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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第29話 入学式に遅刻しますよ?

第二章 学生編 スタートです。

 久しぶりにワイシャツに袖を通す。

 警備員のバイトの際に使ってた水色のワイシャツは、1か月前の獣人との戦闘で袖部分が破れ、腹部に穴が開き、血がべっとりついていたが、今は新品のようになっておりアイロンまでされていた。

 袖は半袖に直されていて、長袖だった部分の生地を使って腹部の修復したらしいが、まったく違和感がない。

 紺色のズボンを履いてベルトを通して、リュックの中に脱ぎ捨てられていたネクタイもしめる。植物から作られた花のような香りがするヘヤオイルで、くせ毛を七三分けに強制させられている。


「出来ました。かっこいいですよマスター」

「ウソつけ」


 俺は今、ビシッとキメている。


「なぁ、本当に必要なのかコレは」

「もちろんですよ。第一印象は大事です。どんな世界でもきっと、それは同じと思います。今日はマスターが偉大なる第一歩を踏み出す日なのですから、綺麗にして行かないと」

「この街に来てから、1か月は経つんだけどな、第一歩が遅くないか?」

「それはマスターが領主様に変な願いを言って、ちょっと変更がありましたけど、それを了承したからこうなったワケで。しかたないじゃないですかぁ~」

「まぁ、そうなんだけど……」


 領主との昼食会の次の日に、俺達は歴戦おじさんの店に呼ばれた。

 そこには、おじさん2人が並んでカードゲームをしているというシュールな場面に出会った。前の世界で考えればそこまでシュールでは無いが、この異世界でまさかそんな物があるとは思わず、それをおじさんとおじさんが対戦してるという絵面は少し、ビックリした。

 センギョク氏とハオラン氏は、すぐに片づけて話をしてくれたのだが、ちょっとカードのほうを見てみたかった。


 それで結局どうなったかと言うと、俺は学生になった。


 絶対に笑いを堪えきれる機械なのに、ノアがわざと吹きだしたのを忘れない。


 まさかの日本にいた時と同じく、莫大な借金をして学校に通う事になったのだ。違うといえば学校の名前が〝ユウツオ冒険者育成学校〟ってぐらいなのだが、そこが大きな違いだったので承諾する事にした。


 学校は2年制度で、冒険者として活動する為の知識や技術が身につくらいしい。さらに、卒業すればランクDの冒険者のライセンスが貰えて、冒険者として仕事が出来るそうだ。

 さらに、さらに、寮制度があるらしく、本来なら倍率が高く費用も高い為、ごく一部の生徒しか利用できないそうだが、俺とノアは学生である限り2年間その寮を利用できる事になった。寮では1人1部屋使えて、最低限の家具はついていて、飯も食べれて普通に生活するには困る事は無いという。

 その他にも領主様個人のポケットから毎月3万ゼンが支給される。この世界の通貨は日本とほぼ同じで1ゼンは1円って感じだ。なので破格の待遇といえる。


 ハッキリ言って断る理由が無く、もちろん全ての費用は借金なので後で返さないといけないのだが、この時点で話を最後まで聞かずに了承したのだった。

 というかハオラン氏は一度この時点で話を区切って「いかがかな?」なんて聞いてくるから、上手くのせられてしまったのだけど……


 それで、なぜセンギョク氏がいたのかというと、寮ってのがセンギョク氏の店『我儘亭』の2階の8部屋の事らしいのだ。

 ちなみに、俺とノアは2人で1部屋である。空き部屋が1つしかなかったので誰か1人は半年ほど別の寮でって話があったのだが、ノアが断固拒否した。理由はもちろん侍女として護衛として常に近くにいないといけない。というものだったが、本当は借金を減らす為だろう――あとから1人分しか使わないのだがら、借金も1人分でしょう? なんて確認をしていた。

 なのでノアは寮で飯を食えないし、水すら貰わない。まぁ必要無いんだが。もちろん、お金も支給されない。


「おっはよー! 準備できたぁ?」


 突然、部屋の扉を凄い勢いで開く奴が現れた。


「俺が、鍵をかけて無かったのも悪いかもしれないが、普通は人の部屋の扉を声もかけずに、ノックもせずに開ける奴はいないぞ?」

「あっ! ごめん。ごめん」


 そう! 問題はコイツなのだ! ハオラン氏がわざわざ俺の承諾を得てから追加の話をしたのは、コイツが関わっていたからだ。

 実はコイツはあの日、3つの願いを叶える龍の神ではなく、領主様に俺の力になるように願いを言いに行った日に、2つ目の願いも言っていたのだ。それが『冒険者になりたいから学校に通わせてくれ』だったそうだ。


 冒険者というのは過酷な仕事で、安全な学校とはいえ、訓練ではケガをする事もあるらしい。ギルドに関りを持つ為に貴族が入学する事もあり、特殊な力を身につけている者が入学する事もあるとか……


 つまり! やたら気に入られている俺が、同じ学校の同じクラスに入り、何かあれば手助けできるようにしろという事だ。ついでに同じ寮に住む。


 そう! この奇抜なピンク頭のアホ子。シェンユの友達も兼ねているのだ!


「でもさぁ~。急いだほうが良さそうだよ。タツキは冒険者学校の場所は知っているの? オイラは知っているけど。ここからだと、まず英雄広場まで行ってから右に、英雄通りを抜けて中央広場も抜けて、南大通りを真っすぐ大街門の近くまで行った所にあるんだよ~。それでさ、朝はたくさんの積荷を引いた獣車が多いから通りにくいし、皆、急いでいるからね~。のんびりしてるのは冒険者ぐらいなんだけど。オイラ達、冒険者見習いのほうが忙しい――」

「ちょっと待て! お前はいつも話が長い。しかも無駄が多いぞ? 何が言いたいのかよく分からない」

「えぇぇ?! だから言ったじゃん。急いだほうがいいって」

「そんなに、急いでるなら、先に行ってもいいぞ? 俺はもう少ししたら出るよ」

「そんな事言っていいのかな? 学校で1人寂しくなっちゃうよ?」


 うっ。確かにそれは、かなり気にしている。聞いたところによると、冒険者育成学校は12歳から入学可能で、ほとんどの人が12歳から18歳の間に入学するそうなので、30歳で入学なんて奴は初めてらしい。全員が一回り以上年下とか高校で2回ダブるなんて可愛いぐらいに辛い状況かもしれん。

 友達とかできるだろうか? 不安だ。シェンユがいるのは正直、安心する。


「悪かった。一緒に行こう。俺もそのほうが助かる」

「おうよ! そういや、タツキは変な恰好で行くんだね」

「シェンユさん! 何を言いますか! カッコいいでしょう?」

「待て待てノアさん。強引に収めようとするな!」


 シェンユはいつもと同じ格好である。同じ服を何着も持っていると聞いた事があるので、おそらく今日もその格好だと思っていたが、やはり正装する必要は無いと思われる。


「ノア! やっぱ着替える! 絶対に浮くから!」

「そんな事ないですよマスター。私は素敵だと思います。特に七三の髪型とか」

「もっと早く気付くべきだった。これはいつものオフザケだな!」

「だからタツキ~! 時間無いってば。もう行かないと」

「大丈夫だ! 兎車に乗れば、すぐ着くだろ? 着替える時間ぐらい」

「無い!!」


 シェンユは両手でバツ印を作って、ハッキリと言った。


「なんで?」

「マスター? 何故、兎車に乗れるんです?」

「何故って、街をぐるぐる周ってる公共交通機関みたいなのあるじゃないか」

「贅沢ですよ。借金地獄な苦学生が! 走って行くに決まってるでしょう」

「間に合わねーじゃん!」

「違うよタツキ! 走らないと間に合わないよ!」

「えっ? なんで?」

「だ~か~ら。朝は積荷をたくさん乗せた獣車が多いんだよ。道が混んでて街の兎車なんて、ゆっくりしか走らないよ? 普通に走ったほうが早い」


 なんですとぉぉおおお!!


「行くぞ! シェンユ!」


 俺は、ドアの近くに置いてた肩掛け鞄を掴んで、急いで部屋を出た。階段を降りたところでミンメイ氏に会ったが、朝の挨拶だけして店を飛び出した。


 とりあえず、英雄広場まで全力ダッシュだ。今は何時だ? 何時までに行けば間に合うんだっけ?


「タツキ! タツキは友達だけどね、オイラ初日に遅刻したくないんだけど」


 こいつ、俺の全速力に並走しながら普通に話しかけてきたんですけど、どんな体力してるんだ? ちょっと今の俺は会話する余裕が無いので、無視していいですかね? いいですよね? というか話かけないで。


 俺はなんと言われようが、今は無視すると決めて、英雄広場のロータリーを南向けに曲がって、英雄通りの端側を走る。シェンユが言っていたとおり、中央は荷車がいっぱいでだったが、端側は人通りが少なくて走りやすそうだった。


「タツキ! 聞いてる?」

「……」

「注意しておくけど。端側にも荷車いる時あるから、気をつけてね。荷物下ろしてるから停まってる時あるんだよー」

「……」

「それじゃ! 悪いけどオイラ先に行くねー」


 すまんシェンユ。お前めっちゃ優しいじゃないか! でも俺は限界なんだ。このスピードを維持しながら、10キロ以上走るのは無理だ。というか今の話の流れって俺は遅刻確定の話だったよな。やっぱ、優しくないぞ!


「はぁ。はぁ。はぁ。ちょっと、無理」


 ぐんぐん遠ざかっていくシェンユの背中を見ながら、俺は手を膝について休憩をしてしまった。なんとか英雄通りの3分の1ぐらいまで来たけど、もう走れそうにない。


「はぁ。はぁ。しかたねぇ。はぁ。遅刻確定だけど。はぁ。とりあえずは歩くか」「遅刻はいけませんよマスター」

「どわぁっ!!!」


 背後にノアが立っていた。全く予想もしてなかった。


「ビックリするじゃねーか! はぁ。なんだよ」

「ちゃんと、部屋の鍵をしめてから追ってきました。なんだよ。とは失礼ですね」「いや、なんで追ってきたんだよ」

「それは、マスターが遅刻しそうですから」


 話が読めん。

 もしかしてコイツ。俺が遅刻する姿を見て笑う為に追って来たのか?


「では、時間も無いので、ちょっと失礼します」


 突然、頭を後ろに引かれて、足を強く払われて、俺はくの字のまま後方に倒れたのだが、そこには柔らかい女子高生の腕がありキャッチしてくれた。そして、そのまま担がれる。


「振り落とされない様につかまって下さい。今だけは私の肩に手をまわすのを、許可いたしますよ?」


 最近どこかで聞いたセリフだ。っと思ったら猛スピードで動き出したので、とっさにノアの肩に手をまわしてしまった。


「ちょっと待て! ノア! 走れるから!」

「入学式に遅刻しますよ?」

「遅刻でもいい! 見られてる。見られてる。ここは森じゃないから――って前! 前!」


 ノアは俺をお姫様抱っこしたまま、荷物を降ろしている荷車を跳び箱のごとく、飛び越えて綺麗に着地、そのまま何事も無かったように走り続けた。

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