78話 シークレットミッション(中編)
あれ?テロが起きているのにしみじみしているだと!?
司は一度家に帰宅し装備を整えてから現場に向かった。
司の今回の装備は右腰にナイフ三本、左腰に拳銃型の魔銃、そして加奈子お手製のサブマシンガンである。
さらに学生や先生にも司の正体がバレてはいけないので、以前加奈子からもらった謎のバイザーを顔につけていた。
今回は隠密作戦なのでバスターソードは家に置いて来た。
神器達には事情を説明し、家で大人しくしてもらうことにした。
「さてと・・・やりますか」
そして、今から任務を開始した。
「まずは敵の位置を把握しないとな」
司はとりあえず校舎にとりつこうと行動を開始した。
様子を少し確認してみたが、どうやら外には敵は四人しかいないようだった。
「さてと・・・やるか」
今回は二丁の銃にサプレッサーという音を押さえるオプションをつけてきている。
司の銃の腕前はかなり高い。
何せ汐里直伝のテクニックであるからだ。
「四人ぐらいなら余裕だな」
司は的確に四人の頭を二丁の銃で一瞬にして撃ち抜いた
当然音はたっていないので中には聞こえたりしない。
更に聴導犬校舎の窓からの死角になっているの所で死体が倒れているので、校舎内からは見えない。
「よし。校舎内に入りますか」
校舎内に侵入した司は、目視で敵を確認しながら次々と倒していった。
今回の場合、実際は倒すよりも殺すという表現の方が正しかった。
いつもの司ならば殺さなければならない敵は殺すが、出来れば生かしておく戦い方であったが、任務の時の司はそんな事は関係なかった。
「ふぅ、何とか一年生がいる教室に着いたな」
司は教室の中の会話を聞いてみることにした。
「どうだ?身代金の話は」
「ああ。政府に上手く話を伸ばされているらし
い」
「後どれくらい掛かるんだろうな」
どうやら今回のテロは身代金目的だったらしい。
魔術第一高等学校に入る人間はほとんどがお金持ちだ。
身代金を取るなら打ってつけだろう。
「教室内の敵の人数は約三人、廊下に二人か」
教室内の敵の数は声で判断し、廊下の敵の数は目視で確認した。
索敵魔術もあるが、相手に魔術師がいたらすぐにバレてしまう。
更には人質も今回存在するため使用しない事にした。
「仕掛けるか・・・」
まず廊下の二人を拳銃の二丁で的確に頭を撃ち抜く。
サプレッサーを付けているとはいえ、多少は音が聞こえる。
流石に敵もそこに気づかないほど馬鹿ではない。
「今、何か音がしなかったか?」
「ああ。多分サプレッサーを付けている時の銃声
だ」
「よし、俺が確認してこよう」
「「ああ、気を付けてな」」
敵も随分と仲が良いらしく、テロさえ起こさなければ司とはいい友達になれそうだった。
だが、テロリスト相手に感情を持つ司ではない。
「じゃあ、行ってくる」
そう言って敵の一人は扉を開けた。
その瞬間を司は逃さない。
「判断が甘いな」
「なっ」
司は敵が声を上げる前にナイフで喉元を切り裂いた。
目の前で仲間が一人殺されたのを見て敵は銃を構えるが、その動きは司にとっては遅すぎた。
「遅いなっ」
司はナイフを敵の喉元を一人に投げ、もう一人の敵は頭を銃弾で撃ち抜いた。
どちらも発砲をさせる前に倒すことに成功した。
「まずは一年生解放っと」
司は軽い感じでそう言うが、人質にされていた生徒達は恐怖で震えていた。
そう、目の前で始めて人が死ぬ瞬間を見たのだ、声すら発することも出来ないぐらい恐怖していた。
「さてと・・・お、いたいた」
司はある一人の生徒に向かって歩いた。
そして、司はその生徒に銃を向けた。
その瞬間にその生徒は魔術を放とうとしたので司は頭を撃ち抜いた。
「やっぱりこいつで当たりか・・・」
「そこの貴方。今何をしたんですか?」
「ただ敵を殺しただけだけど」
「敵ですって?」
司にそう問いかけてきたのは香菜美だった。
司という事は付けているバイザーのおかげでバレてはいないようだった。
何かしらの作用が働いているらしい。
やはり加奈子の作った物は出来がいいようだ。
「何故、その生徒が敵なんですか?」
「だって、生徒の中に一人ぐらいグルの奴はいる
だろ?」
続いて由井が司に質問をしてきた。
「今日はこの学校最強と言われている三人はいな
いし、理事長が学校に来ている。こんなテロを
起こすのに最適な日は他にない。だが、テロリ
スト達は今日テロを起こした。ということは先
生か生徒に敵がいるってことだろ?」
「た、確かにそれも一理ありますね・・・」
司の言っていることは正しい。
だが、殺した生徒が敵のグルとは限らない。
殺した理由が知りたかった。
「何故、その生徒なんですか?」
「こいつだけビビってた対象が違ったんだよ」
「対象・・・?」
「他の生徒は死体にビビってたけどこいつは俺に
ビビってた。誰でも初めては死体にビビるもん
さ。俺にビビるって事は死体を見慣れてるって
ことだ」
確かにそれも死体を見慣れている生徒はこの学校にほとんどいない。
だが、それでも理由が足りないと思った。
「でも、それでも根拠にしては足りないです」
「はぁ・・・やっぱり頑固だなお前ら」
「やっぱり・・・?」
「あ、やべ。今のは忘れてくれ」
正体がバレてはいないとはいえ、発言によってはバレてしまうかもしれない。
災いは口からとは昔の人はよく言ったものだと司は思った。
「もしかして・・・私達の事を知ってるんです
か?」
その質問を受けて、司は閃いた。
自分の正体のイメージを立花 司から遠ざけようと。
「ああ。確か、あの破壊者の立花 司の弟子だ
ろ?」
とりあえず自分の事を貶しておく。
そうすれば、三人なら乗っかってくると思ったからだ。
「つ、司さんは破壊者なんかじゃないです!!」
司は自分を貶す前にこの部屋を魔力で覆っておくことにより、外に音が漏れるのを防いでいた。
此で多少は大声を出しても大丈夫になる。
「俺は奴が二年前に何をやったか知ってるんだ
ぜ。奴のせいで全世界の希望を打ち砕いたんだ
からな」
その事を言った途端、他の生徒達も騒ぎ始めた。
そう、今では司も一年生の一員なのである。
騒がない訳が無い。
「あれ、皆知らないのか?ライルプス島を消した
のは立花 司なんだぜ?」
衝撃の事実を聞いて、一年生の生徒全員が驚きの声を上げ始めた。
この事を三人は知っているが、慶夏は知らなかった。
「ど、どういうことですか・・・?」
ライルプス島を消した破壊者といえば、全世界の人々が知っていることだ。
正体は知らないが、その存在は恐れられている。
「そんな破壊者の教えを受けているなんて、ろく
な魔術を教わっていないんじゃないか?」
「そ、そんなこと無い!!」
その一声を上げたのは、司と同じクラスの女子生徒だった。
意外な人物が声を上げたので、司は驚いてしまった。
「私、知ってます。一学期にこの学校が襲われた
時、司君は皆を守るために戦ってました。そん
な人が破壊者な訳ありません!!」
その女子生徒に続くように、他の生徒も声を上げ始める。
どうやら死体に恐怖していた生徒も、そんな事を忘れて声を上げているようだった。
「ふーん。破壊者の癖に人望は厚いんだな。じゃ
あ俺はもう行くんで、大人しく後続隊が来るま
で大人しくしているんだぞ」
そう言って司は敵に刺さっているナイフを回収して教室を出ていった。
教室を出た司は感動で涙を流していた。
「泣かせてくれるじゃねぇか・・・」
教室に残された生徒は教室にあった物で死体を隠し、大人しく待機することにした。
しかし待機しながらも、司についての会話は続いた。
「まさか立花の奴が破壊者だったなんてな」
「ああ。それには驚きだぜ」
「確かにアイツの実力は半端じゃないな」
そんな会話をしつつも、一年生の全員は司の事を信じているようだった。
その様子に三人は感動して涙をこぼしてしまった。
「だ、大丈夫ですか三人共・・・?」
「はい。大丈夫です・・・」
感動的な雰囲気に包まれているが、まだテロリスト達は制圧できていない。
「よし。それじゃあ皆、テロリスト達が来てもい
いように守りを固めよう」
「「「おおー」」」
香菜美の発案によって教室の守りを静かに固め始めた。
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その頃、司は既に二年生が人質にとられている教室付近に着いていた。
「さてと・・・勝負はここからだな・・・」
そう、司の言う通り、これからが正念場だ。
「二年生と三年生はともかく、問題は理事長だよ
な・・・」
理事長を狙う人間は、だいたい強者だということを司は経験上知っていた。
そう、本格的な戦いになることを司は予想していた。
つづく。
今回の解説。
加奈子の作った発明品について。
サブマシンガンについて。
このサブマシンガンに付くオプションも加奈子お手製であり、性能が向上している。
装弾数が大幅に増えており、五十発は入る。
一言で表すと、かなりいい銃。
バイザーについて。
目元に付けるタイプのバイザーで、付けると本人の正体を隠すことができる。
外見はあまり変わっていないが、バイザーの作用で誰か認識できないようになっている。
魔銃について。
以前説明したがもう一度。
実弾と魔弾を両方とも撃てる拳銃。
性能はそこまで高くはないが、予備動作無しで魔弾が撃てるので、そこで性能をカバーしている。
今回は以上です




