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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第80話 ひ、ヒトラ様。〝朧十字〟ってなんですか?

「そんなバカな…… ヒトラ様の全力の攻めを一太刀も受けないなんて、ありえない。どうしてそんな事が……」


 わかる。わかるぞぉ~。対峙しているヒトラ様本人は、もっと驚いて焦っているはずだ。

 俺も初めてノアとトレーニングした時は、こいつの動きにビックリした。


 ノアは戦闘において基本的には防御を優先するスタイルだ。理由は本人が言っていたが、そういうプログラムをされている為。だがしかし、そのプログラムが施されている理由の予想は、大切な躯体を失うわけにはいかない為だろうと言っていた。あと攻撃面に関しては、追加外装の武装ユニットを装備すれば、超攻撃力が得られるので本体は防御を優先する事になっているんだろうとも言ってた。


 そして、その防御性能がありえない。

 圧倒的受け性能を可能としている3つの要素の1つが、人間ばなれした動体視力だ。というか人間じゃないので、ハイスピードカメラとか搭載されているんだろうか? あと予測演算装置とかもあるんじゃないか? とにかく、こちらの動きを正確に捉えている。


 さらに、あの人間ばなれした体の柔らかさと体幹の強さ。というか人間じゃない。間接の可動域が恐ろしく広くて自由に動かせるのだろう、身体を、捻り、捻じって、反って、とにかく避ける。なのに、絶対にブレない。鋼の骨格が強靭な軸を生み出していると思われる。


 もしも、攻撃を当てれたとしても、人口皮膚の下には鉄の皮膚が存在するので、ダメージを与えられず、場合によっては自分の拳が痛い事もある。俺の2ヵ月前はそんなだった。


 最後に無尽蔵のスタミナだ。その人間離れした疲れを知らない、とういうか疲れなんて概念はプログラムされていないノアは、永遠にハイスペックの状態を維持したまま動き続ける事ができる。おそらく電池切れ? はあると思うが、人間のように疲れてバテててきて、だんだんと動きが悪くなってくるというのは無い。


 今は、ノアが手を出さないと宣言しているが、俺との早朝訓練では、俺の体力が尽きて動きが鈍くなったところに、強烈な鉄拳をプレゼントしてくれる。

 ノアに勝つには、最低でもノアと同等以上のスタミナが無いと対峙し続ける事すら困難で、俺も20分ぐらいしか訓練は続かない。


 でも、そこは、さすがヒトラ様だ。もう30分ぐらい経つんじゃないのか? それなのに、まだ、息が上がってないようだし、動きも早くて、素人なので分からないが、太刀筋も鋭く感じる。


「タツキ殿? ノア様は、いくつなのですか? いったいどれほどの鍛錬を積めば、あれほどの動きが出来るのでしょうか?」


 なんて答えればいいんだ? ノアは幼い頃に人身売買から逃げてきて俺が救ったので、その恩で俺の専属使用人になってるという設定だが……。


 幼い頃って何歳の設定なんだ? 森を彷徨ってたって事だから6歳とかかな? それで俺が救ったのだから、俺のほうが年上になるのか。って事は3つか4つぐらい年下として、26歳とか? 20年の間死ぬ気で鍛錬を積んだら、あんなに強くなれるのかな?

 分からん。変な事を口にすると、後で面倒になるかもしれん。


「実は俺も年齢は分からないんだ。ありがたい事にすっごく俺に忠誠を誓ってて、俺の為に死ぬ気で鍛錬を積んでくれたみたいなんだよ」

「ヒトラ様が、西の貴族の使用人と会いたいと思うとは、信じられませんでしたが、納得いたしました。あの若さで、あれほどの強さ持つ者はワナン国でも、1人しか知りません」


 1人いるんかーい! あの最強アンドロイドと同等の強さを持つ人がいるのか。異世界、恐ろしい。


 おっ。ヒトラ様が動きを止めたな。ついに疲れたのか?


「ふぅ~っ! 全く捉えられんの。こんな奴に会うたのは2人目じゃ」

「終わりに致しますか?」

「いや、最後に一太刀、(わらわ)の秘技を見せてやろうぞ。これを避けた者はいないのでな」

「それは、楽しみです」


 秘技だと? 必殺技的なヤツか! カッコいいな。俺もいつかは自分専用の必殺技が欲しいし、これはよく見て勉強しておこう。


 ヒトラ様は木刀を両手で腰に差すように構えている。あの姿はゲームやマンガでは居合切り系の技と決まっているが、居合切りって鞘が無いといけないのでは?


 空気が変わったという表現を、肌で体感した気がする。素人でも分かる奇妙な感覚が周囲を満たしている。これが殺気とか、オーラという物だろうか。


 鋭い眼光を飛ばしているヒトラ様が、右足を素早く出し1歩踏み込んで、距離を詰めると、右手を振り上げた。

 木刀の剣先が地面を這いながら、ノアの身体を下から両断する動きであったが、俺の頭には疑問が浮かんだ。その右手には木刀が握られておらず、もの凄い気迫がこもった素振りをしただけだった。

 もちろんノアもピクリとも動かない。


 少し眉をしかめたように見えるヒトラ様の表情を確認してたら、乾いた木と木がぶつかる音が響きわたった。


 速過ぎて気づかなかったが、既に次の動きに移っており、左手を横なぎに振るっていた。その手にはしっかりと木刀が握られていて、ノアが握っている木刀と鍔迫り合いをしている。


 驚いた事にノアは初めて、木刀で防御をしていた。そかも力を使って受けるのではなく、木刀を斜めにして滑るように、ヒトラ様の木刀の力が上へと逃げるようにしている。


 利き手では無いはずの左腕で、しかも片手で、それだけの力を出せるなんて驚きだ。相当の強化をしているだろう。


「ぬぁぁああ!」


 ヒトラ様が気合の声を上げて、さらに踏み込むと、鍔迫り合いをしていたノアの木刀にヒビが入ったのだが、その瞬間にノアの鋭い蹴りが放たれ、ヒトラ様の木刀の柄の底面を捉えた。


 衝撃を受けた、ヒトラ様の木刀は持ち主の手を離れて宙を舞い、大きな弧を描いて庭の隅の地面へと落ちた。


「なっ、なんという事……」


 ヒョウカさんは、目が飛び出して顎が外れたような表情をしている。


「しまいじゃな」

「最後は少し、やりすぎました。申し訳ございません」

「いや。むしろ感謝するぞ。楽しかったであるし、ノアの強さが、よく分かった。茶を飲もうか? 疲れたであろう」


 ヒョウカさんから受け取った手拭いで、汗を拭きながら戻ってきて、少し荒れた息を整えると、お茶をすすっている。一方でノアは汗も出なければ、息もあがっていないし、もちろん喉も乾いていないだろうから、お茶も飲まない。


「噂以上にノアは強いな。恐ろしく強い。まさか〈朧十字〉を初見で防がれるとは思っていなかったぞ」

「ありがとうございます」

「ひ、ヒトラ様。〝朧十字〟ってなんですか?」


 たぶん、技名だ。スゴクかっこいい!

 かっこいい技だが、俺には何がしたかったのか分からなかった。


 2連撃なのは分かる。その2連がの間隔が短くて、同時攻撃のようであるってのも分かる。でも同時じゃない。わざわざ、ずらしている意味が分からない。同時で良くないか? それに初撃は素振りじゃないか。木刀を2本持ってないと意味なくないか?


「敬称はよしてもらおうかタツキ」

「そうですよマスター!」


 なんで本人よりも、ノアのほうが強い口調なんだよ。


「そうか。タツキには、まだ見えてなかったか。ヒョウカはどうだ? お前には意識を飛ばしていたつもりだったのだが?」

「私には見えてました」


 えっ? 俺だけ何か見えてなかったの?


「タツキには初撃が素振りに見えていただろうな?」

「はい」

「私もそうです」

「何っ?! ノアもか?」

「はい」


 ヒトラ様は、両手に顔を埋めて、大きくため息をついてしまった。


「では、たいそう滑稽に見えていただろうな(わらわ)もまだまだ鍛錬が足らぬようじゃ」

「そんな事ありません! 私には完璧な〝朧十字〟でした」

「よせヒョウカ。万人に対して通用しなければ秘儀とは言えぬ。ノアは、その強さ故に見切ったとしても、タツキにも見せる事が出来なかったのだ。修行が足りぬとしか言いようがない」


 俺が見えなかったのでは無く。ヒトラ様が俺に見せられなかったという事か。


「あの技は魔闘気の(シン)(イン)を使っておるのじゃ」

「ヒトラ様! 技の内容を教えるのですか?」

「聞いてもらって、何故にノアが見切れたのか、伺おうじゃないか。よいか?」

「いいですよ」


 おぉ。説明してくれると助かる! けど、魔闘気を使ってるなら俺は再現出来ないだろうな。


「魔闘気の(シン)(イン)については分かるか?」

「マスター?」

「大丈夫だ。最近、先輩から習ったから。えっと、(シン)(イン)は相手の精神に干渉する事が出来るんですよね?」

「正解じゃ。それによって〝朧十字〟を受けた者は初撃を避けようとする。存在しない下から斬り上げる太刀筋に、身体を後退でなく位置をずらして避けようとする。相手が実力者であればあるほど、最小限の動きで避けるので、2撃目の横薙ぎが直撃しやすくなる」


 えっ? どういう事?


「ノアは(わらわ)の全ての攻撃を最小限の動きで避けていたからの。初撃は上手く避けるとは思っていたが、まさか見えていなかったとは。何故じゃ?」

「何故と言われましても、ただ、素早い素振りをしてるだけにしか見えなかったのですが」

「〝朧十字〟の性質を読んで動かなかったのではなく、(わらわ)の魔闘気を感じて対抗したのでもなく、ただ見えなかったと? (わらわ)は強い魔力を練り上げて放ったつもりであったが、常に対策をしておるのか?」


 そうか。分かったぞ。

 ヒトラ様が魔闘気を放った。相手の精神に干渉する(シン)(イン)。初撃が見える。という事は……


「魔闘気による幻覚という事ですか?」

「そうじゃ。これを使った技がいくつもあるのでな、魔闘気によって生み出す幻の刀、ワナン国では幻魔刀(ゲンマトウ)と呼ぶ」


 なんて恐ろしい技だ。俺にはヒトラ様の力不足で見えなかったが、もし見えていれば、初撃の木刀をを避けてると、1本しか持ってないので反撃にでようとするところを、本当の木刀の2撃目で斬られてしまう。真剣だったら胴体が真っ二つになってるぞ。


 ノアには魔闘気が効かないから、見えなかったんだな。


「ノアは幻魔刀(ゲンマトウ)を見た事は?」

「ありません」


 魔闘気で生み出すなら、ノアは一生見れないだろう。


「対策してるわけでもないのに効かぬかったか。謎の強さじゃな。じゃが、対峙して少しだけ、その強さが分かったぞ」


 何だって?! アンドロイドって事がバレたというのか?


「お主、大魔女の弟子に関わる者であろう?」

「へっ?」

「違います」

「違うのか。戦い方が奴等と似ていたから、繋がりがあると思うたのだが」

「ひ、ヒトラさ…… ヒトラは、大魔女の弟子と知り合いなのですか?」


 シェンユの正体を知ってる人について、ヒトラ様の名前は上がらなかった。つまりは一方的に知っているという事か?


「ワナン国に1人いるのだ。大魔女サヤの弟子の一族って奴が」

「ちょっと、ヒトラ様! 国の重要機密事項ですよ!」

「名前と居場所までは言わぬよ。少しでもワナン国に興味を持ってもらいたいからな。噂によると、タツキは大魔女サヤ様に大変好いておると聞いておるぞ? まぁタツキはついでだ」


 ワナン国にも生き残りがいるだと? もしかかすると、シェンユの兄貴かもしれないぞ? 生け捕りにされて、何かの理由があってワナン国に捨てられたのかもしれない。

 にしても、俺がサヤ様大好きって設定も良く知ってたな。シェンユしか知らないと思ってたが、やっぱり魔女教団の子と関わったのが不味かったかな? それとも意外と広まってるのか?


 あと、ついでって何よ? 何のついでだ?


(わらわ)が欲しいのはノアよ」


 お前もかぁー!!

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