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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第一章 旅立ちは機械少女と共に
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第8話 名前以外は記憶喪失です!

 もしかして、俺は、悪魔と契約したんじゃないだろうな……


「落ち着いて下さいよ。ノアさん。私は人が傷つくのは嫌ですよ」


 ノアが姿勢を戻して微笑み顔になる。なんだろう? さっき笑みはゾワっと背筋にくるものがあった。機械である事を再認識したからだろう。


「分かってますよ~。ただ、私の出来る範囲でマスターが望むのであれば、それは遂行しますよって事です。あっそうそう、少し前に“寝る”とか“抱く”とか言いましたが~、アレは冗談ですからね! 出来ませんからね! 基本的に私をラブドール扱いするのは禁止です」

「し、しないから! そんな事!」


 彼女がいた事すらない俺に、いきなりそんな事が出来るわけないだろう! もちろん興味はあるので、ちょっとノアを見上げてみる。

  スラっとした長い脚に素晴らしいクビレ。それからYシャツのシワが引っ張られている大きな胸。水色の髪色でツインテールの少し童顔の可愛い顔がある。その瞳は大きく青く。女性に耐性の少ない者からしたらイチコロだ。

 マズイ、目が合ってるのに気づかず、見とれてしまった。

恥ずかしいから、もう一度カップ麺に集中力を向けて食べる事にしよう。


「はぁ~。見るだけならば、まぁ良しとしますけど…… とりあえず、マスターがやる事は一つです」

「……それは?」

「名前以外は記憶喪失です!」

「ブオッ?!」

「大丈夫ですかぁ? 落ち着いてください。後で質問等は受け付けますので、まずはご飯を食べて、心を落ち着かせて、体を休めていて下さい。」


 マズイ。鼻から麺がちょっと出てしまった。


「覚えているか分かりませんが、森で捕まる際に“身分を明かせる物をもっているか?”と問われました。なのでこの世界、もしくはこの街において免許証や保険証のような物が存在し、皆が何者か証明できるという事です。そして、証明できなければ不審者扱いとなり拘束されてしまうという事です。牢屋送りについてはシェンユさんの事がありますので、これが通常運転なのかどうかは分かりませんが」


 やはりノアも、シェンユは特別な人物と考えているのか。


「どこまでキッチリしてるかは分かりませんが、意外と戸籍管理とかもしているかもしれませんよ? そうなると、ちょっとした設定では騙せないと思われますので凝った設定の嘘をつかないといけませんね。

ですが、マスターはそんなの覚えられないでしょう? それに嘘は苦手そうな顔していますからね」


 顔で判断するなよ! まぁ、言われたとおり嘘は得意ではないしポーカーフェイスも苦手な部類である。そもそもあまり嘘つきたくない。それに気になる事もあるんだが、スープを飲み終わってから質問するとしよう。


「ですので、何か聞かれたら私にふる。出来ない場合は、知らない。覚えていません。記憶にございませーん。でいきます! ОK?」

「議員かよ! ふぅ~。ごちそうさまでした」


 合掌して、キレイに空になった容器に感謝の意を込める。まさか、カップ麺をこんなにおいしく感じる日がくるとは思っていなかった。


「はい、先生! 質問です。普通に事情を説明していけないのですか?」

「はいマスター君、よい質問ですね~。お答えしましょう! 2つ理由があります。1つは信じて貰えるかです。それらしい嘘をつくよりも、別世界から来たとかの方が嘘っぽい話ですので。

2つ目はサヤ様との連絡が取れない事です。もしかすると私達の様な存在に敵対する勢力があるかもしれませんし、世界的に異世界の者を受け入れない風習があるかもしれません。今は隠していた方が良いと判断します」


 なるほど。確かにそうかもしれん。信頼できる仲間とかが出来て、いつか話せる日がくるかもしれないが、今信用できるのはノアだけだ。良い人風だったシェンユですら関わって牢屋にインだし。


「分かった。ノアの言うとおりにしょう。けど、名前以外ってのは何故?」

「マスターがアホの子だからです」

「なんだと~」

「今の話を了承したという事は、凝った設定を覚えられないってのは肯定するワケですよね~。つまり偽名を使ったとしても覚えられないですよ」


 な! なる、ほ、ど…… 確かに。常に意識していないと忘れてしまって偽名で呼ばれても反応出来ない事になるだろう。


「でもさ、佐藤龍希ってそのままでいいのか?日本人感がすごいけど。なんかさ、異世界人の名前ってヨーロッパ風っていうかカタカナで5文字以上とかのイメージなんだけどさ。俺の名前って違和感出ないか?」

「あら、意外と考えていますね」

「うるさいわい。ノアの中の俺って、どんだけバカなのよ」

「時々、かる~く毒付かないといけないので~」


 俺は、ちょっと苦笑いをした。自分でそうしたんだったわ。


「問題ないと思いますよ。確かに名前で地域性が判りますけど、そもそも日本ってこの世界には無いですし。別に外国人にも何故か日本っぽい名前の方とかいるじゃないですかぁ。ちょっと変わった名前程度に認識されると思います。何よりも、マスターは既にタツキって名乗ってしまってますかね~」

「えっ? いつ? 俺、名乗ってたっけ?」

「やはり、考えてなかったですね。シェンユさんに対して言ってましたよ」


 ノアがお得意の、やれやれダゼって顔をしている。これから数年は何度もその顔を見る事になるだろう。

名乗ったか? 名乗ったか。うん。名乗ったわ。考えずサトウタツキで。


「ではでは、今日はもう寝ましょうか。このまま何もなく、ずっと牢屋に放置って事は無いと思いますので、明日には動きがあるハズです。シェンユさんも何やら弁明してくれている様子でしたので、話し合いの場はあるでしょう。その時は私が説明をしますので、マスターは記憶喪失でお願いしますね。あとはそうですね~。3日たっても放置だった場合は、さすがに強行突破を考えましょうか」


 頼むよ街のお偉いさん達。このJKが本気だしたら未知数ですよ。

 座ったままで両手をぐっと伸ばすが、いまいちなので立ち上がって全身を伸ばす。どうしよう。疲れてはいるけど、あまり眠くないな。


「私は睡眠など不要ですが、マスターは休める時にしっかり休息して貰わないと、病気とかになったら困りますから」

「大丈夫! 頭は弱いかもしれないが身体は強いから! 風邪とか中学生の頃ぐらいから、ひいた事ないゼ! ってか、あの特殊能力あるのに病気とかなるのか?」

「なりますよ~。他にもいろいろと説明しなければいけない事はたくさんありますが、今日のところは寝ましょう。詰め込み過ぎはよくないです」

「それは同感だ。けど、なんか眠くないんだ。なんでかな?」


 顎に右手を当て、左手で右腕の肘を掴む。左腕の上に胸が乗っている。少し首を傾げて困り顔で静かに唸る。なんてこった! ノアさんソレ破壊力ちょっと半端ないから、可愛いから。

 今度は突然何か閃いた! みたいな、よくある、左手の掌を右手の拳打つ動作をして、こっちを見ながら後ろ向きに歩いてく。コイツ、わざとやっているな。


「なんだよ。ニヤニヤして」

「マスターにしっかり休んでもらいたい、と思ってるだけですよ」


 意味不明な行動の締めは、少し離れた所で、崩し正座をして、自分の足をポスポスと叩いている。


「んっ? なんだ? どうした?」

「抱き枕には、なってあげられないですけど。膝枕ぐらいならいいですよ!」


 な! なななな、なんですと! 本気か?

落ち着け俺! うろたえるな、JKの膝枕だぞ。逃してなるものか。


「ちょっとマスター、鼻息荒くなってますよ。きっと初めての異世界に興奮して眠れないのかと心配して、リラックスさせようと思っているのに~」


 リラックスなんて出来るか! 余計に興奮してくるわ!

覚悟をきめろ俺。ここで遠慮したら二度とこんな事出来るかわからないぞ。これはアレだ。異世界初日に頑張った俺へのご褒美だ。

 っても今日やった事はJKに抱っこされて、街の人に逮捕されて牢屋にインしてるだけなんだが。まぁ気にしてはいけない。


 いきなり太ももにダイブする勇気はないので、まずは1メートルぐらいまで近寄って、正面で同じ様に正座をして座る。俺のはちゃんとした正座だ。


「それでは、失礼しますよ?」

「よいですよ」


 足を伸ばして体をうつ伏せにする。腕立て伏せポーズだ。もう数センチ先には生足が迫ってきている。


「わかっているとは思いますが、顔は仰向けですよ」


 そりゃそうだ。何故に両足の間に顔をうずめようと考えているのか不思議だ。

 体を反転させて顔を上に向ける。後頭部には太もも、眼前には下乳、これはこれでかなり良い。眠れる気は全くしないが。


「どこ見てんですか。さぁ、目を閉じてください」

「あ、仰向けになれって言ったのはノアだろう」


 目を閉じて深呼吸をする。こういう時って女の子のいい匂いがするものだが、ノアはしない。中身が機械だからだろうか? でも油の匂いもしないな。

 胸に手を置かれ、優しくトントンと叩かれたのでビックリした。寝かしつけられている3歳児かよ。


「あのノアさん?」

「喋らないでください」


 もう片方の手で、おでこを撫でられる。すごく恥ずかしい。もう30歳のオッサンだぞ! 今日は恥ずかしい事ばっかりだよ。


「何も喋らない。何も考えない。無になってください。興奮してるのは分かりますけど、本当はすごく疲れていて眠たいハズですよ」



 ノアの掌はやわらく、やけに温かい。視覚情報がない分、触覚が鋭くなっているのだろうか? なんか体が軽い感じがするし、周りも温かくて柔らかくなった気がする。膝枕はしてもらってるが、床は冷たい土床で、柔らかくものなかったハズ。



 JKの膝枕。素晴らしすぎる。





「おい! 起きろ! お前、まったく起きないな」


 へっ?!

 目を覚ますと辺りは、明るくなっていた。俺はぐっすり寝ていた様だ。


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