眠り
あの日以来どうやら私は避けられているらしい。
何か気に触ることでもしただろうか?
いくら思い返しても全然思い当たる節がない。
そうこうしてるうちに斎藤君と会話のないまま一週間が過ぎていた。元々人とあまり話さないので、職場の空気が変になるということは無かった。
「萩波先輩、まだ上がらないんですか?」
「ん、あぁ、あれの準備が全然で…ごめんね、戸締りはしておくから、お疲れ様。」
今日を含めてちょうど2週間後、新商品開発のために各自匿名でアイデアを出し合い最も良いと思ったものに票を入れ獲得票数が多いものを土台としてそこから新商品を開発するというイベントごとがあるのだが今のところ全然良いアイデアが浮かばない。
という事で、最近はいつも最後になってしまう。
「もうこんな時間か……今日はもう帰るか。」
時刻はもう少しで24時になる所だ。
最近毎日このような生活を続けているから体がもたない。
寝不足と疲労でフラフラとしながら帰路につく。
途中で斎藤君を見かけた。どうやら女性社員に付き合わされていたようだ。かなり酔っているようだ。
信号待ちをしていると斎藤君が近づいて来た。どうやら帰る方向が一緒のようだ。
斎藤君を心配そうにみていると斎藤君が話しかけて来た。
「先輩〜ぼくのことおぼえてますか〜?」
「どこかで会ったことあったかしら?」
「ひっどいな〜もうっ!、高校の時同じクラスだったじゃないですか!」
それを聞いて私の今までの気のせいだと思っていたことはそうではないという事がわかった。
「何処かで見たことあると思ったらやっぱり斎藤君がだったのね、びっくりしたわ。」
「あ〜うっそだ〜、絶対忘れてたでしょ!!」
「そんな事ないわよ。」
「本当かな〜???」
そんな事を話していると信号は青に変わった。
そこで、横断歩道を渡ろうとした時に斎藤君がいきなり私に体当たりをして来た。
「ちょっと…」
文句を言ってやろうと振り向いた時にはそこに斎藤君は居なかった。代わりにトラックが横転して止まって居た。
斎藤君は数メートル先に体がぐちゃぐちゃになって倒れていた。
そこで私は気絶してしまった。