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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第103話 ただいま、戻りました

 ノアは戻って来ない。


 まぁ、そりゃそうだ。アイツはユウツオで待ってろって言ってたからな。今いるのは帝都テンウルの宿屋だ。


 いや、違う。そういう事じゃない。


 ノアは、もう……


 これから俺は1人で、この世界を生きていかないといけないのか……


 生活は出来るのか? あと1年半は学生だし、お金は借金だけど、領主様から支給されるから大丈夫だろう。


 前の世界と違って、今じゃ友達も結構いる。自称親友のシェンユ。カードオタクのユウとジョノ。慕ってくれる双子のシャンウィ君とシェンファちゃん。歳の近いカハク。友達いなくてシンパシーを感じるヒルデさん。俺の人生初の女友達の大富豪なダリアさん。友達なのか、ちょっと分からないヒトラ様とヒョウカ氏。


 頼れる知り合いも多い。一緒に酒も飲めるフォルストに、奴を想うパメラ氏。その2人を見守ってるギルド嬢のルーファン氏。頼りないギルド職員ムーチェン。

 

 我儘亭の人達も、いつも助けてくれる。かつてA級冒険者だったセンギョクさん。それを支えるミンレイさん。酒豪で先輩のジンリー先輩と、その世話役ウォンリー先輩。


 以外と、生きていけるかもしれん。


 神からのクエストはクリア出来るだろうか? クエストが書かれたハデなボードは部屋に置きっぱなしになってる。なんとかなるかもしれん。

 「10年ぐらいで」とか言ってたし、10年経過したら、神の方から接触してくるかもしれない。


 何にせよ。もう、前の世界に戻れなくてもいい。この世界で俺はヒーローになる。


 でも、そこにノアはいない。


 ヒーローを分かってくれて、俺を1番理解してくれて、前の世界の話も出来て、無条件に信頼できて。


 もう、あのドヤ顔も、呆れて顔も、可愛い笑顔も見る事はできない。


 俺は、やっていけるだろうか……


「タツキ、入るぞ?」


 フォルストか。毎日、日が沈む頃に様子を見にきてくれる。もう今日で4日目だ。正直、ほっといて欲しい。


「何度も言うがなぁ。灯鱗ぐらい付けたらどうだ? 部屋が明るい方が少しは気分も良くなると思うぜ?」

「……」

「なんていうかな。今日の昼のアレは良くないと思うぜ? ダリア嬢ちゃんは4大貴族の血族だぞ。4日前も忙しいのに、どうにか時間を作って来てくれてたみたいだぞ? お前は金を借りたんだろ? 彼女が来てくれなきゃ、ギルドから出れなかったろ?」

「……」

「それで、ノアちゃんの事を知って、今日もお前に会いに来てくれたんだろ? 本当に貴族なのか? ってぐらい、いい娘じゃねーか。あんな慕ってくれる人を無下にするのは良くねぇなぁ〜。辛いのは分かるけどよ。ダリア嬢ちゃんに対しての態度は、ちょっと良くなかったな」


 分かってる。失礼な事をしたとは思ってる。ダリアさんが、どんな思いで来てくれて、話しかけてくれたのか分かってる。

 でも「クラスメイトの間は私がノアの代わりに、支えるから」なんて言われたら、ノアの代わりになんか誰もなれない! って思うじゃないか! 言ってしまうじゃないか!

 だって、本当にノアの代わりなんて誰であろうと無理なんだから。神から与えたられた唯一無二の存在なんだから。


「知ってると思うが、俺も大切な家族を無くした。3人同時にだ。その時は辛くて、何もやる気が起きなくて、何日も部屋の隅で腐って過ごしてたよ、今のお前みたいにな。だから、タツキの気持ちは理解できてるつもりだ。けどな、俺は励ましてくれる仲間に怒鳴ったりはしなかったぞ?」

「お前の仲間は、苦楽を何年も共にした仲間だろ?」

「そうだ」

「お前に俺の、ノアの、何が理解できる? 会って1年もしないお前等に! あの時、全員で戦えばノアを助けられたかもしれない。なのに、誰も俺についてきてくれなかったじゃないか!」

「確かに、お前達を理解できない。なぜノアちゃんは、人族最強のジークにケンカをふっかけたんだ? お前は、なんか納得してるようだけどな。俺には理解出来ない」

「お前等に俺とノアは理解できない」

「ふぅ。氷雪地帯の中で旅装備で、人族最強MA級冒険者のジークを相手にするだと? 全滅しかない。あの状況で全員で撤退した俺の判断は正しかったと思ってる。ノアちゃんからも、そういう指示があったんだろ?」

「……」

「お前達2人には、特別な絆があるのは分かるよ。主人と侍女ではない。かといって男と女でもない。普通じゃありえない特別な関係があるのは見てて分かる。でもな。ノアちゃんを失ったからって1人だと思うな。タツキは1人じゃねぇーよ」

「それは、お前には妹が残ってるから言えるんだろーよ!」


 あっ。


「そうだな。悪かったよ」

「フォルスト……」

「明日、ガルーパフの昼前の便に乗ってユウツオに帰るからな。準備はこっちでしとくから、朝6時にロビーに来いよ。来なかったら置いてくからな」


 そんな事を言うつもりじゃなかった。


「あっ! 待って……」

「なんだよ」

「その、すまん」

「…… まぁ、俺はいいけどよ。他の奴には、そんな態度するんじゃねぇぞ」


 本当は感謝してるんだ。


 フォルストが指揮をとってくれたおかげで、帝都に戻ってこれた。ソリの業者にイレギュラー対応の金を払って、俺が吐いた血が付いた防寒具を買い取って、レンタル兎獣を返して、宿屋を3部屋も確保してくれて、全てやってくれた。

 しかもこの4日間に、入口の橋の衛兵達にノアが戻ってきたら、連絡がくるようしていた。冒険者仲間な話をして、氷雪地帯付近に行く事があったらノアを見てないか気にかけてもらうようにしていた。

 ユウツオと巨大樹群にも連絡鳥も飛ばして、ノアについての情報を求めた。


 本当にフォルストが一緒にきてくれて良かった。シャンウィ君とシェンファちゃんにとっても、俺だけよりも良かっただろうな。


 今日も防寒具を抱きしめて、部屋の隅で眠る。これが唯一、ノアが身につけていた物だ。フォルストが気を効かせて買い取ってくれた。


 明日には、立ちあがろう。明日には皆に謝って、ありがとうって言うんだ。



     *



 朝。今日も目覚めた隣に、蒼髪な美人アンドロイドはいない。


 どういう訳か、目覚めたのは5時みたいだ。俺の心は腐りきってはいなかった。って事だろうか。


 特にやる事が無いので、ロビーに向かう。いつもなら、顔を洗って、着替えて、朝食も食べるハズだが、やる気が起きない。


 ロビーに着くと、誰もが俺を避けた。

 そりゃそうだ。4日も体を洗ってないし、まとも食事もしてないからフラフラだ。おまけに血のついた防寒具を抱いてるからな。


 3つあるテーブルの1つに座ると、いちおう宿屋の人が朝食を注文するか聞きに来た。答えるのも面倒だったので無視した。


 しばらくすると他のフォルストと双子がやって来た。俺の方が先に来て待っていたので驚いているみたいだ。


「タツキの兄貴、大丈夫っすか? なんか痩せてますよ?」

「あぁ」

「俺達が後になるとはな。お前、そのナリじゃぁ、荷物は持てそうに無いな。持たせて倒れられた方が面倒だ。俺とシャンウィで持つから、ちゃんと歩いて着いてこいよ?」

「あぁ」

「タツキさん、そのぉ~。辛かったら身体強化をしますから。言って欲しいの」

「あぁ」

「よし。それじゃぁ行くか。ユウツオに帰るぞ。たぶん外に兎車が来てるハズだ。ちょっと高いが今回はガルーパフ駅まで2時間で行けるからな」


 なんか、フォルストの金使いが荒い。しかし楽になるのは良い事だ。今は何もやる気がしない。


 兎車に2時間ゆられて着いた帝都テンウルの駅からガルーパフに乗ってユウツオに向かう。これまでで1番の巨大施設も、初めての巨大生物の乗物も、本来なら感動して興奮するだろうが、何も感じなかった。


「基本的に客室は6人ひと部屋だ。けど俺達4人でひと部屋使えるようにしておいた。俺は入口側の下のベッドを使うぜ? 上は荷物置きにしておこう。隣の2段ベッドはシャンウィとシェンファで使ってくれ」

「分かったの。シャンウィ、シェンファが上ね!」

「言うと思った。俺はどっちでもいいよ。それよりフォルストの兄貴、外から見た時に最前客舎に窓がたくさんあったけど」

「眺めいいらしいな。行ってこいよ」

「おぉ! シェンファ、見てこようぜ」

「うん。シェンファも行く」


 子供らしいな。俺と違って元気があって良い。


「お前は、そこの窓際の2段ベッドを使えよ。下の方で幕を下ろせば、静かに過ごせるだろ?」

「あぁ。ありがとう」


 言われた通りにベッドに入って、幕を下ろした。


「暗いのがいいってなら、別にいいけどよ。今は、あまり余計な事は考えるな。ユウツオに戻る事だけを考えてろ。ノアちゃんは『ユウツオで待ってろ』って言ってたんだろ? なら、もしかしたら、先に戻ってて待ってるかもしれないじゃないか」

「あぁ。そうだな」


 それは薄い望みだ。


 ユウツオに戻るにはガルーパフが1番早い。そうするなら必ず帝都テンルウに戻ってくる。そしたら、目撃情報があっても良いだろう。というかノアなら宿に来る。

 帝都に戻らずに、適当な冒険者パーティに混ぜてもらって、大平原を横断したとしても、必ず中間地点の巨大樹群に寄る事となる。そしたら、何かしら情報を得られるハズだ。


 きっとノアの残骸は、あの吹雪の中だ……


 俺はガルーパフの客舎に揺られている間、1度もベッドから出なかった。誰とも会話をせず、うずくまっていた。そして3日後の夕方に、約ひと月ぶりにユウツオの街へと帰ってきた。


 ガルーパフの駅のある商業地区は貴族地区の北側にある。俺達は貴族区画には入れないので、少し大回りをして1時間半かけて徒歩で英雄広場に向かう。さすがに荷物の3分の1は俺が担いだ。


 英雄広場から我儘亭までは俺1人で帰る。ギルドに返却物とか学校に報告とか色々とあるけど、3人がやってくれるそうだ。

 ノアの死亡報告とか、とても俺には出来ない。隣で聞いてるだけでも泣きそうになる。素直に3人の優しさに甘えよう。

 10歳の少年少女に気を使われる30歳って、ちょっと、それだけで泣きそうになるけど。


 我儘亭の皆は、ノアの事は知ってるのだろうか? しばらくはシェンユと会いたくないな。アイツは優しいから、俺が暴言を吐いてしまいそうで怖い。


 本日終了が掲げられた扉をくぐると、ミンレイさんとセンギョクさんが明日の仕込みをしてる最中だった。


「ただいま、戻りました」

「お、おう」

「タツキ君……。その、ノアちゃんの事、聞いたわ」

「そうですか……」

「しばらくは休むといい。冒険者やってると稀にある事だ。俺も若い時に、やらかしてしまった事はある」

「疲れてるでしょう? 今日は、もう休むといいわ」

「そうします」


 気を使ってくれる2人に一礼して、階段を上がり自分の部屋に入る。


 疲れた。少し眠ろう。


 そういえば、この1週間、ちゃんと寝てないな。半年も過ごしてきた自分の部屋は落ち着く。ノアと2人で、この部屋で過ごしてきた。


 荷物を放り投げて、汚れた服を脱ぎ捨てて、パンイチになってベッドに倒れる。


 ひと月前には無かった抱き枕が置いてあった。きっと事情を知ったミンレイ氏が置いてくれたんだろう。


 ちょうど、何かにしがみつきたかった気分だ。


 ノアの防寒具を被って、抱き枕にしがみつき、少しだけ泣いてから、俺は眠りに落ちた。

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