77話 シークレットミッション(前編)
あれ?こんな小説でしたっけ?
まぁ、いっか。
忍の里での戦いを終えた次の日、司は学校を休んで加奈子の研究所に来ていた。
「・・・で、結局伊之助って人はどうなったの
さ?」
司は前日の事件を加奈子に説明していた。
どうやら説明はすでに終盤の方に来ていたらしい。
「伊之助さんはウィザード達に連行されました
よ。今は多分情報を聞き出されてるんじゃない
ですか?」
「ふーん。結局は慶夏って子が一番の被害者
ね・・・で、いつから一緒に暮らすのよ?」
「今日学校が終わったら荷物をまとめて家に来る
予定ですよ。勿論、姐達も今日は家に帰ってき
ますよ」
「ふーん・・・」
加奈子としては何故慶夏を妹にしようと思ったのか理由が知りたかったが、流石にそこは聞かないでおくことにした。
だが、一つだけは絶対に聞いておかなければならないことがあった。
「それで・・・その右腕はどうしたのかな?」
「えーと・・・実は・・・」
右腕の事を指摘する時の加奈子の雰囲気に押されてドキッとしたが、ここに来た目的が右腕の治療なので、しっかりと説明をした。
「はぁ・・・君はまたそんな無茶苦茶な事をした
のか・・・」
当然加奈子には呆れられてしまった。
実際のところこんなやり取りは何回も行ってきたのだ。
「毎度本当にすいません」
「いや、別に構わないさ。君と私の仲じゃない
か」
そう言って加奈子は早速司の右腕の容態を見てくれた。
「うーん、これなら以外とすぐに治るかな。ただ
し、魔力を無理やり右腕に流さなければだけど
ね」
「で、どのくらいまで回復出来るんですか?」
「とりあえず元に戻るよ。まぁ、君の場合は本当
の元の状態では無いけどね」
司は二年前の時点で身体中の魔力回路はすでにボロボロになっている。
なので、治った言っても少しマシになっただけなのである。
「それだけ戻れば十分ですよ」
「まぁ、私がいつか元に戻せるか試してみるさ。
とりあえずこの布を巻いていたまえ」
そう言って加奈子から手渡されたのは、謎の文字が刻まれた包帯のような布だった。
「これは私特製の魔術回路を治してくれる布だ。
まぁ、魔術回路に対応する包帯と考えてくれた
まえ」
「相変わらず凄いものを作りますね・・・」
司はそう言いながらもしっかりと布を右腕に巻いた。
布を巻き終わったその時、司の携帯電話に着信があった。
「ん?俺に電話・・・?」
名前を見てみると、千尋からの着信だった。
「もしもし・・・千尋姐?」
「もしもし司。急なことで申し訳ありませんが、
大変なことが起きてしまいました」
「はい・・・?」
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これは司に電話が掛かってくる一時間前の話。
事が起きたのは魔術第一高等学校。
今日は朝から学年事に集会がそれぞれあり、広い教室に学年事の全てのクラスが集まっていた。
一年生の中には当然いつものメンバーもいた。
「師匠は今日休みなんだね」
「流石にあの右腕を放置するわけにはいきません
からね」
「だ、大丈夫何でしょうか?」
三人は本日欠席の司について話をしていた。
その話をしている所に慶夏がやって来たのだ。
「おはようございます。昨日はありがとうござい
ました」
慶夏は挨拶するなり、いきなり昨日のお礼をした。
いきなりお礼を言われたので三人は少し戸惑ったが、すぐに対応をした。
「お礼なら師匠に言ってください。実際私達は何
もしていない訳ですし」
「そもそもお礼なんて言わなくても大丈夫だと思
いますよ」
「確かに司さんならお礼はいらないですね」
三人の中で司の評価はどうなっているのかわからないが、三人はお礼は要らないと言った。
「でも、お礼はしっかりと言います」
それでも慶夏は司にお礼を言うつもりらしい。
もしかしたら以外と頑固なのかもしれない。
そんな事を思っていたら教室に一学年主任の先生が入ってきた。
「集会を始めるから列を作ってその場に座ってく
れ」
一学年の全員が先生の言った通りに列を作り、その場に座った。
本来ならばこれで集会が始まるはずだった。
いきなり教室の扉を開け、武装した兵士たちが入ってきたのだ。
「大人しくその場に全員座って一ヶ所に固ま
れ!!」
「さもないとぶち殺すぞ!!」
兵士達は銃を全員持っており数も多かった。
だが、ここは魔術師を育てる学校。
普通の銃ならば恐れるに足らないが、兵士の持っている銃は最近話題になっていた魔力対策がされた銃だった。
「皆、大人しく従うんだ」
先生の方々も大人しく従うんほかなかった。
どうやらこのことは二年生と三年生の方でも起きており、魔術第一高等学校の全生徒と先生が人質にとられてしまった事になる。
「テロリストですか・・・」
「香菜美さん。抵抗しちゃ駄目ですよ」
「わ、わかってますよ」
「ほ、本当ですか・・・?」
この中でも一番好戦的な香菜美が抵抗しないかとても心配だった。
「これからどうなるんでしょうか・・・?」
慶夏が心配そうな声でそう言うと、三人も同じような気持ちになってしまった。
「助けが来るまで大人しく待つしかないんじゃな
いですか」
「そうですね。それしかないですね」
まだ四人にはある希望があった。
それはある男の存在が希望だった。
その希望を四人は信じていた。
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そして、今の司に至る。
「成る程・・・俺に掛けて来たって事は、渡辺と
篠原と涼は動けないって事だな」
「はい。あの三人には任務についてもらっている
ので今は居ないんです。ですから、司。貴方に
行ってきて欲しいのです」
姐にそう言われてしまえば司に断る権利は無い。
となれば、答えは一つだけだ。
「了解。立花 司。任務に付きます」
「ありがとうございます。では、この任務をシー
クレットミッションとします」
シークレットミッションは滅多にでない任務の事を指す。
実際は司には沢山出した事があるらしい。
「じゃあ、加奈子さん。俺、行ってきます」
「ちょっと待った!!」
加奈子は司を引き留めて研究所の奥に走っていった。
そして、トランクを持って帰って来た。
「右腕で魔術使えないからさ、これを持ってき
な」
トランクを開けると、中には銃とその他のオプションが入っていた。
「これは・・・サブマシンガンだな」
「そう。私が特別に改造をしたサブマシンガン
だ。以前君に渡した魔銃みたく魔力弾は撃てな
いが、かなりいい銃に仕上がってるよ」
「珍しいですね。加奈子さんが銃なんて」
「私の最近のしゅみは銃いじりなのよ」
今まで司は加奈子の作ってきた武器に何度も助けられて来た。
司が持っているほとんどの武器は加奈子お手製の武器だった。
「ありがとうございます。存分に使わせてもらい
ます」
「頑張ってきな」
「はい!!」
司の今回の任務は敵の制圧。
しかも音をたてず、仲間にバレないように制圧しなければならない。
司の真の実力が発揮される時だ。
つづく。
今回の解説。
シークレットミッションについて。
シークレットミッションとは、表向きには公開しない任務のことであり、特別な人間にしか命令されない任務の事である。
緊急な任務であるので、危険が大きい。
滅多に出されることは無く、相当まずい状況の時でないと出ない。
実際は司には大量に出されていた時期もあったが、それは全て姐からの命令だったらしい。
今回は以上です。




