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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第一章 旅立ちは機械少女と共に
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第27話 冒険のスタートだ!

 なんだっけ? ノアのパンティをくれ! って言えばいいんだっけ?


 違う違う。驚いて変な事を言うところだった。なんか話がおかしくないか?

 シェンユが3つの願いを叶えて貰えるのを昨夜来てお願いしたんだろ? そしたら、今日になって俺の願いが叶うのか? 何故だ? 俺は星柄入りの7つの玉を集めてないぞ。


『マスター。これはチャンスです』

「うわっ! いきなり耳元で喋るなよ! びっくりするじゃないか!」


 俺の脳内にはまだ、お前の後ろ裸姿が焼き付いたままなんだぞ! この状況で追い打ちをかけられたら危ないじゃないか! 30歳の童貞にはもう少し優しくしろよな。刺激が強すぎるんだよ!

 って、今の日本語じゃなかったか? 大事な話か。


「おっと。すまんがノア君。密談は控えてもらえないかな? 君の事はタツキ君を信用する事で許容とした。だからこそ、この質問に対しての答えはタツキ君に考えてもらいたいのでな」


 領主の言葉には力がこもっていた。これまでの話し合いは、俺達の事を知る為にあえてラフな感じを出していたのだろう。本来の姿はこっちの方だと思うのだが、いろいろ聞いてしまったので、なんか残念感が拭えない。


「あの。すみません。何故に俺の願いを叶えるのです?」

「えっ? 今の話の流れで分からないかのぅ……」

「申し訳ありません。マスターはこういう人なのです」


 なんだ? なんだ? 残念なのは俺の方なのか?


「まぁよい。昨晩、シェンユが来てワシにお願い事をしたのだ。その内容はタツキ君の力になって欲しいと。代わりに願いを叶えて欲しいと。そう言ったのだよ」

「えええええぇぇぇぇ?! 何故?」

「ワシが聞きたいわい!」


 シェンユにとって俺とは何なんだろうか? お気に入り? 命の恩人? なんか弱い気がする。命の恩人は字面だけでみると凄い感じがするが、実際は森で迷子になってたのを一緒に抜けただけだし…… お気に入りってなんだろうか。だったとしても、領主に願いを叶えさせるか?


 とりあえず、間違っている気がするので、断っておこう。


「辞退します」

「なぬ? 今、なんと?」

「いや、なんかそんな事してもらう程の何かをしてないので、結構です」

「うーん。タツキ君らしいな。君はそういう事を言いそうではあるが、これまでの話を聞いていたかね?」

「もちろん。ちゃんと聞いてましたよ」

「失礼、領主様。密談致しませんので、よろしいでしょうか?」

「よいぞ」


 ノアが俺の背後から左隣へと移動してきたので、目を合わせようとすると、アイコンタクトではなく、チョップをプレゼントしてきた。


「ぐはっ」


 予想外に強めだった。痛い。なんて奴だ! 頭部へのダメージは致死ダメージになる可能性があるんじゃなかったか?


「いいですかマスター。今の発言はこれまでで1番失礼に値します。領主様だけでなくユウツオの街に対して失礼ですよ。シェンユさんの一族に大きな借りがあって、困った時は助けてやると豪語したのですよ。それなのに街の為に無理な事もあると言っているのです。だからこそ、可能な願いであれば、それが多少不可解であったとしても叶えてやらねばならんのです! 領主様の面子もありますし、シェンユさんとその一族に豪語した約束ですから!」

「お、おう」

「分かっていますか? もうこの際分かってなくてもいいです! 今はシェンユさんに感謝して、領主様に願いを言いなさい。先程の話を思い出して無理の無い可能な範囲で、今、必要としている事をお願いすればいいのですよ」


 領主の面子を気にして俺に説教する気のきいた女子高生だが、その目は普段よりも見開いて右目の青い瞳の色が赤色に変化していた。右だけってのは、おそらく領主達から見えない位置にあるからだろう。


「私の言いたい事は理解できましたか?」

「おう。大丈夫だ」


 俺の椅子の背後に戻るノアを少しだけ見ていたら、1度だけ瞬きをして目の色が青に戻っていた。


「普段から、そういう事をすると報告を聞いているが、侍女が主人に手を出すなど普通はあってはならん事だ。故にタツキ君がノア君の傀儡になっていないか疑ってしまうのだよ」

「いえ。そんな事は無いです。たとえ俺であろうと至らない事は、ちゃんと叱咤してくれる。ノアはとても信頼できます」


 本当に頼りになるぜ。目が変色するアイコンタクトは初めての経験だったけど、バッチリ意図は分かった。

 理由とか、シェンユがどう思っているかとかは後で考えればいい。忘れていたが俺達は明日から宿無しだった。なら、このチャンスを逃す手はない。


「領主様すみませんでした。そしてシェンユありがとう。その言葉に甘えさせて下さい。願いをきいて下さい」

「心変わりが早くて君への信頼が揺らいでいるのだが、しかたあるまい。ワシも後になってシェンユから失望されたくは無いのでな。では願いを聞こうか」


 まず条件として、領主個人の力でできる範囲でなければならない。ユウツオの街が許容できる範囲でなければならない。この2つだ。

 次に俺達に必要な物だ。明日から住む場所、それから水と食料と、服もあった方がいいかもしれん。あとは情報収集の為に、本とか新聞とかを買わないと。米かそれに似た何かも欲しい。


 1番いいのは貴族してこの館に3食付きで住まわしてもらう事だな。けどまぁ、それは無理だろうな。ギルドの職員にしてもらうか? ローゼス氏が怖いなぁ。自由に行動できなくなるかもしれん。何か住み込みで働けるいい仕事を紹介してもらうのは、どうだろうか? 働いて金を稼げば生きていけるだろう。


 違うな。もっと縛りが少ない方がいい。自由に行動できないと神からのクエストやらをできなくなる。なら、やはり。コレしかないな。


「お金を貸して下さい!」

「なぬっ? 金だと?」


 ちゃんとテーブルに額をつけたが、ダメだったか?


「俺はノアと記憶が戻るまでは、とりあえず平和に暮らしていきたいです。住む場所を借りる為に、ご飯を食べる為に、服を買う為にお金が欲しいです」

「そうか。いったい、いくら必要なんだ?」


 おっ? いけそうか? 私財を全部とか言ってはいけない。いいぐあいの金額はどのぐらいだろうか?


「すみませんが、この街の物価とかが分かりませんので、2年ほど生活できれば良いのですが……」

「変わってるのぉ。貸せか。くれとは言わんのか?」


 俺は顔を上げた。領主はお決まりの髭撫でポーズで俺を見ているが、まさか。

 くれ! はアリだったのか?! クッソ。今更変える事は出来ない。


「その程度ならワシ個人の力でなんとかなるのぉ。安心したよ。やはりタツキ君は信用が出来る男だ。先の話を聞いておるから、貴族として一生面倒をみてくれ。などと言わないか少しだけ心配してたんだがのぅ。それは杞憂であったな」


 それって言っても良かったのかよ!


「要点をまとめると、金が必要だが、その理由としては2年程この街で生活する為という事だな?」

「そうです」

「よし分かった! ちょうど良い方法がある。その願いを叶えよう。少しばかり形は違うがタツキ君とノア君の生活を2年間保証しよう」

「本当ですか! ありがとうございます!」

「うむ。安心せい。ワシは信頼で領主になった男だ。約束を破る事などはしない」


 やったぜ! これで、この先2年間の生活は安定だ! この時間を使って情報収集をして神クエストをクリアすればいい。クリアできなくても、3年目から生活できる仕事を見つけられるだろう。


 俺は右手で握り拳の親指を立てて、いいねポーズで後ろを見た。ノアさんは両手で顔を覆っていた。どうやら残念な結果になってしまったようだ。


 その後、少し雑談をしながら料理を全部食べて館を後にした。

 来た時と同じ兎車に乗って、ハオラン氏がギルドまで送ってくれた。ちなみに、出されていたノアの分の料理は後で食べるように持たせてくれた。


「なんか、突然の出来事だったけど。上手くいったな。シェンユに感謝しないといけないな」

「マスター…… やってしまいましたね」

「おうよ。やってやったぜ! 明日からもちゃんとベッドで眠れるぞ」


 俺とノアはギルドの部屋へとは戻らず、英雄広場のベンチに腰掛けて少し像を眺める事にした。帰りの兎車の中でハオラン氏から聞いたが、どうやらこの像はユウツオの街を脅威から守った人達でシェンユの祖先らしい。

 つまり! 俺が願いを叶えてもらったのはシェンユのおかげで、シェンユはこの英雄の人達がいたから今の待遇を得てるワケで、だから俺はこの像の英雄達に感謝しなければならない!


「私は、やってしまいましたね。と言ったのですが?」

「まずい事になったっけ?」

「マスターは今朝の事を覚えていますか?」

「朝っていうたら、金貸しを探しに行った時の事か?」

「そうですが。その前にギルドの部屋で話した事を」

「えっと。なんだっけ?」


 ノアは額に手を当てて首を振った。新しいやれやれポーズだ。


「私の予言したとおりに莫大な借金をしてきましたね」

「あっ! そ、そんなに莫大かな?」

「2年分の生活費ですよ? 日本に変換してみましょうか? 家賃を8万としましょう。1年を365日としたら2年で5840万ですよ? さらに食費や光熱費なども考えると莫大な借金と思いますけど」


 マズイ! この2年の間に宝くじの1等でも当てなければ!


「ですが、仕方ありません。私がついていながら止められなかったのですから。サポートに失敗したのは私の責任です。そういえば、マスターの存在価値について理解できる良い機会でしたね」

「うん? あぁ、そうだな。ノアの事をよく知らない人から見ると冷徹な印象を受けるんだろうな」

「まぁ、金属で出来てますから」

「俺は全然感じないんだけどなぁ。普通の可愛い女子高生だよ」

「ありがとうございます。と言っておきましょうか?」

「分かってるよ。ノアはロボットだ」

「そうです。マスターは逆に私が人間では無い事を、もう少し意識した方がいいですよ。不測の事態に陥る可能性もありますから」

「そうなのか? 例えば?」

「この3日間、尾行されている事は分かりませんでした。私は機械ですので気配とか勘とかという物が働きません。ローゼスさんの件もです。生物に効く効果が私には効かない為、マイナスになる事もあります」

「なるほどなぁ。そういう事もあるのか」

「ですからマスターがいてくれて良かったです。私もマスターには絶対の信頼をしていますよ」

「本当かよ? いつも落胆してるじゃねーか」


 人通りが少なくなってきて、だんだんと静かになってきた。砂漠との境界にある壁の影も伸びてきて、英雄広場よりも西側はもう、かなり暗くなっている。


「明日の朝に、誰か説明してくれる人がギルドに来るって言ってな。あの部屋で寝るのは今日で最後か。ルーファン氏ともあまり会えなくなるかもな」

「そうですね。明日から頑張りましょう」


 そうだ。土台は固まった。動き出さなければならない! 俺はその為にこの世界に来たのだから。


「よーし」


 俺はベンチから腰を上げて、両手を上げて体を伸ばした。


「冒険のスタートだ!」


 ちょっと、声が大きすぎて周囲の視線が痛い程に刺さった。その内の1人は仕事帰りのルーファン氏だった。

第一章 始まり編 完

怠惰の能力を会得

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