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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第51話 ノアに…… 会いたい

「はぁっ。はぁっ。はぁっ」


 どのぐらい走っただろうか? 3時間か? 4時間か? こんなに長い間走り続けたのは初めてかもしれない。


 もう、空もだいぶ明るくなっていて、右側に広がる広大な砂漠からの照り返しが眩しい。左側は平原とその奥にある森から生き物達が活動し始めているのか、鳴き声のような音が聞こえてくる。そして、そのさらに向こう側には魔龍が住むという山脈が静かにたたずんでいる。


 なかなかの絶景だが、それを楽しんでいる余裕は無い。


 この砂漠と平原の境界は、安全なルートとされているが、獣がまったく出ないわけでは無い。普通は1人で走って通ったりはしないだろう。獣達からしてもいい獲物にしか見えないはずだ。


 それから、絶対ダリア達に追いつかれる前にユウツオへ帰らなければ!

 まさか、学友に下半身を触れられるとは思っていなかった。というか、起きたらズボンもパンツも爆散して消滅してて、隣にクラスメイトの女の子がいるなんて地獄すぎる!

 その場に持ってた物を使って最低限隠すべき所はカバーしたけど、ダリアからしたらクラスの人が突然、目を疑う恰好をしていたら動揺しただろうな。あやうく変態認定されてしまうところだった。


 なんとか別人になりすまして、そうゆう恰好の人だと思わせたし。なんか場の流れでヒーロー活動してるドラグマン・レッドになってしまったし。“タツキ”が、この辺にいると絶対にマズイ。


 なにより1番の問題は、魔力が切れてきている。


 サンダイルを倒してから感じなかった疲れや痛みを少しづつ感じるようになってたのは、戦闘中の興奮状態が収まったからだと思っていた。

 だが違うみたいだ。


 商業団の人達と話してる時には違和感を感じる程度だったが、走り出してから確信に変わった。あきらかに、動きが鈍ってきている。


 身体が重い。息が荒い。視界がぼやけている。かすり傷なんかは無くなっているんだが、両腕の骨折が治らない。

 これは、おかしい。いや、そもそも短時間で骨折が治るほうがおかしいんだけど、俺が神から授かった能力によると治るハズだ。完治とまでいかなくても徐々に修復されて痛みも無くなっていくハズ。


 毎日早朝でのノアとの痛くて苦しい訓練で、自分の能力の把握実験をしてたから分かる。骨折ならば1時間ぐらいで完治するのは実証済だ。


 なら、何故、修復されないのか?


 いつもなら、身体が損傷した時に自動的に魔力が流れ込んできて少しづつ修復が始まるし、何らかの要因で大量に魔力が流れてきたら、瞬時に完治して、身体能力まで高めてくれる。

 そして、その魔力ってのは神から流れてくるらしく無限といって言いほどの膨大な量があるらしい。そうノアが言っていた。


 だがしかし骨折は治らない。つまりは魔力が減少してきているとしか思えない。


「もしかして、死ぬのかな?」


 たしか「死ににくい能力です」って最初の日に言っていたが、死ぬ可能性はあるって事だ。


 ノアは俺の能力についての詳細な情報を持っていなかった。魔力の流れや、仕組みについての情報も概要程度しか持ってないし。もちろん魔法も使えない。この世界特有とも言える魔闘気にいたっては、さっぱりだ。

 となると、実は再生するって話に限度があるんじゃないのか? 魔力の無限供給ってのも限界があるんじゃないのか?


 今、まさに魔力の流れを感じられず、腕の骨折が治らない状況からみて、間違いなく上限がある。


 そして、その事を知らずに考えもせずに、神の力を過信してしまった俺は、おそらく死ぬ……。


 「頭部をふきとばされれば死にます」って事も初日に言っていたから、ここで倒れて意識を失えば、野生生物に襲われて頭部がランチのメインデッシュにされて死ぬと予想するのは容易い。


「はぁあ。はぁあ゛。はぁあ゛」


 息をいくら吸っても苦しい。意識もおかしくなっていて、走ってる感覚は無く身体が自動で動いている。なんか電池の切れかかった人形のようで、電力が無くなった瞬間にパタリと動かなくなってしまうのだろう。


 けど、なんでだろうな? 恐怖や焦りを感じない。死ぬって分かっていたら、もっと泣いたり騒いだりするもんだと思っていたんだけどな。

 そもそも、そんな事が出来る体力が無い状態ってのがある。

 けど、きっと違うな。満足してしまったからだろうな。ちゃんとしたヒーローをする事が出来た。


 自身の命をかえりみずに、大切な人を助け、大勢の人々を助けて、報酬などは貰わずに、その命が助かった事に満足して去って行く。俺が憧れたヒーロー。あの人のようなヒーロー。


 その理想を、まさか、こんなにも早く体現する事になるとは思わなかった。


 神に変な勧誘をされて、あの時はどうかしてたし、ノリで引き受けてしまったのも半分あるが、この世界にきて、身近に存在する脅威を知って、与えられた不思議な力を感じて、もしかしたら本物のヒーローになれるかもしれない! と思った。

 前の世界ではなれなかった俺の憧れ。時間と労力をかけたが、現実は非情で、そんなものは空想だとされた理想の姿。


 20年以上追い求めていた事を達成できて満足してしまったのかもしれない。


 心残りはある。やり残した事もやりたい事もたくさんある。だがしかし、お前は今ここで死ぬしか道は無い。と言われてしまったら、もうしょうがないかな。やる事はやったし最後に望みも叶ったし……。

 って考えているのが現状だ。


 それでも1つだけ、どうしても1つだけ、叶うのなら。


「ノアに…… 会いたい」


 足が動かなくなってしまった。もう1歩も進む事が出来ない。

 どれだけ進んだのか? 遠くにユウツオの大防壁と円柱地形が小さく見える気がするが、幻だろうか?


 何故か倒れないが、限界は超えてしまっている。このまま立った状態で終わるのも悪くはない。ヒーローらしいじゃないか。


 悪いなノア。俺はここまでかもしれん。

 俺が設定した通りの性格だし、見た目の可愛くて、戦闘力も高くて、何でもできて、ホント劣等感を感じてしまうほどだが。

 お前がいてくれて本当に良かった。たとえノアが何にもできない残念ロボットだったとしても、俺は感謝したさ。 海外ですら無い。まったく別の世界で1人ってのは、キツイだろうからな。


 お前の役割は俺が神からのクエストをクリアする為のサポートな訳で、つまりは俺にクエストをさせる事がお前の目的って事だろうが、それは達成できそうに無い。

 これまでたくさんサポートしてきてもらったのに、申し訳ない。


 せめて、面と向かって感謝と謝罪を言いたかったぜ……。


 ヤベェな。


 もう死んだのかな? なんか幻覚が見え始めてしまった。やっぱさっきのユウツオの街も幻かな?


 向こうからノアが走ってきてるなんて、笑えねぇよ。


 夢でも相変わらず可愛い姿だ。いつもと同じJK制服だけど、なんでデカい丸太を持ってるんだよ。


「マスター? マスターですよね?」

「はぁ。はぁ。そうだ」

「これまた、変態としか表現できない奇怪な恰好をしてどうしたんですか? どこかの蛮族の仲間入りしたのですか?」


 現実と同じ辛辣な言葉でビックリするわ。死後の世界でぐらい優しくしろよ。

 というか! 俺は死後の世界でも、あの恰好のままなのかよっ!


「いろいろと。はぁ。大変だったんだよ」

「かなり苦しそうですが、その仮面は脱がないのですか?」

「腕が。骨折していて……。はぁ」

「あぁ分かりました。いいですよ喋らなくて。では、私が取りますね」


 いや、仮面はどうでもいいから、普通の恰好にもどしてくれ。

 まさか! 死後の世界って、死んだ時の恰好がデフォルト設定になるのか?

 なら無理してでも着替えてから死ねばよかった。天国か地獄か知らんが、ずっとこの恰好は嫌だな。断じて変態的な恰好では無いが、まだ白い着物みたいやつがいいな。幽霊が着てるやつ。


「マスター。どうして泣いているんですか?」

「えっ?」


 泣いているのか俺は? 自分では気づかないようにしてたけど、やはり変態と言われたのがショックだったのかな?


「なんでもねぇよ。ちょっと苦しかっただけだ」


 息は楽になったけど、身体に力が入らないな。なんでだ?


「そんなに、私に会えて嬉しいのですか? 寂かったんですね~」

「そうかもな」

「……。それは、予想外ですね。ちょっと私の会話プログラムを越える反応なので適切な処理が出来ないですよ」

「おいおい。まだプログラムで動いているのかよ」

「はい? 何いってるんですが、私が他にどうやって動くっていうんですか?」

「死後の世界では、なんとでもなるだろ?」

「……」


 なんだコイツ? 急にフリーズしたぞ? 処理落ちか?


「なるほど。極限だったのですね。マスター」

「ん? そうだ。けど、やり遂げた」

「そうですか」


 ノアは、見覚えのある先の尖った丸太を砂漠へと放り投げると、驚く事に俺をやさしく抱きしめてきた。


「ちょっ? どうしたんだ?」

「さぁ。さぁ。大丈夫ですよ。ちゃんとマスターの鼓動を感じれます」

「何言ってるんだよ」

「マスターは生きてますよ」

「えっ?」

「ここは、現実世界ですよ! だって、花畑が無いじゃないですか! 死後の世界も砂漠と草原なんて、おかしいですよ」

「そっか……」


 急に、足の感覚が無くなったかの様に、立てなくなった。折れて動かない両腕ではどうする事もできずに、ただノアへと身体を預けるしかない。


「なによりも、私がいる事が証拠です」

「なんで?」

「もう全く、相変わらずのマスターですね。私は機械ですよ? 私が動かなくなるのは死ではなく故障です。魂なんて無いですから、死後の世界に私が行ける事はありません!」


 そうなのか。ノアには魂が無い。言われてみれば当然か。

 そして、ノアがいるって事は生きているのか!


「俺は助かったのか?」

「誰かを助けたのでは?」

「はは。そうだな。助けたのに、俺がこんなんではダメだな」

「いいですよ! その為の私ですから。それでは、ちょっと失礼」


 どうしてコイツはお姫様抱っこが好きなのかな? 背中におぶってくれた方が良いと思うんだけどな。


「おや、今日は「下ろせ―」とか騒がないんですか?」

「ちょっと、今は限界みたいなんだ。全てお前に任せる」

「それでは。マスターの身体に負担がない程度の全速力で、このままユウツオに帰還しますね。来る時は途中まで砂漠を横断してきましたが、今は安全を優先して商業団ルートを使います」

「分かった。けど、明日の朝までにはユウツオに着きたいんだが」

「大丈夫ですよ。私の計算では、本日の夜には到着します。なにか急ぎの用事でもありましたっけ?」


 ダリアとの話すると笑われるだろうなぁ~。でも、しておかないと今の恰好も説明できないし、変態では無いって事を分からせてやらんといかん。


「移動しながら、全部説明するよ。昨日からいろいろとあったんだ」

「了解です。では出発します」

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