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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第55話 それは、おにぎりですか?

 ユウツオ冒険者育成学校は3階建ての4つの建物で構成されていて、正門から順に屋内訓練校舎、二年生校舎、中央校舎、一年生校舎で並んで建っていて、それぞれの建物は隣り合う建物と2階部分を渡り廊下で繋いでいる。


 一年生校舎と二年生校舎の間にある中央校舎は他よりも大きく、一階に誰でも利用できる学生食堂がある。2階は貴族専用の食堂となっていて15人用の大部屋が4つと6人用小部屋が12ほどある。

 ここには使用人を入れる事ができて、2階を利用する人のほとんどが、自分の館から時間に合わせて食事を持ってこさせているとのこと。

 小部屋を利用できるのは地位の高い貴族だけらしいのだが、もちろんヒトラ様は卒業までの2年間を専用契約していて、二年校舎側の角部屋、6号小部屋はワナン国専用となっていた。


「タツキここだよ」

「そうか。緊張するなぁ。ちょっと聞きたいんだけど」

「ん、何?」

「もしかしてだけど、シェンユも小部屋を使えたりするの?」

「あー。我儘を言えば使えるかな~」

「我儘?」

「うん。オイラの貴族としての位って、そんなに高くないんだよ。けどユウツオでだけ特別扱いなんだ。だから領主様にお願いしたら、どうにかしてくれるかもしれないね。もちろん、そんな事しないけどね」


 ふーん。

 あの領主様は、シェンユの親に相当な恩があるんだなぁ。


「よし。行くぞ」


 ノックした手は、めっちゃ震えていた。

 日本は身近に貴族なんて存在してないから、これは隣の国の王族に会うとかいうレベルの自体だろ? そりゃガクガク、ブルブルになっちまうよ。


「サトウです」

「入れ」


 中に入ると、ビックリする事に和室になっていた。

 俺が慣れ親しんだ和室よりも装飾が多くて、ちょっと違う気もするが、一段上がった先に畳が敷かれていて、中央に座卓があり、壁には掛け軸と花、窓には障子があった。


「すごい改造されている。オイラが知ってる小部屋はこんなんじゃなかったなぁ」


 座布団を敷いて正座で座っている3人は、もちろん靴を脱いでいる。中央にいるのはヒトラ様で、右側にいる若い女性は名前は知らないがクラスメイトだ。左側にいる高齢そうな女性は、おそらく使用人だろう。


「早かったな。メシはどうした?」

「その、ヒトラ様が、自分なんぞに声をかける事なので重要な要件かと思って、急いで参りました」

「うむ。して。シェンユ殿は(わらわ)に何か用か?」


 やっぱり1人で来るべきだったかも……。


「オイラは付き添いさ。タツキの監視役でもあるからね。無茶しないように常に見張っておかないといけないから」


 そういえば、そんな役もあったな。


「ヒトラ様。まだ食事が済んでおりません。しばらく待たせましょう」

「良いのだヒョウカ。聞いておっただろ?(わらわ)が呼びつけたのだ。要件は難しい話では無い。早々に事を伝えればよい」


 クラスメイトの人はヒョウカさんって名前か、今後の為に覚えておこう。この感じだと、おそらく侍女的な人なのかな? そうだよな。さすがに1人で留学させたりしないよな。


「では、シェンユ殿にも聞いてもらおうか。そちらが初めに言い出した事であるからな」


 何っ! シェンユが言い出しただと! こいつも俺の知らない所でやらかしているのか!


「やっぱりそうかぁ~。だと思って一緒にきたんだよねぇ」

「シェンユっ。お前。最初から責任があるって分かってたのか」

「たぶんオイラかなぁ? って思っただけだよ。ヒトラ殿、話の内容はノアちゃんの事でしょ?」


 なっ! やっぱりノアなのかー!


「そうだ」

「すみませんでしたぁあー!」


 ノアが何をしでかしたのか知らんが、これはもう、謝るしかない。


「うちのノアは、ちょっと常識外れの事をするというか、人がやらない事をやってしまうといいますか、ちょっと人よりも出来る事が多いので、変な行動をしていますのです」


 この和室の雰囲気にあてられたのか、俺は無意識に膝を曲げて両手を床について頭を下げていた。

 そう、土下座である。


「ですが悪気があったワケではなくて、全ては私を想っての行動であり悪意などは全く無くて、えっと、ですのでぇー。とにかくお詫び申し上げます!」

「ちょっと待て! 何がどうなっておる?」

「タツキ、急にどうしたの?」


 顔をあげてみると、全員が疑問符を浮かべている様子だった。俺も含めて。


「ノアが何かやらかして、呼びつけたのでは?」


 今度は全員で顔を合わせている。


「これは、話が長引くかもしれないな。ヒョウカは先に食べていろ」

「ですが」

(わらわ)がよいと言っているのだ。婆や、ヒョウカの物を準備してくれ」

「分かりました」

「さて」


 ヒトラ様は立ち上がって座卓を迂回すると、俺の前にきて正座をした。


「その姿勢は、ワナン国に古くから伝わる最敬礼の謝罪の姿勢ぞ? それを知っていて、やっているのか?」

「あ。はい」

「知っとったのか。ならば、勘違いによるものだが受け取っておこう。男の覚悟であるからな。こちらも何もせん訳にはいかん。これよりしばし、おぬしが非礼を行ったとしても(わらわ)はそれを許そう。過度のものでなければな」

「はぁ」

「どうした? こやつ急に呆けおって。まぁ、良いわ。お主を呼びつけたのは、ノア殿に合わせて欲しいと思ったからだ。シェンユ殿がお主に聞けば良いと言ってあったのでな。直接本人を尋ねようかとも思うたが、お主の侍女である事を思い出してな、やはり先にお主に話をするのが礼儀だとして、声をかけたのじゃ」

「やっぱりあの時の言葉を覚えてたんだね~。失言してしまったなぁ」

「む? 聞いておるか?」


 あれは、まさか……。


「タツキー? もしかして寝ちゃった?」


 あの白い小さな粒を、握り固めたような食べ物は……。


「お主……。さっそく無視するとは失礼な奴だの。それが返答か?」

「貴様! ヒトラ様が話しておられるのだぞ! しっかりと聞かんかっ!」

「それは、おにぎりですか?」

「「「はぁ?」」」


 間違いない。ヒョウカさんが手にしている物は、良く知ったコンビニのおにぎりの2倍サイズで海苔はついていないが、おにぎりにしか見えない。


「貴様ぁ~。たわけた事をっ」

「それを1つ譲って頂けないでしょうか! お願い致します」


 俺は額を床にめり込ませて渾身の土下座をした。さっきのノアの為の謝罪よりも深く頭を下げたと思う。


「何っ? いや、良いぞ! ならば、(わらわ)とヒョウカをノア殿と合わせてもらおうか!」

「承知いたしました!」

「えぇー! ちょっとタツキ? それでいいの?」

「そちらの都合もあるであろう。期限は1月以内とする!」

「はっ! 仰せのままに」

「場所は(わらわ)の屋敷じゃ。時間は昼前としよう」

「ははー」

「では、よろしく頼むぞ! 婆や。こやつに“らいすぼる”を2つ握ってやれ」


 えっ? おにぎりじゃないのか?


「ヒトラ様、この男は信用できるのですか? シェンユ殿にお願いしたほうがよろしいのでは?」

「少し前は(わらわ)もそう思っていたが、ダリア殿から話を聞いて考えを改めた。死の危険から学友を咄嗟の判断で助けるなど。男しいではないか」


 俺の心配とは裏腹に、渡された“らいすぼる”はおにぎりだった。その名前はライスボールからきてるのか? どうしてそうなった?


「それでは、失礼しました。シェンユ、早く教室に戻ろうぜ」

(わらわ)は、ここで一緒に食うてもかまわんぞ?」

「あ、いえ、それは、遠慮いたします」

「そうか。では約束の日を楽しみにしているぞ」


 部屋を出てすぐに木の皮のような物に包まれた中身を確認する。間違いなくおにぎりだ。


 感動だ! まさか米に出会えるとは。

 この世界に来て、もう2ヶ月以上経つのか。最後に食べた米は神と会ったあの日の朝にコンビニで朝食に買った、鮭おにぎりだったかな。


「ねぇタツキ。あんな約束して大丈夫なの?」

「ん? なんだっけ? それよりも教室に戻ろう。早くおにぎりが食べたい」

「ダメだこりゃ。ノアちゃんにはオイラが説明しなきゃいけないかな。タツキをこんなんにするなんて……。その食べ物ってそんなに美味しいの?」

「美味いっ! 絶対に美味い」

「ふーん。まっいいけど。それよりも食堂に付き合ってよ! オイラは食べる物が無いよ」

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