第65話 なら、私の強さをお見せしますよ
「私の第4ターンを始めます」
「ここからは、本気で攻めに転じてきますよね? ですが、このターンを凌げば俺は次のターン、全力で勝負を決めにいきます」
「ご忠告ありがとうございます。ユウ様はお優しいですね」
表情はいつも変わらないが、な~んか怒ってるように見えるのは俺だけだろうか?
「安心してください、最初から本気ですから。このターンから大きく動く予定は、ご名答です。Aフェイズ、指揮値9〝魔導人形の使い手、オルペッカ〟をセカンドチームに加えます」
「ユウ、あのエースカード見た事ないが、知ってるか? なかんか凄い能力を持ってるぞ?」
「俺は知ってるよ。けど今の環境はチームの数の多さと、チーム内のアクター数の多さが強みになる。あのカードが強いとは思えないな」
「そうですね。このエースカードの悪い点として『チーム制限2』があます。チーム数はエースカードも含めるので、1枚しかこのチームに加える事ができません」「タツキ、チーム数って何? あと『チーム制限』って?」
「1つのチームに組まれているアクターの枚数と、その枚数に制限をかける事なんだ。アクターカードには『近距離攻撃値』『中距離攻撃値』『遠距離攻撃値』って3つあるだろ? チームの順番があって、攻撃する時に、前のカードが『近距離攻撃値』を、次のカードが『中距離攻撃値』、そして後のカードが『遠距離攻撃値』を参照するんだ。それぞれに良い点、悪い点があって、アクターも適したデザインがされているんだ」
「それは、どういった感じなの?」
「近距離型は、攻撃範囲が前後左右1マス隣しかない。移動力を他のカードでサポートしないと動きにくいな。しかも攻撃された時は前からダメージ計算をするから、破壊されやすいんだ。その代わり攻撃力と耐久が高い」
「ユウの使ってるカードかな?」
「そうだな、近いかな。んで中距離型は、攻撃範囲が周囲1マスと前後左右は2マスあって範囲が広い。近距離型よりも攻撃値、耐久値が低いけど、2番目にいるから比較的ダメージ受けにくい。あと専用スキル『要撃』『挟撃』『迫撃』『乱撃』と多い。器用に立ち回れる」
「ほほぅ。いいね。オイラはそっちが好きかも」
「最後に遠距離型は、前後左右の戦場の端まで攻撃範囲という中距離型よりも広い範囲と3番目にいるのでダメージを受けにくい。けど、攻撃値も耐久も低めで出現条件も厳しく、コストも多めとなってる。強化カードでサポートすれば強く動けるかな」
「ふむ。ふむ。分かった」
「シェンユさん大丈夫そうですね。〝魔導人形の使い手、オルペッカ〟はさらに、魔械種族がチーム内に存在しないのなら、近距離-1、中距離-1、遠距離-1、耐久-1となってしまいます。その代わりに、チーム内のアクターへ自分拠点への移動力と、スキル発動の際にこのカードを参照しないがあります」
「なるほど、攻撃スキルや防御スキルはチーム内の全てのアクターカードとエースカードが同じスキルを持っていないと発動出来ないからな。ノアさんの除籍エリアにあるアームズカードは『狙撃』や『反撃』を持ってましたね。どのカードが手札にあっても使えるという構築なんですね。いい考えだ」
「ありがとうございます。そういう事です」
武器サポートは手軽にアクターを強化できるが、戦闘値だけでなくスキルでの強化まで考えると、デッキ構築時点で、あらかじめエースカードを厳選しないといけなくなる。しかも多彩なスキルを持ってるカードは多くないので、主力スキルを決めて結局3つぐらいしか活用出来ない。
〝魔導人形の使い手、オルペッカ〟ってカードはデメリットも大きいが良いカードだな。
「Bフェイズに入ります。まず〝鉄魔従大陸の第4製造都市〟の効果で組織力Eから1消費します。エンカウントカードを〝3▲〟地点に配置します。エンフォースカード〝ユウツオ工業区画〟を〝2▲〟地点に配置します。このカードは本来コスト1ですが、戦場に特徴『拠点』と名称『ユウツオ』を持つ自分カードがあると0コストで出せます。これで特徴『工場』を持つカードが3枚になりましたね」
「ついに、ノアちゃんが攻めるんだね!」
「私は最初から攻めの姿勢のつもりですが。エフェクトカード〝新たな魔導兵器の完成〟を発動します。発動条件は『祖人種族』3つと何でも良い種族3つと、特別に特徴『工場』を持つ自分拠点が3つです。さらにコスト2を消費します」
「重い発動条件ですね。切り札ですか?」
「そうですね。組織力Eから2消費します」
「ちょっと待てノア!」
「どうしたんですかマスター?」
「どうしたじゃないだろ。お前の組織力Eは8だぞ? 2消費したら残りは6になるんだぞ? ここはAから消費だろ」
「コストを払ったので効果を発揮しますね」
「無視するなよー!」
組織力6って1撃で0に出来る範囲だぞ。大丈夫か?
「〝新たな魔導兵器の完成〟の効果は、組織力Aから出現条件6以下の魔機種族カードを出現条件とコストを無視してチームに加える事ができます。すみません、ちょっと探しますのでお待ちください」
呼び出しカードか。どんなTCGでもデッキから召喚は強いカードだからな。こっから少しでも盛り返してくれ~。
「〝KATANA-HIPP 000-Dノア〟を出します」
「ノアちゃん?! コレってさっきの」
「なんで持ってるんだ?」
「シェンユさん、マスター、落ち着いて下さい。イラストが少し違うでしょう? 複製版です。世界に6枚しかないカードを持ってるわけないでしょう?」
「ほらよ。これが俺の持ってるオリジナル版だ」
ユウは何度でも自慢したいのか、すぐさま持ってるガラス入りカードを出してきた。確かにイラストが違う。
だが、こっちのカードもちゃんとノアと分かる。ノアがノアを使うのかよ。コイツやっぱり、面白いだけのデッキを使いやがったな!
負けたかも……。
「ノアさん。カードのノアを使うんですね。そのカードは、使い方が難しく、あまり人気が無いので使ってる人を見た事ないのですが」
「なら、私の強さをお見せしますよ」
自分って言うなよ!
「〝魔導人形の使い手、オルペッカ〟のチームに私を加えます。さらに、手札のアームズカード〝魔力増幅器〟を私に装備させます。本来はコスト1ですが〝鉄魔従大陸の第4製造都市〟の効果でアームズカードのコストが0になっています」
毎ターン無駄に組織力を減らしてたカードが、やっと仕事をしたぜ。
「Bフェイズでの待機エリア移動は無しです。第6ステップの移動で〝魔導人形の使い手、オルペッカ〟の効果を使って拠点のある〝4<<〟地点〝鉄魔従大陸の第4製造都市〟の地点に移動します」
「あっ、マズイ! ノアさんってスキル『遊撃』持ちですか」
「そうです」
「Cフェイズでユウ様のファーストチームを攻撃です」
「遠距離攻撃ですか? 戦闘値は?」
おぉ? ユウが焦ってるぞ!
「ノア本来の値が1。〝魔力増幅器〟で+1。〝魔導人形の使い手、オルペッカ〟で+1なので合計で3です。そちらの耐久値は2ですよね?」
「そうです。これは破壊されますね。ですが、ここでエンカウントカードを使用します! 〝2<〟地点の裏向きカードを表に、〝拠点からの支援防御〟を発動。自分拠点の地点のチームが攻撃目標とされているなら、攻撃しているチームのアクターカード全ての戦闘値を-1-1-1-1とします」
さすがに、ユウは何か用意してたかぁ~。
「ならば、私の能力を発動します! 私の装備しているアームズカード1枚を破壊し、除籍エリアにあるアームズカード1枚をコストのみ消費して装備できます。〝魔力増幅器〟を除籍エリアに、〝ドルトータスの甲羅の大盾〟を装備します。もちろんコストは0になります」
「何ーっ!」
「ダメだユウ! 〝ドルトータスの甲羅の大盾〟はスキル『要撃』を付与する。エンカウントカードの目標にならないし、スキル持ちのカードが攻撃中は発動できなくなる」
「これで〝拠点からの支援防御〟は、私には効きませんが、発動してしまったので、そのまま除籍エリアになりますね。私の遠距離攻撃値は2になりますが、それでも落とせます」
「忘れてた! そういや、ノアさん回収してましたよね?」
「はい。あえて回収して除籍エリアには無いと思わせました。アームズカードは1ターンに複数枚出せますが、無駄発動を狙いたかったので。見事にハマっていただき、ありがとうございます」
「凄いよノアちゃん。何やってるか全然分かんないけど、さすがだよ!」
つまりは、すべてノアカードを活躍させる為の布石だったというわけか。
「くっ。〝冒険者ギルドの暗殺者〟は破壊だ。除籍エリアに移動させる」
「ではスキル『遊撃』がありますのでセカンドチームにも攻撃します」
「ダメだ。何も出来ない。〝追撃部隊の犬獣人、ポチ〟も破壊だ」
「Dフェイズでは何も出来ないので、Eフェイズに進みます。ユウ様、エースの処理をどうぞ」
ユウが悲しそうに2枚のエースカードをエースエリアに戻していく。指揮値6と指揮値4で合計10枚の組織力を失った。
これは、逆転もあるかもしれないぞ!
「ユウ様、組織力の消費を全てAからお願いします。〝武器密輸人の女スパイ、アン=ラーソン〟の効果で相手の組織力の消費を指定できますので」
「待て待てノア。どう見てもEが少ないじゃないか。Eを減らせよ」
「マスター大丈夫ですから、これは大事な事なのです」
「そ、そうか。そうなのか」
ノアが大事な事と言うなら、もう何も言うまい。
コイツの頭の中では、3ターン先まで計算されてるんだろう……
「最後にEからドローして、ユウ様のターンをどうぞ」
「はい……」
「おいおい元気だぜよユウ。ノアさんの組織力Eは残り5枚ぐらいだぞ? 一撃を狙えば勝てる。まだ全然勝機はあるぞ!」
確かにジョノの言う通りだ。残り5枚はマズイ。なんでEからドローするんだよ。それも作戦なのか? 大丈夫なんだよな?
「分かってるよ。今、考えてるんだ。この2枚の手札でこのターンで決めるなら、どっちを使うべきか……」
「こっちじゃないか? 伏せカードも気になるし」
「武器と拠点補助は、戦闘での破壊が多いから、エンカウントカードは無視していいのか?」
「スキル『要撃』をユウも使うって手もあるが、そしたら、このターンは守りになるな。攻めれない」
「ちょっと、ずるーい。なんでジョノと相談してるのさ」
「私は、構いませんよ。2人がかりでも、長考していただいても、『次のターンで決める』と言ったのを撤回しても」
煽ってきたがった。今日のノアさん、性格悪いぞ!
「これは、すみません。ではいきます! Aフェイズ、指揮値9〝商団護衛のB級冒険者、ホンフェイ=シャン・レン=ワン〟を出します。このカードはコスト2を支払う事で待機エリアのアクターカード1枚をチームに加える事ができる。Bフェイズ、〝大鎧の突撃冒険者〟を組織力Eから2消費して待機エリアに出します。エースの効果を発動してAから2消費、チームに加えます」
「エースもアクターも耐久値が高いね~。ユウはこのターン守りにはいったのかなぁ?」
「へっ。見てろよシェンユ。ちゃんと決めにいくからな! このチームはスキル『進撃』を持っている。移動力は〝1<〟地点を指定、Cフェイズでスキル『進撃』の効果を使って前に3マス移動。ノアさんの組織力Eを攻撃します」
「攻撃値が0じゃないの」
「シェンユ〝大鎧の突撃冒険者〟の効果を見てみろ。相手組織力を攻撃目標とした時のみ、耐久値を参照して攻撃するって書いてあるぞ。チーム耐久値は〝商団護衛のB級冒険者、ホンフェイ=シャン・レン=ワン〟が+3で〝大鎧の突撃冒険者〟本人が4持ってるから合計で7になってる。そして、ノアの組織力Eは5だ」
「エンカウントカードを発動します!」
「なら俺は〝商団護衛のB級冒険者、ホンフェイ=シャン・レン=ワン〟の2つ目の効果を発動します。各ターンに1度のみ耐久値を-2にする事で、このチームはエンカウントカードの目標にならない」
「分かりました」
「おーっし。勝った!」
クッソ! -2しても耐久値は5になる。ジャストでノアの負けだ。
「まだですよ〝魔道具の再利用〟を発動します」
「「「へっ?」」」
「自分除籍エリアにある特徴『魔力兵器』を持つアームズカード最大5枚までを排除します。1枚あたり2個の組織力チップを自分の特徴『拠点』を持つカードの上に置く事ができます。5枚排除しますので10個のチップを〝鉄魔従大陸の第4製造都市〟の上に置きます」
「えぇぇぇぇ! そんなカードあったんですか!」
「ナイスだノア! さすがだノア!」
「マスターまだ勝ってませんので、褒め言葉はとっておいて下さい」
「何? 何? ちょっとタツキ説明してよ!」
「組織力チップってのは、組織力の代わりに消費する事ができる疑似カード的な扱いなんだ」
よくTCGである。コインとかカウンターとかってやつだな。
「5ダメージ分を組織力チップから消費しますね。他に何かありますか?」
「無いです。くぅううう。読まれていたのかぁあ」
「いえ、その動きは予想していなかったです。最初から組織力のかさ増しをする予定でしたので、タイミングがここだっただけです」
「これは、負けるかもしれないな」
「そうですね。私の勝つ可能性は98%です」
ユウの勝つ可能性2パーしかないのかよ。
「どこで間違えたかなぁ~。なぁジョノどこでミスった?」
「どこだろうな? いい動きしてたと思うけどな~」
「初めからですよ」
「おい。ノア、それは言い過ぎだ」
「いえ。ユウ様も言って、おられたじゃないですか」
「俺が? なんでしょう?」
「『真のカード使いは、試合の前から勝負が始まっているんだよ!』と」
顔までマネしなくていいから!
「まさかっ! 俺がこのデッキを使用するのを読んでいたんですか?」
「もちろんです」
えっ? マジか?!
「そうだ。そもそもノアさんのデッキは祖人と武器軸拠点補助のミッドレンジ型じゃない! 今の環境には無い型だ」
「そうです。ノア軸なのですよ。ノアを軸に除籍エリアから武器を拾ってくる拠点補助の全対応長期戦型です。好きなカード達で、やりたい戦い方をする。私を活躍させる為に考えたデッキです」
「かっこいい! ユウよりもずーっと、かっこいいよノアちゃん」
ありがとうノア。俺の求めたスタイルでも勝てる事を証明してくれたのね。
「長期戦型なのか。俺のこのデッキでは勝てないな」
「さて私の第5ターンを進めてもいいですか? 決定力に欠けるので、勝負を決めるまでに時間がかかってしまいます」
「どうぞ。ですが俺も決闘者ですから。最後まで足掻かせてもらいます!」
「あっ。マスター、シェンユさん。私の勝ちは、ほぼ確定したので隣のテーブルで試合をしてても良いですよ。時間がもったいないので」
「いやさ。その試合って、いちおう貴族の決闘なんだろ? 当人の俺が見なくてもいいのかよ。ユウが先攻の2試合目もあるじゃないか」
「この調子だと2試合目は、圧倒できそうなので問題ないです。マスターが隣にいても、何も助力にならないでしょ?」
さすがノアさん。今日も辛辣な口調が冴えてるぜ! 俺はいいけどさ、ユウに結構なダメージ入ったぞ今の言葉は。
「ユウ、俺は必要か?」
「悪いジョノ。いてくれ。俺を助けてくれ」
「じゃぁ。俺とシェンユでやるか。ゆっくり教えながらやるよ」
「了解でーす。ノアちゃん頑張ってね!」
そして、宣言通りにノアは勝った。2試合目も宣言通りに圧倒的に勝った。
あまりにも無双してたので、どうしてできたのか聞くと、1試合目で相手のカードを全て覚えたからと、こっそり教えてくれた。
つまり、コイツは1試合目をあえて長期戦にして、ボクシングのミット持ちのごとく相手のカード受け続けて、戦略や使用カードを全て暗記する事で、2試合目はスーパーコンピュータで計算と予測をした結果、圧勝できるいうわけだ。
インチキだろ! チートやん!
やっと、終わりました。




