ハムスターと異世界①
僕は今ハムスターを両手に抱きしめて、自宅の布団に潜り込む。
数年間で何匹もハムスターを飼っていたが、こんな事をするのは初めてだ。
それほど可愛がっていた、真っ白いスノーホワイトのばにらちゃん。
僕を見ると寝床から飛び出してケージをガジガジ噛んでくる。
外に出してあげると、次は僕の指をガジガジ噛む。
噛まれても可愛い、それほどまでに溺愛していた。
可愛がりすぎて数か月で先輩ハムよりも大きくなってしまったけど、これは仕方のないことだろう
手渡しした分だけ頬袋をパンパンに詰めて帰っていくのだ、非常にかわいい。
「よしよし、最後に一緒に寝ようか」
思いっきり撫でて可愛がり、僕は眠りに落ちた。
どれくらい眠っただろうか、顔に風を感じる。
風?窓はあけていないはずだ、なぜ?
自宅の布団で寝ていたと思ったら平原で目を覚ました、何を言ってるか僕も知らない。
だが現実に目の前に広がるのは、大きな自然だ。
草草岩そして草、草と岩しかない。
はっそういえば両手に抱きかかえていた僕のばにらちゃんは!?
当たりを見渡すがいない、当然だ。草に隠れてるだけかもしれないが。
せめても埋めてあげたかったなぁ。
そんなことを考えていると、カサカサと僕の胸ポケットから音がした。
うーん、特になにも入れてなかったと思うんだけどね、ていうかいつの間に寝間着から普段着に?
まあいいや、僕のお気に入りの黒ジャケットだ、むしろ二度と着れないなんてことがなくてよかった。
右手を左胸のポケットに思いっきり突っ込む。
ん?こんなに奥行き広かったかな?
いや、広すぎるなんでこんな…痛い!!
慌てて手を引き抜くと、僕の指にしがみつく白い毛玉。
その毛玉は僕の第一関節部分をガジガジと噛んでいる。
左手の上におろし両手で乗せると、ぺたぁっとした姿勢で後ろに下がる。
これは間違いなくばにらちゃんだ。
「生き返った?いや夢でも見ている?でも、そんなことはいいや」
こうなったらやることは一つ。
「おーよしよし可愛いねぇー」
頭を撫でて思いっきり、すりすりしてあげる。
ひとしきりばにらちゃんを堪能していると、キュッキュと鳴く。
僕がばにらちゃんの声を聞いたことがあるのはケージに足を挟めちゃった時だけなのに。
鳴いた後、両足でジャンプし僕の左の胸ポケットへきれいにイン。
入った割に重さを感じないというか、膨らんですらいないよ、僕のポケット。
あ、そういえばこの子の餌どうにかしないと。
でも街の方角なんてしらないからまずは道だね、舗装された道かなにかが見えたらいいんだけど。
見えませんよね、このまま前に進みましょう。
日が暮れる前に何か見つかるといいな。
私の休み(不定期)で更新していきます。






