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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第45話 ドラぐぅん、まぁ、えっと……

 全身が痛い。


 目を開けると、暗闇だった。


 ここは、どこだろう? 今まで寝ていたのかな?


 もう1度目を閉じて、頭の中に集中を向けて、思い出せる最後の記憶をなんとか呼び覚ます。


 そう、たしか大防壁から落ちて、砂獣に食べられて……


 目を開けて、辺りを見回すが、暗闇は変わらない。何も見えない。


「私は死んだの?」


 声は出る。両手を動かして自分の身体を確認する。上半身の服は破けていて、下着があらわになっている事と、額から少し血が出ている以外は変わった点は無い。

 死んだら、魂という光の玉みたいなエネルギーになるか、生まれ変わって別の人生が始まると言ったのは、大魔女サヤ様だっけ? 今のところ、そのどっちでも無いって事は生きているって事なのだろうか?


「私は、生きている。まだ、生きている」


 あの状況で何故生きていられたのだろうか?


 そうだ! タツキだ! あの人は、落下する私を、自らも落ちてきて抱き込んでくれたんだ。きっとそれで私は助かった。


「タツキ? タツキ生きてる? いる?」


 返事がない。落下の衝撃を肩代わりしてくれたのは、間違いなく彼だろう。でなきゃ私が生きているはずがない。ということは…… 彼は……


 急いで立ち上がろうとしたけど、天井が思ったよりも低かったので、四つん這いになって、おそるおそる両手を動かす。

 床はザラザラしていて、少し粘度のある液体があたり一面にあって、気持ち悪いのだけど、我慢しながら探すと、何かを掴んだ。


 まだ目が暗闇に慣れていないのだが、触った感じは人の足のようだ。

 一瞬、脳裏に不安が過ぎった。念の為ゆっくりと、ちゃんと頭の先まで繋がっている事を祈りながら、身体をなぞって形を確かめる。


 脛はある。膝は問題なく、太股も問題ない。その先にはちゃんと毛があり、皮袋のような物と小さな突起物が――


「えっ?!」

「ぎゃわん!!」


 無意識の脳内に強烈な不快感が鋭く刺さり、ソレを強く握ってしまったのだが、その瞬間に不快感を大きく上回る汚らわしさを感じて、すぐに手を離し、後ろに飛び退いてしまった。


 男性経験が多いわけではないが、無いわけでは無い。私はアレを知っている。間違いだろうか? 間違うだろうか? 膝を触った時点で気づけばよかった……。

 何故そもそも裸なのだろうか? 


 やはり、そういう事なのか? たしかに私は彼に命を救われた。たった1つしかない命だ。しかも命がけで助けてくれたのだ。身体を要求されるのは、しかたのない事かもしれない。

 でも、別の報酬でも良いはず。父様に頼めば、それなりの要求には応えれると思うのだけど……。しかし今は、この身1つしかない。


 何故、今なの? しかも気を失っている間に襲うなんて酷すぎる。見損なったわ! こんな奴がクラスメイトだなんて、今後も一緒に学校に通うなんて、最悪すぎる! その前に、この状況は助かったと思っていいの?

 ダメだ。分からない事が多すぎる……。もう、本人に確認するしかない。


「タツキ! いるんでしょ?」

「……」

「無事なんでしょ? 元気なんでしょ? 元気すぎて困るほどに!」

「……」

「返事しなさいよ!」

「ハイっ」

「私に何をしたのよ?」

「何もしておりません!」


 なんだと! この状況でしらばっくれるつもりなの? アンタの裸の下半身が、証拠じゃないのよ! 私の服だって破けているし、パンツだって。アレ?

 自分の下半身をまさぐると、下着はちゃんと履いていた。どころかズボンも腰帯もしっかりと装着している。

 という事は……


「事後なのね! もう済んでしまった事なのね! それで満足して寝ていたの? 最低! タツキ、アンタ最低よ!」

「待て! 落ち着くんだダリア君。私は何もしていない! 何の話だね?」

「だから! 寝てる間にヤッたんでしょ? バカタツキ!」

「な、なんで、そんな事するわけ無いじゃないか! それに私はタツキという名では無い!」

「はっ? 嘘よ。だってさっき、触ってしまったもん。あの…… 柔らかい袋を…… うぅ。アンタ下半身は裸じゃない」


 涙が出てきた。なんで、こんな話をしなきゃならんのよ。


「な、な、何を言ってるんだ君はっ! 私は確かに変わった格好をしているかもしれないが、ちゃんと下半身には服を着ているぞ! 君が触ったのは私の鞄ではないかね? 私は鞄をお腹の下に付けていてね。ウエストポーチスタイルというのだけれども」


 何を言ってるんだコイツは? ウエストポーチスタイルなんて聞いた事ないわ! わざわざ口調まで変えて変な事を言って、別人のふりなんかして、アンタにとっては、そこまでして無かった事にしたいかもしれないけど、私にはアンタの存在が重要な事なのに。


「アンタはタツキじゃないの?」

「そ、そうだ」

「タツキじゃないってなら、タツキはどこ行ったのよ! 私を助けてくれたアイツは、何処に行ったの? 死んでしまったの? アンタが変態でもタツキだった方が良かったわ!」

「彼は、もちろん生きてる」

「えっ? どこに?」

「外だ! すまないが2人同時に助ける事ができなかった。私もスキをみて砂獣の口の中へと入り、なんとか彼だけは口の外へと放り投げる事ができたんだ。ユウツオからそれほど離れていなかったし、きっと無事であろう」

「そ、そうなんだ…… 生きてるのね。 良かったぁ」


 本当に良かった。口の中なんていたら、そのうち胃の中へと流されてしまうだろうから、外に出れたなら、きっと生きているはずよね。


 ……。 口の中だって?


「ちょっと待って! ここって、口の中なの?!」

「そうだ。これで見えるかな?」


 声のする方から光が射して、私の右側が明るく見えるようになった。そこにはザラザラとした表面の1つが1メートル程ありそうな大きな歯が、いくつも並んでいる。


「うっ。そんな…… 本当に口の中」

「周りを見てみよう」


 光が弧を描くように移動して、周囲の状況が見える。天井は上顎の裏のようで赤黒く、左側は舌がひねった状態になっていて、私達は奇跡的にも歯と舌に挟まれている為、胃の方へ流されないでいる事が分かった。

 そして、床に滴っていた粘度のある液体は赤い血だった。


「後ろを見てみろ」


 振り返るとそこには、何故か木が生えていた。正確には、上顎から下顎にかけて丸太が突き刺さっているように見える。


「そいつのおかげで、口が完全には閉まってないようだな。アレは大防壁にあった木の丸太で作られた槍か?」

「そうね。あの木槍のおかげで、舌がひねられているのかしら? だとしたらユウツオ兵団に感謝しなきゃ」

「いや、違うな。意図的に生かされている」

「そうなの? なんで?」

「木槍が打たれる前に、ひと飲みできただろうな。何故しなかったのか? 憶測なのだが考えられる事は2つ。1つはプレゼントだな」

「プレゼントですか?」

「そう。サンダイルの生態は知らないが、求愛の為にパートナーに獲物を献上する生物はいるだろう。だが、これほど傷付ながら体力を消費してまで、するとは思えないのだが……」

「2つ目はなんです?」

「巣で待っている。子供の餌だろうな」

「ひぃっ」


 想像してしまい小さな悲鳴が出た。この口が開いた瞬間に、向こうには飢えた小さなサンダイル複数体が口を開けて待っているのだ。


「私達は、死ぬのね。コイツが移動を止めれば、そこが墓場なのね」

「いいや。君は死なない! 君を助ける為に私は来たのだから」

「でも、さっき、2人助ける事はできなかった。って言ったじゃない」

「同時にだ。すまない、タツキ君を助けてエネルギー切れになってしまってね。少しばかり寝てしまった。でも安心して欲しい。君は絶対に生きて帰す」


 木槍に向けられていた光が2人の間に向けられて、なんとなく光の中心を見つめる事にした。視界の端では、ぼんやりとお互いの姿が暗闇に浮き出ている。

 大防壁から落ちた時に、無言で助けに跳んでくれたタツキと、強くハッキリ助けると言ってくれる、この人が被った。


 ゆっくりと彼の方に目を向けると、足をやや広げて、しゃがんで座っていた。

 裸足で、腰のあたりまで何も身に着けておらず、膝までありそうな布をお尻の方にたれ下げていて、それを動物の毛皮のようなフサフサした物で腰布のように巻いている。

 視線を上げていくと、股間を鞄で隠していた。この滑稽な姿がウエストポーチスタイルなのかと納得してると、上半身には何も身に着けていない事に気づいて、少し怖くなった。本人が言うように、かなり変わった恰好をしているのだが、ちょっと逸脱しすぎている。

 最後にその顔を見たと同時に木槍まで、声を上げて後ずさりをしてしまった。


「うわぁぁああ」

「な、なんだ! どうした!」

「アンタはタツキじゃないぃ!!」

「そ、そうだとも」

「変態!」

「それは、違う」


 そいつは目の部分だけに穴が空いた丸い木製のお面をつけて、他は黒い布で頭を丸ごと覆っていた。お面には赤い血で描かれたような流線形の模様があり、なんとも奇怪な見た目をしている。

 裸に近い状態で、股間と腰回りと頭だけを隠しているという変態以外に何者でもない奴だった。


「やっぱり事後だったのね!」

「なんでそうなる!」

「身体目当てで、砂獣に食われたのね」

「そんな奴いるかよっ! 信じてくれ! 君を助けに来ただけだ!」

「なら顔を見せないよ」

「それはできない」


 なんなのコイツ! タツキの方がまだ、よっぽどマシだわ! こんな変態が私を助けてくれるって? 信じられるわけ無いでしょ!


「もう、信じなくてもいい。変態だと思ってくれても構わない! だから、頼むから少しだけ私の指示に従ってくれないか? あまり時間が無いんだ」

「名前は?」

「えっ?」

「アンタよ。なんて言うの?」

「えっとだな。ドラゴンのぉ~。何にしようかな?」

「何? 聞こえないわよ」

「ドラぐぅん、まぁ、えっと……」

「ん? ドラグマン・レット?」

「そ、そうだ! それだ! 私の事はドラグマン・レッドと呼びたまえ」


 ふざけた名前。レッドって戦隊に使われている名前じゃないの。まさかとは思うけど戦隊候補生だったりするのだろうか? 戦隊に関わる人達は変わり者が多いって聞いた事があるけど。たしか――。


「戦隊と変態は紙一重だっけ?」

「なんだ? その変なことわざみたいなのは」

「気にしないで。それよりも時間がないんでしょ? 私はどうすればいいの?」

「急に素直になったな。急すぎて、ちょっと不安になるんだが」

「しょうがないもの。私には2つの選択しかない。このサンダイルの餌になって死ぬか。アナタに従って、なるようになるか。だからアナタに従うわ」

「そうか。理由はどうあれ、話しを聞いてくれて助かる。安心したまえ! 必ず君を生きて帰すから」

「よろしく、お願いします」

 

 大いに不安があるのだけれど、私の運命を彼に託すことにした。

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