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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第33話 兄さん。大丈夫か?

 まるで、マシュマロに包まれているような感じだ。


「――時間は大丈夫なの?」

「あと――まだ、なんとかなる――」

「まったく! ――」


 なんだか分からんが、周りが騒がしい。もう少し眠っていたいので、静かにして欲しいもんだ。

 とにかく、この枕は寝心地が良い。後頭部と首裏がほどよい弾力と柔らかさに包まれていてリラックスできる。もう少しだけ沈めたら更にいい感じだ。


 首を左右に振って、頭を後ろへ押し付けてみる。よし。ベスト!


「なんか、子供っぽいところあるのね」

「以外と可愛いかも」

「ちょっと交換しない?」


 はて? 俺は何故こんな所で寝ているんだっけ?


「無理だよ。起きるでしょ」

「え~なんでよ~。ずるい」

「だって、あたしが1番早く駆け付けたんだし~」


 騒がしい。だんだんと頭が覚醒してきた俺は目を開けた。すると視界には3匹の可愛らしい犬が覗き込んできた。左右に2匹。もう1匹はすぐ目の前だ。


「あっ起きた」

「大丈夫ぅ?」


 左右の犬が喋った。ちょっと驚いたが、よく見ると首から下は人間の女性の姿をしていた。獣人のようだ。


「あたしウルシュ。覚えている?」


 すぐ目の前の獣人が話しかけてきた。かなり顔が近い。真上から覗き込んでいるんだが、つまりはその下に身体があって。アレ? 俺も同じような位置に仰向けに寝ているんだが……


「!!」


 俺は飛び起きて、今寝ていた場所から離れた。振り返って見ると、そこにはウルシュと名乗るナイスバディの獣人の女性が木を背もたれにして寝ていた。

 って事は、俺は、あの上で寝ていたのか! という事は枕だと思っていたのは、枕にしていたのは、あの子の胸か!


「ぐをぉぉおおお」


 頭を抱えて、しゃがみこんだ。


 俺は、なんて事をしたんだ。俺にはノアがいるというのに、確かにノアは機械なのだが、いいじゃないか。傍にいてくれるだけで! 眺めているだけでいいじゃないか! 彼女ほど俺に尽くしてくれる人はいないぞ! 人じゃないけど。


「どうしたの? 大丈夫? もう少し休んだほうがいいよ。こっちにおいで! うつ伏せで寝てもいいから」


 なんですと! うつ伏せですと!


「兄さん。大丈夫か?」


 ウルシュがもたれている木の少し離れた所にある別の木にもたれかかって、腕組みをして立っている見知った獣人がいた。


「ロナウ」

「悪かったな。あんなに綺麗に捉えられるとは思ってなかったんだ。負けると思ってたからよ」

「そっか。俺は勝負をしてて、最後に滑って、いいのを貰って伸びてたのか」

「あぁ。あんなラッキーパンチじゃ勝った気にはならねぇな」

「いやいや、負けは、負けだ。体力もギリギリだったし、ロナウの勝ちだよ」


 あんなん、もう一度とか言われたら、たまったもんじゃない!


「そうか。なら勝ちを貰っておこう。嬉しいぜ」

「ロナウちゃん。そんな事よりも起きたなら説明しないと! そんなに時間が無いんじゃないの?」

「説明?」

「そうだ。このクラス分け試験についてな」


 そうだった。俺は試験中だった!


「とりあえず怒らないで、最後まで話を聞いてくれよ。兄さん」

「タツキでいい」

「は?」

「タツキって呼んでくれ。俺もロナウって呼んでるし」

「そ、そうか。分かった。だが、主の知り合いを呼び捨てにはできない。タツキ(にぃ)って呼ばせてもらうか」

「あっ! じゃぁ。あたしは、タツキちゃんって呼ぶね」

「おい、ウルシュ。お前が喋り出すと話が進まなくなるから、黙ってろよ」

「じゃぁ、私は?」

「お前もだ。ウルテアフ。もちろんイアルフもだ」

「「はーい」」


 怒らないでって、なんだろう? もしかして、俺は最初にロナウに見つかった時から捕まった判定になっているのか? だとしたら間違いなく(メイ)クラスになっている。


「実は、この試験の仕事は毎年別のチームが行ってる。今回俺等のチームに話がきたのはタツキ兄と接点があったからだ。タツキ兄が、あの時の話はしていないって聞いてるが、どこからか話が漏れていたみたいだ」


 それは、たぶん領主の所のロンって人が尾行してたからだ。俺は決して言ってないぞ~。ノアには言ったが、他の誰にも喋ってないぞ~。


「その目的は、試験中にすみやかにタツキ兄を見つけ、説得するように命じられている。とある人物と捕まえるタイミングを合わす為に、同じクラスにする為に」

「なるほど。シェンユか」

「おっ。さすがだな。すぐに分かったか」

「ちょっと、いろいろあってね。なら依頼してきたのは領主関係だな」

「えっ? そうなのか? それは知らないな」


 おっと、失言をしてしまったか。普通に考えれば領主が不正をしようとしているんだ。依頼した事がバレないようにするよな。マズイ……


「ゴメン。今のは聞かなかった事にしてくれ」

「分かった」

「あたしも聞いちゃったよ~」

「ウルシュ! タツキ兄を困らせるなよ。主にも波及するぞ?」

「わかってるわよ。でも、もし今度会ったら、あたしとも遊んでね?」


 このウルシュって女性の獣人、人懐っこいというか、本当の犬みたいだ。


「なんか、こんなやり方って良くないだろ? 説得できる気がしなくてな。時間を潰す為にちょっと遊び勝負を持ちかけたのさ。遊びのつもりだったが、本気になってしまったけどな」

「それで、シェンユは捕まったのか?」

「あぁ。もう、捕まえてる。だからタツキ兄も、そろそろ捕まえないといけないんだが、気を失ってたからな。試験中にケガとか厳禁だから、それで起きてくれないと捕まえられなかったんだ」

「そういう事か。分かった。それじゃ、捕まえてくれ」

「おっ? 素直だな? 俺はてっきりゴネるかと思ってたぜ。特にこういうのってタツキ兄は嫌いそうだから」


 聞いていないが、おそらくシェンユは(ユウ)クラスだろうな。それで不正して俺が(ユウ)クラスってのは本当は気に入らないが、今回はしかたない。わざわざ手を回しているって事は、同じクラスになるのが、例の生活保証の条件に含まれているのだろう。


「正直に言うと不満はあるが、今回はちょっと事情があってな。納得せざる負えない」

「そうか。時間はあまり無いけど、説得するの大変だろうなぁと思ってたから助かるぜ! それじゃそこに仰向けにになって寝てくれ。大の字でな」

「あ、仰向けに?」

「おう。急いでくれよ」


 よく分からないが、時間があまり無いみたいなので、言われた通りにする。


「俺は、右腕だ。ウルシュは右脚。ウルテアフは左脚。イアルフは左腕だ」


 何故か、それぞれの担当が俺の両腕、両脚を捕まえて持ち上げる。まさに捉えられた獲物のような状態になってしまった。何コレ?


「ちょっと待て! これはいったい?」

「そりゃ、全員を相手して捕まったらこんな感じになるだろうよ。もうちょっと疲れた顔してくれよ」

「えっ? どういう事? 全員を相手って何?」

「タツキ兄は俺等全員から1時間ぐらい逃げ切った事になる。最後に捕まった人は40分ぐらい前だから、今、この森にいるのは魔獣役の8体とタツキ兄だけだ。試験開始から2時間8分経過してるな。おそらく過去最高記録だ」


 なななな、なんですとー!!


「早く行って! すぐに試験を終わらせて頼む! 早く!」


 新入生全員が待っている中、3人の先生の前に降ろされた俺は、先生方から拍手を送られた。この3人は、おそらく不正については知らないだろう。

 生徒達の反応は様々で、同じく拍手してくれる者、指をさして怒鳴る者、ひそひそ話をする者、2人程目立った人がいて、1人はもちろんシェンユ。大声で手を振りながら何かを言っている。もう1人は森で見た女の子だ。数人の生徒に囲まれて何かを説明していた。


 仕事が終わって帰る奴隷使い4人と獣人達を少しだけ見た。コウは軽く手を上げて合図をしていたが、獣人の皆は自由が許されていないのか、無言で立ち去っていった。合わなかった4人のうち2人は知らない獣人だったが残り2人はカムロとチャラ男だった。


 それからは、よくある流れで、成績順にクラス分けの発表があり、それぞれのクラスの教室に移動して担任の先生が自己紹介。それからクラスの皆がそれぞれ自己紹介。明日からのスケジュールや持参してくる物などの連絡があって終了。もちろん俺は成績歴代1位の(ユウ)クラスで、シェンユも同じクラスだった。


 俺が狙ったワケでは無いにしろ、不正して歴代1位の成績で入学した事は心を抉られ、呆然とし、流れるままに身をまかせ、帰宅した。自己紹介で何を喋ったか全く覚えていない。


「という感じだったんだよー」

「へぇ。そりゃスゲーな」

「マスターがそんな事をしたなんて、信じられません。でも私は嬉しいですよ」

「今年の新入生は凄い奴等がいるって聞いてたから、情報集めていたけど、とんだダークホースだな!」


 今日は入学式という事で、夕食後に我儘亭1階の店部分で寮生の皆で集まって懇親会が開かれており、シェンユがいつも以上にお喋りになっている。


「普通は逃げるか、隠れるかの2択じゃない? オイラもねー。今まで鍛えてきたし、多少の自信はあったんだけど、逃げきってみせる! って考えだったよ。まさか相手を戦闘不能にして追いかけさせないって凄い発想だよ! それをさぁ、最初に考えたのはいいよ。他にも考える人はいるかもしれない。けどね。実際に魔獣役の獣人に会ったら、これは逃げるしかないって思うよ絶対」

「だねー。しかもあの倉庫番のチームが魔獣役してたんでしょ? あいつら結構な武闘派って聞くよー。タツキ! あんた歳の割にはカッコいい事するじゃん!」

「ちょっと、お前、飲みすぎじゃないか? 年上に対して態度を考えろよ」

「うっさいわね。年上だろうが新入生は後輩よ!」


 酒飲みのテンションが高い女性がジンリーで、その世話役をしてる真面目な男性がウォンリー。二人とも19歳らしいが2年生で先輩だ。

 奥の方でセンギョクさんと男3人で静かに会話しているのが、同級生のポーラン君14歳と3年生のフェイギョクさん19歳。3年生ってのは落ちこぼれらしく、2年で冒険者として必要な能力を身に着けられなかった場合になるらしい。地獄な毎日が待っているとか……。

 今日はバイトで出席してないのだがナランチェグとサルンチェグという2年生の女2組がいるらしく、貴族とコネ作ったり、楽して儲かる事を模索してたり、めんどうな先輩らしい。是非からまれないようにしたい。


「それで、女の子が話してたんだよ~。(リョウ)クラスの子だったから、詳しくは話を聞けなかったんだ。ちょっと耳にした感じだと、なんと、タツキと獣人が殴り合ってる瞬間を目撃したんだって! オイラも見たかったなぁ~」

「本人に聞けばいいじゃねーか! おーい、タツキー。話してくれよー」


 帰りたい。なんだ? この、めんどうな飲み会みたいな状況は。


「すみません。今日は疲れたので、もう寝ますね」


 酔っ払いと、騒がしい奴等をおいて、俺は逃げるように部屋に帰った。

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