73話 忍者VS破壊者 Ⅴ
今回は司の最後の姐が少しだけ出ますよ。
司と伊之助は互いに魔術武装もせずぶつかり合っていた。
武器を使うこと無く、体術のみで今のところ戦っていた。
「以外とやるじゃないか・・・」
「体術は随分としごかれましたからねっ!!」
体術は流石に伊之助の方が上だが、司の体術は独特なので、対処に伊之助もてこずっていた。
「アンタは空手や柔道を複合させた体術だな」
「そういう君の体術は一体何だい?」
「俺のはちょっと特殊なだけさ・・・」
司の体術は姐に教えてもらったものであり、その体術も姐が独自に開発したものである。
なので、この体術を知っているものはほとんどいない。
「だがっ!!パワーと技術はこちらの方が上
だ!!」
司はしっかりとガードをして伊之助の拳を受けてはいるが、少し押されていた。
「くっ!!」
着々と押されていく司。
だが、司には打開策があった。
「確かにすごい突きだが・・・この体術には効か
ないねっ!!」
司は伊之助の右手の突きを左手で下から払い、次に右足で伊之助の足を払いバランスを崩させる。
そしめ、足を払うのと同時に伊之助の懐に踏み込んだ。
司の体術の得意なところはカウンター。
バランスさえ崩せば司のターンだ。
「秘技 雷帝突き!!」
肘に雷の魔力を込め、伊之助の腹部に直撃させた。
「うぐっ!!」
伊之助は流石のダメージに呻き声を上げた。
だが、実際のところ司もこの一撃を与える前に何発かガードの上から食らっているので、ダメージ量的には五分五分だった。
この時司はあることを思い出していた。
ーーーーーーーーーーーー
「いいか司。この体術は相手が自分より強くて
も、戦うことができる術だ」
約四年前、司は一人の姐からまず体術を教わった。
「そんなの本当なのか?・・・沙夜姐」
そう、もうすでに亡くなっている沙夜から教わったのだ。
沙夜は格闘戦のプロフェッショナルだった。
「私が教えるのは守る術だけだからな。相手に与
える一撃ぐらいは自分で考えておくんだよ」
「へーい。そこは任せとけ、得意分野だ」
結局沙夜は、全てを教える前に死んでしまったが、意志は司に受け継がれていた。
ーーーーーーーーーーー
「ふっ。久しぶりにやったが、衰えてはいなかっ
たな」
司がこの体術を使うのは約二年ぶりである。
ここ半年は体術で戦う事など無かったからだ。
「・・・中々の一撃だったぞ」
「それはどうも・・・」
体術が五分五分ならば宝具を出すしかない。
だが、司的にははもう少し体術だけで戦闘を続けたかった。
理由は簡単、やはり相変わらず司は持久戦というものが出来ないからだ。
「宝具展開!!」
伊之助は宝具を展開したが、司は宝具を展開しなかった。
「ほう・・・余裕ということか・・・?」
「別に、ただ宝具を使いたくなかっただけさ」
伊之助は当然そんな事はお構い無しに迫ってきた。
伊之助の宝具は短刀。
短刀とはいっても、それなりに長さはある方だった。
「短刀か・・・だがっ!!」
司は相手がどんな武器を持とうが、対抗できる術を持っていた。
司は次々と伊之助の短刀を上手く払いのけてゆく。
だが、そういつまでも続けていられる訳でもない。
「どうした?私の宝具が段々ととかすり始めてい
るぞ」
「くっ!!」
やはり宝具を展開するしか司の打開策はない。
司は一旦距離をとると、宝具を展開した。
「宝具展開!!」
司が宝具を展開すると、伊之助はそれを待っていたかのように宝具を解放した。
「止想邪剣・・・解放!!」
伊之助は宝具を解放し、すぐさま攻撃を仕掛けてきた。
司は咄嗟に反応するが、左手に少しかすってしまった。
「ちっ!!宝具を解放させてくれないか・・・」
確かに司は素早く宝具を解放することができるが、その暇も与えることもなく伊之助は攻めてくる。
司は確かに致命傷を防いでいるが、何個ものかすり傷を受けた。
しかし、司もやられっぱなしというわけでもない。
「もらった!!」
司はわずかな隙を突いて伊之助に蹴りを入れた。
蹴りを食らった伊之助は後退り、司はその隙に距離をとった。
そして、すぐさま宝具を解放する。
「怒涛雷撃解放!!」
宝具を互いに解放したが、伊之助は自分の魔力属性をまだ明かしていない。
更に宝具の能力がわかっていない。
ここの部分が司にとっては不安な要素だった。
だが宝具を解放した以上、様子見という手段はない。
「ライトニングインパクト!!」
司はまず強い一撃を放った。
これをどう防ぐかによって伊之助の宝具の能力をどのような物なのか見当をつけることが出来るかもしれない。
「本来ならば凄まじい一撃だ。だが、今の状態で
は恐ろしくはないな」
伊之助は宝具の短剣に雷を纏わせ、ライトニングインパクトを上手く逸らした。
「何っ!?」
今のは巻物を使っていなかったので、伊之助の魔力属性は雷だということがわかった。
だが、そんな事よりも司の一撃を逸らした事に驚いていた。
確かに逸らす事は出来るだろうが、そう簡単に出来ることではない。
「どういうことだ・・・?」
「ふっ。やはり威力が下がっていたか」
司には自分の一撃を防がれた原因がわからなかった。
確かに相当な魔力を込めて放ったはずだった。
「奴の宝具が何かをしたということか・・・」
伊之助の宝具に何かされたことだけは見当が付いたが、それ以外は宝具については何もわからなかった。
それでも、司は攻め続けなければならない。
「はぁぁぁ!!」
司は正面から伊之助を潰しにかかった。
「くっ!!予想はしていたがここまで辛いとは」
伊之助は上手く正面で受け止めるが、相当な不可が伊之助にかかっていた。
「この状態ならパワーはこちらの方が上だ!!」
司は力で押しきり、伊之助のガードを崩した。
そして、ノーガード状態の伊之助に一撃を与えた。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
伊之助は呻きながらぶっ飛んでいった。
だが、ぶっ飛ばされた伊之助の口元は笑っていた。
「さてと、そろそろか」
ーーーーーーーーーーー
一方その頃。
魔獣討伐をしているスカアハ達は、相変わらず魔獣達を圧倒していた。
「アテナ、そっちに一体いったぞ」
「わかっていますよ」
「どうぞ、サポートはまかせてくださいな」
そのままでも凄まじいスカアハとアテナが、祝福で強化されたとなれば、止められるものはそういないだろう。
「デッドエンド!!」
「ホーリーランス」
「デッドリーチェーン」
三人に近づく魔獣はすぐさま戦闘不能になっていった。
その戦闘の場には途中から忍の里の戦士達が集まってきたが、その戦士達が戦闘に入る余地はなかった。
「すいませんが戦闘に加わらない事をおすすめし
ます。魔獣と一緒に殺しておきながらしまうか
もしれないので」
アテナの言うとおり、一歩でも足を踏み入れれば普通の者なら巻き込まれて死んでしまうだろう。
それほど凄まじい戦闘だった。
「早く終わらせないと司がきついからな」
「そうですね。まぁ、司は簡単には死にません
が」
「さっさと片付けてしまいましょう」
戦闘はまだまだ続く。
だが、こちらの戦闘はもうすぐ終わりを迎えるだろう。
そうなれば、後は司だけだ。
全ては司にかかっている。
つづく。
今回の解説。
司の体術について。
司の体術に名前は無い。
この体術は司の姐である沙夜が独自に開発したものである。
この体術はカウンターに特化しているので、大抵の攻撃ならば防ぐことができる。
だが、攻撃を防ぎ次の攻撃に繋げるだけがこの体術なので、扱う者の攻撃力によって脅威は異なる。
今回は以上です。




