06 神技1
タロウは、呟いた内容程、落ち込んでいなかった、それよりも、ライター一つで
上機嫌のエミリアに、愛おしさを感じていた、父親目線で。
(「ほんに!カワイィのぉ、ハナとこのもそうだけど、欲しくなっちゃっうよね、こんな”娘”だったら……」)
この時点でのタロウは、エミリアの恋心に対応する事を停止している、エミリア自身の変化に対応する事の方が重要と判断した事と、父性が大きく影響を及ぼした為だ。
「……むすめ?」
”娘”と言う単語だけが、エミリアの脳裏をかすめた、その為に小声で反応してた、タロウは、それに気が付き話す出す。
「ん?、なんでもなよ、それよりも!お願いがあるんですけどぉ~!、エミリアさまぁ~」
少し気味の悪い話し方のタロウに、ライターとワードから注意を削がれたエミリアが、緊張気味にこたえた。
「はっ、はい、なんでしょう?」
「お父さん、てか領主様の方に挨拶したいんだよね、で!合わせてほしぃなぁ、ての!、ダメ?」
タロウは以前の話し方に戻っていた、エミリアは緊張を残したまま、それにこたえた。
「え!、あ!、はい!、構いません!、私も、お会いして貰いたいと思ってましたし……、でも?ほんとにいいんですか?、お二人の事?」
「ん?、アイツらはマジ大丈夫だよ、それよりも?オレだ!、『え?』、だってオレ!タバコしか持ってないし、寝るとこはいいとしても?、お腹減るよね?たぶん?、『あ!、そうですよね』」
タロウの話で、平静に戻ったエミリアが答えると直ぐ、タロウがまた問い掛けた。
「あ!ねね、嗜好品て喜ばれるかな?、『え?』、ほら!、エミちゃん!葉巻見たことないなら?、お父さん?タバコに興味持たないよね?、『あぁ、お気遣いは大丈夫ですよ、それに……』、ん?」
エミリアが、少し残念そうに話を続ける。
「父様もそうだと思いますけど、高価な物を頂いても、喜ぶ人はすくないですよ、たぶん?、『そなの?』、そもそも?高価な物が欲しいと思う人は、アウラにはニ、三人いるくらいかと……、『むぅ……』、あ、タバコは王都でなら?喜ぶ人がいるはずです!、勿論!ライターも!、あ?価格にもよりますね、『高価な物への需要がないのね?』、はぃ」
「食べる物には困っていないですけど、贅沢する人は少ないですから、『そっかぁ』、(『とは言え?手ぶらってのもなぁ……』)、あぁ、本当にお構いしないでください!、『え?、うん……』、……あぁあ!↗、ごめんなさい!ごめんなさい!、『ん!いいから!いいから!、気にしないで!』、ぁ、はぃ」
答え終わると、少し恥じらうエミリアが、話を切り出す。
「それじゃ、ご案内しますね、『あ!、時間て分かる』、え?、午後1時30分は過ぎていると思いますけど?、あ!同じですか?、『ぁ、午前と午後、各12時間、1時間が60分だね』、同じです!↗」
二人が腰を上げ、各々土埃を手で払う、エミリアは右ポケットに軍手をしまうが、右手にはまだライターを握っている、タロウはリュックに付いた土埃を払い、それを背負いながら思い出した様に話した。
「あ!、もっかい!実験してもいいかな?、『はい?、構いませんよ?』(念の為、材料だけでも……)」
エミリアの了承を得ると、リュックの両肩ひもを各手で握りしめてたタロウが、湖面の方に振り返り、神技を使った。
そして、タロウの足元に、厚み約1cm、幅約5cm、長さ約10cmで、表面がサテン仕上げの様な、鈍い銀色に光る金属が出来ていた。
エミリアがタロウの左側に並び、前屈みになり、その金属を見つめ問いかける。
「これって?、銀ですか?『……』」
問い掛けに無反応なタロウが気になり、タロウの顔を伺うエミリア。
その顔は、平静にも見えるが、感情が抜け落ちてた感じで棒立ちだ、それを見て、心配になるエミリアがタロウを呼ぶ。
「タロウさん!、タロウさん!、『え?、なに?』、大丈夫ですか?、『うん、へいきだよ』、ほんとうでうすか?、『うん、ちと?ビックリしただけ!、で?なに?』、あ、これ?銀ですか?」
ようやく平静を取り戻したタロウが、答える。
「いあ、プラチナてか白金ね!、『”ぷらちな”とも言うんですね?、あ!、私、白金見るの初めてなんですけど……』、そうなの?、『はい、なんか?銀よりも……、ちゃっちぃ?感じですね?』、あぁ、それはわざと表面を”ザラザラ”に仕上げたからかな?、『そうなんだぁ……』」
この時のタロウは、生前、日本で生活していた頃の認識であった。
その為に、エミリアが”少量の白金”と言ったことから、多くても”大さじ一杯”程度だろうと推測していた、しかしながら、目の前に現れた白金は、大きさから推測して約1kgはある事が分かるため、棒立ちになったのだ。
そして、話が止まると、思考に入るタロウであった。
(「はぁ↘、この?ちっこい池パンニングしただけで!この量て……、ん?、て事は、本気になりゃ?とんでもねぇ量が!……、んん?あれか?、金銭チートなのか?、いいのか?、『あのぉ、タロウさん?』、はい?」)
エミリアの脳内ツッコミに、順応しているタロウが話し出す。
「ん!、なんでしょ?エミちゃん!?、『あぁあ!、ごめんなさい!』、いいから!いいから!、んで?、『あぁぁ、あのですね、誰が?その白金を買うのでしょうか?……』、あ!?…………、だめじゃン!、ココ日本じゃないもン!、うれないじゃン!、『あぁぁ、ごめんなさい』、ん?、あ、いえいえ!気づかせてくれて!ありがとうございます、『えぇ、あ、いえいえ……、あのぉ?手にとってもいいですか?』、どぞどぞ!」
エミリアは、軍手の入っている右ポケットにライターを納め、少ししゃがみながら、白金の延板を右手で手に取った。
「あ!、見た目よりも重いですね、『あぁ、比重て分かる?』、はい、分かります、『水の二倍くらいあっからね、たぶん』、そうなんだぁ……」
延板を左手に持ち替えて、右手の指で表面を撫でるエミリアが話を続けた。
「ほんとだ、”ザラザラ”て程でもないですけど、『あ、それ?どうしよう?』、え?、『領主さんに、渡しちゃった方がいいよね?』、あぁ、そうですね、『ほいじゃ!エミちゃん!もっててね!』、はぃ……」
両手に持ち替え、角度を変えながら”マジマジ”と延板を観察するエミリアが、タロウに問い掛ける。
「タロウさん?、『ほい?』、これって?、日本だと、どのくらいの価値があるんですか?、『ん~、相場が分かんないけど?、たぶん?300万前後じゃないかなぁ?』、はぁぁ、結構お高いですねぇ……」
エミリアの動きが”ピタ!”と止まり、視線をタロウへ向けて、再び問いかけた。
「タロウさん?、『ほい?』、”エン”ですか?、『え?うん”円”だけど?、あぁ、あんま自信ないけど?、たぶん?グラム3000円くらいかな?と、1Kgくらい?あるよね?』、1グラムですか?、『あ、うん?』、…………えぇえ!↗、『うわぁ、びっくりした!』」
エミリアは、大声を上げると同時に、全身を”ガタガタ”と震わせていた、目は見開き口は”アワワ”と、それでも両手をタロウに突き出し、話を続けた。
「タっ、タロウさん!、こっこれ!預かって下さい!、『え?』、いいいやなんです!持ってるの!、『いあ?、今のココじゃ?価値がないの』分かっています!、けど、チョウ恐いんです!、マジ恐いんです!、ああ!↗、」
初めて手にした高価な物に怯えるエミリア、そんな中あることに気が付く、そして震えながら話を続けた。
「タっ、タロウさん?、『はい?』、さっき!固まってたのって?コレのせいですよね?、『あっ、うん……、やっちゃった?みたいな?』、なんで?教えてくれなかったんですか?、『あ、うん、固まっちゃったからかな?、怖かったし?』、ええ!私も恐いんですって!、マジこわい」
エミリアが、再び”ピタ!”と、声も震えも止まる、そして目をつむり、大きく息を”フゥ”と吐いた。
次に目を開けると、タロウに視線を合わせ、タロウにとっての初めての作り笑いを見せながら、話し始めた。
「タロウさん!、『は、はぃ?』、これは!、ライターのお礼です!、『え?』、どうぞ、お納めくださいませ!、『……』」
延板を差し出すエミリアの両手は少し震えていた、タロウはそれを見て、右手で受け取りながら、エミリアに語り掛けた。
「ほんと!、可愛いね!、そんなに怖かったんだぁ、ゴメンね、『あ、いぇ』、まぁ?やっちゃったの?オレだしね、ほんとゴメン」
タロウは延板を、タバコがしまってある同じポケットにいれた、一方、動揺と震えが治まったエミリアが話し出す。
「あぁ、恐かったぁ、『うん、ゴメンね』、あ、いえ、分かっているのに?、金貨300枚と思うと?……『あぁ!、もう忘れた方がいいよ!』、あ!、はっはい!、そうですよね、はい!、それじゃ?いきましょう!、『うん!、タロウを領主宅に連れてって!』、はい!」
滑るタロウを気にも留めづ、エミリアは小道へと足を進めた、タロウは(「だよね↘」)と思いつつ、エミリアの後へとつづいていた。
タロウは小道に入ると直ぐに、目に入った森を見て思った。
(「あぁ、何年も手入れされてないなぁ、なんか?もったいないねぇ……、まぁいっか」)
すると、数歩前を歩いていたエミリアが、突然振り返り、タロウの方へ早足で近寄りながら話し掛けた。
「タロウさん、静かにして待ってて下さい」
エミリアは、タロウの横をすり抜け、森の奥の方へ、小道を4m程進み停止した。
タロウは、エミリアの背中越しに、小道の奥へ視線を向けると、”ドッドッドッ……”と言う小気味よい足音と軽い振動を連れて、それが近寄って来ていた、そしてタロウが思う。
(「うおぉ!、デカ!、え?、オット〇主?、猪て?こんなデカくなるの?、え?、エミちゃんよりも高いんですけど?、肩の位置が!、これ?やばくね?、『大丈夫です、直ぐ済みますから』、そなの?」)
猪は、エミリアの5m程手前で足を止めた、エミリアを確認した為だろう、そしてエミリアの体を光が包み込む、すると、少し間を置き、猪が左側へゆっくりと傾き、小道脇の若木に左肩が接すると、”ドザ!”と言う音と振動を残し、一気に倒れた、同時にエミリアの体を包んだ光が消えている、それをエミリアの後方よりタロウが視認していた。
「はい!オッケです!、近寄っても大丈夫です!」
エミリアは、話し終える前に、猪の方へと駆け出していた、そして猪に近付いた時にも一言。
「うわぁ、おっきぃ」
エミリアが、猪に近付いた頃から、猪の体全体より光の粒が湧き上がり始めてた、そして猪の直ぐ傍まで来たエミリアは、両腕を”小”の字に広げ、顎を少し上げ両目を瞑った。
目を瞑ったエミリアの体に、再び光が包み込む、同時に猪から湧き出ていた光の粒が、エミリアの体に螺旋状に絡みつきながら、ほんの数秒で吸収された、それが終わると体を纏ってた光が消える、そしてエミリアは、後ろ手に両手を結び、タロウの方に振りむきながら”ニッ”と、子供の様な笑顔を見せた。
一連を見てたタロウが問い掛ける。
「魂を分けた?、みたいな感じ?」
問い掛けながらエミリアに近づくタロウへ、エミリアが答える。
「えっとですね、私の場合”命”を分ける!と言う……イメージです!、『ほぉぉ、ほいじゃ?猪から湧いてた光の”泡”見たいのが?命なの?』、あれは違います、『ん?』、えっとですね?……、じゃ!実演しながら?ご説明しますね?、『はい!、お願いします!エミ先生!』、え、はぃ」
エミ先生の、神技の使い方初心者向け講義が始まる。
「それではですね、神技を使うと体力を消耗するのはご存知ですよね?、『うん!』、それと同時に、私が先程、体に纏ってた光も消費してるんです、”力の源”と、私はイメージしてます、『神技を使うエネルギー見たいなのかなぁ?、あ!原動力!見たいな意味です』、了?同じ意味ですよね、『あ?、ゴメン』、
あ、はい、続けますね」
「光の纏い方なんですが、神技を使う、使うかもしれない、見たいに使用する為の”準備”をイメージすると」
エミリアの体が光に包まれる、それを見てタロウが声を漏らす。
「おぉぉ……」
エミリアの体から光が消え、そして話を続ける。
「光を消すには、他の事を考えると直ぐに消えます、『はぃ』、それでですね、タロウさん神技を使った瞬間、瞳が一瞬光るの分かりますよね?、『あ、うん!』、その時も……エネルギーを消費してます、たぶん?、『あ、了!』、それじゃ?タロウさん!、一度やってみましょう!、『はぁい!』」
タロウが、神技使用待機状態に挑戦すると、タロウの体が光に包まれる、そしてタロウが話し出す。
「おぉ!、『できましたね!』、おお!エミちゃん!スンゲェ光って見える!、『え?、タロウさんも?相当光ってますよ!』、てか?“スタンバイ”でもいけるのね?、『すたんばい?』、あ、待機中、見たいな意味ね、『了!、あ!、そのまま!そこの雑草とか木々を見てください!』、あぁぁ、薄っすら光ってるね、『じゃぁ、雑草に近寄って、光を吸収するイメージを!』、ほいほい!、お!」
タロウが雑草に近寄ると、雑草に纏っていた光が、タロウの足に吸い寄せらそのまま吸収された、残された雑草は光を失っただけの変化だ、それを見てタロウが問い掛ける。
「ん?、しなびたり?枯れたりしないのね?、『はい、まだ“生きている”からです、朝になると、また光をだしますよ』、ほぉぉ、あ?、じゃ猪は、『はい、命が尽きますと、体から離れちゃうんです、光の粒になって、放っておくと、こう2mくらい?上がっちゃうと、”パッ”と弾けて、空気中に散ってしまううんです」
手を上げたり、両手を使いながら説明するエミリアに、タロウが、また問い掛ける。
「アレて粒なの、『近くで見ないと分かりづらいんですけど、大きくても胡椒くらいで、殆どが砂粒より小さい感じです』、ん?、さっきオレも見えたけど?”ツブツブ”、『はい、体から離れる時は……スタンバイ?じゃなくても見えます、たぶん私たちだけは?』、なるる、他の人には見えないのね、『はい』、あぁ!エミちゃん?、『はい?』、結構?試していたんだね?、『え?、あ!、一応?五年目になりますから↘』、ああ!ゴメン、ゴメン!」
謝るタロウを見て、エミリアが話を続ける。
「まぁ?こんな感じです!、『うん!、ありがとね!、やっぱ?先輩いると!ありがたいわ!』、え?、いえいえ、あ!それじゃ、血抜きと腸抜きしちゃうんで!、もう少し待ってください?、『え?、うん、はい』」
話を終え、猪の方へ振り返ったエミリアが、猪を見ながら思考した。
(「あぁ~、失敗しちゃったなぁ、もっと広いとこまで連れてきゃ良かった……、あぁ、いいとこ見せようとしたからかなぁ、あぁ、汚したくないなぁココ……」)
エミリアの傍まで歩み寄ったタロウが、少し困った表情のエミリアに話し掛けた。
「ん?、どったの?、『あ!、いえ、あっちの方で仕留めるべきだったかと……』」
エミリアが森の出口の方を指で示した、タロウはそれを見て、また問いかけた。
「なんで?、『あんまりココを汚したくないなぁ?と……』、ん?、てか?ナイフとか刃物?持ってないよね?、『それは、神技でやっちゃうのでいいんですけど……、捨てる場所に迷ってます?……』、ん?、池は?、『あぁ、ココお気に入りなので……、汚すの?いやだなぁ……と』、ん~、あ、それは?何とかなるよ、『え?』、それよりも?……」
タロウが、猪を見ながら更に問い掛ける。
「コレ、運ぶの?置いとくの?、『あぁ、置いていきますけど、畑の方にコレットさん達が来てると思いますから、解体と運搬はお願いする予定です』、オレが運ぶのかと思っちゃってたから?、『えぇ?』、あぁ、いおいお、見た目どうりに力ないから!、気にしないで!、『あ!、いぇ』、ほいじゃ!解体しよ!、『え?』、血抜きからだよね?、『あ、はい?』、あ!、そこの細い杉の木!使ってもいいかな?、『え?、あ?、はい?』、うん!ありがとね!」
エミリアの思いと了承を得たタロウが、森に少し入った所に生えていた、細い杉の木を神技で加工すると、”ジュゥッ!”と先程より大きな音で蒸気だけ残して杉の木が消えていた、代りに、若木の上に倒れた猪の頭と前足の間に、明るい茶色のタロウ製木製バケツが重なった状態で数個出来ていた。
「にぃ、しぃ、ろぉ、八個か、結構できた」
重なったバケツを両手で持ち上げ、数を確認するタロウを、横から眺めるエミリアが問い掛ける。
「桶ですか?、『あ、うん、”バケツ”とも言います』、あ、これも布地見たいに織ってあるのですね?、『そそ!、あ?、気付いてたのね?』、でも?”ツルツル”ですよね?、『うん、まぁ?、あとで説明するね?』、あ!、はい!、『あ!、エミちゃん!、ちと!猪から離れてくれる?』、あ、はい」
二人が少し猪のから離れると、タロウがエミリアに問いかけた。
「猪の下の若木?、使ってもいいよね?、『はい?どうぞ』、うん!どうもね!」
再び了承を得たタロウが神技を使うと、猪の下敷きなってた若木が、”シュゥッ”と音を立て蒸気を残し消えると同時に、猪の下敷きになった、ライトブラウンのタロウ製木製ブルーシートが出来ていた。
エミリアはしゃがんで、出来上がったシートの感触を右手で確認して、タロウに話し掛ける。
「これも織ってある……、軍手程じゃないけど柔らかい……、タロウさん!、『ん?』、やっぱり!凄いですよ!タロウさんは!、『あぁ↘、とりま?猪やっつけちゃおうよ?』、あ、はい、『てか?コイツ?200kgはあるよね?』、あぁ、私もこれだけ大きいのは初めて見たので……、超えてるかもしれませんね?、『そっかぁ、つぅと20ℓ超えちゃうかな?』、そうなんですか?、血液ですよね?、『あ?、うん』、私、測ったことないんですよ、いつもはそこら辺の用水路に捨てるんで、『仕留める場所も考えてるんだぁ、ああ?、じゃぁオレのせいだな、やっぱ』、えぇえ!、ちがいます!ちがいますから!、『そう?、んじゃ!始めよう!』、あ?はい!」
タロウは話しながら猪の前足と後足の間に、バケツを三つ並べた、余った五つは前の場所に戻してた。
エミリアは、タロウとの話が切れると直ぐ、思考していた。
(「あれ?、何で分かったんだろ?……、はっ!、タロウさんも?私の考えが読めるの?、そう言えば?さっきから?……、いえ!もっと前から?……、えええ!」)
現在のエミリアは、分単位でタロウの好感度を上げている、当然、タロウの持つ知識への興味以外の、別の興味が家族以外の異性に対する思いから来ている事に、気付き始めた為だった。
その結果、タロウを意識する事で、恥じらう行為や思考が増えていた。
そしてタロウが話し出す。
「えみちゃん!、『は、はい!』、このバケツ!、一つに16ℓ入ります!、『はぃ?』、なので!、猪の血液を10ℓだけ!分けてちょうだい!、『え?、え?……、あ!、はい、やってみます!』、うん、よろ!」
エミリアは、”スッ”と立ち上がり、猪とエミリアから見て左端のバケツを視界に入れ”イメージ”した。
(「一回じゃなく、数回でて事ね、考えた事なかった……、よし!、猪の血液を10ℓだけ!バケツの中へ!分ける!」)
エミリアが神技を使うと、バケツの中に血液が溜まっていた、それを見てエミリが声を上げる。
「できました!↗、タロウさん!、『うん、オッケオッケ、んじゃ?次も同じで!』、はい!↗」
続けて神技を使うエミリア、二つ目のバケツも成功した、それを見てタロウが話す。
「ほいじゃ!、もっかい!、やっちゃって!、『はい!』」
三回目は、何も変化が無かった、そしてエミリアが話し出す。
「あれ?、”解除”されました?、『ん?、解除?』、あ、はい、同じイメージだったのに?……、『曖昧じゃないのに?キャンセルされたって事ね?』、はぃ、あ、解除ですよね?、『うん?、取り消すて感じかな?……、あ!、10ℓ残ってないのかも?』、あ!、それなら量を指定しなければいいんですよね?、やってみます!」
エミリアが再度試みると、三つ目のバケツには、約半分の血液が溜まっていた、成功を喜ぶエミリアが話す。
「やったあ!これなら用水路まで運べちゃう!、『あぁ、うん?……』、どうかしました、『あ、ぃぁ?……、うん!、エミちゃん!もっかい?いいかな?』、え?、はい?」
タロウがエミリアの返事を聞いて話し出す。
「今度は!この血液から!水分を!分けてくれるぅ?、『え?、あ、はい?』、あ!、ほら!、水は森に撒けるよね?、『は、はい、やってみます!』、よろ!」
エミリアが血液に神技を使うと、猪から森の中に2m程の所へ”ザァァ”と水の落ちる音、バケツの中には粉状の物が数センチ残っていた、それを見てタロウが話す。
「あ?うまくいったぽい?、『粉?ですか?、赤、黒、白?いろんな色が混ざってますね?』、血液ていろんな成分が混ざってる事は、知ってるよね?、『はい、糖とか塩分とか?ですよね?』、あ、うん、オレもそんくらいしか知らねぇけど、水分取っちゃうと?ここまで減るみたい、『はぁ……』、んで!これを”サァー”、こっちも!”サァー”、『その為に?水分を?』、ん?、ん~?、かな?」
タロウの話を聞きながら、エミリアが思考していた。
(「やっぱりタロウさんは”すごい”、私の能力の幅を簡単に広げてくれる……、なんだろ?ちょっと悔しい……、けど?楽しい……、もっと色々……」)
タロウは話しながら、三つのバケツに入ってた粉状の血液を一つに纏めると、猪の前足、後足の間を片付け、スペースを確保した、そしてタロウが続けて話す。
「これなら?畑に撒くの楽でしょう?、『え?、はい』、ほいじゃ!、”ハラワタ”!、やっちゃおう!、『あ!、はい』」
エミリアは、話すタイミングを伺うものの、そういった経験が少なかった為、ジレンマを感じ始めていた。