第61話 ダメだ! タツキ氏、すまない!
すみませんが、しばらく、くだらない話が続きます。5話ぐらいの予定です。
「本当について来たんだな」
「なんだよ! その言い方は! タツキと森で出会ってから、ずっと一緒だろ? オイラは困ってるタツキの為に友達として、これまで助けてきたつもりだけど、休日に遊ぶ時には、なんで誘ってくれないのさ!」
俺は先週の休日にも来た大豪邸ではなく、その道向かいの少し大きなシャン・ギ=オウ家の館に来ている。
俺とノアは正式に館の主で友人であるユウから招かれているのだが、勝手についてきたシェンユを一緒に入れていいものか悩んでいるところだ。
朝、我儘亭に迎えにきてくれたユウの兎車には、センギョクさんからの用事があるからって乗らなかったのに、貴族区画に着いたら、いるからビックリしたじゃないか! いる事よりもシェンユの全力ダッシュが、ちょっと用事を済ませても、兎車よりも早いって事に驚愕だ。
「いやさ。シェンユってエクスィ知らないだろ? 興味も無いだろ? それにいつも雷の日は我儘亭の手伝いしてるじゃないか」
「タツキからの誘いならカードゲームだってやるさ! 休みだって取るさ!」
いや、いや。それが怖いから。
何故に、そこまで俺にご執心なんですかい? さすがに興味の無いカードゲームを、わざわざやらなくてもいいんですよ?
ノアに変な事を吹き込まれたせいで、なーんか気になってしまう。
「まぁ、いいじゃないですか。ユウ様はどうみても私を招きたかったみたいなので、マスターだっておまけで呼ばれただけですよ。シェンユさんが増えたぐらい、大丈夫ですから」
むっ。こいつめ! 俺がちょっと気にしてた事を。
「よし! いっくぞー。それ」
シェンユが門の隣にあるリンゴぐらいの大きさのガラス玉みたいなのを、叩いてしばらくすると玄関からジョノが出てきた。どうやらインターホンみたいな物らしいな。
「おぉ。シェンユも一緒か。入ってきてくれたまえ。ユウが待ってるから」
「ジョノ。シェンユも一緒に大丈夫なのか?」
「来たからには、それなりに興味はあるんですよね? なら、いいよ。エクスィが好きな人が増えるのは良い事だから」
「ふふふ。任せなさい! オイラは凄いカード使いになってみせましょう」
カード使いってなんだよ。投げて戦う人みたいだぞ。
ジョノの後ろについて館に入り、2階の部屋に案内された。
その間にジョノがノアを見つめすぎて階段を踏み外すイベントがあったが、そんなに美人か? もちろん何処に嫁に出しても問題ない自慢出来るノアさんなんだが、ユウもジョノもちょっと異常に惹かれすぎじゃないか?
部屋に入るとユウが1人で待っていて、飲み物とお菓子を準備していた。
「おっ、来たな。ようこそ! 俺の遊び場へ」
「おじゃましまーす。広いね~。オイラの部屋の3倍はあるよ」
「失礼致します」
「おぉ。すげーな。カードショップみたいだ」
長細い部屋は、よくある1人暮らしのワンルームの4倍ぐらいの広さで、多分24畳とぐらいだろう。奥の壁に扉があって、左側の壁にはカウンターと椅子が並んでいてバーみたいだが、壁の上半分は窓になっていて酒を置く棚は無い。逆に右側の壁は本棚がぎっしりとあって、多くの本とケースに入ったカードやエクスィに使う道具が並んでいる。
たぶんあの本は、本じゃなくてカードバインダーだろうな。
一番目を引くのが、中央に並んでいる四角い4つのテーブルで、それぞれの対面に2人用ソファーが設置されていて、4つ全てテーブルの天板には、組織力、除籍エリア、待機エリア、チームエリア、戦地エリアなどが刻印されている。
カードショップというよりも、大会の会場じゃねーか!
「ユウさ、これって自分で買い集めたの? 凄すぎるぞ! まさか俺みたいに莫大な借金があるとかじゃないよな?」
「そんなわけ無いだろ。この部屋はシャン・ギ=オウ家の財産だ。5年前まではエクスィのユウツオ大会の会場に使われてたりしたんだぜ。今は俺が使わせて貰ってる。棚のカードとかは俺個人のコレクションだけどね」
「えぇ~! お前の家って何者だよ! 家系がデュエリトって事か?」
「いや、俺のほうがビックリだよ。まさかタツキ氏はシャン・ギ=オウ家の事知らないのか?」
「俺も驚いた。知ってて声かけてきたと思ってましたよ」
えっ? ダリアさん家みたいに有名なのか?
ちらりとシェンユを見ると、首を横に振ったので知らないみたいだったが、ノアさんを見ると、お得意のヤレヤレポーズをしていた。
「ユウ様、友人の事を知らないマスターを許してあげて下さい。私の教育が疎かであった為です。申し訳ありません」
「だ、大丈夫です! なんとも思っていませんから! ノアさんが頭を下げる事ではありません」
「そうですね。マスターが謝罪すべきですね」
そうか。そうなるのか。
「ユウ、すまん」
「大丈夫だから。マジでなんとも思ってないから」
「いけません。マスターの為にも、ここで説明しておきましょう」
知ってるなら、もっと前に教えてくれよ!
「シャン・ギ=オウ家と他7家からなる商業団体は、帝都に会議施設と製造工場を有しており、販売や大会を管理するエクスィの運営です。流通はシャン・レン=ワン家が行っており、親戚関係でもあります」
「そうなんだ。ダリアちゃんと同じ大商人の家系なんだね~」
「まっ、そんな感じだ。運営のコネがあるとか思われたくないからな。あまり言いふらすなよ? ちゃんと自分でカードを集めて腕を磨いているんだから。それよりも始めようぜ!」
そうか、運営の息子なのか。ならこの部屋の設備も納得だな。
恥ずかしいのか、ユウがデッキやら道具やらを準備してるが、なんか慌ててジョノが静止した。
「ユウ待てよ。コレ。まずは、これを見せるんだろ?」
「そうだった」
ユウとジョノが真剣な顔して1枚のカードをテーブルに置いた。ガラスケースで保護されていて、とても大事そうなカードだ。
ローダーって言ったかな? この世界にはプラスチック製品は無いからガラス製なんだろう。
「タツキ氏、ノアさん。このカードを見てもらえないか?」
なんだ? すっごいレアカードを見せびらかしたいのか? さすが重度のカードゲーマーだ。
「な、なんだコレは!」
そのカードは俺の予想を、はるかに超える衝撃的な1枚だった。
イラスト部分には透き通るような水色ツインテールの可愛らしい女の子が描かれていて、服装は未来ちっくなタイトなスーツのようだが、どうみても見た事ある人物だ。
カードの二つ名が書かれている部分には小さく〝KATANA-HIPP〟と記載があり、キャラクターの名前を記載している部分には〝000-Dノア〟と書かれている。
そして、種族が記載されている部分にはエクスィで魔機と呼ばれる、主に魔力で動く機械が当てはまる、歯車と丸と縦長い半楕円を組み合わせたマークが記されていた。
これ、ノアじゃん!
「なんか、すご~く、ノアちゃんに似てるね。〝ノア〟って書いてあるし」
「そうですね。私とそっくりですね」
自分で言っちゃうの? 大丈夫? 否定とかしないの?
「このカードは世界に6枚しかない。大魔女サヤ様が持っていたとされるカードで300年以上前の物なんだけど、さすがにノアさんじゃないよね?」
もう確実にノアじゃないか! どうするの?
「もちろん私なわけ無いじゃないですか。ユウ様、私を何歳だと思っていらっしゃるんですか? ちょっと失礼ですよ」
「そ、そうだよね。分かってますよ。これは失礼しました。俺の持ってる最高レアのカードと同じ容姿で同じ名前の人物が、身近にいたので驚いてしまってさ。変な事聞いて、すみませんね」
おぉおう。普通に否定して、普通に解決したな。まぁ、ノアが300年前から存在してるって思わないよな。
「ですが、まったく関係ないわけでは、ありませんよ」
「「「えっ?」」」
「私の〝ノア〟という名前は、そのカードの絵と私が似ていたため旦那様がつけてくれた名前です。旦那様はエクスィが好きな方でしたので、よく相手をしておりました。私の中にある知識や駆け引きの力は、亡き旦那様が授けてくれた物です。マスターが記憶が曖昧な中でも、エクスィに興味を惹かれたのは、隔離された屋敷の中で、父と遊んだ思い出が、僅かながら残っていたからでしょう……」
な! なんだその設定は! いい話かもしれんが、必要なのかそれ?
「そ……。グスっ。そんな事が、タツキ氏にあったのか。グスっ」
泣くな! ジョノ騙されてるぞ!
「カードの名前がノアちゃんの名前になってるんだね! でも逆は絶対にありえないでしょ? ユウもバカだなぁ~」
「このカードに関しては無いけど、ありえるんだよ。エクスィは元々は戦略訓練道具で、これをやれば戦闘が上手くなるらしく400年前とかは兵士とかが真剣に利用してたんだよ」
「そうなのか。それは知らなかったな。ノアは知ってたか」
「もちろんです」
「だから昔は実在した人物をカード化して、戦闘シミレーションをしていたんだ。その名残で今でも有名な冒険者や実力者はカード化されている」
「それは知ってるけど、知ってる人のカードは見た事ないな」
「いえマスター。たしかセンギョク様のカードもあったと思います」
「何それ! めっちゃ欲しい! オイラすっごく興味が出てきたよ!」
さすが元A級冒険者。
にしても良かったぜ。シェンユがちょっとでも興味がある要素があって。
「ぐぬぬぬぬぬ」
急にユウが頭を抱えて呻きだした。
どうしたんだ? 急にTCG仲間が増えて嬉しさいっぱいになったか?
「ダメだ! タツキ氏、すまない!」
「えっ! 何っ! 急にどうした?」
「分かってる。ノアさんとタツキ氏の絆は分かっている。だから、分かってるから先に謝っておく。すまない! でも言わせてくれ」
「何でしょう? まさかマスターに好意を……、愛の告白ですか?」
今度は、姿勢を正して深々と頭を下げてきた。
「ノアさんを俺に下さい!」
なにー!? 娘はやらんぞー!




