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89話 姐の威厳

アイドルが家に居候するなんてないない。

まぁ、この作品には通用しませんが。

星空 ナナミの護衛の任務を終えた司達は、すでに星空 ナナミの荷物を司の家に移つし、普通の生活に戻ろうとしていた。

この日は丁度休日だったので、家に司はいた。


「問題は家の住人が普通の人じゃ無いってとこだ

な」


司は星空 ナナミを見ながらそう言った。


「何いきなり?私が邪魔ってことかしら?」


「いや、邪魔ではないな」


「というか呼んだのは貴方じゃない」


「あれ?そうだっけか?」


司と星空 ナナミは軽く他愛の無い会話をしていた。

その時に司はふと思い出した。


「そういえば今日だな」


「何が今日なのかしら?」


「姐二人が帰ってくる日だよ」


実を言うとまだ星空 ナナミは千尋と汐里に会っていない。

二人は司が護衛任務をしている間、任務で家を出ていてまだ帰ってきていないのだ。


「貴方の姐となると、そうとうキャラが濃いんで

しょうね・・・」


「ああ・・・そこは否定しない」


確かに千尋と汐里のキャラは濃い。

濃いというより濃すぎると表現した方が正しいだろう。


「そういえばさ・・・ナナミちゃんの本名って

何・・・?」


ふと司は思い出した。

そういえば星空 ナナミの本名を知らなかったと。

星空 ナナミの本名は公式でも公開されていないのだ。


「私の名前?言ってなかったかしら?」


「言ってない」


「じゃあ、言わなくてはいけないわね。私の名前

は鈴木 奈波って言うの」


「奈波・・・?本名もナナミなんだね」


案外普通の名前だったので、司は拍子抜けしてしまった。


「もっと凄い名前かと思ってた」


「名前に凄いもないでしょ」


すると、司は首を横に降って否定した。


「いやいや。キラキラネームって知ってる?」


キラキラネームとは、最近流行っている何というか凄い名前の事である。


「紅炎って書いて何て読むと思う・・・?」


「さぁ?まずそんな名前は見たこと無いわ」


「これでプロミネンスだかフレアって読むらし

い・・・」


その話を聞いた途端、奈波は呆然とした後しみじみとした雰囲気で言った。


「私・・・普通の名前で良かったわ・・・」


「俺も同意だ・・・」


二人は何故かキラキラネームの話題でしみじみとなっていた。


「というか俺の知り合いって普通の名前ばっかり

だな」


「確かにそうね。私が知っているだけでも由井と

香菜美だものね」


他にも龍や皇気といった名前も普通である。

ここで、ふと奈波はあることを思った。


「あの子達貴方の事をそれぞれ違った呼び方する

わよね・・・」


「確かに師匠に始まり先輩やさん付けだもんな。

お兄ちゃんは俺が呼ばせたけど・・・」


ちなみに今日は慶夏は出掛けている。

今話題に挙げている三人組とショッピングしているらしい。

奈波には他にも呼び方で気になることがあった。

丁度いい機会だと思ったので聞いてみることにした。


「呼び方と言えば貴方の姐の呼び方はお姉さんと

かの方の姉じゃないわよね。どうして?」


司は理由をどう言葉にしようか悩んだが、よい言葉が思い付かなかった。


「それは会ってみればすぐわかるよ・・・」


「そういうものなのかしら・・・?」


司は今日姐が帰ってくるのは知っているが、何時ぐらいに帰って来るのかは知らない。

夜ぐらいに帰ってくるとこの時考えていたが、司の予想通りにはいかなかった。


「ただいまー!!」


「ただいま帰りました」


玄関のドアが開く音と共に、大きな声と気品に溢れる声が聞こえた。

その声で司は全てを悟った。


「お帰り。意外と早かったね」


司は足早にその声の主達を迎えに行った。


「ああ。さっさと終わらせてきたからな」


「それと、今司は女の子を連れ込んでいるではな

いですか。仕事なんかしていられません」


「女の子を連れ込んだだって・・・千尋姐に許可

は取ったよね」


「ええ。でも、それとこれとは話が別です」


奈波から見て、声の大きい方の姐は確かに姐という印象があったが、気品に溢れる方の姐からは感じられなかった。


「あら?そちらの女の子が星空 ナナミちゃん

ね。弟が何か粗相をしてませんか?」


「い、いえ。まだ何もしてません」


「まだって何だよ。何もしないよ・・・多分」


奈波は司の最後の言葉を聞かなかったことにした。


「玄関で話すのもあれなので、奥で話しましょ

う」


「は、はい」


奈波は千尋の気品溢れるオーラに緊張していた。

四人は奥のリビングに移動した。

リビングに行くと、神器の三人がすでに椅子に座っていた。


「お帰りなさい千尋、汐里」


「千尋、汐里。お帰り」


「お帰りなさい」


神器達からも二人に声がかけられた。


「お前らどうしたんだ?三人で集まって?」


「汐里と千尋が帰ってくるのがわかったからな。

世間話でもしようと思っただけだ」


司の身体について知っているのは、この場では神器の三人だけだ。

汐里と千尋が席に座ると、まず自己紹介から始まった。


「とりあえず自己紹介から始めましょう。私の名

前は小山 千尋。よろしくお願いします」


「私の名前は板倉 汐里だ。よろしく頼む」


神器達についてはすでに奈波に説明してあった。

神器達がそれぞれ神話の人達だと知ったときの奈波の表情は凄かった。


「私は星空 ナナミという名前でアイドルをやら

せていただいてますが、本名は鈴木 奈波と言

います。よろしくお願いします」


千尋と汐里は奈波の自己紹介を聞いて目を輝かせていた。


「やっぱり星空 ナナミか!!テレビで見たこと

あるからもしやとは思ったんだけど、本当に星

空 ナナミだったんだな!!」


汐里はこう見えてテレビとかをよく見る方だったので、星空 ナナミの事はなんとなく知っていたのだ。


「汐里。貴方は人の顔を覚えるのが苦手なだけで

す。奈波さんはテレビに良く出てますよ」


奈波は千尋に星空 ナナミとして知ってて貰えたことが嬉しかったのか、目を輝かせていた。


「それと星空 ナナミさんは司がファンですから

ね。弟の趣味の対象ぐらいは知っておかない

と」


「いや、それは問題だろ・・・」


ちらっと問題発言をしたような気もするが、司以外は軽くスルーした。


「奈波さん、実は貴方のファンなんです。貴方の

歌には何か心に響くような力があって心地よい

んです」


「あ、ありがとうございます。そう言っていただ

けると恐縮です」


思わず千尋に対して丁寧な言葉遣いをする奈波を神器達は見ていた。


「あんな喋り方だったか?」


「いいえ、あの方はどちらかというと上から目線

な喋り方でした」


「凄い喋り方の変わりようですね」


神器達は奈波の喋り方の変わりように驚いていた。

司の場合は唖然状態だった。


「奈波さんはどのくらいこの家に滞在するんです

か?」


「あ、はい。それが・・・わからないんです」


「あらあら。でも、家にはいつまでもいていいで

すからね。安心してください」


「あ、ありがとうございます」


千尋は笑顔で奈波に対応していた。

奈波はまるで千尋に恋でもしているかのような表情だった。


「やはり千尋は女子にモテるな」


「そうですか?」


「ああ。その気品溢れる感じが女子の憧れなんだ

よ」


汐里の言ったことに司は思い当たる節があった。

以前高校に学校公開で来た時、クラスの女子全員が千尋に尊敬の眼差しを向けていたことがあった。


「ちょっと、千尋さんの何処が姐なのよ」


奈波は小さい声でそう言った。


「なら見せてやるよ」


司はそう言い返した。

その後に、千尋に一言言った。


「千尋姐、俺奈波の事が嫌いだわー」


その一言を聞いた瞬間、千尋のオーラが変わった。

その変わりように、奈波は背筋が凍りついたような感覚に襲われていた。


「あら、司。ちょっと正座しなさい・・・」


千尋は笑顔でそう言った。

その姿に汐里と神器達すら危険を感じていた。


「なるほど・・・わかったわ」


奈波はその姿を見ただけで全てを悟った。

そう、無言の重圧。

それが千尋が姐となる由縁の全て。

これだけでも理由としては十分だった。


「嘘だよ千尋姐。俺は奈波の事嫌いじゃない」


奈波が理由に気づいたのを確認すると、すぐに発言を撤回した。

だが、千尋には通用しない。


「そのようなことは気がついています。問題は私

に嘘をついたことです・・・」


「あ、やべ。方法間違えたかも・・・」


司は失念していた。

千尋は嘘を絶対許さないと・・・

その後、奈波は司が千尋を姐と呼ぶ理由をすぐに再確認し、より理解した。

そして、一時間司は説教を食らった。


つづく。




今回の解説。


次回に繋がる解説。


魔術第一高等学校の伝統について。

魔術第一高等学校には数年に一度、外国から留学生が来る事がある。

留学生といっても、学校経験の無い王族の王子や姫といった人物だ。

このようなことが出来るのも理事長の威厳あってこそである。


今回は以上です。

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