第67話 災害魔力? なんだそれ?
忘れてた! (2回目)
「――とういう事で、冒険者育成学校に通わなくてもF級とE級を経て、D級冒険者になる事は可能だ。時間的にも同じぐらいかかる。努力次第では、少しだけF級から始めたほうが早いかもしれんな」
ギルド学の授業をする度に、思い出すのに~。
俺は、戦隊についての情報を集めたいんだったわ。
誰かに聞くのが1番手っ取り早いけど、この間のトゥーイ氏の反応からすると、嫌ってる人もいるみたいなんだよなぁ~。そこから揉めて大事になっても嫌だから、あまり問題にならなそうな相手に聞きたいな。
「おっ、鐘が鳴ったな。よーし、今日の授業はここまでだ」
前の席のシャンウィ君が振り向いて、話しかけてきた。
「タツキの兄貴。エクスィに詳しいって本当っすか?」
「んっ? あぁ。まぁ好きだし、やってるよ。俺よりもユウのほうが詳しいかな」
「そうなんですね。今度、俺も一緒にやりたいです」
そういや、この双子達って貴族じゃなかったな。
子供ってやっぱり戦隊物って好きだよな? きっと。
「いいよ。今度タイミングが合えばな」
「本当ですか! やりぃ」
「それよりさ、シャンウィ君って、戦隊の事は好き? 詳しかったりする?」
「戦隊ですか? それなりには……」
2人そろって、隣の席にゆっくりと、顔を向ける。
「うぜぇ。こっち見んな」
トゥーイ氏は頬杖をつきながら、勝手にしてろっ! という感じだ
「そっか。なら、お昼に食堂で話をしようぜ」
「分かりました」
おーし、そうと決まれば、苦手な地形学と植物学も全力集中だ!
地形学は最近その重要性を理解してきた。日本での地理の授業みたいだが、俺としてはゲームのマップを覚える感覚に近いので、面白くなってきたではある。
今、やってる大砂漠は元もは存在しなかったが、大魔女サヤ様と魔法国家との争いで1夜にして出来たらしい。最初は今ほど広大ではなかったとの事。現在の広さは東西に最大幅1200キロ、南北で6000キロ以上ぐらいと、大体言われている。デカい。
植物学も、それなりに楽しい。ゲームの薬草系アイテムを覚えるイメージで取り組んでいる。今は世界中でどこでも手に入る植物の効果の暗記だ。冒険者として活動してると、いざという時に役立つ知識だそうだ。
「うーーーん。終わった」
昼休憩の鐘の音と共に、教室全体が騒めき始めて、各々が昼飯の準備をし始める。このクラスの大半は貴族なので、ほとんどの人が貴族専用食堂に移動するんだが、4ギャルの人達や、俺とシェンユはいつも教室で弁当だ。
「タツキ~。弁当食べようよ」
「わりぃシェンユ。今日は下の食堂に行く。ちょっとシャンウィ君と話したい事があって」
「シェンユの兄貴、すみません」
シャンウィ君は、砂漠の件の後にシェンユから1度怒られたらしく、俺と同じく兄貴呼びしてる。ちなみにダリアさんには姉御呼びしている。本人はかなり嫌そうだけど。
「そうなんだ。了解、先に行ってて、オイラも後から行くから」
「タツキさんどうも。シャンウィご飯に行こう」
「シェンファ、今日はタツキの兄貴も一緒に食べる事にしたから、ちょっと話をしたいんだ」
「そうなんですね」
「ゴメンねシェンファちゃん、よろしく」
「いえ。よろしくです。では、行きましょう」
妹のシェンファちゃんは、黒髪を左右にお団子ヘアにしてて、口調数が少なくおっとりしていているが、実は常に無鉄砲兄を気にかけている、しっかり者の妹なのである。
「兄貴、昨日の早朝に市場で見ましたけど、何してたんですか?」
「あぁ。アレは訓練相手を探してたんだ。生け捕りの獣を買って、それを相手に自主トレ-ニングをしてたんだ」
「さすがっすね!」
「ノアが考えてたんだけどな」
「……。さすがっすね……」
「……。すごい、やり方です」
双子にとってノアは恐怖の対象になってるらしい。あの事件の当日の話は聞いてるので、何があったか知ってるが、おそらく後日改めて〝挨拶〟に行ったに違いない。ロナウ達の時もそうだったように。
「2人は、どうして冒険者学校に通ってるんだ? その歳なら普通の学校に行くか、家の手伝いとかしてる子が多いだろ?」
「私達のお父さんもお母さんも8年前に、亡くなったんです。とっても優秀な冒険者だったらしいんです」
あっ。えっ? そうなのか。しまったな、聞かなきゃよかった。
「すまない。変な事聞いてしまったな」
「大丈夫っす。他にも俺達みたいな奴は多いし、みんなで助け合ってるから、悲しくないっすよ。むしろ楽しくやってます」
「みんな?」
「そうです。私達は住居区画9番街の孤児院で他の13人の同じような子達と生活しているんです。世話をしてくれる大人が2人いて、昼ご飯はいつも我儘亭から贈られてれます」
そうかぁ。どんな世界でも親がいない子がいて、その子供達を保護してくれる施設があるんだな。そして、それを支援してくれる人がいると。
センギョクさんカッコいいじゃないですか!
「俺もな。3歳から7歳まで孤児院で育ったんだぜ」
「あれ? 兄貴は貴族で屋敷育ちじゃなかったっけ?」
あっ。やべぇ!
「間違えた! 俺の知り合いだった。そうそう。知り合い」
「覚えてる事もあるんですね」
そうだった! 記憶喪失だったわ。
「その知り合いだけな。少しだけ……」
食堂に着くと、いつもよりも騒がしくて、人が多い気がした。
「兄貴とシェンファは、どっか人が少ない所に座っててくれ。俺はなんか買ってくるから」
「分かった。シェンファちゃん、あの3列目の奥側は、どうかな?」
「良いと思います。そうしましょう」
狙った席まで移動してる間に、カハクを見つけた。相変わらず1人で本を読みながら飯を食ってる。
どうしようかな? 誘うか?
「よっ。カハク。今日も1人か?」
「タツキさん。自分は友達いないので毎日1人ですよ」
「一緒に飯食べる? ちょっと戦隊の話をするけど?」
「うーん。やめときます。この本を読みたいので。誘ってくれてありがとう」
いっつも本ばっかり読んでるけど、なんの本だろうか?
「そうだ。今日は冒険者から差し入れがあって、おおきな獲物を無料で配布してるらしい。だから人が多いから、落ち着いて話するなら、奥側にするといいよ」
「そうなんだ。ありがとう」
気前のいい冒険者だな。俺も冒険者になって狩りとか出来るようになったら、孤児院に獲物を提供したいな。
狙った席よりも、2列、食堂のカウンターから離れた位置を陣取って、しばらくするとシャンウィ君が戻ってきた。
シェンユも一緒なのは良いとして、何故にユウとジョノも一緒なの?
「タツキ氏。一緒になる事にしたぜ」
「なんでだよ。昨日も会ったじゃないか」
「兄貴、このカード使いの人と一緒にエクスィしてたって本当だったんですか?」「昨日の昼からは、ちょっと一緒に遊んでたんだ」
「だろ? だから言ったじゃねーか。今日の先約は俺だって」
「先約?」
「えぇ~? タツキ忘れちゃったの? わざわざオイラ、ユウ達を呼びに行ったのに」
だから、遅れてきたのか。だが、なんか約束したか?
「ノアさん攻略の為に、ノアさんがいない場所で作戦会議しようって話したぞ? 『明日の昼休みに、学校の食堂で』ってな」
そうだっけ? すっかり、忘れてたな。
「タツキ大丈夫? 砂漠に落ちてから、なんか忘れっぽくなってない?」
「あっ。そうなのか? そうかもしれない」
神からの能力では、頭部へのダメージは再生しないって話だからな。もしかして何か重大なでダメージが残ってるのか……。
「すみません兄貴。俺のせいで……」
「タツキさん、シャンウィのせいでアホになったみたいで、ごめんなさい」
やめろ。アホとか言うな。
「とりあえず、飯食おうぜ。今日はデカい肉もあるから人数が多いほうが楽しいだろ? ジョノ、真ん中に置いてくれ」
「あいよ。ちょっと寄ってな~」
ジョノが取って来た大皿には、スイカサイズのこんがり肉が乗っていた。俺の左にシャンウィ君とシェンファちゃん、右にはいつものシェンユ、向かいにユウとジョノが座って、肉を囲みながら各自の食べる物を用意する。
ユウは1人だけ、食事い使わなさそうな物を出してきた。カードバインダーだ。
「ユウ、飯食おうって言ったのはお前だぞ?」
「タツキ氏、ユウはいつもカードを眺めながら飯を食べるんで、屋敷から持ってきてもらうんですよ」
マジか。カードをオカズに飯が食える人は、初めて見たわ。
「シェンユから話を聞いたから、タツキ氏の為に持ってきたんだぜ? たまたま今日のバインダーに入ってて良かった。こんな事なら、先に俺に相談して欲しかったぞ?」
ユウは、縦に3枚のカードが入る長財布みたいなバインダーのとあるページを開いて、6枚のカード見せながら、話だすと、そのページを指で叩いた。
「この6枚は、戦隊6名のカードだ。3年前に出た物だから、今代の戦隊のはずだぜ。名前と顔はこれで分かるぞ」
「おおおおぉぉぉぉおおお! ユウ、ありがとう!」
「俺も見ていいっすか? ユウの兄貴」
兄貴呼びになっとる。
6枚全ての種族が『魔属』になっている。これは魔に属する者という分け方で、エクスィ的には本来は魔力の扱いが優れていない者が、なんらかの要因で尋常では無い魔力を扱えるようになった者が当てはめられる。主にレシピエントと呼ばれる改造人間が多い。
そして、6枚のカード名が素晴らしかった。
『煉獄なる赤の戦隊 レッド・ラヴァ』
『猛降なる青の戦隊 ブルー・スコール』
『閃光なる黄の戦隊 イエロー・ライトニング』
『極嵐なる緑の戦隊 グリーン・ストーム』
『銀界なる白の戦隊 ホワイト・スノウ』
『深淵なる黒の戦隊 ブラック・スモーク』
かっこいい! これは、ドラグマン・レッドの2つ名も考えなければ!
「赤と黒の戦隊以外は女性か?」
「そうだ。何故かは知らないが、どの世代でも女性が多い。だが男が戦隊になった場合は戦闘力が凄く高いって聞いた事がある」
世代? 〇〇ジャー、みたいに1年ごとに変えてるのか?
「俺もそれ知ってるっす。過去の戦隊も女性が多いらしいですよね? 戦隊になる為に取り込む魔石が女性との相性が良いって噂を聞いた事があります。女性だと寿命が20年ぐらいあるけど、男性だと半分ぐらいしかないって話もあります」
「寿命? 何? 戦隊になると寿命が決められてしまうのか?」
「らいしな。本当かどうか分からないが、代変わりしてるからな。人族の限界を超越したMA級の力を手にいれるんだ。そのぐらいの事があっても不思議じゃない」
マジか。俺がなると、どうなるんだ? 今の俺って不老なんだよな? でも女性じゃないと、なりにくいのか。
「災害魔力が消えるのって20年だったよね? 戦隊の寿命と関係があるのかな? オイラどっかで、魔力を残した戦隊が死ぬと、残ってる魔力が消えるって聞いた事があるよ」
「災害魔力? なんだそれ?」
「えぇ? 知らないの?」
「兄貴って知らない事、多すぎじゃないですか」
また、常識的な事か。もう慣れたので焦らない。とりあえず、苦笑いしながら、とぼけておけば皆が教えてくれる。皆様、優しくて感謝です。
「タツキ氏いいか。災害魔力ってのは、戦隊が戦うと魔力が凄すぎて、その影響がずーっと残る事なんだ」
「ユウの兄貴、13年前の話があるじゃないですか」
「そうだ。13年前に帝都の西の平原にウォーロックドラゴンが20体も出たらしくて、3つの村が大被害にあったんだ」
「ドラゴン? 本当にいるんだ」
「いるぞ。普段は見ないが龍人が住む世界からやってくる時がある。ドラゴンの習性とか、龍人が送り込んできたとか言われてるが、原因は分かってない。とにかく、その時は帝都の兵団もギルドの冒険者もたくさんの死者が出て、戦隊を出す事になったんだ」
「それで、戦隊6名でドラゴンを討伐できたのか?」
「何言ってんだよ! 白の戦隊が1人で全部、殺したらしいぞ」
「1人で?!」
凄い! サンダイル1匹と苦戦してるドラグマン・レッドとは大違いだ。
「でもさ。その後に魔力がずーっと残ってて。だから今も帝都の西には大雪原地域があるんだよ。夏は涼しいらいいけど、冬になると寒いから、帝都の貴族達は冬の間だけ、砂漠があって暖かいユウツオで過ごす人もいるんだ。オイラは冬が嫌いだよ。街に貴族がいっぱいなるから」
「それもあって、戦隊を嫌う人いるらしいんだ」
「なんでだ? ドラゴンを倒してくれるんだろ? ありがたいじゃないか」
「その3つの村の人達は、もう故郷に帰れないんだよ。中には無理して頑張って住み続ける人もいるらしいが」
それは、確かに悲しい事だな。ドラゴンを葬る力があるが、戦闘となったその地域を20年の間、災害地域にしてしまう。
俺が思ってる戦隊とは違うな。
「しかたないっすよ。それでドラゴンを倒せるなら俺は良いと思います。だって俺達みたいにドラゴンに親を殺された身としては、ドラゴンが倒せなくて、ずっと世界を飛び回ってるほうが許せないです。だから俺は戦隊は好きですよ」
シャンウィ君とシェンファちゃんの両親はドラゴンに殺されたのか……。
「シャンウィ。それは、トゥーイの前では絶対に言うなよ! 噂なんだがアイツの故郷は、その3つ村のどこからしいんだ。だから戦隊を嫌ってるらしい」
トゥーイ氏は、当事者だったのか。もしかしたら戦隊に故郷を奪われた人ってのは、結構たくさんいるのかもしれないな。
「もし、俺が戦隊になれたら、災害魔力を残さずにドラゴンを倒したいな」
「「「はっ?」」」
「なんだよ」
「タツキって本当に戦隊目指してるの? やめてよ~。寿命があるんだよ? オイラと一緒におじぃちゃんになろうよ~。というか絶対になれないと思うよ」
「そうだぞ。冒険者を引退したら、俺は老後に誰とカードやるんだよ。タツキ氏の成績だとD級冒険者になれるのがやっとだぞ!」
「兄貴が戦隊はカッコいいですけど、なってほしくないです」
「そ、そうか。いや、ちょっと思っただけよ。俺だったら、そうしたいなと思っただけよ」
この世界の戦隊ってのは、人族の最後の砦だけど、諸刃の剣なんだな。
「さて、飯食ってノアさん攻略会議しようぜ」
気づいたら、シェンファちゃんのほっぺがリスみたいになっていて、大皿の肉が元の3割サイズしか残ってなかった。




