94話 ロイヤルガード Ⅴ
私は気づいた・・・この男達、戦闘中に陽気すぎだろ・・・
司とグレントの戦闘は開始から凄まじい戦いになっていた。
グレントは最早戦闘本能の塊のような戦いかただった。
「アァァァ!!」
グレントは凄まじいスピードで司に迫ってくる。
司はわざと紙一重でダーインスレイブを避け、ゲイボルグを三本取り出し、魔力を込めてグレントの右腕に全て刺した。
「デッドエンドドライ!!」
そして三本のゲイボルグに込めた魔力を全て破裂させる。
その攻撃により、グレントの右腕は軽く吹き飛んだ。
「アァァァ!!」
「何!?」
普通ならばあまりの痛みに多少は怯むはずなのだが、グレントは全く怯むことなく次の攻撃をしてきた。
「ゴハァ!!」
グレントの凄まじい左手のパンチは司の腹部に直撃した。
司は軽く壁まで吹っ飛ばされてしまった。
「やってくれるじゃねぇか・・・」
だが、司が次に目にしたのは恐ろしい事だった。
「グォォォォ!!」
「おいおい・・・嘘だろ・・・」
なんとグレントは、吹き飛ばされた右腕を再生させたのだ。
確かに再生する魔獣は多々存在する。
だが、人間の腕が再生する話は聞いたことがない。
「見た目だけじゃなく中身も化け物って訳か」
シャニーの時は神器がシャニーを取り込んだ事により魔獣のような姿になっていたが、グレントは違った。
司と変わらない神器覚醒をしているのだ。
つまりは魔獣の姿はグレントそのものということになる。
「ガルルル・・・」
「どうやら戦いへの感情以外は無いらしいな。こ
いつは手強い訳だ・・・」
痛みも恐怖も感じない敵は、流石の司も初めてであった。
「ウァァァ!!」
どうするか考えている司にグレントは再び迫る。
司は今度は正面から受け止める。
ダーインスレイブをゲイボルグ二本で受け止め、
左手をアンドロメダの鎖三本で封じた。
「デッドリーチェーン」
この状態になれば普通ならば断然司の方が有利な筈なのだが、ダーインスレイブと魔獣の細胞によって強化されたグレントのパワーと魔力量は司の予想を遥かに越えていた。
「おいおいマジかよ!!」
少しずつだが司が押されていた。
だが、残っていたアンドロメダの鎖の一本でゲイボルグを持ち、雷の魔力を込めてグレントの右足に刺した。
痛みは感じなくとも体は連動する。
「もらった!!」
グレントが右膝をついた瞬間に司は武器を離し、グレントの腹部に素手で一撃を加えた。
「ライトニングブレイク!!」
いつものライトニングブレイクとは違い、アイギスの盾の魔力と先程グレントから吸いとった魔力を合わせて放ったので、威力は桁違いだ。
「グルァァァ!!」
今度はグレントの方が壁まで吹っ飛ばされた。
「さっきのお返しだぜ・・・まぁ、痛くないんだ
ろうけどな」
「ガルルル・・・」
「おいおい、立つの早すぎだろ・・・」
グレントは何事も無かったかのように立ち上がった。
「宝具を使わないと流石に辛いな・・・というこ
とで使いますか。宝具展開!!」
大槌を右手に持ち、左手にゲイボルグを持つ司。
以前八岐大蛇戦でこの姿になったが、回りから見ると随分と不思議な装備である。
「怒濤雷撃解放!!」
宝具を解放し、今度は司の方からグレントに向かっていった。
グレントは大降りだが、凄まじいスピードでダーインスレイブを振り下ろす。
だが、司にはそれが見えている。
「デッドリチェーン」
アンドロメダの鎖でダーインスレイブを封じると、左腕にゲイボルグを突き刺し、今度は左腕を封じた。
「腹がまたがら空きだぜ。ライトニングインパク
ト!!」
空いた腹部に宝具で一撃を加えた。
「グォォォォ!!」
「流石に効くだろ」
痛みや恐怖を感じなくともダメージは入る。
更に怒濤雷撃の能力により攻撃された部分は再生不可能である。
司はダメージが入ったのを確認すると、一旦距離をとった。
「さぁ、久し振りの持久戦と行こうか・・・」
司は再び武器を構える。
司の久し振りの持久戦が始まった。
ーーーーーーーーー
時間を少し戻し、龍の方はというと、宝具と神器を駆使していたが・・・
「俺と相性悪すぎだろ・・・おっと、危ない。空
中から遠距離攻撃はズルいだろ・・・」
飛竜を相手に対処に悩んでいた。
ただでさえ飛竜は手強いのに改造されているので、皮膚は固く、スピードは普通より速い。
さらに遠距離で炎を吐いてくるだけなので、近づくことも出来ない。
「気持ち良さそうに飛ぶな・・・まぁ、魔術師も
飛ぼうと思えば飛べるけどスピードが桁違いだ
からな・・・おっと、危ない」
飛行魔術を使えば確かに飛べるが、飛ぶと言うより空に留まると言った方が正しい。
なので、スピードは出そうと思えば出せるが出しにくい。
「他の奴等の部屋もこんなに天井高いのか?」
司の部屋と違い、龍が戦っている部屋は無駄に上の空間が広いため、飛竜は飛び放題である。
「宝具は使えないし、神器は当たらないし、どう
しろと言うんだ・・・?おっと、熱い!!」
龍の宝具は相手に触れなければ意味がない。
水に触れさせるという手段もあるが、飛竜は全く床に降りてきてくれないので不可能だった。
更に凄まじいスピードで飛び回っているので、斬劇も命中しない。
「こういうのは篠原の方が得意だろ・・・神様、
アイツの方も相性最悪でお願いします」
皇気という単語龍はあることを思い付いた。
皇気の宝具と言えば空間操作。
つまり空間に関係することだった。
「そうだな・・・あれをやるか・・・」
すると龍は宝具を収納し、神器を腰に構えた。
「神器覚醒・・・」
龍は神器覚醒をし、居合いの構えをとった。
「当たらなければ、空間ごと全部切るの
み・・・」
龍はクサナギに水の魔力を込めて刀を抜いた。
「秘技・・・水烈斬!!」
次の瞬間、水の魔力により刀身が伸びた刀が部屋の壁ごと全てをバラバラに切り裂いた。
更に、クサナギの能力により一度斬られると、八回斬られた事になるので、飛竜の体はバラバラになった。
「ふぅ・・・久し振りにずいぶんと刀身を伸ばし
たな・・・」
確かに刀身を水の魔力で伸ばして斬った事はあるが、ここまで刀身を伸ばした事はない。
この魔力の使い方はかなり基本的たが、ここまで伸ばすと流石に疲れる。
「さてと、こちらにエリナ様とミカエラは居なか
ったからな・・・やはり司の所なのか?」
そう言いつつも龍は走って来た道を戻って行った。
龍がその部屋を出ると同時に、その部屋は崩れ落ちていった。
「これ大丈夫か?この施設ごと崩れ落ちたりしな
いよな・・・?」
少し倒壊について不安になったが、気にせずに戻って行った。
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再び司の方に戦いは戻る。
「嘘だろ・・・確かに持久戦は久し振りだがこん
なに辛かったか・・・?」
「グルルルル・・・」
司に比べ、グレントの方はまだまだ戦闘本能全開だった。
「まさかダーインスレイブがここまで手強いとは
な・・・」
確かに司の怒濤雷撃による攻撃は再生出来ないが、そもそも再生するまでの深手を与えなければ意味がない。
神器覚醒をすると圧倒的に防御力が上がる。
当然宝具より神器の方が各が上なので傷を与えることは難しい。
「ん?何だこの音・・・?」
その時、丁度龍が飛竜をバラバラにして部屋から出た所だったので、倒壊の音が司まで聞こえてきたのだ。
「これは何かが崩れる音だな・・・」
何かが崩れる音とはわかったが、部屋ごと崩れているとはわからなかった。
そんな事とは知らず、司は怒濤雷撃で一撃を放つ。
「ライトニングインパクト!!」
問題はその後だった。
ライトインパクトはグレントに避けられ壁に命中したのだが、なんと部屋がいきなり倒壊しだしたのだ。
「おいおい!!どうなってんだ!!」
司は部屋から咄嗟に出ようとするが、グレントが倒壊などお構い無しに襲ってくるので、出ることが出来なかった。
「嘘だろ、おい!!」
司が戦っていた部屋は一瞬にして瓦礫に埋もれた。
当然その場に立っていたものは居なかった。
果たして司はどうなったのか?
つづく。
今回の解説。
ゲイボルグとクサナギについておさらい。
ゲイボルグ
敵の血を吸いそれに適応する槍。
更に触れたものを殺す死の魔力を持ち、効果を持続させる呪いの魔力も持っている。
神器覚醒をすると、その三つの能力をそれぞれもつ三本のゲイボルグを生成することが可能になる。
どんなに離れていようと、生成したゲイボルグを消すのは自由自在。
クサナギ
一回斬ると追い討ちで七回斬られ、合計で八回斬られたという事になる不思議な刀。
実を言うと龍自身もこの能力を良く理解していない。
追い討ちはどうやらランダムで斬り方が変わるらしく、扱いが難しい。
神器覚醒をすると、切れ味がより増す。
シンプルだが、実際強力な能力である。
今回は以上です。




