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少し不思議な日常を  作者: 紅葉 咲
       
4/5

1月10日 午後

「で、結局いつも来るブドウブックスに来るのね」


ラーメンを食べた後俺達が訪れたのはブドウブックス、もとい沢山のジャンルを取り扱う本屋にきた


「うぅ…。せっかくの新月さんの誕生日なのにふがいない…」


今思うと都会に来て俺ゲーセン行くか古本屋で立ち読みするかしかしてないからエスコートもこの2つくらいしかできない…


「いえ、私も少し気になる本がありましたので丁度良いです」


「そう言ってもらうと嬉しいです…」


こういう所で彼女が出来るか出来ないかが決まるのかな…


「お前は女1人もエスコート出来ないのかよ。彼女が出来ないわけだ」


「終始パチンコとしか発言しない奴は頼むから黙っていてくれ」


「まぁ、私も百合本の新刊出てるか確認したかったし確かに丁度良いわ」


「エメリーもなんか行きたいところとか意見言ってよー…」


「はぁ? 絵を描くの中断してまであんたの思いつきにつきあってんのよ?」


「ぬい」


「じゃ、俺別に買いたいのねぇしさっさとすませてくれや」


枯木は壁に背中を預けて言う


「何言ってんのあんたは荷物持ちよ」


「…マジか」


「ほら新月、枯木が荷物持ちしてくれるみたいだから一緒に見て回りましょ」


「かしこまりました」


へぇ珍しいな。枯木が文句も言わず荷物持ちをするなんて…


てっきり上の階の古本屋で俺達の買い物が終わるまで時間を潰すもんだと思ってたのに


誕生日だからかな?


そう思っていると3人は固まってブドウブックスに消えていった


…あれ? 謎の疎外感?


まぁいいや。ヤンデレ本探そ




~2時間後~




「おいそこのサイコパス。荷物持ち変われさもないと俺の腕が死ぬ」


籠に何冊かの本を入れたを枯木が現れた


両腕で持っているが落としそうだ


というか今床に置いた


「ちょっとー…。俺これ小指で持てるよー?」


「あまり人類とゴリラを混合させるべきじゃない」


「その腕へし折るぞ」


籠の中を見てみると大きさ・厚さ・ジャンルが一切統一されていない本が沢山入っていた


どうやら皆が買う本をまとめて籠に入れてるようだ


俺もそれにならいヤンデレ(全年齢対象)を籠に入れる


「よしじゃぁそのままレジに行け」


枯木はそう言ってお金を渡してくる


「うん? なんで?」


「全員のを1人が一気に買った方がレジ混まないだろ。4人がいきなりレジに並んだときのレジ打つ店員の気持ち考えろよ」


「一理ある」


「と言うことで行って来い」


「はーい」


そして俺は枯木に促され疑問を持つ事もなくレジに向かった


「合計13820円になります」


渡されたお金:10000円


俺の買い物:2260円


足りない分:1560円


振り向くと枯木は消えていた





……クソッ! やられた!!




渡されたお金が明らかに足りない!


俺は頭を抱えたいのを我慢し自分のポケットマネーから残りのお金を払う


そして店員さんから本を受け取り3人を探す


こんな卑劣な事考えるのは枯木しかいないからとりあえず枯木は殴るとして、なぜエメリーと新月さんまでこの罠を容認したんだろうか?


エメリーがいたなら商品の合計を間違うはずないからエメリーも枯木とグルだな


でもエメリーは何考えてるかいまいちわからんから仕方ないけど、新月さんはこういうこと嫌いだから賛成するとはとても思えないな…


そう考えながら店内を探すと3人をすぐに見付けた


…?


なにかもめてるみたいだ


「おっきたきた」


「きたきたじゃないよ! お金足りなかったよ!?」


「えっ。会計してきたのですか?」


「え、どうしたんですか新月さん?ってエメリー!?」


商品の入った袋を掲げながら文句を言いながら3人に合流すると、新月さんが珍しく驚いていた


そしてエメリーが俺の手から袋を奪おうとする。が、非力なので俺の手から商品を奪う事が出来ない


「渡せよこのやろー!」


必死だ


「よくわからないけど分かったよ」


そして商品を渡すとそれをすぐに新月に差し出す


「はい。私たちからの誕生日プレゼント」


えっ?どういうこと?俺のヤンデレ本は?


新月さんと俺はあっけにとられる


「クッハハ! 俺様の完璧な作戦に騙されたな新月! ついでに桜! お前が自分で買おうと思っていた本はこの通り俺達が買ってやったぞ! ざまぁみやがれ!!」


誇らしげに枯木がよく分からないことを言う


あとついでなんだ俺


「さすがにあんな筆箱とかスケジュール帳とかの安物だけじゃ誕生日プレゼントとしては弱いからね。枯木と私とで事前に新月の欲しい本をこうして買う作戦をたててたのよ」


「あ、なるほど。新月さんが買いたい本を皆で買ったってことか。…あれ?でもここに来る予定なんてなかったはずだよ?」


ここに来たのはさっきふと思いついたからで、昨日の時点ではここに来るなんてわからないはずだけど?


「桜が都会に行くっていったら大体ここ来るしな。どうせ今の状況みたいに行くところがなかったらここに来るってことは予想付いたぜ」


「なるほど。確かにその通りだがそのドヤ顔はうざい。でも新月さんに本を買ってあげるなら作戦とか考えずに普通に買ってあげるって言えばよかったじゃん」


「そうですよ。なんでこんな騙すような真似を?」


「新月が素直にじゃぁこれ買って下さいなんて言うとは思えないわ。どうせ私たちに気を使って欲しい本はありませんとか言われると思ったのよ」


「だからとりあえず新月自身に欲しい本を選ばせるため何も言わずにおよがせた。なんなら『ここにもまたいつ来れるかわかんねぇから買うもんはあらかた買っておいた方が良いぞ』とか言って沢山選ばせてみたりしてな。そんで俺様が頃合いを見て『全員のを1人が一気に買った方がレジ混まないだろ。4人がいきなりレジに並んだときのレジ打つ店員の気持ち考えろよ』とかっこよく買い物かごを差し出した」


「私が荷物持ちに枯木を任命してたしね。私も枯木の籠に自分の買うものを入れたから新月も流れで入れてくれたわ」


「まんまとな。そしてあとは桜に合流してあらかじめ俺とエメリーとあいつから受け取っていた金をお前に渡してレジに向かわせたんだよ」


「すげぇ」


「あと枯木はかっこよくなかったわ。籠の中の本が増えるのに比例して腕と足をプルプルさせていくさまはまるで産まれたての小鹿のを見ているかのようだったわ」


「だせぇ」


エメリーと枯木が得意げに語る


なるほど。だから渡されたお金が少なかったんだね


俺にも新月さん分の本のお金を払わせるために


「よく考えてるんだねぇ。で、なんで俺には何も教えてくれなかったの?」


「桜はバカだから多分作戦前にボロが出るから…。だったら教えないで一緒に騙した方が安全だからね」


「言うねぇ…」


確かに人をだますのは苦手だけど、新月さんのために俺以外の3人が作戦をたてていたなんて


愛しいあの子まで作戦に噛んでるのに俺は何も知らなかったのがなんかなー


「安心しろ。お前はしっかりお前にしかできない役目をはたしたからな」


枯木はそう言って俺の肩をたたいた


嫌な予感しかしないなぁ


「じゃぁ後はケーキ買って帰るわよ」


「え、ケーキ買うのか?」


「当たり前じゃない」


「俺のこの完璧な作戦がケーキ代わりになったりは?」


「しないわよバカ」


「バカではねぇよ」


そう言ってエメリーと枯木はやり遂げた感をだして歩き出す


「あの、ありがとうございます」


その背中に新月さんはお礼を言った


「別に、誕生日だからお礼なんていいのよ?」


「騙されてお礼を言うとかドMかよキモッ」


「桜様も有難うございました」


「ん!? あっ、はいどうもです」


やめて俺にお礼言わないで! 


俺も新月さんと同じ騙された立場ですから! 


なんなら知らなかったからってお金足りなかったよって怒ってたから!!


すごい道化師っぷりでしたから!


俺は新月さんのお礼から逃げるように2人を追いかけた


そしてとりあえず枯木は小突いた





後日談


というか俺の役目って何だったの?って聞いたら





枯木:「俺達の本を一人で買う役目だ」


桜:「? それがなんで俺にしかできないの?」


枯木:「ロリ・ショタ・ペドもの。百合もの。グロ・R18(エロではない)もの。蟲の擬人化・モンスターもの。それを大量に真顔で若い女性のレジに持っていって会計できるのはお前しかいなかった」


桜:「…そうかなぁ?」




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