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[東方二次創作] 魚鳥響姫唱   作者: 非常食ミスワカ
1/1

わかさぎ姫とミスティア・ローレライの「歌姫異変」

これは上海アリス幻樂団「東方プロジェクト」様の二次創作であり、実在の人物・団体等と一切関係ありません。

また、原作、公式設定とは異なる部分も御座いますのでご注意下さい。

それでもよろしければゆっくりと御閲覧して頂ければ幸いです。




とある昼下がりの守矢神社

巫女装束に身を包み、腰よりも少し伸ばした髪型の少女、東風谷(こちや)早苗が境内で掃き掃除をしていた。そこへシルクハットに目が着いた不思議な帽子を被った見た目は幼い少女が駆け寄って来る。

「早苗~!!」

「どうしました?諏訪子様?」

諏訪子様と呼ばれた少女、洩矢(もりや)諏訪子は上目遣いで幼い子供の様に、目を輝かせ言葉を続ける。

「あのね、今日の晩御飯は久しぶりに故郷の料理がいいなって思ってね!お願いしにきたの!」

「珍しいですね、諏訪子様でも里心が沸くものなんですね~」

「べ、別に良いじゃんかー!早苗だってたまには地元の料理を食べたいでしょ?それにさ‥」

早苗の軽くからかうような笑顔に諏訪子は少し頬を赤らめ反論しようと口を開きかけた時、突然それは遮られた。

「成る程‥そういう事か‥流石諏訪子ぞ‥」

「あ、神奈子様、どうされたのですか?」

神奈子様と呼ばれたこの女性‥八坂神奈子は、早苗よりも少しばかり背が高く、胸には真澄の鏡、背中にはしめ縄と威厳ある独特な雰囲気を漂わせていた。

「早苗、諏訪子はこう言いたいのだ。守矢の信仰を集める新な手段として素晴らしい方法を考えたのだ、とな」

「新しい守矢の信仰の集め方‥ですか?」

神奈子の言う守矢の信仰とは、早苗が『様』を着けて呼び支える、諏訪子と神奈子に対するもので、二人はこの守矢神社に祀られる神様であり二柱である。この二人は信仰が具現化して存在するものなので、信仰が途絶えてしまえば二人は消滅してしまう。だからこそ二人にとって信仰は募らせなければならない大切なもの。そして神奈子は言葉を続ける。

「そうだ。『衣食住』の重要性はお前もよくわかっておろう?」

「は、はい。人間にとってそれらがなければ生きていく事は出来ませんからね。特に食べ物は絶対に無ければなりませんし。」

「その通り!信仰を糧にする我々神は勿論平気だが、其処らの妖怪どもや、人間という生き物は必ず何かを口にしなければ生きてはゆけない‥まぁ白玉楼には例外のピンクの亡霊はいるが‥まぁ詰まる所の話だ。」

「そうか!私達の故郷『信州諏訪』の郷土料理を人里に広めれば!」

ここで早苗は合点がいったとばかりにポンと拳で手を叩く。

彼女達にとっては当然の話だが、そもそも守矢神社は長野県諏訪市にある『諏訪大社』の事であり、諏訪子と神奈子はそこに祀られる二柱なのだ。

「左様!必然と信仰も深まると云うわけよ!どこぞの戒律ばかり厳しい若作り紫の寺とか、『奇跡を起こす程度の能力』を持つ緑の巫女をたぶらかしたあざとい犬耳の太子とかには絶対に出来ない芸当ぞ!まぁ、何より我等が神主の産まれ故郷の信州だしそこが何よりの強みになるしな!」

「う‥あ、あの時は本当に申し訳ありませんでした‥というか神奈子様‥それ外で言ったら幻想郷で戦争が起こるから絶対に口に出さないで下さいね?後、神主関係のメタネタは止めて下さい。この作品消されちゃいますよ?そもそも神主は中信地方で私達は東信じゃないですか、って言うか中信とか東信とかって他の県の人には理解出来ないじゃないですか!」

「おお!流石早苗、全ての発言に突っ込みつつ、自らボケをかまし更にツッコミをいれるとは‥それでこそ代々守矢に支えて来た一族よ!」

「いやぁ~それほどでも~」

「あのさぁ」

すっかり置いてきぼりにされ、少し拗ねた様子で諏訪子が口を挟む

「なんぞ諏訪子、居たのか?」

「いやいや!これ私から始まった話だよね?そもそもただの晩御飯の話がどうしてそこまで発展するのさ!おかしいでしょ!」

両手を必死にばたつかせ、精一杯の主張をする姿は、神奈子のそれとはまるで正反対の存在だった。

「なんぞ?この世界では諏訪子が常識人ポジションなのか?」

「あ、神奈子様非常識の自覚はおありでしたのですね」

「ん?早苗‥何か言ったか?」

早苗のボソッと呟いた一言に神奈子の眉がピクリと動く

「あ、何でもないです!ほ、ほら!郷土料理をって諏訪子様仰いましたけど何を召し上がりたいのですか??」

露骨な話題そらしに訝しげな表情を見せつつも諏訪子に言葉を向ける。

「む?確かにそうだな、私も永らく守矢に居たとはいえ、元々は諏訪に居たわけでは無いしな。そこは諏訪子に一任しようではないか!」

「いや!神奈子様!一任するのは如何な物かと!」

突然ビシッと右手を挙げ早苗が話を遮る。

「む?諏訪子に任せて何か問題があるというのか?」

「はい。諏訪子様は土着神‥また両生類の神様です。そして信州に伝わる郷土料理この共通点が‥」

先程の威勢の良い遮りとは裏腹に今度は口ごもる。

「なんぞ?勿体ぶらず言えばよいではないか」

話を遮られて口ごもる‥そんなもどかしさに神奈子は答えを急かす。

「は、はい。私も外の世界に居たときは普通に食べていましたが‥『イナゴ』です要は『虫』ですね」

「な、なんぞ‥良く理解出来ないのだが‥」

予想だにしなかった斜め上の答えに思考が停止する。

「ですから『イナゴの佃煮』ですよ!見た目があまり良くないので里の方々にはすぐに受け入れがたいかと‥まぁ慣れてしまえば意外と美味しいんですけどね♪」

満面の笑みを浮かべる早苗に神奈子はただ狼狽えていた。

「い、いや!私も永らく守矢に居るが、流石にそれは知らんぞ??というか正気か?『虫 』ぞ?『イナゴ』ぞ?」

「まぁそもそも庶民の料理ですし、神様にお供えするものでもないですしね~。あ、そう言えば諏訪の新しい名産として私が此方に来るちょっと前に『イナゴソフトクリーム』と言いまして、イナゴが刺さっ」

「ま、待て!もうよい!早苗、そこで止めてくれ‥流石の私も‥キツイ‥」

両手を膝に付き、頭を垂れ顔を青ざめる姿は神と言う存在よりも、ただただ心底恐怖を味わった普通の女性のようだった。

「えぇ~美味しいのに‥あ、じゃあ蜂の子の佃煮はどうです??」

「早苗!た、頼むから、虫の話はもう止めてくれ‥」

今度は膝から崩れ落ち、早苗の手を掴み哀願する。先程の威厳等微塵も感じられない

「むぅ‥残念です‥」

「ちょっと!なんなのさ!二人して勝手に盛り上がって!!私は無視ですか!!流石の私も怒るよ!!」

二人のやり取りを呆れながら見ていた諏訪子も我慢の限界だといわんばかりに口を開く。

「あ、申し訳ありません諏訪子様‥で、何の話でしたっけ?」

「晩御飯!て言うか私は佃煮を食べたいなんて一言も言ってないでしょ!!」

「あ、そうでしたね。では何を御所望ですか?」

「まったくもう‥」

呆れた表情でため息をつき、気を取り直して早苗の顔をみる。

「あのね~‥わかさぎの天ぷらと鹿のステーキ!!」

「えっと‥わかさぎは判ります‥けど‥鹿‥ですか?」

鹿という単語に早苗が首をかしげる。

確かに現代の長野県は鹿や猪と言った所謂『ジビエ料理』が盛んだが、果たして諏訪子の時代にそれがあったかはわからない。

「うん!早苗は知らないかもだけと江戸時代にね、鹿の数が増えすぎて農作に被害が出たんだ。それで鹿の駆除を初めたんだけど殺めるだけでは可哀想だからって私と神奈子、それに当時の神主と話し合って『鹿食免』って札を出したんだ。美味しく頂いてしっかり供養しましょうってね。当時は肉食文化が幕府によって禁忌とされてた時代だったから異例中の異例だったんだよ?でも幕府は私達の信仰を蔑ろにして、民衆の反感を買うのを恐れて何も言えなかったんだ♪お上も私達神様には敵わないってね♪それをふと思い出したんだ♪」

「へぇ~それは知りませんでした‥勉強になります!」

「勉強って程でも無いけどね~♪それにしても懐かしいよね~?って神奈子??」

「‥いやいやそもそも私は大和の領地拡大の為に諏訪の国を訪れたのでそもそもこの地の文化に染まる必要はないしそれに実質諏訪を治めてたのは諏訪子だし私形だけだし私って居なくていいよね?っていうか虫食べる文化に馴染もうとしてたわたしが‥」ぶつぶつ‥

余程ショックだったのか、膝をついて頭を覆いながら独り言を続ける神奈子。僅か十数分前よりもいささか老け込んだように見えた。

「なんか私と戦闘したときよりもダメージ受けてるんですけど~」

少しムスっとした、しかしどこか勝ち誇った顔で神奈子を見下ろす。

「神奈子様~?好き嫌いはいけませんよ~?それに元からとはいえお婆ちゃんみたいになってますし」

「い、今はそっとしておいてくれまいか‥」

「は、はい?」

普段なら即鉄槌が下る様な早苗の失言にも神奈子は反応しない。

「早苗、私達の文化は外の国には受け入れがたいんだよ。」

「美味しいのになぁ‥」

早苗が残念という表情で買い物の支度を始める時、諏訪子はしてやったりという表情で戻っていき、神奈子は逃げ帰った境内の奥から暫く出てこなかったとか。


一時間後‥霧の湖

「さて、人里で買い出しも済ませたし‥少し時間あるからゆっくり散歩でもして帰ろっと♪‥まぁ、流石に鹿のお肉はなかったから諏訪子様には山賊焼きで我慢してもらわないとだけどね~」

山賊焼きとは長野県松本市(中信地方)と諏訪市、岡谷市(東信地方)でよく食べられる郷土料理の一つ。諸説あるがこの料理も諏訪市発祥と言われている。

「♪~交わす~約束の中~泳いだマーメイド~♪」

「随分賑やかですね?なんでしょう?」

まるで盛大なライブが催されている様な賑やかさに惹かれ、そちらへ足を向ける。そこには沢山の音響機器が設置され、湖の水上に作られたライブステージと、そこに繋げた陸地部分に観客席のスペースがあった。そしてその中心にいる三人の人影。

その中の二人は早苗の顔馴染みである、背中に羽を持ち、同じように様に羽があしらわれた帽子を身に付けた、小柄で可愛らしい夜雀妖怪のミスティア・ローレライに、犬耳の様な物が頭の両側から垂らしたこちらも小柄で可愛らしい山彦妖怪の幽谷(かそだに)響子。『鳥獣伎楽(ちょうじゅうぎがく)』の二人だった。

「いやぁ~!大分良い感じになってきたね!」

「そうだね!響子と組んでから結構立つけど、新メンバーとしてわかさぎ姫に声を掛けて大正解だったよ!」

わかさぎ姫と呼ばれた、頭の両側から魚のヒレの様な耳があり、上半身は清楚な和服を身に付けた姿の少女が、二人の掛け合いにステージから上半身だけを乗りだした状態で頬を赤らめ答える。

「そ、そんな恥ずかしいですよ。それに私みたいな草の根妖怪なんかに声を掛けて頂いてありがとうございます。」

「そんな事ないよ!私達『鳥獣伎楽』がこの湖でライブしたいって言った時も快く受けてくれたし、元々わかさぎ姫の歌声は評判良かったから一緒に歌ってみたいって思ってたしね!」

そう言ってミスティアがわかさぎ姫にグッと親指を立てて笑う。

「い、いえ‥なんというか‥本当にお恥ずかしいですよ‥それにミスティアさんも大変お上手ですし、響子さんの演奏も物凄くお上手ですし!」

「いやいや!私の演奏だけじゃないよ!プリズムリバー三姉妹に九十九姉妹、堀川雷鼓さんの伴奏もにとりの作ってくれた機械のお陰で合わせられるし‥今回は最高のライブになるよ!」

と、響子もまたミスティアと同じように笑って見せた。

「そう仰って頂けるだけでも本当に有難いです‥お二方、本当に有難うございます!」

そう二人に対して深々と頭を下げると二人はまた、笑顔を見せる

「なにされてるんですか~!凄く綺麗な歌が聞こえて来ましたけど?」

ライブステージまで来た早苗が笑顔で手を振りながら声をかけると、ミスティアと響子が同じように挨拶を返してくれる。

「あ!早苗さん!」

「おはよーございまーす!!」

「こんにちは、ミスティアさんに響子さん。歌の練習ですか?」

「はい!今度この霧の湖で『鳥獣伎楽』のライブをすることになったんですよ!」

早苗の問いに響子が答える。

「そうなんですね!おめでとうございます♪‥ところで、そちらの方は?」

早苗は初めて会う彼女の事を訪ねる

「あ、早苗さんは初めて会うんでしたよね?この子は霧の湖に住むわかさぎ姫です」

と、響子が返す。山彦の妖怪だけあって問い掛けには返すのが習性らしい。

「は、初め‥まして‥わかさぎ姫と申します」

「初めまして♪私は守矢神社で巫女を務めさせて頂いてます東風谷早苗と申します。宜しくお願いしますね♪」

「早苗さん‥ですね、こ、此方こそ宜しくお願いします!」

満面の笑みで軽く会釈する早苗に対してわかさぎ姫は緊張した面持ちでぎこちなく頭を下げる。その姿は早苗にとって初めての入学式で緊張している初々しい女の子の様に写って見えた。

「可愛いらしい方ですね♪見たところ‥人魚さんですか?」

彼女が上半身だけを乗り出している部分はすぐ真下に湖があり、彼女の下半身‥美しいヒレの部分が湖に浸かっていた。

「はい!そうです!わかさぎの人魚です!」

「えっ!?」

「どうかされました?」

「あ、お、おきになさらずにー!(絶対に言えない!家の晩御飯が《わかさぎの天ぷら》に《山賊焼き》だなんて!)」

因みに山賊焼きとは鶏のもも一枚肉を醤油・酒・ニンニク・生姜等で漬け込み、片栗粉で揚げる、または串打ちして直火で焼くという、まごう事なき鶏肉料理である。

余談だが筆者は薄い味付けの山賊焼き(串焼き)に美味ダレ(長野県上田市の名産品)を乗せて食べるのがお気に入り。

「‥‥」

この時の早苗の反応をミスティアが見逃さなかった。と、言うより見逃す筈がなかった。『胃袋にブラックホールを持つ程度の能力』のピンクの亡霊、西行寺幽y(ピチューン‥白玉楼の幽冥楼閣の亡霊少女・西行寺幽々子や、腹ペコ貧乏紅白脇巫女博麗m(ピチューン‥楽園の素敵な巫女・博麗霊夢に隙あらば食料として命を狙われる日々‥この時彼女にわかさぎ姫に対する熱い感情が生まれたのは言うまでもない。

「ミスチー?わかさぎ姫をじっと見てどうしたの?」

「私と姫は本当の意味で仲間‥ってことよ‥」

「??」

さっぱりと意味が解らず首をかしげる響子

「そっそれより!!『鳥獣伎楽』って確か響子さんがボーカルでしたよね!!み、見たところ今日は2人のポジションが入れ替わってますけど!!」

(露骨に話題をそらしたな‥)

早苗は慌てて隠そうとするものの、ミスティアには通じなかったらしい。

そんな彼女の普段とは違う雰囲気に響子は戦々恐々としていた。

「み、ミスチー?何か黒いオーラが出てるよ!?どうしたの!?」

そんな彼女の言葉に等目もくれず、わかさぎ姫へ向かい合うと、ミスティアは声高らかに宣言した。

「姫‥私達は今、強い強い絆で結ばれたのよ!これからずっと仲良く、そして二人で闘い続けましょう!!」

「はい!ミスティアさん!一緒に戦いましょう!!」

その意思を汲み取った彼女はミスティアと熱く、固い握手を交わす。

彼女も捕食キャラとして、ネタにされているキャラクターであり、こそ泥魔法使い霧雨魔理S(ピチューン‥普通の魔法使い・霧雨魔理沙に『刺身』と言われ、まさかの製作者、神主事ZUN氏に置いては『天ぷら大好きです』とまで言われる始末である。

(ミスティアさんに捕食ネタのスイッチを入れてしまいした‥言動には気を付けないと‥)

「皆揃ってどうしたの???不思議な人達だなぁ~」

勿論それを知る由もない響子の頭にはクエスチョンマークが浮かぶのみだった。

「そう言えば‥早苗さんが仰っていたポジションの話というのは?お二人とも本当にお上手でしたが?」

ここで先程出された早苗の質問に疑問を感じたわかさぎ姫が切り出す。

「あ、それは響子が聖にしめられたからよ」

「あ‥聖さんに、ですか‥‥それは‥お気の毒‥様です」

ミスティアの返答に心底同情したようで、早苗の表情が曇る。

「ひじり?すいません、私外の事には疎くて‥影狼や蛮奇から聞いた程度しか解らないんですよ」

「聖はね響子が居る『命蓮寺』の僧侶でね、滅茶苦茶強いの。間違いなく幻想郷のトップ10には入ってる。」

「そうですね、聖さんには霊夢さんも苦戦してましたし。」

わかさぎ姫の問いにミスティアと早苗が答える。

「霊夢って‥あの紅白の巫女装束を着た人間ですよね!?あの方が苦戦するなんて‥」

「あれ?姫は霊夢をしってるの?」

わかさぎ姫の反応にミスティアは少し驚いた反応を見せた。

「は、はい。打出の小槌の魔力が暴走した時に‥ちょっと‥そ、それより、いきなり響子さんがガタガタ震えてますけど大丈夫なんですか?」

「あぁ~気にしないで。聖の24時間耐久強化魔法体術組み手を思い出してるだけだから」

「うわぁ‥響子さんよく生きてましたね‥想像するのもはばかれます‥」

この聖という僧侶は『魔法を使う程度の能力』を持つ所謂魔法使いなのだが、幻想郷に置いて魔法使いと言われる彼女達『アリス・マーガドロイド』『パチェリー・ノーレッジ』『霧雨魔理沙』とは違い、実際使う魔法の殆どが身体強化魔法で、体術の強さは、身体能力では鬼に次いで最も強いとされる鴉天狗の射命丸文(しゃめいまるあや)を持ってして認められる程、といった説明も早苗によって付け加えられた。

「あの魔理沙さんよりも凄い魔法使いで、更には霊夢さんクラスで強いのですか‥なんとも恐ろしいですね‥ですけどそもそも響子さんがそんな罰をその聖って人から受けなきゃいけなくなったのです?それにミスティアさんとポジションを交換する意味がわかりませんし。」

それでもやはり腑に落ちない様でわかさぎ姫は質問を続ける。

「それはね、私達のライブって基本ゲリラライブなのよ。しかも私のお店が終わってからだから深夜遅くに。それで一部の人間から響子が入門している命蓮寺に苦情が来てしまったみたいなの。ただでさえ『音を反射させる程度の能力』なんだから声が響くでしょ?それで聖に活動を自粛するように言われてたらしいのよ。それを私に言わずに活動を続けたもんだから聖がついにぶちギレて折檻+暫く歌うことを禁止されたのよ。それで今回のポジション交換に至るって訳。」

「そうだったのですか‥その‥お気の毒様です」

ミスティアの説明に詮索し過ぎてしまったと、わかさぎ姫は言葉に詰まる。

「まぁ、元はと言えば響子が聖の言いつけを守らず、私にも相談無しにやってた事だから自業自得よ」

それを察してかミスティアはわかさぎ姫を庇う。

「ま、まぁミスティアさんそう言わずに、ね?聖さん相手に原型留めてるだけでも私の能力以上の奇跡なんで‥」

そんな彼女の心遣いに早苗は気付かず言葉を続けようとした時だった。

「あらあら‥私だって響子さんをお仕置きで消し飛ばしてしまうような力加減を間違える程未熟ではありませんよ?」

「そうですね。聖白蓮はそのように愚かな真似は絶対にしないでしょう。寧ろ彼女の言い付けをきちんと守らずにいた幽谷響子に問題があると言えます。白か黒か‥ハッキリつける以前の問題と言えます。」

突然現れた一人の女性と一人の少女。

女性の方は早苗よりも少し髪が長く、清楚な服装に相応しく物腰の柔らかい、森羅万物全てを優しく包み込んでしまうような雰囲気を持ち合わせている。

もう一人の小柄な少女、悔悟棒を胸の前に両手で持ち、隣の女性とは相反して如何なる者にも有無を言わさぬという程の威厳を放っていた。

(うわぁ‥よりにもよってこの二人か‥)

(ビクッ!)

「え!?聖さんに、映姫様!?」

「?お三方、どうされたんですか?このお二人は一体‥」

ミスティアの間が悪いなぁという呆れた表情。

響子の震えから硬直に成るほどの恐怖心。

珍しい組み合わせに純粋に驚く早苗と、三者三様の反応に対して何も知らないわかさぎ姫の反応は当然のものだった。

「ふふ‥今皆さんのお話になっておりました聖白蓮(ひじりびゃくれん)と申します。そして此方が‥」

四季映姫(しきえいき)です。わかさぎ姫、貴女は鬼人正邪(きじんせいじゃ)の企みにより一時的な暴走状態だったとは言え、常日頃の行いは実に素晴らしいものと言えるでしょう。これからもその心掛けを忘れず日々を過ごして行きなさい。それが貴女が積める善行です。」

「は、はい‥よろしく‥お願いします」

突然の出来事にどう反応していいか分からずに狼狽えているわかさぎ姫に早苗が助け船を出す。

「わかさぎ姫さん、そちらにいらっしゃる女性が聖白蓮さん。今お話していた方です。隣にいらっしゃる幼zy‥威厳のある方が四季映姫様。口うるさ‥有難いお話しをされる地獄の最高裁判長こと閻魔様です。」

早苗の所々本音の紹介に映姫の眉がピクリと動く。彼女の天然故に大物相手でも容赦ない毒舌が発揮されるのは珍しい事ではない。

「東風谷早苗‥どうやら少し『話し合い』が必要な様ですね?」

「あらあら‥早苗さん藪蛇でしたね。南無三」

「聖さん!?そんな笑顔で言わないで下さい!それよりも助けて下さいよ!」

まさに菩薩と言えるだろう笑顔を浮かべ両手を合わせ合掌をする聖に早苗が泣きつく。そんな漫才の様な掛け合いにミスティアが一石を投じる。

「楽しそうにしてるところ悪いんだけど‥」

「み、ミスティアさん!?助けてくれるんですか!?」

「いや、どう考えても無理でしょ。それよりも珍しい組み合わせだと思って、聖に閻魔、どうしたの?って話。」

慈悲もないと泣き崩れる早苗を横目に映姫が質問に答える。

「あぁ、丁度聖白蓮と私の目的が一致しただけという事です。」

「そうですね。映姫様さえ宜しければ、私から説明しても差し支えありませんか?」

「えぇ、お願いします。」

そう言うと聖は一冊の新聞を取り出した。幻想郷に置いて最も発行数の多い文々。(ぶんぶんまる)新聞。鴉天狗の射命丸文によって発行されている新聞だ。

「ここに居る四人は、今朝の文々。新聞を読まれましたか?」

「いえ、守矢神社では諏訪子様も神奈子様も新聞には目を通されませんので‥それに私は文さんから直接聞く方が多いですし。」

「私はそこまで文字が読めないから、ざっと目を通したら屋台で掃除や焚き付けに使っちゃうわ」

「わ、わ、わたしは!と、どけらられれたものをナズーリンにわたふだけれすので!!」

「すみません‥私はご覧の通り霧の湖から滅多に出られませんので、新聞はおろか地上の情報は蛮奇と影狼に頼るしか‥」

「そうでしたか、四人ともこの記事をご覧になって無いのですね」

各々の意見を聞き、聖は今日付けの新聞の見出しを広げ四人に見せる。そこにはでかでかと宣伝が書いてあった。

『心機一転鳥獣伎樂!!新メンバーを迎え、伴奏とボーカルが交代!幻想郷最高の歌姫二人によるデュエットで更に進化したハートフルライブをお楽しみに!!会場は紅魔館前霧の湖にて!』

「あ、そういえば響子が文に頼んで広告出して貰ってたんだっけ」

ふと思い出した様にミスティアが呟く。

「そうです。しかし‥響子さん?」

少しずつ肌を刺すような空気に変わって行くのが分かる

「ア、アタシキュウヨウオモイダシタカライカナイトー」

壊れたブリキの玩具の様にかくかくとした動きで180度反転する響子

「響子‥あんたまさか‥」

全てを察し、呆れ顔のミスティアがため息をつく。彼女は歌う事だけではなく『ライブ活動』そのものを禁止されていたのだ、と。

「そうです。ミスティアさんのお察しの通り。一度ならず二度までも‥どうしてその様な行動に至ったのか‥ちょっと『お話し』しませんか‥?丁度虎丸の宝塔の件や一輪と村紗の飲酒肉食‥さらにはナズーリンの悪巧みに乗った小傘にぬえのイタズラ三昧と‥どうせなら全て纏めて一度に『話し合い』をしてしまえば簡単ですから‥ね?」

「ア、アワワワワワ‥」

明らかに怒りのメーターが振り切れたオーラ。それは肌を刺すというより、肌を焼き尽くすと言う方が的確だった。

(さよなら響子‥あんた最高の相棒だったわよ)

長らく共に過ごした相棒の最期の背中を、ミスティアは温かい目で見送る事にした。その時。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

わかさぎ姫が突如叫んだ。

「あら?どうされたのですか?」

突然の大声に一度聖がそのオーラを納め、わかさぎ姫を見る。

「あの、その‥た、確かに聖さんの言いつけを破ってライブを開こうとしたのは良くないと思います!でも、響子さんは歌うことは自粛して居ました!何より‥私の様な草の根妖怪に声を掛けて下さって‥新聞の件は知りませんでしたが、それも一重に私達の様な力のない妖怪でも周りに希望を与えられるんだって事を証明したかったんだと思うんです!だから‥だから今回は見逃して上げて下さい!」

(わかさぎ姫‥)

彼女の言葉が響子の心に染み渡る。

「確かにわかさぎ姫さんの仰る通りかと思います!私も偶然通りがかっただけですが‥響子さんは一切歌う事なく伴奏に徹して居ました。それににとりさんや楽器の演奏できる妖怪や妖精達に協力をお願いしたのも響子さんだった様ですし‥そこまで今回のライブには思い入れがあったんですよね?」

「早苗さんまで‥」

心のこもった二人の言葉に響子は決意を固め聖に向かい合う。

「聖様申し訳ありません!謹慎中の身で有りながら余りにも身勝手な行動をとってしまいました。勿論罰は覚悟の上です!ですが‥どうかお願い致します!今回の‥今回のライブだけは開催させて下さい!私が思う幻想郷最高の歌姫が揃うのです!ですから‥ですから今回だけは!お願いします!!」

(響子‥あんた‥)

響子の熱い思い。それはミスティアや聖だけでなく、その場に居合わせた全員の心に熱く刺さる。

そして聖は少し考えてから静かに口を開いた。

「‥‥何故それを先に言わなかったのですか?」

「申し訳ありません‥謹慎中の身でしたので‥口に出すのを躊躇ってしまいまして‥」

「その気持ちはよく判ります。しかし目的がきちんとしているならば話は別です。どうやら貴女は既に一人の心を救った様に思えます。」

そう言うと彼女はちらりとわかさぎ姫へ視線を送り、再び響子へ言葉を続けた。

「人一人の心を救うのはどれだけ修行を積み、鍛練を重ねても簡単には出来る事ではありません。響子さん、貴女はとても良い行いをしたと思いますよ?」

「聖様‥」

あまりの優しさと温かさに富んだ言葉に響子の目が潤む。

「ただし、まだその行いはまだ完璧ではありません。」

そう言うと聖は響子の目線までしゃがみ優しい笑顔を浮かべた。

「えっ!?」

「必ずこのライブを成功させなさい。そうしなければお仕置きですからね♪ 」

ピン!と、人差し指を立てて響子の額に軽く当てる。先程までのオーラとは正反対。彼女本来の、まさに菩薩如来の様に全てを温かく包み込む優しさがそこにはあった。

「は、はいっ!有難う御座います!聖様!!」

その優しさに触れたからか、涙目になりながらも聖の胸に飛び込み、抱き付く響子。二人の姿は本当の親子の様な微笑ましい光景だった。

「上手く纏まりましたね、一安心です。しかし‥映姫様も聖さんと同じ件でいらしたのですよね?」

ほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間、先程の発言について、早苗は映姫にも同様の質問をする。

「東風谷早苗、それはミスティア・ローレライに聞けば判ります。」

その言葉にほとほと呆れたというミスティア。ほんの僅か前の感動を返してくれと表情が物語っていた。

「はぁ‥またあのお説教?それならあんたの部下のツケを全部払ってからにしてよね?」

「小町の事はすみません。ちゃんと言い聞かせておきます。あと、今日明日は非番ですのでそちらへお伺いした際にちゃんとお支払いします。」

そんな二人のやり取りにわかさぎ姫は驚愕する。

「えっ!?ミスティアさんは閻魔様とお知り合いなのですか!?なんだかミスティアさんが雲の上の存在みたいです‥」

「バカな事を言わないでよ‥私は幻想郷でも数少ない人妖両方相手に商売してるんだから。八雲紫だろうが四季映姫だろうが暖簾をくぐればただのお客よ。」

「彼女言う通りですよわかさぎ姫。我々は肩書きこそ持ち合わせていますが、それはあくまでも肩書きに過ぎません。ミスティア・ローレライの様に心を安らげる場所を提供してくれる存在とは非常に有難いのです。しかし‥」

映姫の言葉に被せてミスティアがその続きを繋ぐ。

「『このまま何も考えず歌い続ければ、周りの霊達もおかしくなる。それは、未曾有の大罪に繋がるかも知れない。』でしょ?もう何回目よ、いくら鳥頭の私でも覚えるわ‥そのうち耳に出来たタコで八ツ目鰻の屋台からたこ焼きの屋台になっちゃうわよ。」

この発言に映姫が僅かながらも声を荒げる。

「失礼な!私は幻想郷の平和と秩序を守り、貴女の起こすかも知れない大罪を遠ざけようとしているだけです!」

「そしたら紫や霊夢達がなんとかしてくれるでしょ‥て言うかそんなんだったら霊夢へ説教してよね?おたくの部下の10倍以上のツケが溜まってるんだけど?」

「なんと‥幻想郷を守護する博麗の巫女ともあろう者が‥小町共々しっかりと話をしなければなりませんね。勿論、霊夢の保護者である八雲紫にも」

「ちょっと!私は関係ないでしょ!」

「うわぁっ!!お化け!!」

わかさぎ姫が驚くのも無理はない。

突然宙に現れた無数の目が浮かぶ闇の中から紫のドレスにヘッドキャップ、更には日傘をもったBB(ピチューン‥妖艶でいて落ち着きのある、しかし明らかに他者とは一線を斯くするオーラのある素敵な女性が現れた。

「姫‥落ち着きなさいこの『スキマ』から出て来たのが『八雲紫(やくもゆかり)』幻想郷の創始者で博麗大結界を護る大妖怪賢者よ」

「そ、そうなんですか‥というよりさっきから物凄い大御所の方々が集結しているような‥」

次々に訪れる突然の幻想郷最高勢力達の襲来にわかさぎ姫はただただ戸惑っていた。

「あら、大御所なんて嬉しい事言ってくれるじゃない。初めましてわかさぎ姫ちゃん♪」

「は、初めまして!わかさぎ姫と申します」

大物八雲紫に突然の挨拶をされ、思わず声が裏返る。

「あら、噂に違わぬ礼儀正しさね♪どこぞの融通の効かない堅物地蔵に爪の垢を煎じて呑ませてやりたいわ。」

わかさぎ姫に対して向けた笑顔とは裏腹に、ちらりと視線を向けた映姫には辛辣な言葉を投げ掛ける。

明らかに眉と口角がピクピクとひきつってはいるが、挑発に簡単には乗るまいと映姫も努めて冷静に応戦する。

「ほぅ‥では問いますが‥八雲紫。折角先代が厳しく霊夢を育てようと努めていたのに貴女があまりにも甘やかすから現在の博麗の巫女はあのような体たらくになってしまったのではないのですか?」

「そんな事はないわよ?あの娘は歴代の巫女の中でも一番優秀。何よりあの娘の思想はかつての巫女達にはなかった『人と妖怪の共存』じゃない。『弾幕ごっこ』を使って力の有無は関係なしに、程よく妖怪達は異変を起こして人間が恐れ、しかしながらも解決する。幻想郷のルールに乗っ取って生み出された最も素晴らしいアイディアよ?だからこそ今の幻想郷は創設以来最も平和だと言えるわ。それにね、面白い事やってるからずっとみてたけど、貴女が思ってるような事態も起きないわよ?」

「それはどういう事ですか?」

思わぬ正論に矛を納めつつ、紫の言葉に疑問を投げ掛ける。

「貴女もわかってるのでしょ?今のミスティアの歌声、わかさぎ姫の歌声と合わさる事で貴女がかつてミスティアに告げた事と真逆の‥要は人、妖怪共に素晴らしい効能を発揮しているわ。私ですら聞き惚れてしまう程にね。」

彼女の言葉を受け、目を閉じ少し考えてから映姫は口を開いた。

「八雲紫、確かに貴女の言う通りです。実際私自身の耳で聴いてみて良く解りました。今回ばかりは私に非があったと認めます。ミスティアローレライ。申し訳ありませんでした。」

紫に論破されたと言うより、映姫自身が納得しているという様子で二人の意見は纏まったようだった。

「な、なんだかよく解らないけど‥私と姫がデュエットするのは凄く良いって事なのね」

ミスティアは二人の難解なやり取りに困惑しつつ、取り敢えず面倒な事にならなくて良かったと胸を撫で下ろした。

「そういう事♪だから当日は私も一人の観客としてお邪魔させて貰うわね♪」

「ええっ!?だ、大妖怪の八雲紫様が‥」

「わかさぎ姫、彼女だけではありません。勿論私もお邪魔させて頂きます。他にも幻想郷の多くの者達が貴女方の美しい歌声を求めて訪れるでしょう。そして貴女方が持てる能力を全て発揮し、訪れた者達の心を癒すのです。それが」

「『貴女方の積める善行です』でしょ?解ってるわよ。姫となら絶対に上手くやれるから心配しないで。そうでしょ?」

またしても映姫の言葉に被せつつ、笑顔でわかさぎ姫に目配せをする。

「はいっ!ミスティアさんと完璧なライブをやり遂げてみせます!」

「その言葉を聞けて安心しました。では後程ミスティアローレライのお店にお邪魔させて頂きます。」

「部下の尻拭いをする‥それが貴女の積める善行だからかしら?」

映姫の言葉に今度は紫が皮肉を込めて被せて来る。それに対し今度は鋭い視線を向ける。

「いつも式神の(らん)に仕事の殆どを押し付けている貴女には言われたくありませんね?」

「あら四季ちゃんこわ~い♪早く逃げなきゃ~♪あ、そうそう、早苗?」

流石に堪忍袋の緒が限界と見たのか紫が退散を決め込み半身を『スキマ』に戻した時、思い出した様に早苗に声を掛ける。

「は、はい?」

完全に傍観者となっていた自分の名を呼ばれ、思わずすっとんきょうな声が出る。

「諏訪子が『お腹空いた~』って泣きわめいてたわよ?」

「えっ!?あ、もうこんな時間!皆さんお先に失礼します!!」

紫の言葉に慌てて走り出す早苗。辺りは紅に染まり始めていた。

「あらあら‥では響子さん?私達も帰るとしましょうか?」

それを見て聖も響子に声を掛ける。

「いえ、練習場所の片付けがありますので‥先日片付けをせずに帰ろうとしたらいつの間にか頭にナイフが刺さっていたのでちゃんと片付けてから帰ります。ですから聖様はお先に。」

「あらあら、それはいけませんね。わかりました。道中気を付けて帰るのですよ?」

「はい!有難う御座います!」

(響子め‥ここでの全体練習は今日が初めてだったのに‥体よく命蓮寺大虐殺大会を避けたな)

(ごめん‥皆‥私だけ何もされずに聖様の大虐殺を傍観なんてしようものなら、ナズーリンかぬえあたりが難癖着けて強制参加になってしまうから‥それだけは絶対に避けないと!)

当然、響子の頭には聖が先程発した『お話し』が残っていた。帰ったら皆で談笑しながら楽しい夕食。そんな事あるはずも無いのだから、と。

「さて、私も帰って藍のご飯食べましょうかね~♪それじゃあ皆さんごきげんよ~♪」

紫はそう言うと『スキマ』へ完全に入り、そこに存在していた『スキマ』と共に完全に消えてしまった。

「では私は博麗神社へ赴くとしましょう。貴女のお店があくまでまだ時間があるようですしね。それでは後程。失礼します。」

その一言にミスティアは霊夢に悪い事をしたなと思いつつ、まぁ軽く10万を超えるツケを作った自分が悪いのよ、と心の中で呟いた。


紅魔館の一室

「お嬢様、宜しかったのですか?」

芳醇な香りが立ち上る紅茶を淹れながら、瀟洒なメイドが問い掛ける。

「一体何の事かしら?」

お嬢様と呼ばれた少女、レミリア・スカーレット、その幼い見た目とは似遣わない落ち着きと威厳に満ちた少女は淹れたての紅茶の『香り』を楽しみつつ、両肘をテーブルに付き、手を組んだ姿勢で目を閉じたまま答える。

「ミスティア・ローレライの件です。素性の解らない野良妖怪共の頼みでお嬢様の能力を使われるとは思わなかったものでして。それに何やら事態が段々と大事に‥まさか聖白蓮や八雲紫、四季映姫までもが絡む事になるとは‥」

そのメイドは少し心配そうな‥表情にこそ出さないが‥言葉を告げる。

「あら咲夜、これも彼女『達』が望んだ運命なのよ?そもそも彼女達も幻想郷の住民‥少なくとも私達よりは長くこの地で暮らしていたのだからそこに敬意を払ったまでよ。それにね‥久しぶりに『異変』を起こしてみたかっただけ。」

咲夜と呼ばれたメイド、十六夜咲夜(いざよいさくや)『完全で瀟洒な従者』はこの紅魔館の当主、レミリア・スカーレットの元でメイド長を勤めている。

そんな彼女の問い掛けにレミリアは相変わらず落ち着きのある様子で答える。その様はまさにカリスマ然としているものだった。

「それにしては随分と穏やかと言うか‥温かな異変ですね。此方に来てからの、お嬢様のお心の様に。」

「別に幻想郷に来たから変わった訳では無いわ。全ては霊夢と魔理紗が私達紅魔館の全て‥フランを救い出してくれたからよ。」

フラン‥フランドール・スカーレットはレミリア・スカーレットの妹で、かつてはその能力、『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』とそれを制御する事が出来ない幼い心故に長い、気の遠くなるような時間を紅魔館の地下で隔離、幽閉されていた。しかし紅魔異変の際に、異変解決へ乗り出した博麗霊夢と霧雨魔理沙によってその心を救われ、今は姉妹仲良く平和な日常を過ごす事が出来ている。それは紅魔館の住人は勿論、二人が解決へ乗りだした、それぞれの異変に関わった全ての存在に置いても言える事であった。

「そうでしたね。私達は勿論、この幻想郷全ての住人達は、二人への感謝の気持ちが止まりま‥せんね」

「あら?咲夜、能力を使ってどうしたのかしら?」

彼女の言葉の途中で一時的に時がとまる。通常周りの者には一切解らないものなのだが、レミリアはその僅かな変化を見落とさなかった。

レミリアの言う咲夜の能力とは『時を操る程度の能力』の事。時を操るといっても時間を止める事は出来るが、時間を進めたり戻したりといった事は出来ない様なのだが。

「食料貯蔵庫に侵入した紅白ネズミの駆除と、その侵入を居眠りで見過ごした門番に制裁を。」

「フフッ‥相変わらずね」

以前ではあり得なかった平和な日常に静かな笑みが溢れる。

「パチェリー!!この本借りてくぜ~!!」

「待ちなさい!魔理紗ー!!この本泥棒ー!!!」

「‥相変わらず‥ね」

思わず苦笑してるとバタンッ!と勢い良く扉が吹き飛ばされる。

「あ!おねー様いたぁ~!!って!やっぱり!良い匂いがすると思ったら‥なんでおねー様だけプリン食べてるのよ!ズルい!!」

妹のフランが部屋に飛び込むや否や、机の上のプリンを指差し叫ぶ。

「申し訳ありません妹様、すぐにご用意し‥」

咲夜の言葉を、頬杖を付き目を閉じたままのレミリアが静かに遮る。

「あら、フラン‥おやつの時間になっても目覚めなかった貴女がいけないのよ?だから貴女のプリンは私が頂くわ。当然よね?ねぇ咲夜?」

「い、いえ‥流石にそれは妹様が可哀想かと‥」

突然の幼稚な主張に苦笑いを浮かべる咲夜。

「あら咲夜‥紅魔館当主であるこの『レミリア・スカーレット』の言うことが聞けないのかしら?今日はフランに非があった。だからその罰は受けて貰わないと、ね?」

「お嬢様‥いくらなんでも大人気ないかと‥」

余りにも幼稚過ぎる発言に流石の咲夜も苦言を呈する。

「そうだよ!いつもおねー様ばっかりズルい!!フランだってプリン食べたいもん!!」

「いいわ‥だったら実力で私から奪ってみなさい。姉より優れた妹は居ないと言うことを思い知らせてあげるわ!!」

そう高らかに宣言すると彼女の右手にグングニルが現れた。

「望むところよ!今日こそおねー様を倒して(仮)スマ(爆)の仮面を剥いで『うー⭐』って言わせてやる!!」

対するフランの右手にはレーヴァテイン。

「なんですって!?上等じゃない!さぁ!表へ出なさい!」

売り言葉に買い言葉、幻想郷でも屈指の実力を持つ、吸血鬼姉妹によるプリン争奪戦争開始のゴングが鳴った。

二人が飛び出すやいなや激しい爆発音と凄まじい衝撃、とてつもない火柱などまるで核爆弾の実験でもしているのかと思うような光景が門前で繰り広げられる。

「‥本当に‥紅魔館は平和になりました‥‥あ、表に美鈴(めいりん)放置したまんまだったわ。‥まぁいいか」

思わず涙を浮かべ、ハンカチで拭くという余りにもベタな反応を見せる咲夜。彼女の耳には美鈴の「助けて~!!」という叫びは聞こえていたとかいなかったとか。


その夜~迷いの竹林~

「へぇ~、あのワガママ吸血鬼相手にあんた達よく頑張ったじゃん!」

横倒しにした丸太に腰掛け、足を組んだまま串焼きにされた魚を頬張る白いシャツに赤いもんぺ、赤の大きなリボンが特徴の藤原妹紅(ふじわらのもこう)が笑顔を見せる。

「いえ、妹紅さんと慧音先生のおかげですよ」

「そうだね。私らみたい目立たない妖怪の顔をわざわざ立ててくれたんだもん。本当にありがとう」

その向かい、行儀良く丸太に並んで腰掛ける今泉影狼(いまいずみかげろう)・狼の耳が頭にあり、ロングスカートのドレス姿の狼女と、赤蛮奇(せきばんき)・赤いマントに少し短めのスカート、頭に青い大きなリボンが特徴のろくろ首の妖怪、が笑顔を見せる。

「うふふ、まさか妹紅がわざわざこんな事をするなんてね~。流石幻想郷一義理人情に熱い(おんな)ね」

「うっさいぞけーね!」

「はいはい♪」

妹紅にけーねと呼ばれた女性、頭には紅葉の様な飾りの着いた青い小さな帽子に、胸元に赤いリボンをあしらった青いワンピース姿の上白沢慧音(かみしらさわけいね)が隣でムスッと照れ隠しをする妹紅にイタズラっぽく笑う。

「ところでさ、一つ疑問なんだけど」

「なぁに?蛮奇ちゃん?」

「いくらこの二人が強い戦闘力があるとはいえ、紅魔館の連中とどんな繋がりがあったの?そもそも影狼がわかさぎ姫を目立たせようっていきなり言い出した意味も解らないし。」

蛮奇が首を傾げながら‥と、言ってもろくろ首とはいえ彼女の頭は宙に浮いており傾げる首はないのだが‥当初から感じていた疑問を口にする。

「一つめの質問は私が答えますね。」

そう言うと慧音は蛮奇に向き直る。

「最近フランドールさんがチルノさんと大妖精さんに連れられて寺子屋に遊びに来るようになったんです。それで私とフランドールさんを通じて紅魔館の皆さんとも繋がりが出来たんですよ。そこへ妹紅が私にこの話を持って来た。だから私がそれをフランドールさんにお願いしたんです。」

そう優しい笑顔で蛮奇に答える。

彼女、上白沢慧音は幻想郷唯一の寺子屋で教員を勤めており、それ故に妖精や人里の人間達にも広く顔を知られている。また、その傍ら幻想郷の歴史に稗田阿求(ひえだのあきゅう)と同様に携わってもいる。(※但し稗田家が持つ『幻想郷縁起』には彼女の持つ『歴史を食べる、及び創る程度の能力』は及ばない)

「成る程。んで?影狼はなんで妹紅にわかさぎ姫の事を?そもそもあんたと妹紅って顔見知りだっけ?」

「一応同じ迷いの竹林に住んでるからね。お互い顔は知ってたのよ。と、言ってもお話ししたのは今回の件が初めてだったのだけどね」

そうはにかみながら照れ笑いを浮かべる影狼。

「あんときゃいきなりなにいってんだコイツ、って感じだったけどな。でもあんまりにも真剣にお願いされたから断れなくてよ。かと言って私も殆ど知り合いなんて居ない。だからけーねにお願いしたのさ。」

妹紅はそう言うと四人の中心で焚かれている火のなかへ先程まで魚が刺さっていた串を放り込む。

「成る程ね。で?私の質問の答えが出てないんだけど?」

自分の質問に対して回りくどい会話に蛮奇は影狼に答えを急かす。

「そうだったね。蛮奇ちゃん。2018年の人気投票の結果、覚えてる?」

影狼の予想だにしない発言に顔をしかめながらも蛮奇は答える。

「覚えてるもなにも‥そんな昔の話じゃないじゃない。67位よ。まさか易者に負けるとは思わなかったけど。あ、‥なんとなく話が見えてきたわ。」

ここで話が見えて来たらしく蛮奇は目を閉じて頷く。

「そう、ほぼ200いる東方キャラの中で50番代に入った経歴があるキャラクターは充分人気キャラクターと言えるわ。有難い話で私も今回は46位だった。永夜抄からの大先輩、慧音さんより上なんて恐れ多いけど‥」

「そんな事気にしてはいけませんよ?寧ろ同じ3面ボスとして鼻が高いです。何より同じ能力を持ってますからね、嬉しい限りですよ。」

この同じ能力というのは二人は共に満月の夜に変身する能力の事で、慧音は白沢(はくたく)に影狼は狼に変身する。

「そう言って頂けるなんて‥本当に恐縮です。」

思わぬ先輩の言葉に照れながら頭をかく。

その隣で蛮奇は腕を組み思い出すように呟く。

「確かに私は前回、前々回と50番代だった。だけど‥」

「そうなのよ。姫ちゃんは‥」

影狼の声のトーンが下がる。

「そういう事ね。確かにあの子は色々不遇だものね。空中戦が基本の弾幕バトルにおいて『水中で力が増す程度の能力』、しかも製作者に至っては『天ぷら大好きです』の一言‥更に人気投票では90位‥」

「そういゃあ大分前に影狼が間違えてわかさぎ姫を食べようとしてたな」

そこで今度は右手にお猪口を持ち、頬をうっすらと紅潮させた妹紅が笑いながら言う。

(ギクッ!)

「も、妹紅さん!?な、何の話ですか!?」

「へぇ~影狼とわかさぎ姫と付き合いは長いけど、そんな事があったんだ~。」

思わぬ横槍と蛮奇のじと目にしどろもどろになりながら影狼が必死に弁明する。

「蛮奇ちゃん違うの!これには深い理由があって!」

「つまりその罪滅ぼしも兼ねてって事ね~。ま、嫌いじゃ無いわ。そういうの」

しかしそんなのは知らぬとばかりに蛮奇は目を閉じて頷く。

「うぅ~‥と、とにかく!なんとしてもわかさぎ姫ちゃんにはもっと人気になって貰いたいのよ!!」

恥ずかしさが極限に達したのか顔を真っ赤にして叫ぶ影狼。

「はいはい。でもなんで吸血鬼にお願いしたの?」

純粋な疑問を口にする蛮奇。

当然だが彼女とレミリアに接点はない。

そんな彼女に慧音が答えを提示する。

「それは彼女の能力が『運命を操る程度の能力』だからですよ。わかさぎ姫に注目が集まるよう運命を操作する様に、能力を使ってもらった‥ですよね?影狼さん?」

「慧音さんの仰る通りです。妹紅さんに相談した時にその話をして下さったので。」

「まぁ最初は地道に活動する事を進めたんだけどな。水中から中々出られない事とあの子の普段の活動場所が『霧の湖』だから、だったらはなっから紅魔館の連中取り込んだ方が早いだろ?」

そう言うと妹紅はお猪口に再び酒を注ぐ。

「確かにね‥それで今に至る、と」

「そういう事よ!だから頑張ってわかさぎ姫ちゃんの人気を集めましょう!!」

そう叫ぶと右手を高らかに掲げ立ち上がる影狼。

「お!影狼燃えてるね~」

「頑張って下さいね。お手伝い出来る事は協力しますから、気兼ねなく何でも仰って下さい」

「まぁ、同じ輝針城妖怪だし‥一肌脱ぎますかね」

「よぉし!じゃあ改めて‥わかさぎ姫ちゃんの人気の為に!エイエイオー!!」


「‥なぁんか騒がしいと思ってウサミミ、基‥聞き耳立てて見れば‥面白そうな事をやってるなぁ‥これは新しい遊びが出来そうだ‥いてっ!」

四人の集会を竹の影から覗いていた小柄な少女、頭には自分の体の半分の長さはあろうウサギの耳を持ち、首には人参のアクセサリーを着けた彼女の頭に『ゴンッ!』と鈍い音と共に衝撃が走る。

「コラッ!何時までたっても帰らないと思えば‥こんな所で何してんのよ。早く帰らないと お師匠様にまた怒られるよ?」

そう言う彼女もまた、頭にウサギの耳を持ち、しかし少女とは違い成人女性程のスラッとした体型、学生の様なブレザーにネクタイを身に付けていた。

「なんだよ~。いきなり殴るヤツがいるかよ~」

小柄な少女が涙目で睨む。

「てゐが悪い!さっさと帰るよ!」

てゐと呼ばれたこの少女は『因幡てゐ』

「ちぇっ‥鈴仙程つまらんヤツも中々いないよ‥」

そして鈴仙と呼ばれたのが『鈴仙・優曇華院(うどんげいん)・イナバ』

「なんか言った?」

「何でもないよ~」

そんな小競り合いとも取れるやり取りをしながら二人が寝食を共にする『永遠亭』へ戻る。

「只今戻りましたー!」

二人が部屋に戻ると赤十字のマークが入った小さな帽子を付け、長い銀髪を後ろで三つ編みにした落ち着いた雰囲気の女性が迎える。

「あら、思ったより早かったわね。丁度良いわ。ウドンゲ、新薬の実験結果を纏めたいから手伝って貰えるかしら?てゐはウサギ達と夕食の用意を。そろそろ輝夜が起きるから。」

「了解しました!お師匠様!」

「へーい」

鈴仙をウドンゲと呼び、二人に指示を出すこの女性。八意永琳(やごころえいりん)はその能力『あらゆる薬を作る程度の能力』により幻想郷一番の名医として人間妖怪問わず頼りにされる人物である。

「永琳おはよ~」

大きなあくびをしながら、十二単を身に纏い腰よりも長くさらりと美しい黒髪を靡かせこちらにのそのそと歩いて来る少女。少女と言っても先程の鈴仙より僅かながら背丈があるのだが、全ての男性を虜にするような美しさ、可愛らしさがそう表現させる。

「おはようじゃありません!もう夜ですよ!」

「いゃあ~昨日里の子供達が『かぐや姫』の劇をやりたい!って言ってたからさ、ついつい徹夜で台本と劇のセット作っちゃって」

「全く‥そういう所は甘いんですから‥でも貴女は仮にも『姫様』なんだからそれらしく振る舞いなさい」

「はぁ~い」

この実にフランクで永琳に『姫様』と呼ばれた少女、蓬莱山輝夜(ほうらいさんかぐや)は日本人なら誰もが知っている『竹取物語』の『かぐや姫』その人であり、八意永琳と共に月で生活をしていた。しかし、永琳に不老不死になる『蓬莱の薬』を作らせ、それを口にし不老不死になった罪で地上へと流刑にされた。‥実際は流刑になることを知っており、それを彼女自身が望んでの事らしい。

因みに八意永琳も蓬莱の薬を口にしており、月の姫だった輝夜の指南役でもあった永琳を輝夜は心から信頼している。

「姫様、ちょっと良いですかい?」

寝惚け眼でごしごしと目を擦る輝夜にてゐが話し掛ける。

「なによ‥また変なイタズラ考えたの?」

輝夜の言葉通りこの因幡てゐはその能力『人間を幸運にする程度の能力』に反して大のイタズラ好きであり、何かとあれば幻想郷の住民達を呆れさせている。

「いえいえ、ちょいと面白い噂をウサミミ‥小耳にしたもんで」

如何にも悪い事を考えてますよという表情で聞き流そうとしている輝夜に言葉を続ける。

「いゃあ~驚きましたよ!あの!藤原妹紅がね!」

「!!」

妹紅の名前が出た途端に輝夜の雰囲気がかわる。

「妹紅が‥何ですって?」

その豹変も当然の事。この輝夜と妹紅は何かとあれば張り合い、それこそ殺し合いとも取れる派手な戦闘を日々繰り返している。というのも妹紅にとっては輝夜は父親である藤原不比等に大恥をかかせた敵であり、その復讐の為妹紅もまた、『蓬莱の薬』を口にし不老不死、『老いることも死ぬこともない程度の能力』を得た末に長い年月の激戦を繰り広げ現在に至る。

(やっぱり‥妹紅の名前が出たら黙ってられないんだなぁ~)

してやったりという表情を浮かべるてゐに永琳が釘を刺す。

「てゐ、あまり姫を焚き付けないの。その後始末は全部私に回ってくるんだから」

(いやいや、それを全部私に押し付けるじゃないですか!)

口に出せば、それはそれで恐ろしいので心の中で突っ込む鈴仙。

「構わないわ。てゐ、続けなさい。」

(何が構わないんですか!構いますよ!!)

輝夜の言葉にやはり心の中で叫ぶ鈴仙

「全く‥程々にしなさいね?」

(お師匠様何言ってるんですか!二人が暴れたら程々になんて収まるわけないでしょ!!)

右往左往する鈴仙を置いて話が進んでいく。

「いえね、竹林に住んでる野良妖怪達と手を組んで人気投票の数字集めをしているらしいですよ。」

「なんですって!?ただでさえこの私(2018年38位)を差し置いてトップ10入り(2018年10位)しているのに‥あまつさえ私を引きずり下ろしてまで更に票を集めようというの!?」

「いやいや!てゐはそこまで言ってませんよ!?」

「鈴仙は黙ってなさい!あなただって私の更に上(2018年16位)だったじゃない!」

「確かにそうですが‥で、でもほら!妹紅さんだってわざわざ姫様を蹴落とす理由なんて無いじゃないですか!そもそも姫様の順位だってこれだけのキャラが居るのに十分上位ですよ!?」

「いいえ、それではダメだわ。」

鈴仙の説得等に耳を貸すこともなく輝夜は熱弁を続ける。

「ただでさえ二次設定で、やれ引きこもりだのニートだのと緑なキャラ付けをされず、我が儘で傍若無人の烙印を押され、二次創作から入る新規の東方ファンに誤解を与えられ、かといって長らく東方を愛してくれているファンですら弄りやすいこの設定をそのまま使う始末‥それに比べて妹紅はどうよ!?女性受けする男口調のイケメン設定で、性格も困ってる人を放っては置けない、面倒臭がる素振りを見せつつ結局最後まで付き合ってやるツンデレっぷり!なに!何なの!!このギャップは!!!」

「まぁまぁ‥落ち着いて下さい‥」(我が儘で傍若無人はおとぎ話の通りで事実なんだけどなぁ)

輝夜をなだめながらも心の中では本音を漏らす鈴仙。

「‥おとぎ話の通りで事実、ですか」

「えっ!?いやっ!全然そんな事思ってないですよ!?‥ってあれ?」

心の中を見透かされ慌てる鈴仙だが、その場にいた永琳、輝夜、てゐは誰も言葉を発していない。

「えっ!?誰ですか!?」

「夜分に申し訳ありません。地霊殿当主、古明地(こめいじ)さとりです。急患をお願いしたいのですが‥」

鈴仙の心を見透かした彼女、紫のショートヘアーにカチューシャを着け、左胸には『サードアイ』を身に付けた古明地さとり。彼女の持つその『サードアイ』により相手の考えを見透かす『心を読む程度の能力』の覚り妖怪だった。

「あら、急患ならすぐ対応するけど、どうしたのかしら?」

永琳の言葉に安心した表情を見せるとさとりは門の方へ呼び掛けた。

「お燐診ていただけるそうよ、お空を運んで来て頂戴。」

「了解です!さとり様!」

お燐と呼ばれた少女、赤髪でまさに猫娘という風貌『火焔猫燐(かえんびょうりん)』が手押し車に、お空と呼ばれた長髪で背中に羽を持ち、さとりの倍近くあろう背丈の女性『霊烏路空(れいうじうつほ)』を乗せて運んでくる。

「この娘は確か‥間欠泉の八咫烏よね?この娘がどうしたのかしら?」

永琳の問いにさとりが返す。

「実は‥情けない話し、私達も解らないんです。」

「そうなんですよ~何か間欠泉の温度がおかしいなって見に行ったらお空がお腹抱えて倒れてて‥」

そうお燐が付け足す。お空は『核融合を操る程度の能力』で間欠泉の温度管理に必要な灼熱地獄の火力調整をしている。

「しかし‥火車が運んで来るなんて‥もう手遅れなんじゃないか?」

「てゐ!やめなさい!」

てゐのからかうような言葉を永琳が嗜める。

実際このお燐は火車という妖怪で『死体を持ち去る程度の能力』を持つ。

「とにかく診てみない事には何も解らないわ。なんでもいいの、こうなった心当たりはないのかしら?」

お燐とさとり、二人の顔を見て永琳が問う。

「基本的に灼熱地獄に居るのはお空一人だけですから‥一応私の能力でお空の心を覗いてもみたんです。どうしてこうなったの?って」

「それでも解らなかったんですか?」

鈴仙が問う。

「はい‥この娘致命的な鳥頭でして‥覚えてないんです。」

そう言うとさとりはガックリと肩を落とす。

「元気出して下さいさとり様!仕方ないですよ、お空ですし。あ、でも夕方にお空を夕御飯の時間だよーって呼びに言った時は元気だったのに‥」

「成る程ね‥じゃあ夕食の何かに当たったのかも知れないわね。今日は何を食べたのかしら?」

「そう言えばさとり様は何を召し上がったんです?」

お燐の言葉に永琳は首を傾げる。

「あら?食事は従者である貴女が作ったのでは無いの?」

「あ、私は今日それどころじゃなくて‥」

「地獄の閻魔様に『有難いお話』をされていたのね?」

「うっ‥すみません‥最近死霊を持ち去り過ぎちゃったみたいで‥小町とか言う死神が閻魔に告げ口したらしいです」

さとりに心を読まればつが悪そうにするお燐。

「と、ところで!食事はお空がつくったんですよね!?」

取り繕うお燐に仕方ないなとため息を付きながらもさとりが答える。

「今日は私が作ったわ。あの娘最近働き詰めだったから。」

その言葉にお燐の表情が曇る。

「えっ!?さとりさまが!?」

「そうよ?何か悪いかしら?」

「こ、こいし様も一緒に!?」

「いいえ、こいしは相変わらずよ?」

このこいしと呼ばれる『古明地こいし』はさとりの妹である。

二人のやり取りを見て、覚り妖怪でなくとも原因が察せるわと溜め息をつく永琳。

「取り敢えずこちらへ‥多分薬の処方と一晩の安静で大丈夫だと思うから。」

「有難うございます。ですがなんで今ので原因が?」

「気にしないことね。それよりもお燐と言ったかしら?患者に付き添って欲しいのだけど?」

「は、はい!解りました!」

渡りに船とはこの事と、嬉々として永琳の提案に乗るお燐。

首を傾げるさとりに永琳が告げる。

「取り敢えず‥従者を思う心は大切だけど、身の丈にあった仕事を選びなさいね?」

どうにも解せないという表情をする彼女に永琳は言葉を続ける。

「解らないなら私の心を読んでも良いわよ?但し、読めたらだけどね」

「解りました。お空とお燐。私のペットをお願いします。」

そう告げると頭を深々と下げさとりは帰って行った。

「助かったわね?お燐」

「あ、有難うございます!まさかさとり様が料理を作るとは思っていなかったので‥油断していました‥」

心底安堵の表情を浮かべるお燐

「まぁ良いわ。取り敢えずこの娘の処置ね、まぁ流石に命に関わるような物でも無さそうだから三人で先に夕食になさいね?」

そう言うと永琳は二人と共に処置室へ消えていった。その途中でお空が「青い蠢くこの世の物とは思えない臭いを放つ何かが~」と叫んだのを聞き、その忠誠心たるや天晴れと、その場の全員が思った。


同時刻~ミスティアの屋台~

「うわ~着物姿で料理をしてるミスティアさん‥凄くカッコイイです!」

屋台の前に置かれた水槽に入った状態のわかさぎ姫が羨望の眼差しを向ける。

「褒めてもなんも出ないわよ。さ、それより冷めないうちに食べちゃって」

そう言って焼きたての八ツ目鰻を差し出す。

「わぁ~美味しそう!頂きま~す♪」

ハフハフと言いながら至福の表情で串焼きを頬張るわかさぎ姫を見て微笑むミスティア。

「で?あんた達はどうする?当然お酒は駄目なんでしょ?」

「そうだね、そんな事したら皆みたいになっちゃうから‥お茶と八ツ目鰻で。こいしちゃんもそれで良い?」

「大丈夫だよ~♪」

ミスティアの問に響子と、フリルがふんだんにあしらわれた可愛らしい服装で姉と同じサードアイを左胸に持つ‥と言ってもこいしのサードアイは目を閉じているが‥古明地こいしが答える。

「まさか帰り道にこいしちゃんに会うとは思わなかったよ。しかも聖様の言伝てを持ってなんて。」

このこいしという少女、元々は姉と同じ『心を読む程度の能力』だったのだが、その能力故に多くの物達から忌み嫌われる事を恐れ自らサードアイを閉じ、今は無意識に身を置く『無意識を操る程度の能力』を手に入れた。この能力は他人に存在の認識がされず、また、自らの行動すらも認識が出来ない事もあり本人自体もこの能力を使いこなせてはいない。

「なんかね、聖が響子に会ったらその札を渡せって。私も別の、よく分からない札を聖に持っているようにって言われたからちゃんと響子に会えたしね~♪」

因みにこのこいしは、地霊殿で姉のさとり、ペットのお空とお燐で暮らしている傍ら、その無意識の振る舞いを、『心を閉ざしているのではなく、無にすることで『空』の境地に近づいてるのではないか』と捉えた聖に勧誘され、命蓮寺の在家信者となった。

「あはは‥本当にね~」

響子の受け取った札にはこう書いてあった。『響子さん、どうやら話し合いが長くなりそうですので、申し訳ありませんが今日はミスティア・ローレライの所でお世話になって下さい。お支払いは私が持ちますのでご心配なさらず。

聖白蓮』

「何よ?変な笑いかたね。何て書いてあったの?」

「気にしない方がいいよ‥」

「あ、成る程ね‥」

八ツ目鰻を焼きながら、響子の心中を察するミスティア。

「さ、お待たせ。熱いうちに召し上がれ」

そう言うと響子とこいし、二人の目の前に八ツ目鰻を差し出す。

「うわぁ~美味しそう♪」

目の前に差し出された、提灯の灯りで照される艶やかな秘伝のタレと焦げ具合のコンストラスト、ほんのりと甘く芳ばしい鰻の薫りにこいしの目が輝く

「お姉ちゃんもミスティアみたいに料理上手だったらなぁ‥」

そう呟くこいしにミスティアが問い掛ける。

「あら?あんたのお姉ちゃんって地霊殿の当主でしょ?料理何て従者に任せきりじゃないの?」

「うんん。お姉ちゃんって物凄く家族思いで、自分の仕事がどんなに忙しくてもお空やお燐が疲れてる様子だったら二人を休ませて自分が雑務とかもするんだよ。」

「それは素敵なお姉様じゃないですか!」

隣で八ツ目鰻を食べ終えたわかさぎ姫が会話に混ざる。

「初めまして、わかさぎ姫と申します。」

「あら?姫にしては積極的じゃないの?」

思わぬ行動に驚くミスティア。響子も同じ感想を持ったようだった。

「ほんとにね。まさかわかさぎ姫から声を掛ける何てビックリだよ!」

「いえいえ‥お二人のお陰でちょっとずつ自分に自信が着いたと言いますか‥前向きに明るく行こうかなって。それに此方の方は凄く優しそうでしたし。」

そう言うとわかさぎ姫はこいしに顔を向けて微笑む。

「初めまして!古明地こいしだよ~♪わかさぎ姫ちゃん?で良いのかな?」

「はい!宜しくお願いします♪」

そんな二人のやり取りを見て思わず笑みを溢すミスティアと響子。

「あ、そう言えば話を遮っちゃいましたね。素敵なお姉様のお話し」

そう言うとわかさぎ姫はお茶を一口口に含む。

「うーんとね‥確かに凄い頑張りやさんだし、いつも皆の事を考えてくれる自慢のお姉ちゃんなんだけど‥料理だけは‥ね」

「そりゃ誰だって苦手なもん一つや二つあるわよ。寧ろその方が可愛らしさの一つも出るってもんだわ」

流石、客商売をやっているだけあって上手く切り返すミスティア

「えっとね‥なんというか‥お姉ちゃんの料理ってね、多分幻想郷で一番危険な代物だと思うんだ。」

「料理が危険って‥鈴蘭畑の人形や地下の土蜘蛛が能力使いながら料理でもしてるの?」

炭火に鰻の脂が落ち、ジュッと音を立て煙をあげる。それに合わせて器用に鰻の刺さった串を返しながらミスティアは問い掛ける。

「それはいやだね~」

笑いながら響子は相槌を打つが、こいしの表情は暗い

「いや‥ヤマメやメディスンの方がよっぽど安全だよ‥実際そのヤマメはお姉ちゃんの料理の臭いだけで3日は寝込んだらしいし。」

「臭いだけで??流石に冗談でしょ?」

当然信じられないとミスティアが返す

「大丈夫食べて見れば‥ううん‥目の前にしてみれば解るよ」

普段の純粋で天真爛漫な笑顔等欠けられも感じさせないこいしの表情が全てを物語っていた。

「こんばんは」

「はいいらっしゃい!って閻魔じゃない」

すっかり湿った空気になってしまった所への来客、助け船が来たと期待したミスティアの表情は一瞬にして落胆へと変わった。

「おや?お邪魔でしたか?でしたら日を改めて伺いますが?」

そんな空気を察したのか映姫が退こうとするのをミスティアが引き留める

「あ、気にしないで!ちょっと内輪話でね。ささっ座って!先ずは一本つける?」

少々強引な引き留めに訝しげな表情を見せつつ『縄で括った大きな荷物』を引き摺り腰を据える

「その前に小町と霊夢のつけを今お支払いしてしまいますね。あと、申し訳ないのですが借用書の様な物はありますか?」

「それは有難いけど‥借用書?領収書ならあるけど‥それにその‥それは?」

ミスティアだけではなくそこに居合わせた全員が同様に感じている疑問。人が『二人程』入れそうな大きな竹籠が先程からガタガタと動いている。

「でしたら領収書で構いません。そこに小町と霊夢、それぞれのつけの金額を書いて下さい。そして申し訳ありませんが、ここに居合わせたわかさぎ姫、古明地こいし、幽谷響子、ミスティア・ローレライ、がそれぞれ立会人として署名して頂きたいのです。」

突然名前を呼ばれミスティア以外の三人は思わず顔を見合わせる

「あ、あの?閻魔様?一体‥?」

「映姫で構いませんよ、わかさぎ姫。」

姫の問い掛けに僅ながらの笑顔で答える映姫

「あ、はい!‥て、映姫様‥署名というのは‥」

「簡単な事です。無銭飲食という犯罪は白黒付ける以前に黒。問答無用の黒という事です」

「は、はぁ‥」

映姫のまるで答えになっていない返答に戸惑うわかさぎ姫を見てミスティアが説明する。

「つまりうちの店において無銭飲食‥まぁツケの常習犯である霊夢と閻魔の部下、小町の代金をここで全て閻魔が肩代わりして、その肩代わりした代金は霊夢と小町が閻魔にちゃんと返済しますって約束をここでするから、その立会人になって欲しいって事でしょ?」

「成る程、そういう事なんですね」

ここで合点したとわかさぎ姫は胸の前で拳をポンと打つ

「あ、でも霊夢さんとその‥小町?さんがここにいらっしゃらないと意味がないのでは?」

そんなわかさぎ姫の純粋すぎる疑問に映姫がしてやったりと言う表情で答える

「わかさぎ姫、ご心配なく。既に被告人2名の身柄は拘束済みですから」

映姫の言葉に合わせて映姫の大きな荷物がガタガタ暴れだす

「むーっ!!(誰が被告人よ!)ムーッムーッ!!(幻想郷の守護者にして東方の主人公!)ムガァーッ!(世界一位の博麗霊夢様に二次創作とは言えこんな事をして許されると思うなぁー!!)」

「むぅ~(四季様ぁ~)むぅ~(あたいが悪かったです~)むうぅ~(お許し下さい~)」

「まぁ自業自得ね」

腕を組み、溜め息をつくミスティア

「ではミスティア此方をお納め下さい。遅くなって申し訳ありませんでした。」

「あんたが謝る事じゃないでしょ?ま、こうしてツケを肩代わりして貰ったから特別にサービスするわ!何でも好きなの行って頂戴今日は皆に私の奢りよ!」

「本当に!?ミスチー太っ腹!」

「ま、ライブの前祝いもあるしね!ほら、姫もこいしも遠慮なく楽しみなさいな♪」

「やった♪ミスティアありがと~♪」

「ありがとうございますミスティアさん♪」

わかさぎ姫の笑顔を見ながらミスティアがわかさぎ姫に返す

「あ、そうそう!ミスチーで良いわよ、ミスティアさんって呼ばれるとなんかかしこまっちゃうからさ」

「えっ、あ、はい!じゃあ改めて‥宜しくお願いしますね♪ミスチー♪」

「こちらこそ宜しくね♪姫♪」

(八雲紫の言っていた通りですね‥わかさぎ姫にミスティア・ローレライ‥まさかここまで相性が良かったとは‥もしかしたら、これからの幻想郷に大きな変革をもたらすかも知れませんね。勿論良い方向で。)

「なに物思いにふけってんのよっ!あんたも呑みなさい!今日は私の奢りなのよ!」

「そうだー!えいきっき呑めのめ~!」

「古明地こいし!なんですか!えいきっきって!」

「いぃ~じゃん!可愛いよ~♪」

「良いですね♪閻魔様のあだ名が『えいきっき』って♪」

「こら!わかさぎ姫まで‥」

「まぁまぁ♪ささっどうぞどうぞ‥」

「あ、幽谷響子‥ありがとうございます」

「さぁ~どんどん楽しんでいきましょ~!」

「「「おぉ~!!」」」

そうして楽しい夜が更けていく‥


「あ!大切な事を忘れる所でした!!」

程好く酔いが回り始めた所で映姫が声を張る

「なによ~‥ツケならもう貰ったわよ?」

すっかり顔を赤くしたミスティアが返す

「いえいえ!!お金なんかよりもよっぽど大事な事です!白か黒‥言うまでもなく白!」

「なになに~?勿体ぶらずに早く教えてえいきっき~♪」

「ふっふっふ‥古明地こいし‥そこまで言うなら教えて差し上げましょう!そう!わかさぎ姫を新たに迎えた『鳥獣伎楽』の新ユニット名!!」

「『鳥獣伎楽』の‥」

「新ユニット名‥」

それを聞いて響子とミスティアが顔を見合わせる

「確かに『鳥獣伎楽』は私とミスチー二人のバンド名だ‥しかし心機一転と銘打った以上‥」

「そうね‥ましてや姫という新メンバーを迎えたんだから私達二人の名前だけを冠したユニット名もおかしいし‥良いアイディアじゃない!」

「ふふ‥ありがとうございます。では勿体ぶっても仕方ないので発表します。わかさぎ姫を迎えた新しいユニット名は‥」

魚鳥響姫唱(ぎょちょうきょうきしょう)

「如何ですか?気に入って貰えれば幸いですが‥」

「気に入るも何も‥」

ミスティアが響子とわかさぎ姫を交互に見る

「最高だよ!姫もそう思うよね!」

「はい!ミスチーに響子さん、そして私の三人の歌姫が歌う、奏でるって事なんですよね?凄く‥凄く素敵です!!」

「その通りです。そして何より三人はこれからの幻想郷の歴史を大きく揺るがすだけの力を持っています。勿論良い方向でね。それに見合うだけの華やかさを考えての事ですから。これからはこの名に恥じぬよう三人は研鑽を罪努力を怠らぬ様にそれが‥」

「「「「「貴方達が積める善行です!!」」」」」

その場全員の声がかっちりと合わさると、一息の間をおいてワッと盛り上がる。


『魚鳥響姫唱』‥彼女達の門出は、小さな屋台のささやかな、それでいて、それはそれは明るく、華やかなものだった‥



「むーっ!!(なにっ!私の出番あれだけっ!?)ムガァーッ!(作者はなにかんがえてんのよーっ!!)」

「むぅ~(四季様ぁ~)むうぅ~(お許しを~)」


続く

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