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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第101話 ジーク=ウィッチホープ

「初めまして、ジーク=ウィッチホープと言います」


 パンイチのイケメンは、両手を上げたまま頭を下げた。


「すげぇ。本物っすか?」

「人族最強の男か……」

「英雄さんですよね?」

「申し訳ないが、エクスカリブリスを見せていただけないかのぅ?」


 俺とノア以外のメンツは驚きと羨望の眼差しをしている。御者さんは剣が見たいとか言い出してるし!

 俺の現状としては混乱だ。どう見ても変態にしか見えない。

 だがしかし、ノアは警戒している。眼も赤く変化してたし、戦闘態勢だった。


 って、ノア?


「剣は見ても良いですよ? なら、ちょっとお喋りを――」


 パンイチイケメンの自己紹介を見て、視線をノアに向けると、そこには誰も居なかった。


 青い閃光のようなのが駆け抜けた気がする。


 その光を遅れながらに追うと、パンイチイケメンにタックルするノアの姿があった。 パンイチイケメンは強烈なタックルで、くの字に曲がり1メートルぐらい地面から浮いている状態だった。


「なっ!」


 何してるんだ!? その一言を発する前に、ノアは回転して跳び上がり、遠心力を効かせた強烈な回し蹴りを放つ。

 直撃と同時に謎の黒い雷のようなものが、周囲の空間に一瞬だけ走る。

 そして、パンイチイケメンは吹雪の中へと消えていった。


 地面に着地と同時に、ノアも自ら飛ばした相手を追って吹雪の中へと消えていった。


「何を…… して、いるんだ?」


 一瞬の出来事だった。動きを目で追えたのが奇跡だ。状況を理解して、身体が動く事は出来なかった。

 もちろん俺だけで無く、全員その場で見てる事しか出来なかった。経験の多いフォルストでさえも。


「あ、あぁ? 何が起きた?」

「ノアの姉御がジークさんを蹴ってたように見えたっす」

「シェンファも、そう見えた」

「どういう事だ? おい、タツキ!」


 なんだ? この状況は?


「おいタツキ! なんで、お前の侍女はジークにケンカを吹っかけたんだ?」


 どういう事だ? 俺が知りたいぞ?


「聞いてるのか! タツキ!」

「あ、あぁ。えっと」


 何だっけ。ノアは何て言ってた? 「逃げて下さい」と、それから「アレは敵です」も言ってた。それから……


「この金で、帝都テンルウに戻って、ガルーパフを使ってユウツオに戻れ。って……」

「なんだりゃ!? どうすんだ?」

「ゴホッ。さ、寒くなってきたっす」

「シェンファは、もう魔道具動かせないの。交換してほしいの」


 ここに、長居は出来ないな。凍死してしまう。


「お客さん。あの女性は、何してるんだ? 戻るのかね?」


 そうだ! ノアはどうするんだ? アイツは凍死する事は無いが、この氷雪地帯を脱出は出来るのか?


「くっそ! ノアちゃん、何やってんだ!」

「タツキの兄貴、どうしますか?」


 ノアを置いて行くのか?


「フォルスト。コレを預かっててくれ」

「おい、こんな大金をか?」

「お前を信用してる」

「分かったよ。で、どうする?」

「テンルウに戻って宿を取っててくれ! 俺はノアを連れ戻してくる!」

「はぁ? ちょっと待て!」


 ソリから飛び降りてノアが消えた方角へと走る。積もる雪に足を取られながらも、力のかぎり走る。


「戻ってこーい!」

「タツキーさーん!」

「遭難するっすよー!」


 皆の声が小さく聞こえる。身体の向きを変えずに、頭を動かして少しだけ振り返えると、既にソリは薄らシルエットしか見えなくなっていた。

 周囲を見回しても吹雪意外は何も見えない。進んできた足跡もすぐに消える。


 身体の正面を信じて前に進む。


 冷たい風が全身に突き刺さる。


 凍てつく空気が肺に突き刺さる。


 苦しくて走れないが、一歩一歩足を進める。ゆっくりでも絶対に止めない。

 吹雪に頭が冷えてきたのか、冷静に考えれるようになった気がする。


 ノアは明確に「敵です」と言った。今まで、そんな事は無かった。

 おそらく、奴について事前に知っていたんだろう。そして避けられない相手だと判断したのだろう。


 奴はパンイチだった。それで、この吹雪の中を笑いながら挨拶をしてきた。普通じゃない。寒さを感じないとか、体温を一定に保つとか、そういった類の能力を持ってるのだ。


 フォルストは人族最強の男とか言ってたな。奴が名乗った名前は学校でも聞いた気がする。たしか……


「ジーク=ウィッチホープ」


 呟いてみて、思い出した。“ジーク”って、MA級冒険者じゃないか! あの“大魔女サヤ”と同じ強さを持つ奴なんだ。


 よく考えてみれば、ノアは俺を守りなが闘う事だって出来るハズ。それをしない。出来ない。俺に逃げろと指示を出すという事は、おそらく勝てない相手なのだろう。


「ゴホッ。うっ。ゴホッ、ゴホッ」


 歩いてるだけでも苦しい。そして当然ながら、めっちゃ寒い!


 ずっと、このままなら、俺は凍死してしまうだろう。


 だがしかし、たぶん大丈夫だ。俺の能力が発揮されれば身体能力が向上する。吹雪の中でも問題なく活動できるようになるハズだ。

 そして、きっと俺の能力は発揮される


「ノアを助ける」


 最初に勘違いして、ロナウ達と争った時もそうだった。

 サンダイルに食われてダリアさんを助けた時は特に顕著だった。

 ユウツオから帝都テンルウに向かう道中で皆を守る時もそうだ。

 けど、ゼルトワと闘ったときは何も起こらなかった。


 たぶん、俺の能力は。誰かを助けたい時に発揮される。


 なら、今はきっと、ノアを助ける為なら、発揮されるハズだ!


 一歩進める毎に身体が熱くなってくる。身体の震えが無くなり、胸の苦しさを感じなくなる。

 テレビの砂嵐のようだった眼前も、舞荒れる雪のひと粒が判別でき、視界がクリアになっていく。


 イケる! これなら戦える。ノアを助けられる! ラッセル車のごとく、積もる雪も降る雪も、ものともせず走る。


 10分ぐらい走ってると突然、爆発音が鳴り響いて、突風が周囲の雪を消し去り、少しだけ雪空から何も無い曇り空に変わった。


 その原因となったと思われる火球が、遠くの上空に6つ連なって見える。


 その下にノアが立っているのが見えた。


「ノア?」


 100メートルぐらい先か? 今の視力でも、よく見えないが、なんかおかしい。身長が2倍近くあって、足が太くて長いし、膝の後あたりから何かが生えている。


 ほんの2秒ぐらいで、元の吹雪へと戻ってしまったけど、進んでる方向は間違っていない。あとは、全力で走るだけだ。


 気合いを入れ直して走ろうとした瞬間、今度は違和感を感じた。後から妙な音が聞こえる。風切り音のような音が。


 振り向くと、俺の右隣スレスレを大きな物体が飛び去っていった。

 吹雪に紛れてたうえに凄いスピードだったが、動体視力の上がっている俺にはハッキリと見えた。


 剣だ! 俺達のソリの近くに飛んできて、突き刺さってた、大剣だ!

 今の動きからすると、奴の大剣は自在に飛べるのか? だとすると手からすっぽ抜けたんじゃ無い。狙ってあの場所に突き刺したんだ! 俺達を足止めする為に。


 つまり、待ってたのか? 俺か? ノアか? フォルストやシャンウィ君とシェンファちゃんって事は考えにくい。

 ノアは奴を知ってるようだった。となると狙われているのはノアか!


ノアが危ない!


 わざわざ狙うって事は、あのノアを倒せる自信がある奴だ。更に今、奴は武器を手にしただろう。ハンターさんがモンスターを狩りに行く時に持つような大剣を。


 すぐに全力疾走する。


 元々、全力で走ってたつもりだったが、短距離走を走るつもりで、足を上げて、腕を振って、地面を蹴る。


 だんだんと足が重くなり、上がらなくなってくる。


 息が上がって、呼吸が荒くなる。


 視界がぼやけてきた。


 アレ?


 能力の発動が切れたのか? 何故だ?


 アンドロイドには魂が無いからか? ノアはGMの派遣だから対象外なのか?


 そんな…… もう少しで、もうすぐ追いつくのに……


 膝が崩れた。両手が地面についてしまった。


 視界の先には、激しく動くシルエットが見える。


「ノア……」


 ノアは、いつも俺を助けてくれた。それが目的で役目なんだろうけど、それでも俺の事を第1に考えてくれて、失敗はカバーしてくれて、いつもそばに居てくれた。


 今度は俺が助けるんだ!


 ノアは眠らない。疲労もしない。記憶力も良い。家事から戦闘まで、なんでも出来る。アンドロイドだから。そういう機械だから。


 けど、だからって助けない理由にはならないだろっ!


「はぁ。はぁ。クソっ! なんで。なんで能力が使えない? ゴホッ!」


 寒さで震える腕が、上体を支え切れない。


「なんでだ? ワケわかんねぇ」


 悔しいが、身体を地面に倒す。うつ伏せで、ただ震える事しか出来ない。


 俺はバカだ。


 何度もこういう事はあった。自分の力を過信しすぎて、自分なら出来るって自信がありすぎて、それで結局、自分が助けられる側になってしまうんだ。

 何度も周り奴等に苦言された。「訓練じゃなかったら死んでるぞ?」とか「そんなんだと二次災害になるぞ?」とか。俺の事を知ってる奴からは「親もそうやって死んだんだろ」っても言われた。

 だから、何にもなれなかった、ヒーローどころか、警察官にも消防官にも自衛官にも。なんとかなれたのは、ビルを守る警備員だ。


 でも、それでも、ヒーローになりたかった。自分の事よりも他人を優先して、助けを求める声に応えるヒーローに!


 あの人が、そうだったから。


 この世界でなら、なれると思ったんだけどなぁ……


 地面が冷たい。風も冷たい。けど寒さは感じない。寒さよりも、眠さを感じる。


 まぶたが重い。


 もう、目を開けてられない。


 俺は不死身らしいが、それは“頭部以外は”だ。寒さで頭部がやられてしまったら、凍死する事もありえるだろう。


 最後に、ノアの闘う姿を見て、俺は死ぬ。


 ダメなマスターでスマン。


 でも、お前を助けたかったんだ。


 マスターなら、助けるのは当然だろ?


 ノア…… ゴメン……

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