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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第73話 タツキの秘密を教えてよ

 シェンユが大魔女サヤの弟子の子孫だって?!

 これは、喜んでいいのか? どう反応したらいいだ?


 かすかだが、繋がりがあるって事は何かしら情報を持っているって事なのか。まさかこんな所からクエストクリアの糸口が見つかるとは、ラッキーだ。


「シェンユは大魔女サヤについて詳しいのか?」

「うーん。どうだろうね? いちおう一般的に知られてない事を知っているよ」

「待ってくださいマスター!」

「えっ。何? 急にどうしたの?」

「少し黙っててくれませんか?」


 瞳が赤くなっている?!

 これは、戦闘モードなのか? まさか、シェンユと戦うつもりなのか?


「やっぱり、ノアちゃんは警戒してくるよね~」


 なんと、シェンユも構えをとっている。


「何故、今そんな事を私達に?」

「言ったじゃないか。話がしたいんだよ。お互いの話をね! オイラの秘密を教えてあげる。だから」


 身体を斜めに開いた右手を前に出し、左手は拳を握って胸の位置にに置き、足は開いて中国拳法のような構えで、鋭い眼光を飛ばしている。いつもとは別人のようだ。


「タツキの秘密を教えてよ」


 どういう事だ? まさか、俺が別世界からの転移者って事を知ってるのか?


 俺が疑問を浮かべてる間にノアが拳を突き出して突進していた。

 だが驚く事に、その拳は対象へと当たる事なく片手でいなされていた。


 すぐにノアは両手を開き、シェンユを捕まえようと貫き手を繰り出すが、どれもこれも綺麗にいなして、完璧な防御を発揮している。


「一旦、貴方を拘束します!」

「だから、話がしたいんだって!」


 毎朝トレーニングで相手をしてもらってるから分かるが、ノアは強い。疲れという物が存在しない動きに、絶対にブレない鋼の体幹と重たい鉄の攻撃を受けるのは難しい。防戦するよりも攻めたほうがいいんじゃないか? といつも考えているが、俺には出来ない。


 まさか、シェンユがこんなにも強かったなんて……。


 しまった! 2人の凄い動きに見とれている場合じゃなかった!


「ノア! やめろ!」

「なぜですか?」

「むしろ、こっちが聞きたいわっ! 話をしたいって言ってるじゃないか!」

「なので、一旦拘束してから話を」


 なんで、そうなる?

 シェンウィ君の時もそうだったらいしいが、話をするのに相手を無力化しておかないと安心できないのか? まぁ、俺の為とは思うが、やりすぎだろ!


「とりあえず一旦やめろ!」


 ノアは3回ほど後方伸身宙返りして、俺を守るように目の前に戻って来た。かっこいい。3分程度の攻防であったが、あのノアの重い拳を全ていなしていたというのに、疲れたようすも無くシェンユは笑顔で話してきた。


「タツキの秘密には予想がついているんだけど。話して貰いたい事もあるし、そうだなぁ~。取引したい事があるかな。だから話がしたい」

「取引ですか?」

「その言葉を使ったけど、誠意を示すから誠意で応えてくれないかなぁ? って感じなんだ。まずはオイラの話をちょっと聞かない?」

「聞こう。ノアは動くな。俺を想ってくれてるのは分かってるが、まずは話を聞いてからだ」

「分かりました」


 まったく。とんだ暴れ馬だよ。

 にしても、いつもアホそうなシェンユが、こんなに鋭い奴だったのか。


「うーん。何から話そうかな?」

「お前は何者なんだ? 何が目的だ?」

「分かった。それを話すよ。ちょっと荷物から椅子を出してもいいかい?」

「その場から動かないで――」

「いいぞ。腰を下ろして話し合おう」

「マスター!」

「大丈夫だ」


 シャンユは荷物を置いて場所に戻ってきて、木と皮で出来た折り畳み式の椅子を取り出すと、それを展開して特に変な動きをする事なく座った。


「『お前は何者なんだ?』ってのは、さっき言ったとおり大魔女サヤの弟子の子孫で、一族の最後の生き残りだよ。8年前まで、龍支配の空賊が襲ってきて村を壊滅する前までは、一族と一緒にこの村で暮らしてたんだ。あの時は7歳だったけどよく覚えてる。兄様が帰って来た日だったからね。修行に出て2年ぶりに帰ってきたんだ。大好きだったから、とても嬉しくて、家族でおいしい物を食べようってなって、母様とユウツオまで買い物に出かけたんだ」


 シェンユは後ろにある崩れた建物を見ていた。

 きっと、家族との思い出がある大切な場所なんだろう。


「そしたら、空からドラゴンが飛んできたんだ。16体もいた。飛行しながら火を吹くのが得意なナパーライドラゴンって後に知ったよ。稀に1、2体のはぐれドラゴンが街を襲う事はある。でも10体以上の強いドラゴンが連携して現れるなんて初めての事だった。オイラと母様もすぐに村に戻って、一族は戦ったんだ」

「戦ったって、ドラゴンとか?」

「そうだよ。ふっふっふっ。オイラ達一族には大魔女サヤ様から託された秘術があって、一族の中から8人だけの特別な戦士なれるんだ。その戦士はドラゴンとも戦える力を持っているんだよ。A級冒険者と考えてくれていいよ。その力で大昔からユウツオにドラゴンが襲ってきた時は護ってあげていたんだぁ~」

「そういう事か。だから領主様はシェンユ達一族に大きな恩義を感じているのか」

「そういう事!」


 その一族のたった1人の生き残りがシェンユってわけか。

 そりゃ、領主様が大事にしたいわけだ。


「それで、結果はこの廃村を見ての通り。さすがに16体も相手には勝てなかったんだよ。ユウツオからも多くの冒険者が助けにきてくれたんだけど、皆死んじゃったんだ。一族の皆も冒険者の人も、たくさんの人が命をかけてオイラだけを逃がしてくれた。センギョクさんは足を無くしてまでオイラの命を救ってくれた。これがオイラの正体だよ! これでいいかな?」

「いいよ。むしろ、なんだ、その、ゴメンな。辛い話をさせてしまったな」

「気にしないで。オイラが話したかったんだ。それにもう終わった過去の事だし、オイラの中では消化しきってる事だから何ともないよ」


 この世界の人達は、誰もが身近な死を経験しているんだろう。

 魔獣がいてドラゴンがいて、ちょっとした事で誰かが死んでしまう。それでも、生きていかなきゃならない。そういう世界なんだ。


「シェンユさんの正体を知ってる人は?」

「さすが、それって気になるよね。領主様とハオランさんと冒険者学校の校長とセンギョクさんぐらいかな」


 マジか! それって結構重要な秘密なんじゃないのか?


「オイラのせいで命を落とした人がたくさんいるからね。領主様が決めて秘密にする事になったんだ。だから絶対に誰にも言わないでね! バレてしまうとオイラはいろんな人から恨まれると思うから。シャンウィ君とか」

「お前……、もしかして、それで友達がいないのか? 同年代の子を避けてきたのか?」

「ありゃ。珍しく鋭いね。ちょっと、うしろめたい気持ちがあるのは確かだよ」


 責任を感じているのか? 自分も苦しんでいるのに?

 こんな奴が悪い奴なワケなかろう!


「ノア。俺は涙が出てきそうだよ。シェンユと秘密を共有しよう。イテっ!」

「今の話が全部嘘って事もありますよ?」

「お前には人の心が無いのか!」

「無いですよ」


 そうだ、無いんだった。

 でも、急に頭にゲンコツするなよっ! 頭部へのダメージは危険って言ったのはお前じゃないかよ。


「まずは、目的まで聞いてからです。この話が本当としても、こんな重大な秘密を共有されるとは、相当腹黒い狙いがあるはずです」

「ノアちゃんは手厳しいなぁ。もちろん目的も話すよ」


 腹黒いって言うな。


「この事件の後から龍支配の空賊は活発に活動してるんだ。2年おきぐらいに街を襲って滅ぼしたりしている。でも皆殺しじゃなくて、何故か生け捕りにしてる事もあるんだよ。そして、その人達を生きたまま森に捨ててるんだ。理由は分からないけど、わざわざ転送魔法陣を使ってまで、こんな事をするなんて何か意味があると思うんだけど。これまで助けた人は皆、精神が壊れてしまってて、話なんて出来なかった。でも最近ね、森に捨てられたのに、元気が人がいたんだよ」


 俺とノアか。


「捕まってた間は目隠しをされてて、閉じ込められてたって話を聞いてるけど。本当は何か知ってるんじゃないかと思ってね」

「復讐ですか?」

「いやいや。違うんだ。もしかしたら生きているんじゃないかって思って」

「一族の方々ですか?」

「そう。皆死んじゃったと思ってたけど、もしかして生け捕りにされた人もいたかもしれない。兄様に会えないかと思ってるんだ」

「うぅぅ……」

「ちょっと、マスター。何泣いてるんですか?」


 ゴメン! ゴメンよぉ~シェンユ~。いろいろとゴメン!


 まず、疑ってゴメン! お前はただ小さな希望に賭けて、大好きだった兄に会いたくて、俺達にすり寄ってきたのか。

 そして本当にすまない! 嘘ついてるのは俺等のほうだ。龍支配の空賊なんて知らないし、捕まってない。あの時に都合がよかったから、ノアがでっち上げた設定なんだ。


「タ、タツキ泣かないでよ。えーっと、オイラの目的は、そんな感じだよ。下心あって仲良くしてきたなんてゴメン。悪いとは思ってるんだ。だから全部ちゃんと話ておきたくて」

「俺等のほうこそ、グスッ。変に疑ってゴメンな。ノア! 謝れよ!」

「シェンユさん。誠に申し訳ございませんでした」


 ノアは深々と頭を下げたが、目はまだ赤いままだった。


「いいんだよ。最初に悪知恵を働かせたのはオイラだからね。それで、オイラと秘密を共有してくれるかい? って、ちょっと考えたいよね? そろそろ夕方だし砂漠側を見てくるといいよ。沈む夕日が大防壁よりも広く見えるからさ! オイラはここで夜の準備をしておくから」

「分かりました。ではマスター行きますよ」

「いや、ちょっと待て。もう、いいんじゃないのか?」

「行きますよ!」


 ノアは右手で無理矢理に肩を掴んで押さえつけると、左手で車椅子を押して進んでいく。抵抗出来ないので、そのまま夕日を見に行く事になった。


 俺は、シェンユを全面的に信用していいと思うんだけどなぁ~。

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