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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第一章 旅立ちは機械少女と共に
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第20話 では位置について、よーい

 桃が怒ってる。

 奇抜なピンク髪の男の子がほっぺを膨らませて、拳を出してファイティングポーズをとっているが、ハッキリ言って怖くない。シェンユの身長は150センチぐらいで、童顔な事もあいまって、小学生が拗ねているようにしか見えない。

 おじさんにとっては、親戚の甥っ子が不機嫌だな。程度だ。


「どこか行こうとしてたワケじゃないぞ。ちょっと外の空気を吸おうと思っただけだから」

「ホントかなぁ~? オイラの事うざったいとか思ってたりしない?」


 やべぇ。ちょっと思ってる。というかコイツはなんで、こんなにも俺達に絡んでくるんだ?


「シェンユさん予定よりも早いですね」

「ノアちゃん。聞いてよ聞いてよ~。タツキがさぁ。オイラの事をさぁ~」


 ノアちゃんだと?! こいつノアに“ちゃん”付けだと!

 ノアちゃん。いいな。俺も呼んでみたいが、呼んでみたいのだが、絶対に変な顔されるし、からかわれるな。我慢しよう。


「でさ、タツキはきっと、煙たがってると思うんだよね~。まぁオイラは気にしないけど、責任? というのかな命を助けられたから。オイラが出来るかぎりの恩返しをしないといけないと思ってるワケ」

「はいはい。大丈夫ですよ。マスターだけじゃなく、私も少々うざったいと思ってますから」

「「えっ」」


 にこやかな笑顔で、そんなにハッキリ言うのか。


「ノアって、タツキと違って、ちょっと厳しいね」

「ギルドの正門で立ち話は、すごーく邪魔ですからね」

「あっ。ゴメンよぉ。それじゃ、あっちのベンチに行こうか?」

「そうですね。行きましょうか。ほら、マスターも早く動いて。外の空気を吸うんじゃなかったのです?」

「そういや、そうだったな」


 3人で謎の像がある広場に移動する。

 ここはロータリー交差点の中央に像とベンチがあるが、左回りのみのルールは無いようで、右回りに移動する荷車もある。大通りの十字路の中心なので、かなり人通りが多い。


「どう? 早いけどお腹空いてる? いい店を知ってるんだよ~」

「いや、俺は今、何かを食べたい気分にはなれない。それにちょっと体を動かしたいんだけど」

「マスター。貴族区画を散歩してはどうでしょうか? シェンユさんも連れていけると言ってましたし」

「えぇ~。あそこ行くの? 何もないよ?」

「入れるんでは無かったのです?」

「入れると思う。オイラは特に普通に入れるから、一緒に行けば多分大丈夫」


 なんか、シェンユは行きたくなさそうだな。貴族区画に普通に入れるって、もしかして貴族なのか? 領主とも関りがあるみたいだし。

 ノアは情報収集がしたいんだろうなぁ。しかも俺の為に。なんて可愛い奴。もちろんノアに加勢しなければ。


「俺も見てみたいなぁ。なにかと貴族って面倒な奴らだろ? 少しでも雰囲気を知ってればトラブルを減らせると思うんだよね。なぁノア」

「そうですね」

「いいのかいタツキ? 無理しなくていいんだよ?」

「んっ? 何が?」

「記憶の手掛かりを探そうとしてる? でも貴族は面倒だよ? オイラと一緒なら、からまれる事も無いと思うけど、辛い事は思い出さなくてもいいと思うよ」

「シェンユさん! その話をどこで?」

「詳しくは聞いてないよ。センギョクさんから少しだけ」


 なんだ? 話が読めないんだが。俺の失われた記憶に貴族に関わる辛い事があるって感じなのか?

 確か俺は記憶喪失って設定だったな。覚えられないから過去の事を聞かれたら知りませーんで通せって事になってる。しかしギルドでは事情聴取されたし、あの森にいた理由を何かしら説明しているはず…… ノアが。


 俺は首を急回転させて右隣に座ってるノアを見る。


「マスター。今話すべき事ではありません」

「タツキは、まだ聞いてなかったかぁ。知らない方がいい事もあるよ」


 そういえば。忘れていたがギルマスに俺が貴族みたいな事を言われたな。

 不安だ。ノアが一体どんな設定をしたのか……


 左隣に座ってるシェンユが話に入り込んでくるので、体を少しノアの方へと向き直す。


「あまり他人に聞かれてよい事ではありません。今はシェンユさんがいますし」

「それなら、オイラにも聞かせてくれよ~。助けになるからさぁ」


 後ろから悪魔の囁きが聞こえてくるのは気のせいか? シェンユに加勢してしまうではないか。

 でも気にになる。何故か、どーしても気になる。どう言ったらノアは答えてくれるだろうか?


「よし!」

「うおっ。なんだシェンユ急に? ビックリするじゃないか」

「勝負しよう」

「なに?」


 シェンユが指を指すので、その方向を見る。

 昨日通った大通りとは違う大通りがある。両端に建物が並んでいるが、少し先から二つに分かれていて、そこから建物がなくなり草花が多い丘となってる。

 道の一つは左へ大きくカーブしてる。もう一つの道は、直進して上り坂になっていて両方とも行きつく先が見えない。


「この道をまっすぐで貴族区画に着くんだけど。そんなに遠くないから競争しようよ! オイラが勝ったらタツキの話を聞かせてよ。もちろん勝っても負けても貴族区画は案内するからさ。どう?」

「おっ。いいね。やるか!」

「マスター。大丈夫ですか?」


 俺はベンチから立ち上がって、軽く準備運動をする。ちょうど体を動かしたかったので走るの良い提案だ。のってやろう。


「貴族区画までの道を俺は知らないけど、大丈夫か?」

「大丈夫だよ。その坂を上りきって少し進んだら大きな門が見えるから。道もこの東大通りをまっすぐだから」

「道さえ分かれば問題ないな。俺はそれなりに体力はあるぞ?」

「えぇ? そうなの? なんか貴族って運動出来なさそうなんだけど、タツキは動ける貴族なんだね」


 俺は貴族という事になってるのか。やはり気になる。シェンユに負ける気は全くしないが、ノアの作った設定は早めに聞いておきたい。


「ノア。合図をたのむ」

「もう~。知りませんよ? では位置について、よーい」


 俺もシェンユも少し脚を広げて拳を握って構える。


「スタート!」


 目の前のロータリー交差点は人通りが多く避けるのが大変だが、大通りに入ると道幅に対して人が少なく走りやすい。

 チラッと横に目を向けるとシェンユが並走していた。そして背景から建物が無くなる。正面を見ると上り坂になっていた。


 坂が終われば平坦な道。ならば、気力的に走りやすいし、少しって言ってたから200mぐらいだろう。ラストスパートをかけて勝てる。

 勝負はこの坂だな。少し無理をしてでもリードして登りきる!


 俺は脚に力を込めてギアを上げる。一瞬だけ横を見るとシェンユが視界の端にいて、少し遅れていた。苦しくなってきたが、このままのスピードを維持して上り坂を走る。シェンユはもう、かなり苦しいはずだ。


 建物の頭が見えてきた。上り坂が終わる。

 道の先に確かに大きな門が見える。塀で囲まれていて、街の中に小さな街があるといった印象だ。アレが貴族区画か。

 だがしかし! それは小さかった。どうみても1キロ以上は先ににある。


「それじゃあ、オイラ本気出すよ?」


 抜き際にカッコイイ置きセリフを放ってシェンユは走り去って行った。


     *


「ゼェーハァー。ゼェーハァー」

「はぁ。はぁ。タツキ。ふぅ。大した事ないじゃん」

「お前っ。ゼェーハァー。話。違う。ゼェーハァー。だろ」

「まったく、マスターは。ひ弱なくせに志は高いんですから」


 結果。俺は惨敗して、貴族区画入口の門の前で膝をついている。

むしろ、たぶん2キロぐらいある距離を短距離走のごとく全力疾走で完走できた俺を、俺は褒めてやりたいぐらいだが。シェンユは凄い体力の持ち主だった。


「タツキよりもノアちゃん凄いね。遅れてスタートしたのに追いついてるし。全然息も上がってないんだね」

「マスターの300倍の体力はあると自負しておりますよ」


 300倍どころか無尽蔵の体力だろ。


「勝負はオイラの勝ちだね。約束守ってよ」

「分かってるよ。はぁ。はぁ。ちょっと休ませてくれ」

「ちょっとここで、休憩しながら、お話する?」

「いや。はぁ。俺が頭に入らないから。はぁ」

「では、マスターが歩けるようになったら、そのまま貴族区画を散歩しながら話を致しましょう。シェンユさんは案内してくれますか?」

「いいけど。案内って何すればいいかな? 楽しい物は何も無いよ?」

「私が気になった事を質問しますので、知ってるなら答えて頂きたいです」

「分かった」


 俺の心臓と肺が落ち着いた所で貴族区画に入った。シェンユは警備の人と仲が良いらしく顔パスで、俺とノアもシェンユの友人という説明だけで腕章を追加されたが、普通に入れた。


 区画内は綺麗に区画整理されていて、ギルドの建物と同じ大きさの屋敷がいくつも並んでいる。しかし屋敷のほとんどは、管理する為の使用人が数名住んでいるだけで、ユウツオにいる貴族はそんなに多くないらしい。



「帝都テンルウは近くに雪原があるからね。冬の間は少し暖かいユウツオに来るって貴族が多いのさ。だから今は落ち着いてるの」


 との事だが、雪原なんて冬になれば条件次第ではどこにでも出来るんじゃないのか? と思った。帝都ってかなり北の方にあるのだろうか。


 ノアの質問に対してシェンユは、知ってる事は全部答えてくれた。アレは誰の屋敷だとか、この空き地は誰の所有地だとか、すれ違う相手を貴族の誰さんとか。

 ノアは俺の話をしながらも、いろいろ見て質問をしてたが、話はブレずにシェンユからの質問にも答えて、通行人に挨拶までしていた。こいつは聖徳太子か?


 それで、肝心な俺の嘘の生い立ちはというと。


 まず、俺は西の国のあまり力のない貴族の子という事になっていた。それなりに裕福な暮らしをこの歳までしてきたので、残念貴族に育ってしまってる。という設定なんだが、誰が残念じゃい!

 しかも、親が不倫相手に生ませた隠し子的な扱いで、普通の社会とは隔離された森の中の屋敷で使用人達に育てられた為、一般常識が分からない。という設定になっている。


 ノアの方は、捨て子で幼き頃に人身売買から逃げ迷った森が偶然にも俺の屋敷の近くだった。命を拾われたので以後は命の恩人として俺に尽くしている。俺専属の使用人の1人という設定。


 しばらく前に、空賊に屋敷を襲撃されて、2人だけ生き延びたが、あの森に捨てられた事になっている。


 まとめると、ダメダメな残念中年貴族と、そいつが命の恩人なので、そのダメさをカバーして有り余る超優秀美少女侍女とういう組み合わせだ。


 この話で、ギルド側が納得したみたいだし、いろいろと不都合を隠せる設定なんだけど…… なんだかなぁ~。

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