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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第52話 見殺しにして欲しかったです

 電源を入れたかのように目がさめた。

 寝返りをするワケでもなく、目をこする事もなく、あくびをして身体を伸ばしもしないで、突然に覚醒した。


 古い感じがするが丈夫そうで、濃いめの梁と少し薄い板で出来た見慣れた天井がある。もちろん知ってる天井だ。なのであの有名なセリフは言わない。


 どうやらユウツオの自室のベッドで目覚めたみたいだが、寝た記憶がない。昨晩はどうやって眠りについたっけ?


 とりあえず、両手を天井に突き出して、身体全体を大きく伸ばす。

 なんか変な感じがする。いつもより身体が重いというか、硬いというか、特に両腕なんてしばらく動かしていなかったような感じだ。


「おはようございます。マスター」


 ベッドから少し離れた所にある頑丈そうな椅子に、読書ポーズでノアが座っている。


 スリープモードになっていたな?


 睡眠を必要としないノアは、俺が寝てる間などは、あのポーズで椅子に座って省エネモードになっている。

 以前に俺の寝てる隣で直立不動で待機してる姿を、何故か夜中に押しかけて来たシェンユに見られてから、念の為にあの読書スタイルをする事になった。普段は読書に見えるし、夜中などは読書中の寝落ちに見えなくもない。


 一度読んだ本は暗記していまうアンドロイド技能も毎日読書を頑張っているからという事になっている。

 そして、相対的にタツキはもっと頑張れよ。って評価になってもいる。


「すみませんがマスター。あと5分ぐらい、そのまま寝ててくれませんか? 寝ているフリでかまわないので」

「ん。分かった」


 目は覚めたが頭は回っていないので、理由を考える事無く、とりあえず言う通りにする。


 しばらくすると突然、ドアノブを無理矢理まわす音と同時に、扉をこじ開けようとする音がして、ちょっと驚いた。


「今、開けますよ。もう、毎朝毎朝扉を壊そうとしないで下さい」

「ごめーん」


 扉越しに声は聞きなれた奴の声だ。というかコイツ毎朝こんな事してるのかよ。

「おっはよー!」

「おはようございますシェンユさん。マスターは、まだ起きてないのでお静かにお願いしますね。それで要件は?」

「タツキってば、まだ寝てるのかー。要件はもちろん顔を見に来たんだよ。あとオイラの顔を見せにね! 起きてたら、まず親友のオイラの顔を見せて安心させなきゃね!」


 なんでやねん! お前の顔見て安心できるか!


「それは、ご心配なく。常に私が傍にいますので大丈夫です」

「そっかぁ。じゃっ。学校に行ってくるね~」


 騒がしい奴だな。いつのまにか友達から親友に格上げされているし! まぁ、この世界でノアを除いて一緒にいる時間が長いのはシェンユで間違いないけど。


「もう行ったか?」

「そうですね。1階の扉の音が聞こえたので間違いないかと」

「まったく、俺の部屋に入れるのは当然みたいな顔しやがって」

「顔見てないでしょう?」

「見えなくても分かるわいっ」

「おっと」

「どうした?」

「予想外のお客様がきましたね。声がします。ちょっと面倒なのでもうしばらく寝たフリをしててもらえますか?」

「シェンユ以外にも面倒奴っていたか?」

「今は面倒だという事です」

「まぁ。分かった」


 一階の店のガヤガヤした音は聞こえるんだが、扉の音とかを判別できるとは、さすがノアだぜ。

 そういや、ノアとシェンユの会話からすると俺は昨日も寝てたみたいだけど、朝にシェンユ突撃イベントなんてあったか? 覚えてないなぁ~。


「おはようございます。開けてもよろしいでしょうか?」


 アレ? ちゃんとノックしたし、めっちゃ丁寧な人だぞ? なんで面倒なんだ?


「どうぞ、お入りください」

「失礼します」

「どうかしましたか? 気になさらずにと昨日の朝にも、一昨日の夜にも言ったはずですが?」

「そうですね。すみせん。でも、私を庇ってこんな事になったので、申し訳ない気持ちがあって、つい足を運んでしまって……」


 誰だ?! 女性の声だぞ? この俺を気にして、わざわざ部屋まで来るなんて、そんな人知らないぞ?


 慎重に少しだけ目を開いて、うす目で相手の顔を確認してみると……。


 ダリアさんじゃないか!


 思いだしたぞ! そうだ俺は昨日ドラグマンレッドとして彼女と商業団を助けてユウツオに単独帰還最中に死んだんだっけ?

 いや、違ったな。ノアが助けにきてくれたんだ。そして事情説明をしながら寝てしまったんだっけ? なら、ノアが俺を抱えてユウツオまで戻ってきてベッドに寝かせてくれたのか。


「極度の緊張と疲労で眠っているだけですので、必ず目覚めますから、気になさらないで下さい。この過酷な世界では、こんな事はよくある事でしょう?」

「獣や魔獣によって、人が死ぬ事は毎日ある事ですが、知人が、しかも私に責任があってこうなってしまったのは……」

「マスターは簡単には死なないので大丈夫です! それよりも学校に遅れますよ?」

「ありがとうございます。タツキさんが目覚めた際には、教えていただけますか? 本人に直接お詫びと感謝を伝えたいので」

「分かりました」

「それでは、失礼します。」


 そっか。レッドマン登場の前に、俺が落下の衝撃から助けた事になっているのか。あの高さから落ちたのだから、普通なら死んでると思うよな。実際に右腕と下半身が爆散していたし、むしろよくダリアさんだけでも無傷にしたもんだ。


「では改めまして、おはようございますマスター」


 そんで、近くの砂漠でたまたま修行していたレッドマンに俺も救出されて、砂漠の外に放り出された事にしたっけ?


「マスター?」


 そこからは、考えてなかったな~。まぁ、砂漠を彷徨いながら北上して運良く商業団ルートに到着した後、捜索にきたノアに助けられたって感じか?

 よし、そうしておこう!


「おわっ! な、何してるんだよ!」


 目を開けた俺の前にあったのは、3センチほどしか離れていないノアの清ました顔だった。近すぎるぞ!


「マスターが起きないので、もしかして目覚めのキスをご要望しているのかと思っていました」

「要望してねーよ! いや待て、要望したらしてくれるのか?」

「いえ、あと1回呼んでも起きなければ頭突きしてあげようかと」

「やめろっ! お前って硬いロボじゃねーか! 頭突きされたら死ぬわ!」

「そうでしたね。頭部へのダメージは危険でしたね」


 分かってて言ってるのかよ。まったくコイツわぁ~!


「それで、俺はどこまでノアに説明している?」

「大丈夫です。ちゃんと全部説明されてから寝落ちしましたよ」

「そうか」

「ですが、改めてお聞きしたい事があります。あの時はかなり疲労されてましたし、私には危険な状況に見えましたので」

「そうだな。今回のは結構ヤバイ状況だった。本当に死ぬかと思った」

「それについてです。死ぬ事が怖くはなかったのですか?」


 うーん。どうだったかな?


 ノアの引っ張られながら上体を起こして腕組をする。やはり違和感があるな。身体全体が重くて怠い。


 あの時はランナーズハイみたいになっていたな。特に砂獣を対処してる時は、痛みとかも感じなかったし、身体能力も異常だった。おそらく神からもらった能力と魔力のおかげだろう。

 死を考えたのは帰還中だったな。魔力切れ? よく分からんが、息苦しかったし、身体が重かった。両腕の骨折も治らなかったしな。


「ノアと会う少し前が一番危なかったな。死を覚悟したからな」

「なぜ、あんな行動を? 死ぬ可能性は最初から分かっていなかったのですか?」「分かってなかったかもしれない……」

「それは異常です! 生物は死に対して怖れるプログラムがされています。それによって死を回避する行動をするのが普通です」


 なんだそれ? 機械的な考え方だな。


「それだけではないさ。人は他人の為に命をかける事が出来る。動物だって親は子の為に命をかけて戦う事だってあるだろう? 誰もが皆ヒーローになれる素質を持っているんだ。だから俺は動いてしまったんだよ。考えるよりも先に身体が動いて、あの子を助けなきゃって心が思ったんだ。目の前でクラスメイトが死にかけているのに、ほっとくなんて出来ないだろ?」

「見殺しにして欲しかったです」

「なんだと!」


 こいつは、やっぱり機械か。人の心は持っていないのか。


「マスター、今後こういった行為はやめていただけませんか?」

「断る!」

「やめてください!」


 次の言葉が出てこない。

 ショックだ。無意識にノアは理解してくれると思っていた。かつて俺を否定したアイツ等と同じじゃないか。


 俺だって分かっている。誰かを助けて、助けた本人が死んでしまっては本末転倒だって事ぐらい。でも、それでも、やらなきゃいけない時だってあるはずだ。

 何よりも、俺が憧れたヒーローは、そういう人だったから。


「私は、マスターに死んで欲しくありません。GMかからは可能な限り好きにさせるように指示を受けています。そして、そのサポートを最大限するようにとプログラムをされています。ですが! 軽率に死ぬような行動を取らないで下さい! 私だってマスターが死ぬサポートなんて、やりたくありません!」

「ノア……」


 今のは、ちょっと心に刺さったかな。死ぬ為のサポートか……。そのなの誰だってやりたくないよな。

 それにしても、こいつは、本当に機械なのか? 魂の無い人形なのか?


「分かったよ。今後は、もう少し考えて行動するよ」

「ありがとうございます」

「でもなノア。俺は本当にヒーローをやりたいんだ」


 俺は今回の事で、確信を得てしまった。20年以上得られなかった俺の望む姿への道筋を。幻想なんかじゃない大きな可能性を。


「了解しました。そのサポートは全力で致します。マスターが死なない方向で」

「あぁ。よろしく頼む」

「その様子だと、何か変化があったのですね? 何かを得ましたか?」

「はは。よく分かったな」

「私に時間を下さい。この万能最強美人アンドロイドのノアですが、何でも出来るわけではありません。なので時間を下さい」


 凄い自信たっぷりな自分説明だな。まぁ、否定できないけど。


「分かったよ。任せるよ」

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