09 神技4
歩き方を変えたエミリアは、バケツの取ってを右手で掴み、腕を伸ばした格好になっていた。
そして、話を続けた。
「もう一つ、問題があるんですよ、『ん?』」
「二十四、五年前からなんですが、男子の出産率が下がってきてるんですよね、『ん?、どんくらい?』」
「正確では無いんですけど、ここ二十年間で、凡そ10対15、位です、『むぅ!、そりゃ異常だね?』、はぃ、クリオはまだいい方なんですけど、実際二十代前半で未婚の男性が残っていますが、王都は深刻です『……』」
「最初の五、六年は気にする程では無かったらしいんですけど、”じわじわ”と今の状態になったみたいです、『ん?、ココて、一夫一婦制なの?』、いえ、そうではないですけど……、『ん?』」
「昔の貴族やお金持ちの悪いイメージ?見たいのあるじゃないですか?、『あぁぁ、なるほど』、それに、側室を設けるとすると?、お金が要りますよね?、『あぁぁ、金持ちいないんだっけ』、はぃ」
タロウが話し出す。
「なんか?大変な問題だよねぇ、でも、エミちゃんは大丈夫だよね?、クリオだし?、『え?、あぁ↘、あまり考えていません、最近はとくに↘』、ん?、『何処でもいいとは、思ってませんでしたけど、貰ってもらえれば……、ラッキー?みたいな感じです……』、てか?エミちゃんて、モテそうだけど?、声掛からないの?、『え?』」
「いあ、いいとこの娘さんだし、元気でカワイイし、頭もいいし、”神技使い”だし、チョウ優良物件!じゃない?、『……、そうでもないんですよ……』、ん?」
話し辛そうに、エミリアが語り始める。
「恩恵を受けて一月程なんですけど、王都で、お披露目会があったんです、『ほぅ』、100年ぶりだったんですよ神技使いの出現て、『ほぅほぅ』、誰も見たこと無いから、結構な人出でした、『ほぅほぅほぅ』、私も、まだ十歳でしたし、初めての王都でしたし、そこそこ乗り気でいたんです、『うんうん』」
「でも、害獣駆除もウサギやヤマドリ位しか仕留めてなかったし、大勢の人前で鶏の命を分けても?、『あぁ、うん』、それで……見せると言っても……、『ん?、食塩水?』、はぃ↘、『ひょっとして、あまり評価が?』、えぇ、加えて大勢の人の前でしたから、あっと言う間に国中に、”大した事では無い”と……、『見る目というか?……、知識かなぁ?……、それにしても、勿体ない気が?』」
「それに……、見る目ではなく、見た目が……、『ん?』、アウラでは、その、”すぅ”と背が高くて、出てるとこが出てる女性が、好まれるんですよね、タロウさんもそうでしょ?、『ん?、あんま気にしないけど?、まぁオレの性癖は置いとこ!』、”せいへき”?、『ん?パス!』、あ、はぃ」
「それで、その、クリオでは毎年四月に身体測定をしてるんですが、『ふむ』、その……、今年十歳になった、一番小さい女の子と、同じでした、『身長が?』、はぃ、『なんセンチだったの?』、え?、あぁぁ、142……cmでした……、『……、ほんとは?』、140cmです↘」
エミリアは、頬を染め恥ずかしながらも、タロウの為にと、アウラの現状を話していたが、途中から自身の事になり、躊躇はするものの、話を続けていた。
エミリアの表情は窺えないものの、タロウは、そこそこ察している、そして話し出す。
「そっかぁ、やっぱ?人が少なすぎなんだねぇ、『え?』、ほら?日本の人口と比べて、『はぃ』、例えば、100人中、1人だけ背の小さい子がいる、『はぃ』、じゃぁ?分母が上がれば?、『あ?、増えます、小さい子が』、だよね、じゃぁ、“背の小さい子”を”背の小さい子がスキ”に置き換えたら?、『あ?、でもぉ……』」
「まぁね、今のアウラのじゃ、ちと難しよね、『えぇ、でも、分かって来た気がします』、ん?」
エミリアが、意を決した様に話し出す。
「タロウさん!、『はぃ?』、私、思うんですけど、『ほぃ?』、今が私の選択する時だと!、『えぇ?、あぁぁ、うん↘、まだ?早いと思うけど?、それに』いいえ!、この先を考えると……、今でもダメかもしれませんけど?」
エミリアが、”ピタリ”と止まり、タロウの方に振り返る、それに合わせて、タロウも制止する。
「タロウさん!、私と、婚姻を前提に、お付き合い下さい!、『えぇぇ、そぅなっちゃうのかぁ、マジで?』、マジです!」
エミリアの初告白であった、顔は真っ赤である、それでも表情は真剣そのものだ、それを見てタロウが、右手で頭を掻きながら話し出す。
「気持ちは嬉しいけど、まだ?会って直ぐだしぃ、『充分です!』」
「ほら!、30も離れているしぃ、『包容力にたけてます!』」
「頭、わるいしぃ、『アウラから見れば、千年後の知識があります!』」
「見た目同様、ガキぽいよ、『私も、子供に見られます!』」
「それにぃ、バツイチだよ、『”ばついち”とは?』、あぁ、離婚経験一回!という意味、『了!……、え?……、そうですよね、タロウさん程の方なら……、あのぉ今は?』、え?独身……、『!?、お子さんは?』、出来ませんでした……、『なら!ノープロブレムです!』」
「そんなに?急ぐ事かなぁ?、『はい!、出来れば今すぐにでも!、最低でも他の女性に会う前に!』」
「ご両親が、反対するよ、『説得します!、それよりも、タロウさんを見てもらえれば?賛成するとおもいます』」
エミリアが、話を続ける。
「タロウさん、『はぃ?』、タロウさんの行動、知識、そして神技を、アウラの未婚、いえ、女性が見たら、どう思うでしょうか?、『ぁぁ、自分で言うのもなんですがぁ、いい?物件?』、はぁぁ↘、!チョウ”が、三つ位付くはずです、『そぅかなぁ?↘』」
「それならば、体型……スタイルに……ハンディーのある私は、どうすべきでしょう?、『えぇぇ、スタイルはともかく?、早め早めかなぁ?』」
「そしてですね、ココはアウラです、安全とは言え、怪我や……病気で……、簡単に死別する事もあります……、そうした場合、再婚を考えますよね?、『はぃ↘』」
「日本の教育制度や成人年齢からすれば早いのでしょうけど、ココはアウラです、確かに成人は15歳からですが、婚姻年齢には制限がありません!、『えぇぇ』、実際に0歳同士の例がありました、『それ?……、何年前の話かな?』、100年以上前です」
「わかりますよね?、『まぁぁ、エミちゃんには正論だよねぇ、でも?ほら!オレの方は?』、え?」
要約タロウがエミリアの暴走を止めた、同時にエミリアが思考する。
(「タロウさんの方?……、優しくしてくれてる……、楽しくしてくれてる……、私のために!↗、あ!、ダメダメ!、そうじゃなくって!……、気に掛けてる?……、結果的に私の為に?……、タロウさんの目的?……、わからない?……」)
エミリアは、答を見出せない。
エミリアの言う通り、アウラの若い女性は必死であった、タロウもその事には認識できてはいる。
しかしタロウは、イシィリアが”偶然”を装い、エミリアに遭遇させた事から、何かは”わからいない”ものの、エミリアをそれから解き放つ手助けをする事が、タロウに取っては必須であろうと考えていた。
タロウが、話しながら歩き出した。
「わからないよねぇ?、『え?、はぃ』、オレもわからいない!、『えぇ?』」
タロウが、エミリアの横を追い越して行く、エミリアが後に続く。
「ねぇエミちゃん?、『はぃ?』、”偶然”てあると思う?、『え?、はい』、オレは無いと思ってるのよ、勿論!言葉の意味は知ってるから!、話の中では使うけどね、『?……』」
今度は、タロウが振り向き後ろ歩きで話を続ける。
「例えば?、今日!、なんで?エミちゃんの前に女神さんはオレを落としたのかな?、『?……』」
「ん?、あぁ、エミちゃん?、『はぃ?』、女神さんの仕事て、何してると思う?、『え?、この地の維持と管理?』、具体的には?、『え?、人々を幸せに導くこと?』、全員を?、『え?、それは……』、ゴメェン!いじわるだったね」
”ニッ”と笑み、タロウが続ける。
「オレさぁ、女神さんに会うまで神様てのいないと思ってたのね、『……』」
「見たことないし、願い事かなった事ないし、人間!放置だし、『放置って?』、好き勝手に野放しだべ?、『あぁ』、だから!いないと思ってたのよ、けど?いた、じゃあぁ何してたの?」
「オレ達と遊んでた!、『あ!』、まぁそれも仕事なのかも?て思ったけど、なんか違う気がしたのよね、でね、ふと思った事が、女神さんて、何がしたいのか?てこと『?……』」
「日本の様な文化、文明都市を作りたい、そしてココが出来てる!、まだまだ先は長いけど」
「推測だけど、アウラ、ケラダ、コブイ?だっけ?『あ、はい』、この他にも、沢山の町や都市があるはずなのよ、『え!?』、余りにもココのスケールが小さいから!、『?』」
「それらを観察すことが目的だと思ったのよ、『観察?』、見守るかな?、いきなり町を造る訳には行かないからじゃないかな?、解んないけど、『……』、てか”人”を作らなきゃ始まらないよね?、『え?』、オレ達はよそ者だけど、エミちゃん達のご先祖さまは、女神さんが作ったはずなのよ、『そうですよね?』」
「この星の進む方向が、女神さんの思うところと擦てくると、梃入れをする事も?お仕事かな、『え?』、恩恵を与えるみたいなことね、『……』」
「あぁ、そんな大事じゃないと思うよ?、ただ、エミちゃんが思う方向に行って無いから?、オレがココにいるんかな?『……』」
エミリアはタロウへの想いを抑えつつ、イシィリアの考えを紐解こうとしている。
(「タロウさんは誘導している、イシィリア様へと、どうして?……、違う!今わそこじゃない!イシィリア様はどうして?私を選んだの?……、私の願いを叶えてくれる?、そこじゃない!……、イシィリア様の願い?……、わからない?、でも?その為に私とタロウさんを出合わせてる……、偶然?違う”必然”なんだ!、じゃ?タロウさんは何かをする事も?……」)
エミリアが問い掛ける。
「タロウさん、『はぃ?』、イシィリア様は私に”何を”望んでるのでしょう?」
タロウが答える。
「ん~、幸せ?じゃない?、『え?』、エミちゃんが幸せになること、『……』、あ!そだ、エミちゃん?、『はぃ?』」
答えを聞いても困惑が増えるだけのエミリアに、タロウが問い掛ける。
「いままで、我が儘言ったり、欲張りした事って、ないよね?、『え?、はい』」
「なんでかな?、『え?……、いけない事だから?』」
「誰に取っ手?、『え?……、私……以外のひと?……』」
「じゃぁ神技を使う時は、どんな感じで使ってたの?、『え?……、皆が喜んでくれたら?いいかな?と』」
「むぅ~、あ!、”卵が先か鶏が先か”てのアウラにもあるかな?、『え?、ありますけど?』」
「じゃぁ、女神様と人に置き換えたら?、『それは!女神様です!』」
「じゃぁ、女神様ならどんな風に”人間”を造るかな?、『え?……、分かりません……』」
「オレなら、自分に似せると思うけど、どうだろ?、『ああ、私もそうします、たぶん』」
「じゃぁ、人の考え方て”何”に似て来るんだろう?、『女神様?……』」
「人て何かを得る為には、何らかの代償を払うよね?、『え?』、物だったり、行動だったり、気持ちだったりと、『あ、はい』」
「それも、真似してるとしたら?、『えぇ?』」
「じゃぁ、女神様て何か貰ってるのかな?、それとも無償なのかな?、『えぇ?……』」
「無償て事はないよね、ただ人の考え方でも理解出来る何かを得てると思うけどね」
エミリアは困惑に押し潰されそうな感覚にいた、それでも思考する事は止めてない。
(「イシィリア様と私達が似たような考え?……、良いこと、悪いことも?そこじゃない?……、私が幸せになる?、それって何だっけ?……、”幸せにする!”がイシィリア様の願い?……、思う方向に行ってない?……、何処かで間違った選択をした?……、どこで?違う!今はそこじゃない!……、タロウさんがいる?……、タロウさんも何かを得る為?……」)
エミリアにはタロウしかいない、答を導く為の助けとなる者は、そして問い掛ける。
「タロウさんは?、イシィリア様から何を得るんですか?、『もう貰ってるよ』、え?」
タロウは、躊躇う事もなく答えた、そして話を続ける。
「イチロウやハナは分かんないけどね、オレ達は一度死んでるからね、『……』、結果として生き返ってるし、知らない世界であっても死んで終わりと比べたら?、全然楽しめるかな?てね、勿論!辛いことは避けたいけどね」
「まぁ?、そんなチャンスをくれた女神さんを、手伝う事ってくらいはね、けっこう楽しんでるし、この短時間で、色々↘」
「でね、エミちゃん?、『はい?』、いままでは感じなかったと思うけど、色々な”欲”が出てきたよね?、『え?……、そう言われれば……』、悪い事じゃ無いから!、女神さんにだって”欲”はあっから!、『……』、てか?あり過ぎると思うけど……」
「そういった事を踏まえると?、オレがエミちゃんに”何”をしたいかが?、見えてこないかな?」
エミリアが答える。
「私が……、欲張る事で……、何かが変わる?……、私は、欲張る事をしてこなかった?……、!?、その原因を取り除くことが?、タロウさんのやりたい事なんでしょうか?、『取り除くのは無理だろうけど?』、あれ?」
タロウが話を続ける。
「いあいあ、オレって普通の”人”だから、何でもかんでも”ポイポイ”解決できないから!、『……』、それに、その事てのは、エミちゃん自身が乗り越えるとか、飲み込む見たいな感じだろうとおもってるんだよね」
この時のタロウは”何とかなるだろう?”と、考えていた、そして問い掛けた。
「じゃぁ、何時から”黒髪”になったのかな?『え?……、神技を使うようになって、五日目くらいに気付きました』」
「それから?、変化ないのね?、『はい』」
「心当たりは?、『いぇ……』」
「じゃぁ、人が死ぬ事については?、『!……、はぃ、あります……』」
「話せる?、『私……、命を奪ってるんです、二人も……』」
「詳しく、教えてくれる?、『はぃ』」
エミリアが事の真相を語り始めた。
エミリアの語った過去の出来事は、お披露目会の後に起こっていた。
お披露目会の後、エミリアはひと月程落ち込んでいた、そんな時、長患いをしていたコレットの父が、病変の悪化に至る、体中の痛みに耐え兼ねられないコレットの父は、エミリアの神技による安楽死を望んだ、それをエミリアは受諾した。
それから更にひと月程、エミリアは敷地内から出ることは無かった。
周りはそれを心配になり、気晴らしにと兄が採掘場の視察に連れ出した。
そして落石事故が起きた、作業員の臍から下の下半身が、重さ5トンはあるであろう石の下敷きになったのだ、誰の目にも助からないのは見て取れた。
作業員は兄の友人でもあった、そして作業員からの最後の願いが”楽にしてくれ”だった、エミリアはそれも受諾した。
当時のエミリアは、まだ10歳、アウラでなくても抱えたトラウマは大き過ぎると、タロウは考えていた。
逆に救いと思えたのは、エミリア自身はその事を家族に相談出来ていたことだ。
答えが見出せなくとも、頼れる存在がいた事、そして話せた事は、エミリアがそれに対しての抵抗しているからだと。
それでも、”あなたは悪くない、あなたは正しい”以外の言葉は見つからない、そんな簡単に片付く問題では無いとタロウは解っている。
同時に、そんな経験をしたにもかかわらず、ここまで聡明でいられたエミリアに感心もしていた。
そしてタロウの考えが少しだけ変わる、”何とかしたい”へと。
話を終えたエミリアの両目からは、涙が零れ落ちてる、大泣きではないものの、辛い事には変わりがない。
タロウは綿花畑を良い事に、神技で柔らかめの白いハンカチを作り、エミリアに渡す。
エミリアがハンカチで涙を脱ぐっていると、後ろ歩きのタロウの踵が地面に引っ掛かり、そのまま尻餅ををつく、そしてタロウが話し出す。
「いったぁぁ、『大丈夫ですか?』、うん、へいき!へいき!、てか!この体!全然ダメだは!、『え?』、あぁ、何て言うのかなぁ?……、病気して!何日も寝込んだ後!みたいな?、『はぁ、寝込む様な病気した事ないので?』、あ、うん、体力が無いだけかも、ああ!、『はぃ?』、コケタついでに!さっき使った”しぼんだレモン”取ってくれる?、『え?、はい……、これですね?』、ついでにコップもかして?、『あ、はい、どうぞ』」
タロウは右手に少し萎んだレモン、左手にコップを受け取って、神技で飲み物を作り出し、それを一気に半分程飲み干し、話を続けた。
「んっはぁ、あ?半分飲む?、炭酸抜きだけど、『え?、はい!↗頂きます』、どぞどぞ、『”クビクビ”、あぁ、レモン水!これも美味しい!……、あのぉ、私もレモン水は作った事あるんですけど、何が違うでしょう?』、こっちの飲んだこと無いから、たぶんだけど?、『はぃ』、果汁の濃度じゃないかな?『え?』」
「リンゴ酒、造る時加水しないよね?たぶん、『はい、絞り汁をそのままです』、100%の果汁だよね、『はい?』、レモンは酸っぱいから100%要らないだと思うのよ、オレの頭の中では、『……?』、たぶん10%くらいかな?、その方が飲みやすいから、美味しく感じるのかな?、『そいう事なんですね……』、ほら?もう一杯位、行けそうだよね?」
タロウは右手にある、更に萎んだレモンをエミリアに見せる、エミリアは先程よりは上品に、レモン水を飲みながらそれを確認している。
タロウが話を続ける。
「あ、レモン、そっちのバケツでいいかな?、また作りやす用に、『あ、オッケです』、どもども、それと?タバコを吸ってもいいかな?、『えぇ、はい!お構いなく』、ありがとね!」
エミリアは、タロウの気遣いに何とも言えない”安堵感”を抱いていた。
タロウとの数回のやり取りで、癖になりそうな感覚を持ちながら、そして自然と笑みが零れる。
タロウもそれは分かっているから、利用している、それよりもエミリアの深いトラウマ対策には、混迷していた。
タロウはタバコに火をつけて、立ちながら話を始めた。
「ほいじゃ!行きますか?、『あ、はい』、それと、『はぃ?』、”どうしたら良いか解らない”気持ちは……、『……』、オレもわからない!、『はぃ?……』、うん!難しすぎるから!、でもね……、何とかしたい!、『……』、考える時間がいるんだよねぇ、頭悪くてゴメンね、じゃダメ?、『いえ……、何とかなるのでしょうか?』、あぁ、普通は時間掛けて解決するんだけどね、まぁ?それでも上手くいかないケースが多いかも?、『……』、でもまぁ?エミちゃんなら?大丈夫だと思うよ!、専門家じゃ無いから!根拠を説明出来ないけど……、もぉうすこし!まってて?、『はい、お願いします』、うん!じゃいこっか!」
重要なフラグの回収を出来ないまま、二人が歩き出していた。
歩き出すと直ぐに、体力の無いタロウが遅れだす、エミリアは先導するも、タロウにペースを合わせてる。
そしてエミリアが、落ち着きを取り戻して考える事と言えば、初恋、初カレの成就へと向かっていた。
娯楽も無い世界で、思春期の乙女であるエミリアには、当然の事であろう。
タロウもアウラの事情に慣れ始め、”墓穴”に注意しようと考えていた。
そしてタロウが話し出す。
「エミちゃん?、『はい?』」
エミリアが振り返り後ろ歩きになる。
「お付き合いの件の前に、聞いてくれる?、『え?、はい』」
「オレが、女の子スキなのは分かるよね?色んな意味で?、『はぃ?』」
「お金持ちになれそうなのもわかるよね?色んな意味で?、『はぁ、はぃ』」
「そしたらさぁ、ハーレム作りたいと思うよね?『”はーれむ”とは?、』、あ、一人に対して異性が群がってるみたいな?、『え?、そうですよね……』」
「一応、男だから、そういった願望があるんだよね、実際は”夢”であって、出来るかどうかは、わかんないけど、『はぁ……』」
「それとね、過去が変わらないと同時に、未来も決まってると思ってるのよ、『え?、それって?……』」
「あぁ、先が分かる訳じゃないよ、女神さんでも分からないと思うから、『……』」
「上手く説明出来ないけど、天文物理学てのがあってね、確認するのは困難だけど、未来と言うのは固定されてる?と言う説があるのよ、まぁ絵とか描いても?上手く説明出来ないけど、専門家じゃないし」
「決まってるなら?ほっといてもいいや!じゃダメだから、色々と予測するんだけどね」
「焦り過ぎても?いい結果になるかは?、分かんないからね」
「こんな?変な人と、お付き合い出来ます?」
タロウは思う所を話していた、しかし、恋する乙女進行形のエミリアには、全てが燃焼促進剤の様に、想いを強く焦がすだけであった、そしてエミリアが答える。
「タロウさんのお考えは分かります、それは?後々、二人で考えましょう!」
「えぇぇ~、マジで?、『はい!、マジです!』」
タロウの読みが甘いのではなく、エミリアが強情なだけである。
そもそも、今のエミリアをこの様に導いたのはタロウ本人だ、自身で墓穴を掘り、既に納まっている事に気付いていないのだ。
残すところは、エミリアがそれに気が付き、埋めてしまう事だと。