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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第46話 だって、こんな事ってある?

仕事が忙しすげて、忙殺される……

 不思議な装置だ。見た事も聞いた事も無い。大魔女サヤ様の遺産だろうか? 大商人である父様が見たら、物凄く欲しがるだろう。


「カイチュウデントウ?」

「そうだ。呼び方は何でもいいが、使い方は分かったか?」

「大丈夫よ。灯鱗よりも使いやすいわ。これで、木槍を見えるようにしておけばいいのね?」

「うむ、頼んだ。では、これからどうするか? なんだが。まず私がコイツの口を開ける。一旦、外の状況を確認してから、比較的安全そうな方向へと君を放り投げる。おそらく3メートル程度の高さから落下するのだと思うが、地面は砂なので、うまく行けば問題ない思うのだが、大丈夫かね?」

「大丈夫よ。12メートルの高さからサンダイルの口へと落ちるよりはマシだわ。それに私は冒険者育成学校の生徒よ。受け身ぐらいできるわ」


 本当は怖い。でも今やれる事をやらなければ、私の未来は餌だ。


「よし! その後は、私がコイツの足止めをするので1人で逃げてくれ。場所は北が分かればいいのだが、まぁ安全そうな所を探しながら進むしかないな」

「北って事は、商業団がミデリオまでの安全ルートとして使ってる所へと向かうのね。あなたはどうするの?」

「コイツをどうにかした後に君に追いつくさ。砂漠のど真ん中かもしれないのに、1人だけにはさせておけないからな。安心したまえ」


 そうかぁ。ここから脱出できても、もうユウツオからだいぶ離れているはず。サンダイルは南の方が多く生息していると聞くし、大砂漠の真ん中まで来ているかもしれない。

 本当に帰れるだろうか……。


「浮かないようだな。まだ私が怖いか?」

「いえ、あなたの事はもう、どうでもよくなってきたわ」

「そ、そうか」

「悩んでもしかたないわ。急ぎましょう。早くしないとコイツの家についてしまう」


 歯側へと身体を寄せて、カイチュウデントウを両手でしっかりと握り、木槍を照らす。レッドが何をしようとしているのかは分からないが、私はもう覚悟を決めた。


 レッドを信じる。この見た目が変態な人は、私を気にかけ、助けようとしてくれている。この後も砂漠をずっと2人で旅する事になるかもしれない。少なくともユウツオに戻りタツキにお礼を言うまでは死ねない。レッドを信じるしかない。


「よし! それじゃ、いくぞ!」


 少し口の奥に移動していたレッドが、低い態勢で飛び出して私のすぐ隣を走り抜け、木槍へとタックルをした。

 舌の部分から大量の血が吹き出し、喉の方から低い呻り声が悪臭と共に聞こえてきたが、口は開かない。痛みに耐えているのだろうか?


「もう1度やる!」


 レッドは、すぐに元の位置まで戻ってくると、再度走り出していた。私の隣まで来ると今度は、上顎にぶつからない高さで跳躍して、両足で跳び蹴りという見た事もない荒業で木槍が激しく揺れる衝撃を与えてた。


 1回目よりも大量の血が吹き出して、レッドの攻撃ではない振動が全体に伝わり、光が刺して周囲が明るくなる。視界を奪う程かと思っていたが、眩しくない。

 上の歯と下の歯の間から見えた外は、月明かりが砂漠に反射するだけの光量しかない夜だった。


 良かった。口が開いた。


 少しだけ安堵した瞬間、地面の方向が変わる。


 何かに捕まろうとしたけど、鋭い歯ぐらいしか突起物がなく、必死に手を伸ばして探すが、唾液と大量の血で辺りは摩擦力が無くなってり、そうしている間にもだんだんと背後へと重力が移動していく。


「捕まれ!」


 突き刺さる丸太を両脚で器用にしがみついて、レッドがこちらに手を伸ばしていた。


 ケガを覚悟して、歯に足をかけてジャンプする。靴底に切れ目が入ったようだったが、幸いにしてケガする事なく手を掴む事ができた。

 下を見ると、いろいろの物が、暗い喉の奥へと流されいいく。


「どうなってるの?」

「頭を上げているんだと思う。ここに留まっている方が危なそうだ。揺らすぞ?」「なんで? なんで揺らすの?」

「君を外へと投げる」


 すぐに、歯と歯の隙間を見た。

 上手く通れば人間2人ぐらいは、すり抜けられそうな程度に口が開いているが、少し引っかければ、腕が無くなりそうな鋭い歯がずらりと並んでいる。


 そう思っているうちに、レッドが私を揺らし始めた。


「ちょっと、待って」

「大丈夫だ」

「ごめんなさい。怖いわ!」

「私を信じろ」

「信じてるわ! でも、ちょっと待って」

「……」


 レッドが黙ってしまった。

 必死で私を助けようとしているのに、当の本人が怖気ついて動けないとなれば、さすがに見限ってしまうだろう。レッドの顔を見る事ができずに、少し勇気を出せば辿り着ける、ここよりは安息の砂漠を見つめるしかできない。


 揺れがゆっくりになると、今度は上へと引っ張られる。


「引き上げるぞ! 丸太の上に乗れるか?」


 レッドを見た。丸い木製の赤い模様の入った仮面で顔は見えないが、穴にあいた目は決して諦めてなかった。


 私はバカだ。


 何を怖気ついているんだ。


 引き上げられながらも、手と足を伸ばし、丸太の上に何とかしがみつく。


「オオオオオオォォオオオォオオ!」


 突如、重低音の咆哮が下から襲ってきた。目を閉じて、吐きそうになる臭いと突風に耐えながら必死で丸太にしがみつく。


 咆哮が終わると、また重力方向が、傾きだした。


「大丈夫か?」


 目を開けると、レッドも丸太の上に乗っていた。


「時間が無い。嫌とは思うが、私にしがみつけるか?」


 急ぎつつも落ちないようにレッドに近づき、強く抱きしめる。会って間もない、よく知らない人に、こんな事をするのは初めてだけど、信じると決めたのだ。


「こうも、いきなりだと照れるなぁ」

「信じてるわ」

「……任せろ。跳ぶぞ!」


 レッドの左腕が私の腰を引き寄せる。抵抗はしない。むしろ私も、さらに強く抱きしめる。この命を預けいる事、信じている事を言葉ではなく身体で伝える為に。

 2人で全力で丸太を蹴って、砂漠へと跳躍する。その途中には絶対に避けられない鋭い歯の軍勢があり、近づいてくる死に相当する危険を目にして、一瞬のうちに心のが恐怖によって染められ、強く目を閉じた。


 きっと、大丈夫。

 死ぬか、信じるか。今はその2つしかない。ならば信じるのみ。


 突風で身体が揺られ、レッドの身体越しに大きな衝撃を受けて、何かに引っ張られる感覚と大きく身体が回転する感覚を受ける。


 状況を確認する勇気が出ないが、絶対に離れないように抱きしめる力を強く込めて、信じてこの命を預ける。


「ぐぅっ」

「きゃぁ」


 右肩に強烈な痛みを感じて腕を離しそうになった。


「ダリア。大丈夫か?」


 目を開けて肩を確認すると大きな擦り傷から、じんわりと血がでていた。

 しかし、そんな事はすぐに意識の片隅へと追いやられた。夜風がやさしく全身に打ち付けて、砂漠を疾走してる状況に驚愕した。


「どうなってるの?」

「この縄を両手で掴めるか? 右手は力が入らないだろう?」

「掴んだわ。これはどこから?」

「木槍だ。見えるか? サンゲイルの首の後ろに、もう1本刺さっている。その木槍に繋がれている物だ。偶然にも掴む事ができた」


 レッドが私を包むように後ろから支えながら、指をさした方向を見ると、私達が掴んでいる縄の先に木槍があって、それは何かに突き刺さっていた。

 予想もしてなかった展開に少し考える。


「それじゃ……。 私達はサンゲイルに乗って疾走しているの?」

「そうだ。ここはヤツの背中の上だ。少し腰寄りのな」

「すごい!」


 一気に恐怖心が消えてしまった。

 こんな経験できるなんて、信じられない。


 小さい頃から走るのが好きだった。

 大商人の家だったので、いろんな乗り物に乗せてもらったし、家は兎獣を多く飼っていたし、乗れる獣人も多くいた。


 冒険者になろうと思ったのも乗り手になりたかったからだ。本体ならば大商人の名家の血を有効活用しなければならない立場なのだけど、父がくれたチャンスで乗り手になるには、冒険者しかないと思ったからだ。


 まさか、サンゲイルの背に乗って大砂漠を疾走できるなんて、夢にも思っていなかった事だ。


「すごいわレッド! なんて、すごいの!」

「急にどうしたんだ?」

「だって、こんな事ってある?」

「私も初めてだよ。なんにせよ、元気になってよかった」


 後にある東の空が少しだけ明るくなっているけど、まだほとんどが夜空で、月の光が一面砂の地面を照らし、輝いて見える。そんな中を1匹の大きな砂獣が泳ぐように北西へと進んでいく。その背中に私は今乗っているのだ。


 なんとも感動的な情景。進む先も輝いて見える。


 いや、灯がある?


「レッド。灯が見えるわ」

「気づいたか。草原もちらほらと見えるぞ」

「そうなの? 草原? じゃぁ。もしかして砂漠との境界に向かってるの? 商業団が交易ルートとして使ってる安全区域に?」

「幸運にも、そうかもしれない。おそらくあの灯は商業団の物じゃないのか?」


 商業団にもよるけど、夜は移動せずに天幕を張って休憩する団がある。あの灯が商業団の物だとするなら、彼等は西の国で仕入れた品物を東にある帝都まで運ぶに違いない。それなら必ずユウツオを経由する。


 なんて幸運な事だろう! 私達は助かるかもしれない。


「レッドやったわ! 私達は助かるかもしれないわ! 私、ちょっと商業団には顔が利くのよ。知り合いもたくさんいるの」

「そうか。それは良かった。それじゃ走れるか?」

「走る? どうしたの?」

「君をここで、砂漠に降ろす」

「えっ? なんで?」

「コイツはこのまま進めば、あの灯よりも西側を通過すると思うが、どんどんと速度が落ちてきている。何かおかしい。もしかすると、あの商業団を襲うかもしれない」

「そんな……」

「だから、君が走ってサンダイルが近づいている事を知らせるんだ。この速度なら走ったほうが早い。何よりも必ずコイツが辿り着く前に知らせなければならない」

「私が? 1人で?」

「そうだ。いけるか?」

「走れるけど。貴方は一緒に行かないの?」

「今は、ちょっと走れそうになくてね」


 レッドの右太股には大きな切り傷があり血が出ていた。血の量からすると傷は深くないようだけど、痛そう。よく見ると、その布面積の少ない奇怪な恰好も相まって多くの擦り傷をつくっていた。


「ごめんなさい。私を庇って、そんなに傷を……」

「大丈夫だ! しばらくすれば、走れるようになるから。今は君が頼りだ」

「分かったわ。任せて! レッドはどうするの?」

「私は、コイツの気をそらす為に、ちょっかいを出すとしよう。砂漠を走る君を標的に変えたら困るし。そこは安心してくれ」

「もちろん信じているわ。それで、私はどうやって降りたらいいの?」

「よし。いくぞ!」


 レッドが後ろから腰に手を回わし、私を抱き上げると、縄の張力を使って、サンゲイルの右腹側へと移動した。


「行ってくる!」


 縄を放して、大きく跳躍し、砂漠に着地する。


「必ず援軍を連れてくるわ!」

「私の事はいい。保護してもらって、安全な場所まで移動するんだ!」


 レッドへのこれまでの非礼を帳消しに。これまでの恩を返す為に。そして、もう1人あの大防壁で手を伸ばしてくれたタツキにお礼を言う為に。

 全力で走る。


 後ろは振り返らない。サンダイルはレッドがどうにかしてくれると信じてる。

 私は、私が今、できる事。しなければならない事に集中する。


「必ず、助けに戻るわ」

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