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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第一章 旅立ちは機械少女と共に
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第24話 腹を割って話しましょう

「ノア君はタツキ君の護衛もしているという事だが、タツキ君はその実力を見た事があるかね?」


 え? なんだ? その質問。ノアの戦闘力の全ては分からないが、初日の事を考えると、俺を守りながら街からの追撃を振り切る事ができるなら相当な強さじゃないだろうか? けど、あの黒鱗ティラノは倒せないって言ってたからな。パワータイプでは無くスピードタイプなのか? さて、何て答えたものか……


「全力を見た事は無いです。ですが、この街に来てから常に俺の事を守ってくれました。俺は世界で1番強いと信じています」

「はっはっはっ。世界で1番か。そういえば君は記憶喪失だったな。その実力を覚えているワケが無かったな」


 しまった! いや、まだセーフか?

 しかしこの人、もしかして俺達を探ろうとしているのか? 領主だし街の安全の為に不審者に注意するのは分かるけど、領主のやる事か?


「ノア君はかなり信頼されているようだが、彼の為なら、誰にでも勝てる自信があるかね?」

「ありません」

「えっ?! そうなの?」

「マスター。いくら私でも勝てない相手はいます。なにより自分の実力は自分が1番よく理解していますから。ですが安心して下さい。マスターだけは何があろうとお守りしますので」


 領主が手出して俺に合図した。どうやら全ての料理を取り終えたみたいだ。とりあえず俺もマネして、料理を取り皿に移す。なんか中華料理店に来た気分だ。


「『なにがあろうと』か。素晴らしい心意気ですね。では彼にどんな危機が迫ろうとも、それが何であれ排除すると?」

「もちろんです」

「それが、この街であろうと?」

「当然です」


 俺は、取り分ける用の大きな木製スプーンを床に落としてしまった。木製だったので、それほど大きな音では無かったが、その落下音を最後に昼食会は静寂に包まれた。


 振り返ってみると、椅子のすぐ後ろにノアが両手を後ろに回し軍隊のような直立不動の体制で、無表情だが目は見開き領主を捉えて、立っている。


 顔を戻して、領主の護衛の2人を見る。ノアとは逆に両手に拳を握り、少し前かがみになって最初の位置よりも2歩ぐらいテーブルに近づいている。


 そして領主はというと、取り皿から料理を白いパンのようなナンのような物の半分にのせ、残りの半分を折ってサンドイッチみたいにして食べている。なるほど、あぁやって食べるものなのか……

 じゃない! 食べ方とかは今はそんな事考えてる場合じゃない。というか、この空気を作り出した本人が呑気にメシ食ってんだ? ちょっと軽い冗談を言いましたが何か? みたいに普通にするなよ!


「どうしたロン。タツキ君が食器を落としてしまったみたいだから、新しい物を持ってきてあげななさい」

「すみません。すぐに交換いたします」


 ロンって人は、俺が落としたスプーンを取ると、一瞬だけノアを見た後に奥のドアから出て行った。


「タツキ君、少し待っててくれたまえ。ところで、ノア君はギルドについては詳しいのかね?」

「詳しいの基準によりますが、あまり分かっていないと思います」

「そうか。ギルドは世界的組織で国や地域と協力しているが、それらに縛られず独自の判断で動ける力を持った組織だ。しかしこのユウツオは冒険者を優遇していてね。ギルドとは仲が良いのだよ。故に有事の際には積極的に協力してくれる」


 この人、凄いストロングハートだな。普通に話始めたぞ? もしかして空気読めない系の人なのかな? 領主なのに、そんなんで大丈夫なのか?


「つまりは、ユウツオの街を敵にまわした場合、世界的戦力のギルドも敵になる可能性があるという事ですね?」

「おぉ。そうだ。ノア君は理解が早くて助かるね」


 いやいや。食事会でやる話ですかね? しかも俺には話が振られないのだけど。


「マスター。座ったらどうですか? 放心状態に見えますが、そんなに早く食事がしたかったですか?」

「違う違う。会話の内容にビックリしてるだけだよ。放心してないし、食いしん坊でもない」

「世界戦力に驚きましたか。でも大丈夫です。安心して下さい。マスターの命を守る為なら世界を敵にまわしても戦いますよ!」

「はっ?」

「はっはっはっ。頼もしいですね。ワシの護衛に欲しいくらいだ」


 ノアはガッツポーズで俺にウインクしている所で、新しいスプーンがきた。

 放心していたワケではないが、頭の中が追いついておらず、渡されたスプーンを反射的に受け取り、料理を取らずにそのまま腰を下ろした。


 会話が普通に成立している。ノアはただ受け答えしているだけだろう。かなりの高性能だがロボットだし、空気を読むとかは出来ないと思われる。

 問題は領主だ。変な質問だ。敵視している事をハッキリと示していて、しかも何故かノアがターゲットにされている。いや、俺は後からって事もあるか。


 敵視しているなら、わざわざ館に呼んで昼食会なんてやるのか?


 奥の壁側に立っている護衛の2人を見る。最初と同じ位置で手を後ろに組み、直立不動だが鋭い目でこちらを見ている。


 おかしい。敵視しているという事は、こちらを危険人物としてるハズだ。何か直接会わなければならないとしても、護衛が2人は少なすぎないか? しかも領主本人からは3メートルは離れて位置に待機だ。


 この人が、どういう人なのか考えなくては。けど、今会った人物の事など分かるわけがない。誰か、から情報を得ていれば良かったんだけど。

 いや、少しなら聞いてるぞ。ノアが領主の人気は高いと言っていたな。あの変わり者のシェンユをお気に入りとしてるらしかったな。それから、最新情報はハオランって人の話か。人々から信頼されているんだっけ?


 もしかして、こちら信用している?


「黙って座って、どうしたかね? 今日の料理は2人の為に豪華にしてもらったんだが、もっと素朴な物が好みだったかね?」


 きっと、この言葉も本心だ。


 人から信頼を得るには、まず自分が相手を信じるべきだと思う。身分や地位を気にせず、本気の言葉で語りかける。


 ノアに対する言葉も本気の問いだ。街にとって危険なのか、否か。ただ、その明確な答えが欲しかったから、あの質問なのだろう。


「なるほど。判りましたよ」


 俺は立ち上がって、握りしめたスプーンで、料理を次々と自分の取り皿に移していく。


「領主様ともあろう人が護衛を2人だけなんて変だと思ったんですよ。もしかしたら、ドアの向こう側に大勢控えているかもしれませんが。いや、それは無いでしょうね。そういえば、ギルドでの扱いも優しいものでした。この街に誠意ってのが浸透しているんでしょう」


 相手を信じる。そして信じて貰う。それで話し合う。つまり……


「腹を割って話しましょう」


 俺は椅子に座り、領主の眼を見る。

 この昼食会の目的はそれしかない。こんなカッコつけて、間違っていたら死ぬほど恥ずかしいんだが。


「そういう事ですよね?」

「ふむ。やはりタツキ君は、そういう男だと思ってたぞ」

「俺は。という事は」

「私に何か問題があるようですね」

「そうだのぅ。ノア君は真意が分かりにくい。ワシは、これでも大勢の人々に慕われる領主だ。それなりに、人を見る眼は肥えていると自負している」


 領主は掌をテーブルの上で組み、姿勢を正した。


「その前に言っておく。この部屋にワシの護衛は2人しかおらん。2人から見て右はロンと左はトゥーモだ。2人とも実力はもちろんの事、信頼も厚く、口も固い。ここではお互いに本音で話し合いたいのだが、かまわないかね?」

「もちろんです。そもそも俺とノアには嘘つく理由がありません」

「ふむ。そうか。君達がこのユウツオに来た次の日から、ワシはロンとトゥーモに監視をさせていた。この街に来た目的と、どういう人物なのか調べる為だ」

「それでしたら、ギルドから、あんなにあっさりと私達を解放するべきでは無かったのでは?」

「おや? 2人はギルドマスターとその相棒については詳しくないのかね?」


 当然、詳しくない。なんだだろう。この知ってて当然みたいな感じ。


「クー君も、獣人のラガルガ君も有名だが、今回のような状況ではローゼス君と会うだけで後ろめたい奴等は、判るもんなんだが、2人は普通だったらしいからね」

「あの~。すみません。俺もノアも3人の事、全然知りませんでした。できれば判る理由を教えてもらってもよいでしょうか?」


 この発言には、領主だけではなく、後ろの2人も驚いたようだった。


「ローゼス君は優秀な(シン)魔闘気(マトウキ)の使い手でな。相手の内側の知る事が出来る。故に彼女の前では嘘や偽りは見破られてしまうのだよ。ワシも少しは使えるが、多少の動揺が判るぐらいでな。これを習得するのに、ワナン国で8年も修行したよ。彼女は天才なんだよ」


 なんと、あの悪魔の形相で睨んできたアジアンビューティーな女性は、相手の心が読める天才だったのか! 嘘とかつくとバレてたのか。

 アレ? 俺って嘘はついていたような? ついていなかったか? ノアはどうなんだろうか? 設定の説明はノアしたハズだけど、めっちゃ嘘ばっかりだぞ?


「今、動揺したようだね? 今頃になって何か隠したい事でもあったかね?」

「いえいえ。無いです。ローゼスさんの能力に驚いただけです」

「はっはっはっ。大丈夫。そういうもんだから。それに、ギルドからの報告でローゼスが君達を疑い無しと判断したからな」


 領主が手をだして食事を催促してきた。せっかく用意してもらった料理を、何も食べないのも失礼なので、とりあえずナンサンドもどきを1つ作って食べる。


「それで、私達を自由にしたのですね」

「誰かに被害を出したワケでもなかったしな。そうなったのだが、少しひっかかる報告もあってな。悪いが尾行をつけて監視させてもらったよ」

「ひっかかる事ですか?」

「今のタツキ君の様に、疑われたら、それだけで多少の動揺はあるものだよ。それも含めてローゼス君は相手を内側を見抜く。人間でなくとも生物なら嘘をつけなくても、緊張や焦りといった感情があり何かしらの反応があるらしい。しかしノア君はまったく反応が無かったそうだ。まるで魂の無い人形と話しているかの様であったと報告がきている」


 まさに、その通りです。それでノアの嘘は判別されなかったのか。


「あるいは、ローゼス君の(シン)魔闘気(マトウキ)をすり抜ける特殊な訓練をした、どこかの組織の凄腕な何者か?」

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