84話 アイドル防衛作戦 Ⅳ
アイドルとデート・・・?
流石は主人公ですな。
今日は前回言っていた星空 ナナミのオフの日である。
付き添いで司と涼が付いていく予定だったが、今日は涼はあることを調査しているため、付き添いは司のみだ。
「今日はもう一人の方はいないのね」
「はい。調べものをしてるからいません」
「そう、それなら仕方ないわね」
星空 ナナミは姿がバレないように変装していて、見つけるのに少し苦戦してしまった。
本日の集合場所は遊園地だった。
この遊園地には以前にステラと来たことがあっ
た。
「確か・・・世界最強のジェットコースターとか
あったな」
「せ、世界最強・・・?」
「乗ってみる?」
「し、仕方ないわね。乗ってあげるわよ」
何故か様子が変であったが、司は気にせずにジェットコースターに乗った。
乗っている最中、司の隣で星空 ナナミは凄まじい叫び声を上げていたが、乗っている途中では何もすることができなかった。
「苦手なら言えばいいのに・・・」
「べ、別に苦手じゃないわよ・・・」
「あ、そうですか・・・」
(次から絶叫系は無しにするか・・・)
司は思いを新たに、次に乗る乗り物を考えていた。
この時、司はステラと遊園地に来た時の事を思い出していた。
「次はメリーゴーランドに行くとしますか」
「ええ、それに賛成だわ・・・」
メリーゴーランドに乗った星空 ナナミは司の思った以上にはしゃいでいた。
その光景を終始見ていた司は星空 ナナミの認識を改めることになった。
「俺の思った以上に乙女だったんだな」
「う、うるさいわねぇ。良いじゃない、私も一人
の女の子なんだから」
「そういえば俺と同い年だったね」
「え?そうなの?」
どうやら司の年齢を星空 ナナミは知らなかったらしい。
「私の護衛に同い年の高校三年生が来るなんて
ね・・・」
「がっかりした?」
「いや、貴方達は良く働いてくれてるわ」
「そりゃどうも」
司の思った以上に、星空 ナナミは司と涼の事を評価してくれているようだった。
「で、何に乗りますか?」
「優しい乗り物なら何でもいいわ」
「じゃあ、コーヒーカップにでも乗りますか」
コーヒーカップとは、回すスピードで優しくも凄まじくもなる乗り物である。
「一つ言っておくわ、スピードを出したら殺す」
「は、はい。わかってますよ・・・」
流石の司もスピードを出すことはなかった。
いつもの司だったらスピードを出していたが、今回の星空 ナナミの目はやけに本気だったのでやらないことにした。
「じゃあ、ゆっくり回しますか」
「ええ、お願いするわ」
星空 ナナミはメリーゴーランドの時のようにはしゃいでいた。
「また乙女してるんだな」
「べ、別にいいじゃない」
「はいはい」
星空 ナナミが裏でも乙女だということを知れて、司は特をした気分になっていた。
これは一人のファンとして当然である。
そして、終了時間がやって来た。
二人はコーヒーカップから降りると、フードコートに向かった。
「お昼は何を食べる?」
「そうね・・・これも貴方に任せるわ」
「じゃあ、ジャンクフードでいいや。ナナミちゃ
んはあまり食べた事無いかな?」
「そんな事ないわ。私もアイドルになる前は良く
食べたわ」
司も失念していたが、星空 ナナミも約二年前までは普通の一般人だったのだ。
ジャンクフードぐらい食べた事があって当然であろう。
「久し振りに食べたけどやはり美味しいわね」
「意外な感想だな・・・」
「それはプラスの意味に取っておくわ」
ジャンクフードを嗜む大物アイドル。
そんな光景を見れるのは今ここにいる司ぐらいであろう。
そんな事を考えいると、司の携帯に電話がかかってきた。
「ちょっと席を外すわ」
「わかったわ。でも、できるだけ早く帰ってきな
さいよね」
「了解」
着信の相手を見ると、今日はある調査にでている涼からだった。
「もしもし。どうした?」
「調べものが終わったぞ。意外と大変だったわ」
「流石の涼だな。で結果は・・・?」
涼は詳しく調査の報告をした。
結果は司の予想通りだった。
「・・・やっぱりな・・・だが、確実性に少し欠
けるな」
「ああ。やはり何かもう一押し足りないな」
「まぁ、いいや。何か他にわかったら教えてく
れ」
「わかった」
涼との通話は数分で終わった。
どうやら結果は上々だが、あと一歩足りないならしい。
司は通話を終えると、急ぎ足で戻った。
「ただいま戻りました」
司が戻ってみると、星空 ナナミの様子がおかしかった。
携帯の画面を見たまま固まっていたのだ。
「失礼させてもらうよ」
司は星空 ナナミの携帯の画面を見てみた。
そこにはこう書かれていた。
《次のライブでお前は終わる》
「なるほど・・・脅迫メールか。ナナミちゃん送
ってきた相手はわかる?」
「し、知らない・・・」
「メールアドレスを知っている人間に心当たり
は?」
「そんなのたくさんいるわよ・・・」
司はこの時に確信した。
犯人はどうやら司の思った通りの人物だったようだ。
「ナナミちゃん。安心しろとは言わないけど、信
頼はしてくれ。明日は俺達がナナミちゃんを守
ってみせる」
この一言で少しは落ち着いたのか、星空 ナナミはいつもの調子に戻った。
「そうね・・・貴方達がいるものね」
「ああ。しかも明日は数人護衛が増える。しかも
全員かなりの実力者だ」
「あら、それは頼もしいわね」
「だから明日は精一杯歌ってくれ。たとえ、何が
あってもな・・・」
司のこの台詞は星空 ナナミの頭の中に妙に残っていた。
だが、この台詞のおかげで一つの決意を持つことができた。
明日は何があっても歌う。
「じゃ、そんなメールは忘れて遊びましょ
う」
「ええ。次の乗り物に乗りましょう」
この後、二人はめいいっぱい楽しんだ。
とは、言えなかった。
先程のメールを忘れるために、再び世界最強のジェットコースターに乗ったのだ。
「や、やっぱり・・・ジェットコースタ
ーはもう乗らない事にするわ・・・」
「ああ。そうした方がいいな」
ということで、トラブルもなく無事にオフの日を過ごす事ができた。
今日は星空 ナナミにとってもかなり充実した日になったようだった。
「今日はありがとう」
「いやいや、一応任務だからな。まぁ、
任務じゃなくても一緒に来たけど」
「そ、そうなんだ・・・」
「さてと、家まで送るよ」
「今日は素直にそうしておくわ」
実は星空 ナナミを自宅まで送り届けたことはないのだ。
いつも断られているからだ。
だが、今日は送る事を許されたのだ。
「い、一体何があったというの
か・・・」
この事が今日の司の不思議一位だった。
この事を家で凄く司は考えた。
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そして、一方の三人組+慶夏はあることを企てていた。
「わかりましたね。明日ですよ」
「はい。明日ですね・・・」
「遂に明日です・・・」
「わかっています。明日ですね」
四人の手には明日の星空 ナナミ武道館ライブのチケットが握られていた。
「これで師匠の働きぶりが見れますね」
「そして、女の子にどう接しているかも
わかります」
どうやら、司の働きぶりを観察しに行くらしい。
この事は司は知らない。
だが、この行動が明日救いになることをまだ誰も知らない。
つづく。
今回の解説。
夜木 涼の学校状況について。
涼は高校一年生まで、魔術第一高等学校の生徒だったが、途中で転校している。
転校先はネクロマンサーを育成する学校。
死霊使い育成学校に現在通っている。
この学校ではネクロマンサーの素質があるもののみが入学することができ、相当優秀でなくてはならない。
つまり、涼はあれでも優秀ということになる。
転校の経緯は二年前に遡るのだが、それはまた別のお話で。
今回は以上です。




