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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第82話 睡眠は大事ですよ?

 今日も頑張った。

 暗くなってきたが、夏に近づくにつれて少し明るさを保っている空を見上げながら1年生校舎の玄関を出た。


 隣の中央校舎の3階には灯りが見えるので、まだ仕事をしている先生達がいるんだろう。どの世界でも仕事に残業は付き物なんだな。


 本来なら今月は補習など無くて、皆と同じ時間に帰って、自分で予習復習した後にエクシィのデッキを見直したり、ノアと練習したり出来たのに……

 ゼルトワめっ! まったく、お前のせいで今月も帰りが遅くなってしまったじゃないか!


 しかも先月はダリアさんと双子と俺を含めて、補習者は7人もいたのに、今月はまさかの俺1人だけ。皆さん補習はヤバイと思ったのかな? しかたない事情で補習をしてただろうし、実習をしっかりやってれば、補習なんてならないよね。

 俺だって、やりたくてやってるんじゃない。


 ちなにみに、補習の内容ってのは実習でやる予定だった事を〝ゆっくり丁寧にやる〟って感じだ。3日でやる事を3週間の時間を使ってやる。


 まず最初の1週間で、実習での反省点を上げて、それに対してどうしていくか解決策を考えて、それらについて担当の先生と話し合いをしていく。いろいろとダメ出しをされていくが、今回はさすがに俺はどうしようも無かったとなった、とはならず。対人関係をもっと上手くやれ! とか、そもそもなんで兎獣に乗れんのやっ! とか、なんで魔闘気も使えんのやっ! となったのです。

 そして今週からは、先週に出した問題点と解決策を実際に行っていくのですが、どうやっても兎獣には乗れない! 無理だよ。まぁ今日が週の始めなのであと4日あるのですが、乗馬も操るのに何年も訓練しないといけないだろ? 4日でデカい兎を操れる気がしない。

 今週で練習したら、来週に本番をしなきゃならん。時間はかけてもいいけど、実習と同じ内容をしなければいけない。最後の1日は試験だから、しっかりと評価もされる。


 30歳のオジサンが勉強についていくのでやっとなのに……。異世界のデカい兎で乗馬しなきゃならんとか無理だよ。


 ため息をついて気が重くなりながら、校門へと歩いていると、背後から誰かに呼び止められた。


「おーい! タツキくーん! 待ってくれ」


 振り返って見ると、走って近づいてくるのは3年生のフェイギョクさんだった。


「こんばんは。こんな時間に、どうしたんですか?」

「自習だよ。いつも、やっているんだ」

「えぇ?! もう19時ですよ?」

「3年生だからね。崖っぷちなんだよ」


 成績が悪くても、素行が酷くても、相当な犯罪をするレベルでない限りは1年生から2年生にはなれるらしい。だがしかし、2年生は卒業と同時にD級冒険者の資格を取得できるので、必要な知識、技術、体力などを有してない場合は卒業できずに地獄の3年生が待っているらしい。

 それでも、3年生の1年間で必要な事を身に着けられなければ、退学するしかないとか。冒険者にはなれず高額な学費を払って3年の時間が過ぎてしまうだけだ。

 ぶっちゃけ、俺は経験があるので、今回こそは、しっかりとやりたいと思っている。


「いつもは、もう少し早い時間に帰るんだけどね。この間の話を聞いたから、一緒に帰ろうかと思って学校で自習してたんだよ。さっき窓からタツキ君の帰る姿が見えたから、急いで追いかけてきたんだ。余計だったかな?」

「えっ! そうなんですか! ありがとうございます」

「いや、気にしなくていいよ。僕も1人で帰るのが寂しかっただけだから」


 フェイギョクさんは、優しくて常識人で、とても良い人なので、この異様に濃い奴等が多い新世界の生活において、心のオアシスと言える方だ。悩んだりしたら、ちょっと相談にのってもらったりする。

 けど、悩みが異世界人ってのに関わる事なので、あまり話せないのだが。


「それじゃ、一緒に帰りましょうか」

「よろしく。そうだ、タツキ君どっか良い薬屋を知らないかい? 目覚まし薬が欲しいんだけど、冒険者用のは効果が強くて」


 学校を出て歩いていると、ちょうど辺りは薬屋が多い。学校はユウツオの正門に近いので、街から出ていく冒険者や旅人を狙った店構えなんだろう。


 この世界にコーヒーは無い。たぶん無い、まだ出会った事が無い。なので、目覚めの悪い時は薬を飲む人がいる。この薬ってのは、眠りを誘うガスを使う魔獣相手の対策用の物で効き目が強くて、瞬間的に目が覚めるが持続力が無い。本来眠くないのに寝てしまうのを起こす為の物なので、眠くて眠くてしょうがない人は、5分おきに薬を飲まないといけなかったりする。


「うーん。知らないですね~。勉強って、そんなに崖っぷちですか?」

「そうでもないけど、僕だけだね。勉強というよりは体力的な問題なんだけど、人よりも成長速度が遅いんだ。なぜかは分からないけど、どうやっても時間がかかってしまうから、人よりも練習時間が必要だから、睡眠時間を削ったりしてるんだよ。休み明けはいいけど、週末は眠くて眠くて」

「睡眠は大事ですよ?」

「分かっているけど、色々やってると、どうしても睡眠を削っちゃうんだよね」

「確かに。分かります」


 どの世界でも、忙しいと睡眠時間を削るのはお決まりのようだな。時間を伸ばしたり、止めたりする魔法があればいいのに…… 無いのかな?


 歩き続けると、だんだんと周りの店が賑やかになってきた。道具店や武器店などが減ってきて、客層を冒険者と一般の人も対象にした宿屋や食事所が増えてきた。 この世界に電力を使った照明はあるらしいが、ユウツオの街には無い。基本的に使用時間に限りのある、火の灯りか灯鱗の灯りだけなので、深夜までやってる店は無いが。この時間帯は賑わっている。


「そろそろ中央広場に着きますね。この時間はこんなに賑わっていたなんて知りませんでした」

「少し何か買って食べようか?」

「すみません。自分はお金を持っていません」

「あぁ~。ノアさん厳しいですよね~。奢りますよ」

「いいんですか! ありがとうございます」


 ノアめっ! ちょっとぐらい、おこずかいくれよ! 8歳も年下に奢ってもらう事になったじゃないか!


「ちゃんとご飯を食べるなら、店に入ったほうが良いけど。こういうのはね、中央広場で物売りしてるのが狙い目さ。美味しくて安いのが手に入る」


 この人、買い食い慣れしてるな。きっと勉強漬けの毎日の中の、ちょっとした幸せなんだろうな。


 先輩の買い食いうんちくを聞きながら歩いてると、中央広場に着いた。

 大きな広場に沿って多種多様な、たくさんの店が並んでいて、賑わっている。所々に固まって足を止めている人は、吟遊詩人が謡う今日あった新鮮な英雄譚を聞いており、人通りも多く動き周ってる中には背中に木箱を担いで、串焼きや、骨付き肉などを売り歩いている物売りも多くいた。


「先輩、どの物売りが良いですかね?」

「ちょっと待ってよ~。うーん」


 広場を通り抜けつつ、歩き売りをしてる人を探す。


「あの人にしよう」


 フェイギョク先輩が選んだのは、ランドセルの2倍ぐらいの大きさの木箱を地面において、中身を整理してるっぽい人だ。背後からなので、何の商品を持っているか分からないが、服装は物売りっぽくない気がする。


「すみませーん。何を売ってますか?」

「あ、はい。薬です」

「えっ? 薬」

「あれ? タツキ君じゃないですか」

「あっ、カハク! 何してるんだ?」


 まさかの物売りをしてたのは、昼食時間にいつもソロ読書をしてる没クラスで同学年のカハクだった。


「タツキ君、知り合い?」

「そうです。1年生でクラスが違いますけど、友達です」

「初めましてカハク=ヤオラン26歳です。この歳から冒険者を目指し始めているんですけど」

「いやいや、凄いよ。僕はフェイギョク=ミオ・ペイです。タツキ君と同じ我儘亭に住んでいて、恥ずかしながら3年生をやってます。22歳です」

「そうだぞ、カハク。俺なんて30歳なんだぞ!」

「だからタツキ君は、もっと凄いよ」


 なんか、最近こんな純粋に褒められた事無いから、嬉しいし恥ずかしい。


「カハクさん? 薬を売ってるんですか?」

「呼び捨てでいいですよ。3年生って言ったら2つも先輩じゃないですか」

「いやぁ~、違うよ。2年で卒業できなかった落ちこぼれだよ。ははは」

「3年目かぁ~。私だったら挫折して退学を選んでいるかもしれません。この通り、薬売りの仕事しながら学校に行ってるので、2年続けるのも不安で、もっと貯金を貯めてから挑戦したほうが良かったかもと思うのですが、これ以上歳を重ねてからだと難しいとも思いましてね」


 なんと! 自分で学費を貯めてから入学してのか。だから26歳になってしまったと。しかも、今もお金を稼ぎながら苦学生をしてるとは……

 自分が恥ずかしい。


「そうなんですねぇ。でも、その歳まで諦めないで冒険者を志したなんて凄いですよ。きっと2年で立派な冒険者になれますよ! そうそう、目覚まし薬ってあります? 冒険者用の瞬間的に強力じゃないやつを探してて」

「ありますよ。なかなか良いのが。ちょっと待って下さいね、今、片づけをしてしまってて」

「片づけって事は、もう帰るのか?」

「そのつもりだよ。この時間帯からは酔っ払いが増えてくるし、食べ物の物売りに客を取られてしまうから、帰ってから少し勉強もしたいからね」


 仕事してから、帰って更に勉強するのか。偉すぎる。


「カハクって凄く頑張り屋さんだったんだな。俺は知らなかったよ。よーし、オジサンが何か串焼きか奢ってやるよ!」

「タツキ君、お金持ってないんじゃんかった?」

「あっ。そうでした」

「いいよ。僕がカハク君にも奢ってあげるよ」

「いえ、そんな事しなくても」

「奢りたい気分だから、奢らせてくれよ」

「そうですか。では甘えますかね。あっ、ならこの薬を少し多めにサービスしておきますよ」

「ありがとう」

「カハクは、どこに住んでいるんだ?」

「216番街の所です。ちょっと治安が悪いですが、部屋を安く借りれるので」


 どこだ? ユウツオは比較的、街全体が治安が良いと聞いてるけどな。


「我儘亭を過ぎた所じゃないか。一緒にか帰ろうか? 僕達も今、帰るところだったんだよ」

「我儘亭から近いのか。いいね! 男3人で何か食べながら帰ろう」

「いいですか? 是非、先輩の話を聞きたいですね」


 こうして、オジサンと、遅咲き苦学生と、浪人先輩の3人で帰る事にした。いつも貴族とか、キャラが濃い奴等が周りにいるから、こういう面子で喋りながら帰るのは、なかなか楽しかった。

 いつか、この3人で酒でも飲みに行きたいぜ。


 その為にも、俺は帰ってからノアに、おこづかい制度を要求した。

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