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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第57話  レッドの為です

「それは、どういう事ですか?」


 出来る限り嘘はつかない。だがしかし、真実も出来るだけ話したくない。ならば話せる事は無い! それしかない!


「レッドの為です」


 自分で自分の事をレッドとか言うなんて、恥ずかしいが、ちょっと嬉しいぜ。そしてこれは、本当の事だ。俺は、俺の為に多くは喋りたくない。


「彼は正体を隠したがっていました」


 これも、本当だ。


「えっ? そうなの? 私は聞いて無いわ。」

「ストレートには言われてないけど、そのような言葉をしていたし、顔が見えない恰好をしていましたし、本名とは考えにくい名前を名乗ってましたから」


 これは半分嘘だ。俺とレッドは会話してないからな。というか出来ない。


「彼にやましい心はありません! 人助けをするを生きがいとする変わった人です。ただ、それだけと思います。以上です」


 これも本当だ。これ以上は、何も言いたくないんだが、さて、どうなる?


「ふむ。ローゼスは、どうみる?」

「今日のタツキさんは、常に心が乱れているわね。そしてさっきの言葉は安定していたけど、一瞬だけ乱れ部分があった。真実が半分、嘘が半分って感じでしょうか。最終的な判断はクーに任せます」

「そうか……」


 俺の心の状況を言うのは、わざとなのか? 心理戦なのかしらんが、そういうは無駄だぜ! なんたって、そんなの無くとも俺は動揺しまくってるからな。


「では、タツキさん最後に1つだけ答えてください。『はい』か『いいえ』でお願いします」


 やはり、2択を迫られるか。


「ドラグマン・レッドが何者か知っていますか?」


 なんてこった! これは、どっちを答えても『はい』になってしまうじゃないか! 俺をレッドだと疑っているのか? だとした鋭すぎる。

 どうする? なんて、答える?


「どうしましたか?」


 ギルドマスターを見る事が出来ないので視線を変えたら、ローゼスさんと目が合ってしまった。その目は俺の心を監視しているのだろう。


「いいえ」


 答えた瞬間、ローゼスさんが笑顔になった。本来ならば、あの美人の微笑みに癒される人は多いだろうが、俺には悪魔の微笑みにしか見えない。

 ギルド側には、俺とレッドに繋がりがある事を匂わせてしまうが、しかたない。ダリアさんにまで知られたくは無いからな。


「お疲れ様です。退室なさって結構ですよ。ありがとうございました」

「そ、それでは、失礼します」


 疲れた。

 どのぐらい、あの部屋にいたのだろうか? かなり長い時間いたように感じる。額から流れる汗は数分前に出てきた物か? ギルドに着く前からあったのを気づかなかっただけなのか?

 今、ローゼスさんとギルドマスターは話し合っているだろう。俺の処遇はどうなる? 1度、疑われているからな。


 そんな事考えていたら、階段を1段踏み外してしまい、転び落ちそうになった。


「大丈夫?」

「あぁ。大丈夫。ちょっと緊張しただけなので」

「タツキって、結構度胸があるのね。あのクーとローゼスを相手に隠し事をするなんて、私にはできなかったわ」

「い、いやぁ。でも、どうだろう? あまり良い事だと思わないな」

「いいえ。私も気を付けるわ。彼の事、その凄さを皆に知って欲しいけど。あまり言いふらさないのが彼の望みなのかもね」


 俺ってのがバレなければ、認知度が高まってもかまわないけど、どうしたもんかなぁ~。一旦、ノアに相談したほうがいいかもしれない。


「ダリア様。マスター。お疲れ様です。マスターは、凄い汗ですね。なにか失礼をして、腕立て100回でもさせられましたか?」

「ちょっとノアさん? タツキは頑張っていたわよ。貴女って本当に変わった侍女ですね。多くの使用人を見てきたけど、貴方みたいな人は初めてみるわ」

「それは、失礼しました。マスターは頑張っていたのですね」

「いいだ。その、ノアのそれは、優しさだから。俺の為にやってくれる事だから」


 そうだ。ノアはいつだって俺の味方でいてくれる。とりあえず今の話をして、今後の事を考えよう。どんな事態になってもノアはついてきてくれる。なら大丈夫だ。なんとかなる。


「さて、帰るか。もう昼前になってるな。朝飯も食べ忘れたし、お腹空いたよ」

「えっ? タツキ帰るの?」

「あ~。そ、そうですね。ノアと話したい事もありますので」

「そんな。ちょっとショックだわ!」


 なっ。なんだ? なにか怒らせたか? 失礼な事言ったっけ?


「ギルドの話が終わったら、この間のお礼をしたいから食事を御馳走するって約束したじゃないの! それも忘れてたの?」

「なんと! やっぱりデートの約束してるじゃないですか! 借金を返す為に毎日働いている私と一緒にいてくれるって。学校がお休みの日は私にかまってくれると言ったのは嘘だったのですか?」

「ノアは、ちょっと黙ろうか」


 その約束は、まったく思い出せん。同じ日に約束したのか? ギルドの事で頭がいっぱいになっていた。そのギルドの事も忘れていたんだが……


「すみません! 忘れていました! 本日は、どこの店でも奢りますので、許してください。お願いします」

「潔いですね。ですが財布を管理してる私に相談してから言って欲しいですね」


 受付カウンターの前だろうが、ルーファン氏がちょろっと見ていようが関係ねぇ。深々と頭をさげて謝るしかない。


「何言ってるのよ。もう~、助けてもらったお礼に私が御馳走するのよ。貴方達に! もういいから頭を上げて、恥ずかしいわ」

「なるほど。では私がまたダリア様を運びますね。どちらにいかれますか?」

「絶対に嫌よ! 朝に2度とやらないでと言ったはずよ! 行先はもちろん貴族区画にあるシャン・レン=ワン家の館よ。お父様も待っているから早く兎車に乗ってもらえるかしら?」


 なんだと! 女性宅にご飯を食べに行くだと?! しかもお父様が待っておられるとはっ! これは、なんだ? なんのイベント発生だ?


「マスター? 大丈夫ですか? 深く考えてはダメですよー」


 今朝、ダリアさんを我儘亭まで送って来たという兎車は、何も伝えずに急いで出てきたというのにギルド前に停まっていた。御者の人は気が利くしっかりとした使用人なんだろう。うちのノアも負けてはいないがな。


 兎車に乗り込み、貴族区画を目指す。

 道中は話を投げかけられたら、それなりに返答したが、ほとんどの会話をノアに任せて俺は窓からユウツオの街並みを眺める事に努めた。だって良い所のお嬢様と何を会話していいか、さっぱり分からん。


 外を見ているとシャン・レン=ワン家の兎車は、街で走っている他の兎車と違って立派な物だという事に今更ながら気づいた。そういえばユウの兎車は少し貧相だったかもしれん。

 キャビンは装飾とか色が違うぐらいで、大きさとか乗り心地とかは、それほど変わらないが、引いている兎の大きさや毛並みが明らかに違う。


 そういや、懐かしいな。2ヵ月前にこの道でシェンユと競争したっけ? 今日は午後から我儘亭の手伝いしてるんだろうな~。平日は毎日一緒だが、休みの日はほとんど働いている。

シェンユが雷の日に休んでいるのって見た事ないなぁ。


 しばらくして、シャン・レン=ワン家の館に着いた。

 左右に3階建ての建物と、中央に大きさは2倍の2階建ての建物が繋がっているコの字型の豪邸が立っており、ぱっと見た感じ我儘亭が8つぐらい入りそうな敷地面積をしている。

 中央にある兎車降り場から、右側の3階建ての建物にある玄関まで少し歩いて行く。周りを見回しながら歩いていると、道向かいの少し小さい豪邸の2階の窓から誰かが手を振っているのが見えた。


「あれは…… ユウとジョノか?」

「アイツ等。今日は関わってくるなっ! って言っておいたのに」


 ユウの性ってなんだっけな? ダリアさんと親戚だから家もお隣さんなのか。


 中に入ると2人の女性使用人が、かしこまって深々とお辞儀をしてくれた。どちらも、中華っぽいデザインだが白と黒を基調とした服装で、エプロンをつけいている。まさにメイドって感じだ。


「おかえりなさいませ。ダリア様」

「ただいま。こちらの2人が以前に話した客人よ。男性が学校のクラスメイトのタツキで、女性はその侍女のノア。ノアは侍女だけど、ちょっと特別なので、客人として扱ってちょうだい」

「かしこまりました」

「お父様は、まだ、外出中かしら?」

「いえ。アナガリス様は少し前に戻られて、食堂にてお待ちしております」

「いい時間に帰ってこれたわ。2人は食事の用意をしてきてかまわないわ。食堂には私が案内するから」

「かりこまりました。それでは、失礼します」


 おぉ~。凄いなぁ。うちにもメイドを雇ってみたいぜ。


「マスター。今、良からぬ事を思いましたね」

「いえ。そんな事ないです」

「こっちよ。ついてきて」


 廊下を進みながら思ったのは、凄い豪邸感のある外観とは違って、中は意外と普通の家屋のような造りをしてる。

 いくつかの部屋通り過ぎて、食堂に着いたようだ。部屋と廊下には扉はなく、飾りがついた暖簾で区切られている。

 食堂には6人分の椅子と円卓があり、廊下に一番近い席に男性が座って新聞のような物を読んでいる。


「んっ? ダリア。帰ってきたかね?」

「お父様。お待てせしました。タツキをつれてきたわ」


 椅子から立って振り向いた男性は、短髪の黒髪と日焼けした浅黒い肌に青い瞳が印象的で、綺麗に整えた鼻下の髭と顎鬚がダンディ感を溢れさせている。イケオジという表現が似合う人物だ。


「やぁ! はじめまして。私がダリアの父のアナガリス=シャン・レン=ワンだ。会いたかったよタツキ君」


 挨拶と共に笑顔で握手を求めてきた。この人、絶対コミュ力が高い人だ。

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