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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第一章 旅立ちは機械少女と共に
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第13話 お前達! 許さん!

 体中が痛い。あのチャラ系獣人め! 顔が当てられないからって、そこらじゅうに蹴りをいれやがった。

 にしても、俺はこんなにされるほど悪い事をしたのだろうか? 確かにいきなり投げ飛ばしたのは悪かったが、その前から既にケンカ腰だったじゃないか。


「お前、冒険者には見えないが、なかんかいい動きをしてたな」


 おっ。初めて喋った。カムロっていう名前だっけ。話を聞いてくれそうな感じはあるが、今の俺にそんな気力がない。


 そのまま、首根っこを捕まれ引きずられていく。ロナウの発言からすると殺される事は無さそうだが、そもそも抵抗する体力がない。体力には少し自信があったんだけどなぁ。


 T字路を右に曲がったすぐ先に小さな庭程度の空き地があり、その中央に投げ捨てられた。ぬるっとした感触を確かめると、地面には赤黒い液体で満たされていて、辺り一面を生臭い臭いが漂っている。

 顔を上げると、そこにはロナウ達とは違う犬系獣人が三人いて、俺を見下ろしている。突然の事に皆、驚いている様子だが、何かを食べていた。


 ポタリ。ポタリ。頭に雫が落ちる感触がある。


 背筋が寒くなって、鼓動が早くなっていくのが分かる。


 まさか、まさかとは思うが、そんな食事をしているなんて……


 ゆっくり上体を起こし、少し先の地面を見る。そこには真っ赤な内臓があった。

「!!」


 痛みで動かなった体が無意識に後ずさりする。壁に背があたって、そこで空き地の中央にある物が見えた。内臓と血だまりのある地面より上の方に吊るされている物を見てしまった。


「うっ!うぇえぇぇ!」

「どうしたぁ。お前も食いたかったんだろ? 最初に俺にそう言ったじゃねーか」「チャイラ。やめろ。本気なワケねーだろ」


 空腹で良かった。何も出てくるものがない。

 アレは、何だった? いや、分かる。一瞬しか見れなかったが、両足から逆さに吊るされていた。腹部から胸部にかけて上下に割かれ、頭部と両腕が無かったが、そのシルエットは小さく、子供の様だった。


 まさか、この世界の獣人って、人をたべるのか? 俺は奴らの餌になるのか?

知らなかった。獣人ってのは恐ろしい奴らだ。気分が悪い。

 あんな子供を…… どこから連れてきたのか。街の人達は何も思わないのか? 街にも普通に獣人が歩いていたけど。まさか、知らないのか? そういえば、ギルドマスターの隣にも偉そうなのがいたけど、そういう街のルールなのか?


「ねー。ねー。ロナウちゃん。その人固まっちゃったけど、どうするの? 私達は食事してていいのかなぁ?」

「ちょっとムカついたから連れてきただけだよ。ここを見てから帰ってもらうつもりだったさ」

「…… お前も、チャイラと変わらんな」

「うっせーよ。カムロ」


 だからって、なぜ子供を。子供がのほうが美味しいとかだろうか? そんな事は知らない。大人が犠牲になれば……。そういう事じゃない。

 知らないからって、黙認出来るのか。ライオンが肉を食べるからって子供が襲われても、そのライオンを許せるのか?


「おい、お前もう帰ってもいいぞ」

「ロナウちゃん、少し離れて。そいつなんか変」


 子供が犠牲になるなんて、絶対にダメだ。街のルールだとしても、そんなもの許容出来るワケない! こんな街に居座るなんて出来ない! これが獣人の生態だとしても、子供を食ううなんて許せない!


「コイツ、魔力が高まっていないか?」

「冒険者には見えなかったんだがな。魔闘気が使える奴だったか。面白そうだ! 俺が相手しよう」


 いつの間にか体中の痛みが無くなっている。噛まれた腕と足も痛くない。

怒りが力をくれる様だ。ヒーローの卵だからかな。


「お前達! 許さん!」


 とりあえず、近くにいる奴を倒そうと立ち上がったが、すぐ目の前に黒い大きな獣人が一人立ち塞がった。周りの奴らも、戦闘態勢の様だ。全員で6人か。


「カムロだったか? 話をする気はあるか?」

「今は無いな。サシでやろう」


 いちおう話が出来ればと思ったのだが、俺もこの怒りの矛先を探してるうえに、6人同時に相手は出来ないと思っていたから、カムロの提案も都合が良い。


 上半身をねじり、右腕を後方に振りかぶった体制をとり、始めるぞと言わんばかりに、こちらと目線を合わせてくる。

 次の瞬間、すごい勢いで右腕が上から振り押される。垂直ではなく左上から右下に向かって斜めの軌道だった為、膝を少し落とし身体をずらしたので、なんとか避ける事が出来た。

 パラパラと空中に木屑が舞うのが目につき、急いで奴の振りぬいた手に視線を移した。その手は拳を握っておらず、開いた掌には鋭い爪が並んでいる。

一瞬、手加減しているのかと思ったが、間違いなく拳よりも殺傷能力が高い。


 そうか。さっきと違って、本気ってワケか。


 すぐに次の攻撃が始まっていたが、気をとられていたので対応出来る事なく、返って来た右のバックナックルを貰って頭と意識が飛んでいきそうになる。

 当たり場所が額だったのでダメージは少ないのだが、脳は揺らされ、視界は急激に変化し立っているのがやっとだ。


「どうした? 許さないじゃなかったのか?」

「うっ」


 画鋲が刺さった時の様な、鋭いけど小さい痛みを感じて、視線を落とすと右脇腹を鷲掴みにされていた。カムロの左手の爪がしっかりと俺の身体に突き刺さっていて結構な血が流れ出ている。

 しかし、その見た目に反して痛みはあまり無い。


 ボディブローやフックが飛んでくるのを、なんとか右手でいなして防ぐが、掴まれた状態では身体を使って避ける事が出来ない。


 カムロの左手首を狙って渾身の右手刀を叩きつける。しかし、すぐ脇の下にある場所に力の乗った攻撃をするには難しい。


 防戦一方だ。呼吸も荒くなってきたし、痛みを感じないのもドーパミンとかの影響だろう。しばらくしたら、激痛に襲われて地面に倒れるに違いない。

 まさか、こんなに自分が弱いとは思っていなかった。相手は人間では無いが、人型なら対抗出来ると思っていた。

 今すぐにこの悪習を変える事は出来ないだろうが、あの子供の為にも一撃、強烈な一撃はプレゼントしてやりたい。


 まずは、打たれるのを覚悟で奴の左腕をはがす。

 

 左手をまわして、カムロの左手の親指を掴みへし折るつもりで引っ張る。折れたら良し、折れなくてもその手を引きはがしてやる。


「終わりだな……」


 振りかぶった右手は拳を握っていた。打たれるつもりだったが、これは意識をもっていかれる。これはマズイ。すぐに右手を出そうとしたが、逆にカムロの左手に掴まれてしまった。


「くそったれが!」


 とっさに右手を伸ばして拳を受け止める。左手は腹の方から右脇腹に、右手は胸の方から左眼前に。ちょっと変わった変身ポーズの状態で、かなりキツイ体勢になってしまった。


 その瞬間、目の前には大きな口が開かれていた。

 アレ? これって、どっかで見たわ。


 俺の右肘あたりにデッカイわんこが噛みついた。なぜか少ししか痛みは感じないが、これはもう積みの状況だ。両腕が使えない、体勢が辛い、息は荒く、出血は酷い、なんで立ってられるのか。

 そしてカムロの右腕はフィニッシュブローの構えをしてる。


「うおぉぉぉぉぉ!!」

「ぐうっ」


 蹴りは意識してなかったのか、勝ちを確信していたのか。悪足掻きの右蹴りは、油断していた様なカムロの脇腹に見事に突き刺さり、顔を少し歪ませた。

 もう一発、次は左で強烈なのをくれてやる。蹴りしか出来ないからな。


 だが、俺の蹴りは空を切った。カムロはタイミングを合わせて跳躍したのだ。

 全力を乗せた左足の勢いを殺せず、俺は下半身をもねじれさせ、さらにキツイ体勢になろうとしていた。


 もうダメかもしれん。このまま体勢を崩し、最後の一撃を貰って、地面倒されるであろう。俺も餌になるのだろうか。


 カムロの体重が少し俺にかかる。そのままフィニッシュブローを打つつもりだったのか、上ではなく俺の方に前へと跳躍したみたいだ。


 その勢いを感じた瞬間、全身に電気が走った様だった。全ての雑念が消え一つの事を成す為に脳も身体も動き出す。

 左手でカムロの右手を掴み返す。右手を伸ばして右耳を握る。

 空を切った左足が帰ってきて着地したと同時に捻じれた身体を元に正す様に捻じり、背面を正面とする。さらに左腕を引いて、右腕を背面方向に引っ張り、カムロに捻じれを加える。


 今ある勢いを力に変える為、勢いを殺さない様に流れにまかせる。ただの最後の仕上げは丁寧にする。そこに全ての衝撃が加えられるように集中する。


 弧を描いて、壁との小さな隙間めがけ、カムロを地面に叩きつける。俺の右肘が先に地面につく様に、全ての勢いと本人の体重と俺の力を使って、強烈な一撃を鼻先にプレゼントする。


 俺の変則的な背負い投げは成功した。

 轟音とともに木製の壁が半壊し、その瓦礫の中にカムロは埋まった。


「はぁ…… はぁ…… 立つなよ……」


 俺は、何故か立っていられるが、もう腕は上がらない。


「マジかよ」

「カムロちゃんがのびちゃうなんて、ビックリ」

「どうするんだロナウ?」


 どうやら、すぐに襲ってくる事は無い様だ。カムロは実力者だったんだろう。獣人達にとって想定外の状況になってしまってるのか。


「まいったな。痛めつける予定だったが、カムロがやられるとは。このまま帰したくは無いが、しかしアイツもボロボロみたいだからな。これ以上やるのは殺してしまうかもしれん」

「殺してやりましょうよ!」

「チャイラちゃんバカ!! (あるじ)が知ったら大変よ」

「だってアイツ、ムカつくじゃないですか……」

「!! この匂い」


 突然、口を閉ざして全員が固まってしまった。すると食事してた3人の後方にある扉から獣人ではなく人間の男が出てきた。

 背は高く細身で、こいつも民族衣装スタイルだが、ブカブカのベレー帽の様な物を被っており帽子からはみ出る程度の長髪で、大きな丸眼鏡をした目の細いが印象的だ。あまり強そうには見えない、少なくとも、獣人5人を一人でどうにか出来る感じではない。


「誰が誰を殺そうとしているんだい?」


 信じられない事に獣人全員が恐怖の表情を浮かべている。さすがにこれは警戒しなければならないが、今の俺は人間相手にもどうしようも出来ないだろう。


「この状況はなんだい? 誰か説明してくれない?」

「あ、(あるじ)。コイツが、俺らをバカにしまして、カムロを」

「黙れチャイラ! ロナウ、僕が聞いたら、最初に動くのは君の役目だろ?」

「すみせんでした」

「で、説明してくれる? 彼は何故ここに?」

「えっと、食事場が見たいと言ったので、ここに連れてきました。それで、見たら不快だった様で、カムロとやる事になって、やられました。」


 獣人達が従順にしている。まさに犬だ。飼い主的な存在なのか、まさか躾けとかしているのだろうか。

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