88話 アイドルの事情
これで一段落ですな。
次の長編はすぐ来ますけどね。
会場での戦闘を終えた涼、神器組、四人組、星空 ナナミはファン達の様子を確認した後、すぐに地下駐車場に行った。
司の居場所は神器達が把握しているので、すぐに向かうことができた。
「急いだ方が良いかもしれません。意外と危険な
状況ですから」
アテナは意外とと言ったが、実際は完全に危険な状況である。
神器と人間の身体は比べてはいけない。
「この先に司は倒れているな。どうやら見た感じ
意識が無いな」
スカアハは冷静に性格に状況を遠目から確認した。
「というか生きてんのか司の奴?」
「はい。死にかけですが生きていると思います
よ」
生きているという情報にとりあえず四人組と星空
ナナミは安堵した。
「でも、安心は出来ませんよ。先程も言った通り
危険な状況なので」
「なら、急ぎなさい!!」
星空 ナナミがどのようにしてついてきているかというと、当然魔術師やネクロマンサーである八人についてはこれないので涼が背負い走っているのだ。
「ナナミちゃんはちょっと静かにしといてくれ」
八人は司の倒れている場所に意外とすぐに着いた。
当の司はうつ伏せになり倒れていた。
「師匠!!生きてますか!?」
「ちょっと私に傷を見させてください」
香菜美の呼び掛けに反応が無かったので、アンドロメダが司の傷の具合を見た。
「これは不味いですね。由井、宝具で傷を治して
下さい」
「わかりました!!宝具展開!!」
由井の宝具は宝具解放をしなくても十分なぐらい治癒の力がある。
大抵の傷ならば重症でも治せてしまうのだ。
「後は意識が戻るかです・・・」
傷は治せても意識は戻せない。
やはり、完璧な宝具は存在しないのだ。
「仕方ないな・・・ならば、フンッ!!」
スカアハは司の腹部に一撃を加えた。
「ヴェ!!」
その衝撃で司は意識を取り戻した。
あり得ないような光景だが、現に目の前で起きてしまった。
「スカアハ!!何すんだ!?こちとら死にかけだ
ったんだぞ!!」
司の第一声は怒りの声だった。
どうやらかなり痛かったらしい。
「起きないお前が悪い」
「それには私も同意見ですね」
「また珍しく意見が合ったな」
「そうですね」
スカアハの意見にアテナは同意していた。
何とも理不尽な意見だった。
「このやろう・・・」
意識を取り戻した司に最初に声をかけたのは星空 ナナミだった。
「よ、良く生きていたわね。というか意外とあっ
けなく起きたわね・・・貴方本当に人?」
「自分でも何で生きているのか不思議だが、一応
は自称人間だ」
「なら良かったわ。で、私の歌はどうだった?」
「勿論最高だった。というか、ナナミちゃんの歌
に助けられたしな」
星空 ナナミの歌声が聞こえていなければ恐らく司は戦闘中に気を失っていただろう。
「そういえばここら辺にもう一人倒れてなかっ
た?」
「良く殺しあった相手の事を忘れていられますよ
ね・・・ここには居ませんでしたよ」
思い出したかのように司が社長の事を言うので、アテナは呆れていた。
「そういえばさっきからポケットに違和感が」
司がポケットに手を入れてみると、紙切れが一枚入っていた。
その紙切れを開いてみると、何やら文章が書いてあった。
「何々・・・今回は失敗したが、いつか仮は返し
ます・・・私は所詮雑兵だということを肝にめ
いじておくことをお勧めします・・・って書い
てあるな」
どうやら社長は何故か司の事を見逃したらしい。
「まぁ、あの人は今回の黒幕じゃないしな」
「それってどういうことだ?」
「俺も最初は社長が黒幕だと思ったが、あの人の
宝具は人を操ったりする能力じゃなく、ただの
ステータスを上げる能力だったしな」
「なるほど。恐らく社長は基本的にスケジュール
の情報提供しかしてないということだな」
今まで起きてきた事件は人が操られて起こしてきた。
社長にその能力が無いならば、黒幕は社長ではないことになる。
「じゃ、じゃあ一体誰が・・・?」
ステラが不安の声を漏らしたが、司は黒幕の事は気にしていなかった。
「そんな事は後回しだ。それよりこれからどうす
るかだな」
星空 ナナミに能力があるとわかってしまった以上、もしものために今よりも護衛を強化する必要がある。
「一時的にナナミちゃんを安全な所に避難しても
らうとして、問題は何処に避難するかだよな」
だが、星空 ナナミには避難場所よりもアイドル活動の方が気になっていた。
「そんな事より私のアイドル活動はどうなるの
よ?」
「当然社長がこんなことをしたんじゃ事務所は終
わりだろうな。だから当分は活動できないだ
ろ」
「なるほど・・・確かに一そうね。なら、さっさ
と避難場所を決めなさい」
「はいはい。わかりましたよ」
星空 ナナミはどうやら理解力とすぐに切り替える能力がとても高いらしい。
だが、すぐに避難場所は見つからないと司は思っていた。
その時、四人組が避難場所の要点をまとめてくれた。
「護衛の人物が強くて・・・」
「セキュリティなども強固・・・」
「せ、設備も充実していて・・・」
「お兄ちゃん達が顔を出しやすい場所です
か・・・」
その時、四人の思考は一つにまとまった。
「「「司(師匠)さん(先輩)(私)の家!!」」」
そう、司の家である。
神器達が常に居り、護衛の戦闘力は申し分ない。
家のセキュリティも最新型。
部屋も空いており、設備も充実している。
司達が顔を出しやすい場所(というか毎日いる)
「た、確かに条件は最高だな・・・」
あまりの条件の一致具合に涼も納得してしまった。
「おいおい、勝手に話を進めるな。こちらにも事
情というものがある」
そう言って司はポケットから携帯電話をとりだした。
ちなみにこの携帯電話は加奈子に作ってもらった特注品だ。
「もしもし。あのさ・・・という訳なんだけど。
許可してもらえますかね?」
司が誰と通話しているのかは、星空 ナナミ以外の全員がわかっていた。
そう、司の姐二人である。
「え?いいの?ありがとう。帰ってきたら紹介す
るわ。じゃあ、これで」
「どうやら許可は貰えたようだな」
「ああ、意外と即答だった。どうやらあっちでも
状況は理解してくれているらしい」
「なら決定だな」
こうして、司の家が星空 ナナミの避難場所として決定したのだった。
「そういえば、ナナミちゃんって一人暮らし?」
「ええ、一応は一人暮らしね」
「なら今日の内に必要な物は運ぶか」
「え?引っ越すの!?」
「え?違うの・・・?」
星空 ナナミは一時的な避難場所だと思っていたので、家具などの事はすっかり忘れていた。
「もういっそのこと司の家に住めば?」
何を思ったのか不明だが、涼がそのような事を言ってきた。
「なるほど・・・それもいいな。女一人だと色々
と大変だろう」
「はぁ・・・貴方達ってやっぱり馬鹿なのかしら
ね・・・」
「まぁ、とりあえず今住んでいるところは売り払
ってきな。また何処か住むことになったら良い
ところを俺が紹介するからさ」
「ええ、貴方が言うならそうするわ」
どうやら、司の言うことは素直に聞くらしい。
「とりあえず荷物運びは明日にして、一度帰る
か」
ライブは夕方からやっていたので、それなりに夜の時間になっていた。
「ええ。そうしましょう」
「そうだな。俺はシャワーが浴びたい」
他にも意見があったが、司の言った通りとりあえず司の家に全員帰宅した。
つづく。
今回の解説。
星空 ナナミの能力について。
星空 ナナミの歌声は、今までの中でも特に異例の宝具である。
ただし、効果が発動するのは自分で作った歌のみ。
作中で歌っていた歌は星空 ナナミが作詞作曲したものである(次回にその点には触れます)
効果は精神面と神経や魔力回路の治癒。
このような能力はいなくはないが、相当珍しいものである。
今回は以上です。




