で対話したんだよね? 大丈夫だったのかな?


 一つ目の扉は、厚みのある両開きの重そうな作りで、もしも逃亡者が出たら、ここで足止めするであろう。今は裏側にいた門番の人が大きな閂をずらして扉を開けてくれていた。 2つ目は普通の扉。その先に短い廊下があって左右に扉が一つづつある。

 3つ目の扉を抜けると狭い空間に上へと続く階段だけがあり、その前に男と女が立っていた。

 昨夜通ってきたハズだが、拘束されて、目隠しもされていたから、まったく覚えていないなかった。


「よぉ、バグボウ。遅かったじゃねーか」

「俺のせいじゃない。コイツが起きなかったんだぞ」


 壁に背を付けて腕組みをしながら喋った男は、へらへら笑っている。髪は少し茶色がかったボサボサで、顎鬚とダルそうな態度がオッサン的な印象を受ける。

 バグボウと同じ様な装備をしている為、全体的に茶色が多いが、インナーが緑色をしているので、森みたいな奴だ。


「無駄話はしないでよ。結構ギルドマスター待たせてるんじゃない?」


 階段の前で立っている女性は、ショートボブの金髪で、蒼い眼をしており、色白の西洋人という感じだ。この世界に来て初めてアジア人っぽくない人を見た気がする。もちろんノアは例外だ。

 こちらも茶色い装備をしている。ギルドの正規装備か何かだろうか?


「お前ら、ここからは、こいつらに付いて行くんだぞ」

「バグボウ、ご苦労さん」

「じゃぁな、バグボウ。あとはパメラに任せておけ」


 金髪の女性は、名前も西洋風か。


「何言ってんのよフォルスト! あんたも行くのよ。仕事でしょう?」


 おっと、男の方も西洋風の名前でした。というか森風の名前だ。


「さっきは、お前一人で行ったじゃないかよ」

「当たり前でしょ! あんた、ずーっと鼻の下伸ばしてスケベな顔してたからよ。危なくて、任せられないでしょ!」

「あんな格好されたら、男ならしかたないのさ。なぁバグボウ」

「目のやり場に困るが、俺はお前みたいにはならないぞ」

「嘘つけっ!」

「はいはい、もういいわ! さっさと行くわよ。私が先に歩くから、後に付いてきて。女の子の方が先ね。その後に君で、フォルストあんたは最後よ!」


 やっと、前に進める様になった。この階段しかない狭い空間に5人は、ちょっと息苦しい感があったし、3人は言い合いしてるし。

 しかしノアさん。あんたよく、あんな格好で歩きまわったなぁ~。そりゃ、何かトラブルになるよ。


 階段を上がると、簡易チャイナドレスに上からチョッキを着てるという、不思議な恰好の人達が10人ほどいた。書類を片付けたり、書き足したり、皆、忙しそうに働いている。


 彼らを横切り、奥の扉を一つ抜けると、そこはファンタジーの世界だった。


「おぉ。すげー」


 冒険者がたくさんいる。正確には分からないが、鎧を着て武器を持っていて、これまでマンガやアニメで見た恰好だ。間違いなく冒険者だろう。

 左側には銀行の受付の様なカウンターがあり、数人の人が会話をしている。さっきは気づかなかったが、一つ前の部屋は受付カウンターの内側だったのか。

 とすると、あのカウンターで、冒険者の相手をしているのは……


「ギルドの受付嬢か。感動だ」

「んっ? なんだ、お前。受付嬢を見るのは初めてか?」


 後ろから、森さん。違ったフォルストが話しかけてきた。誘拐犯疑惑の容疑者を連行中だろ? いいのかね?


「初めて、見ました」

「マジかぁ。そうなると感動するものか。俺なんか、毎日見てるし、毎日会話してるし、たまに一緒にメシ食ったりしてるからなぁ~。当たり前になってるな」

「フォルストさん、会話してもいいんですか?」

「あっ。本当は良くないな。まぁ、俺この仕事向いてないんだよ。本当は森の探索してるんだが、今は、たまたまギルドの使いっぱしりをしててさ。出来ない事は無理しなくていいんだよ」

「ダメでしょ!」


 カウンター添いに進んでたら、パメラが会話に入ってきた。この子は不真面目なフォルストを指導する姉の立場なのか。

 ノアはずっと黙っているが、周りを見回してる。情報収集中かな。


「そんなんだから、上のランクに上がれないのよ」

「上がるつもりねーから、いいんだよ」

「アンタ、パーティーのリーダーなんだから他の人の事も考えたら?」

「お前、俺のパーティーメンバーじゃないし! 口出しするなよ」

「たまに、相談されるのよ!」

「誰だ? 言った奴は! ツァジウか? ロウメイか?」


 なんか、痴話喧嘩が始まったので、俺も黙る事にする。姉と弟というよりは、夫婦って感じだな。


「ストーーップ!」


 全員が黙って声の方を見る。俺ら4人だけじゃなく、この場の全員だ。

 声の主は、昨日と同じ格好ですぐに分かった。相変わらず歩きにくそうな服を着てて、奇抜なピンクの髪で、目の大きな童顔。


「おはよう。シェンユ」

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