第一話
廃ビルの柱の影に隠れ、乱れた息を整える。
そっと“敵”の方を覗くと、当たりを見回し私を探しているようだ。
私は今、オーガという魔物と戦っている。
知能は低いが巨大な体躯で力が強く、そのうえ動きが素早い。
危険度の高い魔物の一種として登録されている。
回避に専念して隠れることができたが、狭いこの地下駐車場だとあまり長く持たないだろう。
反撃の隙を伺ってはいるものの、たとえ攻撃できても私のブレードじゃ、あの巨体に与えるダメージが小さいことは、先の攻撃で感じた。
何か打開策はないか思考を巡らしていると、突然スマホが鳴り出した。
――――気づかれた!
音に反応して、雄叫びをあげながらオーガが迫ってくる。
急いでビルの外へ走り出すが、もちろんオーガも後を追いかける。
素早いとはいえ、単純に逃げるだけなら私の方がまだ早い。
走りながらスマホを取り出し電話にでる。
「もうタイミング悪い!」
「うわっ!なんだよ急に!楓は…その様子だとやばそうだな?」
「まじやばだよ!オーガだもん!」
「オーガ!?急いであたしもそっち向かう!」
「お願い!」
相手は同じチームの凪沙だった。
自分が戦っていた魔物が片付いて連絡してきたのだろう。
凪沙が来るまで5分程度だろうか。
それまで何とか抑えないと。
変わらずオーガはこちらに全力で向かってくる。
とはいえ、真正面からぶつかっても力負けしてしまう。
なら―――
私は足を止め、オーガの方へ振り返る。
オーガとの距離は50mほど。
私は全身の力を抜いて攻撃に備える。
同時にブレードを持つ右肩から腕全体に強化の魔法を唱え、さらにブレードの先へ魔力を集中させる。
あと30m。
オーガは腕を高く持ち上げ、勢いに乗せて拳をぶつけようとしている。
あと10m。
オーガは私めがけて拳を振り下ろす。
―――今!
私は左足を軸に、回転しながら振り下ろされた拳から身を躱す。
背後を拳が抜けていく。
そのまま右手に持つブレードを腕の間接めがけて叩き込んだ。
しかし、勢いの弱いブレードは、腕に少し食い込んだ程度で血管までは届かない。
だが、問題はない。
「ブロウっ!!!」
私は叫び魔法を唱える。
瞬間、オーガは態勢を崩して勢いよく転倒した。
よくある護身術の一つだ。
本来は飛んできた拳を手で後ろに引きながら受け、関節を横に押して流す。
私はオーガの拳をギリギリで躱し、ブレードで関節を狙った。
けれど、勢いのない攻撃では転倒させることができない。
だからブーストの魔法でブレードからオーガの腕に衝撃を放った。
もちろん、衝撃をただ放っただけでは反作用で私のブレードや腕も吹き飛んでしまうから、強化の魔法でそれは防いでいる。
走ってきた勢いもあり、頭から空き家に突っ込んだオーガはそれなりのダメージを受けたようだ。
今のうちに距離をとって、凪沙と合流しよう。
私ひとりじゃかなわない。