プロローグ
「『桜』さんお疲れ様でーす」
「桜さんおつでーす」
仕事が終わった後輩たちがわざわざ、まだ仕事の終わらない僕を煽るため挨拶をしてくる
「はいお疲れー。風強いから飛ばされて道路に躍り出てしまえ」
「はいはーい」
「『はい』は一回でよいと先生に教わらなかったのかい!?」
…そして数十分後
僕は仕事が終わり会社から出て空を見上げる
毎日の日課で月に祈りをささげるためだ
「…雲の動き早いなー。早くお風呂入ってゲームしよ」
僕は同居人にこれから帰ることを伝えるため携帯を取り出す
「お。グループラインがきてる。『志乃』が発言するとは珍し…」
志乃:「異世界行くことになったからあと何日かしたらお前らともう会えねぇわ」
「…うぇ?」
*****
「ダーンッ!!」
僕は玄関を蹴破り叫ぶ
「っるせぇな静かにドアも開けられねぇのかゴリラ!!」
すると家の奥から怒声が飛んできた
「大変だよ『枯木』! 志乃が異世界に行くって!!」
僕は靴を揃えず家に上がり込み怒声を飛ばしてきた同居人、『枯木』に驚き情報を伝える
「おぉん!? それどこ情報だよ!?」
「君も入ってるグループラインの情報だよ! やっぱ見てないんだね!」
「お前がなんの前触れもなく人形の画像を連続送信してきた時から通知オフにしてたわクソが!」
枯木は急いで自分の携帯を充電器から外し携帯を操作する
「うおマジだ。 何あいつ就職先異世界になったのか?」
「知らない!」
「そうか黙ってろ」
質問に元気よく答えたらこれだよ
僕があまりの対応に文句を言おうとしたら携帯が震えた
見てみるとグループラインに動きがあったみたいだ
志乃:「異世界行くことになったからあと何日かしたらお前らともう会えねぇわ」
桜:「やったぜ」
枯木:「就職か?」
志乃:「せやで」
有希:「醤油とお味噌は持っていくんだぞ」
志乃:「作り方ノートに書いて持っていくわ」
桜:「有能」
枯木:「時給とかどうなってんの?」
志乃:「日給8万」
有希:「うらやま死ね」
枯木:「そこはかとなくブラック企業の香り」
桜:「それってどれくらい強いの」
鈴音:「単純に考えて1月に20日働くとして160万」
枯木:「うらやま死ね」
桜:「うらやま死ね」
志乃:「一体ワイがなにしたっていうんや!」
「はぁ月160万とか! もうパチンコで負けてもなんも怖くねぇな」
枯木はため息をつき、バカなことをのたまう
「桜様おかえりなさいませ。ご飯は出来ておりますが、先にお風呂に入ってください」
そこに『新月』さんが台所から顔を見せる
「新月が『お前臭いからはよ風呂行けや』だってよ」
「どんな曲解だよ。というか、『エメリー』はさっきからぶつぶつ何してんの」
僕はリビングの隅に置いてあるパソコンの前にコーラと大量の飴を準備し、ブツブツと呟きながらキーボードをカタカタと叩いてるピンク色の髪をした幼女を指さし聞く
「なんでも『この世から男を消滅させるたった1つの平和的作戦』の最終段階何だとよ」
思ったより恐ろしいことしてるなぁこの幼女
「それ止めた方がよくない?」
「『平和的』なら別に大丈夫だろ」
「それもそっかー。ま、お風呂入ってくるよ」
深く突っ込むのも面倒だし、お風呂入りたいから無視しよう
2時間後。お風呂は最高だ
僕は風呂からあがり再びリビングに戻ると、ソファで寝転がりながら枯木が携帯をいじっていた
「お風呂あがったよー。今日のお風呂はなんか濁ってたけど誰かの出汁?」
「死ね。バブだバブ」
「何いきなりバブバブって。幼児退行かな?」
「なぁホントなんでお前は生きてるだけで人を不快にするんだ? そこまで俺様と戦争がしたいのか?」
「争いは何も生まないよ」
「何もない所から争いを生む奴は言う事が違うぜ」
「僕は錬金術師だった? って、僕の携帯光ってるやん」
「桜が風呂いった後もグループラインでくだらねぇやり取りしてたからそれじゃね?」
僕はグループラインを開く
そこには罵倒や殺害予告、あとなかなか素晴らしい画像が掲載されていた
「おーホントだ。あ、でも、個人ラインもきてるね」
「マジで?」
「ご飯はいつ食べますか?」
新月さんがいつの間にかリビングに現れた
「あ、今食べます」
僕は携帯を置き新月さんに応える
「ほーん。『鈴音』からじゃん」
僕の携帯を枯木が勝手に見る
「なんて」
「風呂からあがったらラインしろだってよ」
「はーん」
僕は枯木の持ってる僕の携帯を見て横から操作する
鈴音:「風呂からあがったらラインしろ」
桜:「あがったお」
「今日は醤油の代わりに味ポンを使ってください」
新月さんがテーブルに僕の分のご飯を準備してくれる
ただ、いつもは真ん中に醤油を置くのに今日は味ポンだ
「え、醤油じゃだめなの?」
「桜様この前小さめのコップで醤油の一気飲みをしてましたよね?」
新月さんがご飯を準備する手を止め僕を見る
その冷たさを感じる瞳は枯木を見る目に若干似ていた
「はいすみません味ポン大好きです」
「お前ほんとキモいな。ほらよ」
枯木はそう言いながら僕に携帯を返してくる
新月さんが渡された携帯をチラリとみる
「あぁ。ご飯中は携帯触らないですよ新月さん」
新月さんはご飯中に携帯をいじると言葉では何も言わないが明らかに不機嫌そうな雰囲気を出してくる
「俺様は触るけどなぁ!」
「枯木はご飯中じゃないし…」
ご飯中。因みに鍋でした
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
僕がごちそうさまを言った瞬間新月さんはノータイムで食器を持っていく
僕たちは慣れてるけど、知らない人がこれやられたらどう思うんだろ
「明日のお弁当にしますので、残ったおかずはラップしていてください」
それといつの間にか僕の前にラップが置かれていた
「イエッサー」
僕はそう言いながら携帯を開き、ラインを見る
実はご飯中何回かラインが来ていたのだ
鈴音:「風呂からあがったらラインしろ」
桜:「あがったお」
鈴音:「飯食ってた」
鈴音:「明日明後日お前休みだったよな?」
鈴音:「?」
鈴音:「どうした?」
桜:「悪い。ご飯食べてた」
桜:「明日明後日休みだよー」
鈴音:「そうか」
桜:「遊ぶ?」
鈴音:「カキ食べたい」
桜:「お。いきなりだね」
鈴音:「動画見てたら飯テロくらったわ」
桜:「ご飯食べたんじゃないの?」
鈴音:「今日の俺の飯何だと思う?」
桜:「米」
鈴音:「ポテチとキットカット」
桜:「子供のおやつだね」
鈴音:「カキ食べたい」
桜:「さっき聞いたんだよなー」
鈴音:「朝市行こうぜ」
桜:「いいよ」
桜:「あれって何時からやってんの?」
鈴音:「知らね」
桜:「マジかー」
鈴音:「電車の始発乗ればよくね?」
桜:「天才かよ」
鈴音:「ちょっと待て」
鈴音:「始発は今から1時間後くらいだな」
「新月さん。ここの近くの駅の始発って何時くらいに来ましたっけ?」
「ここの駅ですと、あと1時間20分くらいですね。ラップしましたか?」
「少し待って下さい」
桜:「僕もそれくらいだわ」
鈴音:「じゃぁ今から準備して俺でるわ」
桜:「僕も準備する。駅着いたらラインして」
「新月さん。僕と枯木は今から都会行くけどどうする?」
「今からですか。私は今日明日はお屋敷の方に戻りますので遠慮致します。ラップしましたか?」
「少し待って下さい。エメリーは?」
「喋り掛けんな死ね」
「はい」
エメリーが怖い
あと新月さんがずっとラップを催促してくる
ラップ中。明日お弁当はいらないと伝えた
因みに枯木だが、僕がご飯を食べ出した時に寝ると言って部屋に戻っていた
「ダーンッ!!」
なので僕は枯木の部屋のドアを蹴り破る
「もうなんなんだよてめぇはよぉ!?」
枯木はすぐ様起き上がり枕を盾にし叫ぶ
「お。音を聞いてからのその素早い反応。訓練されてるね」
「殺すぞ!」
「まぁまぁまぁ。いまから都会行くよ!」
「今何時だ! …寝てから1時間しかたってねぇだと!?」
「やったね」
「何がだ!?」
「まぁまぁまぁ。今から都会行くよ!」
「なんでだ!?」
未だに枕を盾にし何故かキレてる枯木に僕は携帯を見せた
「…バカかよ」
枯木は頭が痛いのか頭を抱えた