86話 アイドル防衛作戦 Ⅵ
え?一人人数が増えてるって?
なんの事かな・・・?
わからないな(すっとぼけ)
宝具は使い手の魂を具現化したような物。
そして、能力は使い手の強い気持ちに左右される事がある。
宝具は必ず武器として具現化され、武器状ではない宝具は過去に前例はない。
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司と社長は激闘を繰り広げ続けていた。
お互いに宝具は使わず、手持ちの武器のみで戦っていた。
「あの剣は面倒くさいな・・・」
司は戦闘の中、社長からの攻撃はかすり傷程度しか受けていないはずだったが、傷が思ったより多少大きくなっていた。
「やはり気づきましたか?そう、この剣はどんな
傷だろうと悪化させる能力があるんですよ。
まぁ、傷の大きさと比例しますが」
確かにそこまで大きな傷にはなってはいない。
だが、複数できれば話は別だろう。
「やっぱり外の件もあるし、早めに片をつけたい
な・・・」
「それが出来るといいですね」
司と社長はお互いに現状はかすり傷程度しか負っていない。
お互いに隙を突こうとしてくるが、紙一重で軽傷に押さえるのだ。
(攻めかたを変えてみるか・・・)
「なら・・・これはどうだ!!」
司はサブマシンガンを社長に向けて発砲した。
「それぐらいで殺られるなら貴方の前には立ちま
せんよ」
社長は司の弾幕を全て剣で弾いた。
「確かにな・・・」
「次はこっちが攻めかたを変えましょうか」
「へっ、言ってくれるね」
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そして、地上での戦闘とはいうと・・・
「数が多すぎるだろ!!」
一人一人の対処は余裕だが、圧倒的に数が多すぎた。
「殺すのなら簡単なんだが・・・」
「スカアハ。殺してはいけませんからね」
「わかってるさ」
スカアハとアテナは的確に素早く一人ずつ対処していた。
「こういう集団戦は初めてだわ・・・」
「私も同じく初めてです」
「とりあえず確実に一人ずつ対処していきましょ
う!!」
「は、はい!!わかりました!!」
四人組は連携して対処していた。
こちらはゆっくりだが確実に一人ずつ対処していた。
「デッドリーチェーン」
アンドロメダは鎖で相手の体力を奪って対処していた。
「一回六人までですよ・・・」
アンドロメダの鎖の数は六本。
今回の状況下では少なすぎる。
だが、しっかりと対処していた。
「ネクロマンサーにも出来ることと出来ないこと
ぐらいあるんだよ!!」
涼はもはやネクロマンサーとは言えない戦い方をしていた。
剣は後ろ腰にしまい、素手で対処していた。
全員が少しずつだが、星空 ナナミの方に押されていた。
「多勢に無勢だな・・・」
「ええ・・・これは少し不味いですね」
「だが、勝機はあるんだ。逃げるわけにはいかな
いよなぁ!!」
涼は誰よりも前線で対処をしていた。
だが、ここで一つの問題が生じた。
「これは失念していたな・・・」
ファンの中には魔術師がいる可能性も十分あり得る。
その可能性を全員が失念していた。
ファンは理性を失っているが、的確に行動していた。
「皆気を付けろ!!魔術師が何人かいるぞ!!」
涼が言う時にはもう遅かった。
「それをもう少し言ってくれたら驚かずにすんだ
だが・・・」
「ええ・・・もう少し早く言って欲しかったで
す」
スカアハとアテナは魔術師と思われるファンをボコボコにしていた。
どうやら、多少手加減が出来なかったようだ。
「こちらは上手く対処出来ましたよ」
アンドロメダは鎖で魔術師の魔力を奪って対処していた。
「こ、こちらも何とかなりました!!」
四人組の方も上手く対処をすることが出来たようだった。
「後はこっちだな!!」
涼は相手の魔力剣を回避すると、ポケットから小さな針を取り出し、相手に刺した。
すると、相手はその場に倒れた。
「こいつはある魔獣の牙を加工した物でね。死に
はしないが毒があるから痺れてもらうよ」
魔獣の体の一部分を加工し、道具を作る技術は、ネクロマンサーの基礎である。
「皆!!ここからが正念場だ!!気を引き閉めて
いくぞ!!」
涼が全員に声を大声でかけた。
「わかってるさ」
「ええ。言われるまでもありません」
「ふふっ。元気一杯ですね」
神器組からはそれぞれ感想が漏れていた。
「「「了解!!」」」
四人組からはいつも通りの返事が返ってきた。
「よし。まだまだ持つな・・・」
(頼むぜ司。そしてナナミちゃん・・・)
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司はバスターソードで懸命に応戦していた。
だが、小回りができないバスターソードに対して、社長は直剣。
当然対処できない攻撃も出てくる。
「そろそろかすり傷も痛くなってくるんじゃない
かな・・・?」
「へっ、まだまだ行けるぜ」
社長の言った通り、かすり傷も増えてきて体にダメージがたまっていた。
「なら、こちらから魔力を使ってみましょうか」
社長は剣を持っていない片方の手に水の魔力剣を作った。
「その大きい剣で防ぎ切れるかな?」
「なら、こっちも小回りがきく方にするとしよう
かな・・・」
司はバスターソードを背中にしまい、右腰からナイフを二本出した。
そして、雷の魔力をナイフに纏わせ、刀身を伸ばした。
「なるほど・・・私は魔術はあまり得意デはない
のでね。そのような事もできません」
「何言ってんだ。その代わり体術と剣術は異常な
程凄いだろ」
社長の近接戦闘能力は、司が認めるほど凄まじいのである。
司は近接戦闘が得意な方だが、社長の方が格上だと確信していた。
「行くぜ!!」
司は自ら社長に迫っていった。
相手が格上だろうと、司には関係無いのだ。
司は連続でナイフを振るう。
社長はその連激を応戦する。
「凄まじいですね・・・だが!!」
社長は右手に持つ剣を、司の右手に持つナイフの魔力で作った刀身の部分に、思いっきり振り下ろした。
「くっ!!」
ナイフが弾き飛ばされてしまった。
そう、司の右腕は完全回復していない。
充分に魔力をナイフに纏わせられていなかったので、力が足りなかったのだ。
「やはり右腕の魔力回路は特に傷が深いらしいで
すね」
「この程度ハンデにもならねぇよ」
司はそう言ったが、今の右腕では思う存分に魔力を放出できない。
相変わらず万全な状態で司は戦う事ができない。
ならは、やることはいつもと同じ。
「宝具展開!!」
速攻で決着をつけるしかない。
司は全魔術武装をし、宝具を展開した。
だが、この時異変は起こった。
「ぐぁぁぁぁ!!」
「はぁ・・・やっと宝具を展開しましたか」
宝具を展開した途端、全身に凄まじい痛みが走ったのだ。
宝具は消滅し、魔術武装も解けてしまった。
「俺に・・・なにを・・・した・・・?」
「私は言ったはずです。この剣はどんな傷でも悪
化させると」
「まさか・・・」
「その通り。貴方の魔力回路の傷を悪化させたん
ですよ」
普通は魔力回路を傷つける事は不可能に近い。
だが、社長の剣は怨念により、魔力回路の傷すら悪化させる事が可能になっているのだ。
「痛みが全身を覆っているでしょう?」
「確かに・・・痛いが、問題は・・・無いね」
「やせ我慢は止めておいた方がいいですよ。恐ら
く魔力回路が完全に壊れているはずです」
社長の言った通り、司の魔力回路は完全に壊れている。
司もその事は重々承知しているが、逃げるという選択肢は無い。
「まだ・・・終われない・・・」
地上でも地下でも戦闘に進展はあった。
片方は優勢に、もう片方は劣性になったが、戦いはまだまだ長引きそうだった。
果たして、司達の運命はどうなる?
つづく。
今回の解説。
ネクロマンサーの道具作成について。
ネクロマンサーは人間や魔獣死体で道具を作成する事が得意。
涼が使っていたのはある魔獣の死体から採取した牙を加工した物。
人間の死体の一部で作った物は強力な物が多いが、世界の法律で人間の死体の一部で道具を作ることは禁止されている。
今回は以上です。




