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魔女が真龍に仕掛けた我儘戦争(仮です。迷走中です。少し変えるかもです)  作者: 漆本李彩(しつもと りあ)
第二章 冒険者学校は才女だらけ?!
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第100話 逃げてください

ついに100話です。

年間50話を目標としてたので、本当なら3月末に達成するつもりだったのに……

そろそろネームドキャラを1人ぐらい退場させたいなぁ。と思う今日この頃です。

「やっぱり出る時は時間かからなかったな。そのまま真っ直ぐ、見えているあの建物まで行くぞ!」

「フォルストさん。あの建物は、なんなんすか?」

「氷雪地帯のすぐ前に立ってるだろ? アレは、そのまま中へと突き抜けていて、西側へと連れて行ってくれる業者の建物だ」

「兎獣が一緒でも大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ。兎獣や犬獣などの小さめな騎乗獣1匹までは連れて行ける」


 現在俺達は、帝都テンルウの出口の大橋を氷雪地帯に向けて歩いてる。メンバーは俺とノアにフォルスト、それとシャンウィ君とシェンファちゃん。あと荷物運び用の兎獣が1匹、ノアが借りてきてた。

 ダリアさんはいない。


 あの後、全員がギルドに戻ってきてからダリアさんから報告があった。元々、両親や兄弟に会いに帰ってくる予定だったらしい。

 それから、貴族の集まりに参加とか、王族との交流パーティとか色々とやる事もあるとの事。

 なので、夏休み期間は帝都で過ごして、中期授業が始まる9月にガルーパフを使ってユウツオに戻ってくると言っていた。


 冒険者になるなら、そういった行事に参加しなくても良いのでは? と聞いたら、シャン・レン=ワン家として戻る可能性もあるから最低限の事はしておかないといけないという。


 ダリアさんも色々と大変そうだ。お金も貸してくれたし、普段からお世話になってるし、中期授業が始まったら何かと手助けしてあげよう。


 橋を渡り終えて、3日ぶりの大平原の大地を踏み締める。


 帰りは歩きになるし、戦闘要員が1人少ない。大抵の敵はノアがいれば何とかなるだろうけど、アイツは俺の命を最優先するからなぁ。怪人みたいなヤバイのと戦闘になったら「逃げて下さい」とか言いそうだ。そしたら残りのメンバーは見捨てる事になるだろう。

 もちろん、そんな事は絶対にしない。気を引き締めて帰ろう。いざとなったら俺が盾になる。俺の身体は頭部さえ守れば、他の部分は再生できるし!


「おぉ。今日あたりがピークか? 大平原を越えてきた奴等が来たなぁ」


 俺達は西の氷雪地帯と向かってるが、フォルストは右を向いていた。北側、氷雪地帯を大回りして帝都へ向かうルート、俺達が3日前に通ってきたルートに3つのグループが通って来ていた。


「ん? あれ?」

「マスター、どうしました?」

「1番手前の兎獣に乗ってる集団は『深緑の支配者』の人達じゃないか?」

「そうですね。パメラ様がいますね」

「げぇ! 今年はパメラと会わないと思ってたのになぁ。まぁ、ちょっと挨拶していくか」


 フォルストよ。何故にお前はパメラ氏の事を避けるのだ?


 足を止めていると、パメラ達5人パーティが近づいてきた。パメラは1人で兎獣に乗り、他は2人乗りをしている。顔に疲労が濃く残ってた。目の前に来るまで俺達に気づかない程だ。


「よぉ。お疲れ様。大丈夫か?」

「……フォルスト」

「チェジェンがいねーな?」

「一昨日、死んだ」


 なっ! 死んだ?


「すみません! 私がミスして、うっ、うぅ」

「私も。ゴメンなさい」


 2人の若い女の子が泣き出した。2人とも知らないが、たぶん、冒険者育成学校の子だろう。


「大丈夫よ。私達は冒険者だから、覚悟はしているから」


 後に乗ってる『深緑の支配者』の人が慰めている。


 そうか…… 死ぬのか……


 そうだ。この世界では、ちょっと隣の首都まで行こうとして、旅行気分では行けないのだ。命懸けで行かないと行けない。そういう世界なんだ。


「無理して依頼受ける必要なかったんじゃねーのか?」

「無理してない! 万全の準備をして望んだのよ。ちょっとヘマしたけど、何よりも私達は冒険者よ。皆、覚悟してきているわ」

「そうだな」


 パメラ氏はきっと、帝都でフォルストに会いたかったんだろう。


「フォルスト達も今着いたの? 良かったらテンルウで一緒に夕食にしない?」

「悪い。俺達は今からユウツオに戻るんだ。テンルウに着いたのは3日前だ」

「3日前?! だって、出発は私達よりも2日後って聞いてたけど?」

「夜間進行してたんだ。あとウチには超優秀なノアちゃんがいるからな」


 パメラ氏がノアを睨むと、ノアは軽くお辞儀した。ノアに悪気はないのだが、恋路を邪魔しないであげて欲しいぜ。


「そう。良かったね。じゃ、帰り気をつけてね」

「おう。お前もゆっくり休んで、しっかり準備してから、帰って来いよ」

「あ、あの。パメラさん」

「タツキ、貴方の侍女は凄いわね」

「えっ? あ、はい。その~、ユウツオに戻ったらフォルストと一緒に、わ、我儘料亭に来て下さい」

「何するの?」

「お疲れ様会をします。俺の奢りです」


 今度はノアが俺を睨んできた。


「くっくっくっくっ。タツキ、今度はセンギョクさんに借金する気か?」

「借金? どういう事?」

「聞いてくれよパメラ! いや、その時に話そう。それが面白い。ちゃんとユウツオに戻ってこいよ! 待ってるぜ?」

「えっ? えぇ。アンタこそ、ちゃんと待ってなさいよ!」


 パメラさんは、少し元気になったように見えた。帝都テンルウの入り口へと兎獣を走らせて行った。


 俺達は氷雪地帯の幕から突き出ている、西への渡し業者の建物へと入った。


 中は中央から別れている。右半分は20脚ほどの椅子が設置されていて、4人座って待ってる人がいる。左半分は一2段下がっていて、どうやら騎乗獣のスペースらしい。床続きで奥に大きな扉がある。奥の右側にらカウンターがあって受付してと冒険者風の男が話をしていた。


「私が話をつけてくるので、皆さんは椅子に座って待ってて下さい」

「頼んだ」


 ノアがカウンターに行くと代わりにカウンターにいた男がこっちに来て、俺に話しかけてきた。


「よぉ。あんたら兎獣も一緒か?」

「そうだけど」

「そうかぁ。3人ほど先に行かねぇか? 俺ら5人じゃソリが動いてくれなくてよ。最低人数が8人なんで困ってるんだ」

「そうか。困ってるのかぁ」

「タツキ、やめとけ。俺達が困る事になる」


 後から椅子に座ってるフォルストが言ってきた。


「けど、俺達も5人だし、ソリが動かないんじゃないか?」

「兎獣がいるだろ? あれは1匹で4人分の計算になる。そこのアンタ悪いが他を当たってくれ」

「ちっ」


 男は仲間の所へと行った。どうやら、俺達を都合の良いように使おうとしてたみたいだ。


「皆さん! すぐ乗れますよぉー!」


 ノアがカウンターから大声をかけてきたので、全員で扉を通って隣にはへと移動する。ノアだけ兎獣を引いて大きな扉を使った。

 さっきの男の話を、ちゃんと聞かなくて良かったぁ~。


 廊下を少し通って、もう1つ扉を抜けると、かなり広い部屋に出た。車の整備所みたいな所で大きなソリが3台間隔を空けて並んでいる。

 風が建物を叩きつける音が凄い。きっともう氷雪地帯に入っているんだろうな。


「えーっと、3番ソリなのでアレですね。右端のソリに乗ってください。6人用なので、マスターと私は最後列の椅子に座りましょう。フォルスト様が最前列で良いですか?」

「おうよ」

「じゃあ。俺とシェンファが中央の椅子っすね」


 ソリはサンタクロースが乗るやつを5倍ぐらい大きくしたようなので、1番手前に御者が乗る所があって、その後に謎のハンドル付き1人席がある。そこから2人席が3列並んでいて、1番後に空間がある。あと2列分の席を置けるハズだが何もない。ここが騎乗獣用のスペースなんだろう。


「シェンファさんは、最初の30分は前の1人席で持ち手を握ってて貰えますか?」

「分かりました」

「ノアの姉御、アレは何なんすか?」

「ソリを温める暖房魔道具です。追加料金で専用の人を雇う事も出来ますが、半日で抜けるので自分達でやりましょう」


 ほぅ。魔力で起動させる暖房があるのか。思ったけどソレって、俺とノアは使えるのか? 自分達ってのはフォルストとシャンウィ君とシェンファちゃんの3人だけって事はないよなぁ?


「おーい。準備は出来たか?」

「大体は。あとは兎獣です」


 防寒具に身を包んだ、口髭がお洒落なじぃさんがカートを持ってやってきた。


「ここに色々な大きさの防寒具があるから、自分に合うのを着てくれ。向こう側で回収するから丁寧に扱ってくれよ? 準備できたら出るぞ!」


 全員で防寒具を選んでいたら、ふと、子供用があるのか心配になった。でもちゃんと双子にもピッタリな物が用意されていた。子供の客もいるんだな。

 そして、全員お揃いの格好になる。


「ノア、お前も着るのか」

「無くても問題ないんですけどね。さすがに不信がられるでしょう」

「そうだな」


 最後に兎獣を乗せて、巨大な毛布のような防寒カバーをかけて飛ばされないように、四方をソリに固定して準備オーケーだ。


「準備完了です。出して下さーい」

「分かったぁ。出発するぞ!」


 手前の扉が開くと吹雪が中へと入ってきた。寒い! と思ったら座ってる椅子や周りが暖かくなる。


「魔道具を発動させます」


 シェンファちゃん。ありがとう!


 ソリは最初から何かに繋がれていたらしく。御者さんの鞭が振るわれると外へと引っ張られ進んでく。

 氷雪地帯の中は大平原から見た時よりも、有視界範囲が広く感じる。10メートルぐらいは見えるだろうか? なのでソリを引いてる巨大生物の後姿は確認する事が出来た。

 赤茶の体毛が全身を覆っていて、ずんぐりとしたシルエット、後ろからでも見える巨大な牙。第一印象はマンモスだ。


「この世界にはマンモスがいたのか」

「マスター、アレは牙じゃなくて角ですよ? 牛です。騎乗獣の種類で剛毛牛獣と呼ばれる生物です」


 牛獣の一種なのか。

 にしても空気が冷たいのは、どうにもならないな。喋ると苦しさを感じる。少し胸も痛い。


 フォルストは最初から分かってたみたいで全然喋らない。双子は少し喋っていたが、気付いたみたいで、喋らなくなった。


 地面は雪なのだろうか? ソリの引きづられる音も、剛毛牛獣の足音もしない。誰も喋らず、ただ強い風の音だけが周囲を支配している。


 30分ぐらいして、ノアがシェンファちゃんに声をかけていた。そんなに魔力を消費しないらしく、もう少しシェンファちゃんが担当するみたいだ。

 ノアは誰と交換するつもりだったんだろうか?


 さらに30分ぐらいして、そろそろ暖房役を誰かと交換しようかと話合ってた時に、左側から何かが飛んできて、剛毛牛獣のすぐ目の前の地面に突き刺さった。

 そして、ソリが止まってしまった。


「なんだ?」

「たまに、昔の家屋の板とかが飛んでくる事があると聞いた事あるけど、俺が利用してて初めてだな」

「避けて進めないのかな?」

「どうだろう? このソリが迷わず真っ直ぐ進めるのは、地面に秘密があると聞いた事があるぜ?」


 ふむ。剛毛牛獣しか感知できない物が埋められてるとか? 御者の魔闘気を特殊な使い方してるとかかな?


「いんやぁ~。すみませ~ん!」


どっかから、大きな声がした。


「修行してたら、剣が手からすっぽ抜けちゃって! すぐ、抜きますので!」


 全員が声のする方を見た。吹雪のせいでモザイクみたいになってるが、人っぽいシルエットが見える。

 こんな所で修行って、バカなのか?


「えぇ? マジっすか? アレって本物っすか?」

「シャンウィ君どうしたんだ?」

「あの刺さってる剣、エクシィのカードで見た事あります。もし、同じなら〈エクスカリブリス〉かと思います」


 エクスカリブリス? 知らんな。


 剣がすっぱ抜けただと? こんな視界の悪い所で危ない事やってんじゃねーよ。剣も、どんな剣を振り回してたんだ? 木刀とかなら、まだ許せるが。


 ソリの左側から顔を出して前方を確認すると、そこに刺さってたのは大剣だった。幅も広くて、長さもデカい。

 一狩りする時に担いでいく一品だ。


「マスター」


 あんなもん、ちゃんと握ってろ! というかアレって人間が振り回せるもんなのか?


「マスター!」

「はい?」


 ノアは俺の左手を掴んで向きを変えさせて、正面から見つめ合う事になった。


「これを持って」


 渡されたのは金袋だ。大きさからして、ダリアさんから借りた100万ゼンを1万ゼン100本に換金した分だろう。


「いや、お前! 皆がいるのにターンシステム使ったのかよっ」

「逃げて下さい」

「えっ?」

「アレは敵です」

「はっ?」


 声がした方を振り返った。そいつは既にソリの5メートル隣まで迫ってきていた。


 金髪蒼眼のイケメンは、髪をオールバックに固めていて金色の耳飾りと首飾りをしている。上半身はイケメンらしい白い肌と筋肉をしていて、腰に毛皮を巻いていて股間を隠すように1枚の金のプレートが垂れている。太腿から足先までは陸上選手のような素晴らしい脚が生えて、靴は履いていない。

 つまり、パンイチだ!


「どうも! 見ての通り武器は持ってません」


 変態が、吹雪の中をパンイチで両手を上げて歩いてくる。絶対に間違いなく変態だ!


「いいですか、マスター。よく聞いて下さい。このお金を使って帝都テンルウに戻り、ガルーパフに乗ってユウツオへ帰還して下さい。私も後から戻りますので」

「え、えっ? 分かった」


 ノアの顔を確認すると、見た事のない真剣な顔をしていた。

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