71話 忍者VS破壊者 Ⅲ
明けましておめでとうございます。
今年も頑張りますよ。
では、以上。
司と慶夏は、先に他のメンバーが帰ったことに気づくと、すぐに二人も帰った。
二人が気づくのは帰ると、他のメンバーはやっとかと言いたそうな目で迎えた。
そんな視線に気づくこともなく、伊之助に帰宅の報告をした。
「ただいま帰りました」
「他のみんなより遅かったな。どうした、立花君
と何かしてたのか?」
伊之助が慶夏をおちょくると、慶夏は顔を真っ赤にしながら否定した。
司はそんな事を言われても何も気にしてはいなかった。
「確か聞いた話によると、明日は長が一日いない
んだって?」
「はい。何でもウィザード協会の会議とか何とか
でいないらしいです」
慶夏は長が明日いない理由を伊之助に説明した。
この時司は見逃していなかった。
どんな人間でも、ここぞという時には顔に出てしまう。
伊之助にも笑みが少しだけ出ていた。
「いやー、明日は長がいないなら大変になりそう
だなー」
「そうだな」
司がわざとらしくそう言うと、伊之助は肯定してきた。
これは司の伊之助に対してのプレッシャーだった。
このプレッシャーに気がついたのは神器達とおそらく伊之助だけである。
「明日なんかに襲撃が来たら、とてつもなくヤバ
いですね」
更に司はプレッシャーをかけておく。
もし仮に犯人が忍の里の身内だった場合、何かを仕掛けるには明日しかない。
これは誰が考えても明確な事だった。
「まぁ、とりあえず夕食にしよう」
伊之助は話をそらそうとしたのか、それともただ単に夕食の時間になっただけなのかわからないが、夕食にすることを提案してきた。
「そうですね。では皆さん、夕食にしましょう」
慶夏が夕食にすることに同意したので、全員で夕食を作ることにした。
「慶夏は随分と料理の手際がいいな」
「そ、そうですか?まぁ、毎日自炊してますか
ら」
実を言うと、司の家の住人は全員全く料理ができない。
汐里も千尋も料理が出来ない。
強いていうならば既に死んだ沙夜も料理が出来なかった。
「慶夏が家に居てくれればいいのにな・・・」
司は普通に聞いたら誤解しそうな台詞を、平然と言ってのけた。
言われた慶夏の方は顔を真っ赤にしながら料理をしていた。
「先輩。警察に行きますか?」
「ん?俺、なんか悪いこと言ったか?」
やはり司に自覚は無いようだった。
「そんな事より早く夕飯作ろうぜ」
「師匠はたいして何もしてないじゃないですか」
女手が多いこともあり、夕食は以外と早くできた。
伊之助は神器達に監視させておいたので、特に妙な動きはさせなかった。
こうして、普通に全員で夕食をいただくことにした。
「そういえば、何で伊之助さんは慶夏の世話をし
てるんですか?」
司はふと気になった事を聞いてみた。
「それはだな・・・慶夏の両親は俺の友だったん
だ。それも年期の入ったな・・・」
「なるほど。友の娘だから面倒を見ているという
わけですね」
「まぁ、そんなところだ。慶夏の両親には借りが
沢山あるしな」
この話を聞いて、司は何となく慶夏の両親の死について感づいていた。
「ふーん。何となくわかってきたぞ」
「何がわかったんですか司さん?」
「いや、なんでもねぇわ」
司はステラに聞かれたが、はぐらかした。
まだ、司の推理は確定したわけではない。
司的には司の推理は当たってほしくない。
そんな事を考えていたら、すでに夕食の時間は終わっていた。
「じゃ、次はお風呂にでも入ってきな。ばしょは
慶夏に聞きな」
「「「はーい」」」
伊之助の提案で風呂に入ることになったが、一番風呂を女子達に譲り、司は外で少し神器達と話をしていた。
「お前らには伊之助さんの見張りを引き続き頼み
たい」
「それはわかっているが、私達が見張りをしてい
ても意味がないかもしれないぞ」
ここで言ったスカアハの意味がないは、スカアハ達が見張りをしていても抜けられるという意味の言葉である。
「やっぱり伊之助さんもかなりの実力者
か・・・」
「ですが、あの方は左手を怪我していますね。
おそらく、腕が肩まで上がらないのでしょう」
アテナは伊之助の少しの動きを見て、そこまで見抜いていた。
「犯人の狙いがわかれば楽なんだが・・・」
「犯人の狙いかどうかわかりませんが、忍の里の
一番貴重な物ならわかりましたよ」
司はアンドロメダの言ったことに食いついた。
「それはなんだ?」
「それは、さまざまな強力な魔術が記されている
巻物です。その中には禁術もあるとか」
世の中には環境に害を及ぼす魔術もある。
それが禁術である。
そんなものが悪用されれば、被害は想定できない。
「ところで、どこでそんな情報を手に入れたん
だ?」
「慶夏が教えてくれました。その巻物は忍の里の
宝物だと」
アンドロメダの聞いた話が本当ならば、犯人が巻物を狙っている可能性が高い。
「問題は巻物がどこにあるかだよな・・・」
巻物の場所がわからなければ対処のしようがない。
「仕方ない・・・明日考えよう。とりあえず風呂
にはーいろ」
そう言って司は風呂に向かっていった。
その後ろ姿を見て、神器達はただ呆れていた。
そして、神器達は思った
(((そういえば、今お風呂には女子達が入ってい
た気がする)))
そう、事件はこの後起きた。
脱衣徐の扉を司が開けると、お風呂から上がったばかりの体にタオルをまいた女子四人がいた。
「何だ、丁度上がったのか」
司的には、あまり年下の裸体には興味が無かったし、タオルを体に巻いていたのもあって、全く謝罪の言葉がでてこなかった。
そんな態度をされれば、普通は激怒する。
「師匠。人の裸を見ておいて、何ですかその態
度・・・?」
「先輩。これは本当に警察ですね」
香菜美と由井が怒る中、ステラと慶夏はひたすら体を隠していた。
「別にいいじゃん。減るもんじゃないし」
その言葉が今回の司の最後の言葉だった。
この後神器達が司が制裁されている現場にやってきたが、あまりにも酷すぎて司に同情したらしい。
つづく。
今回の解説。
禁術について。
例えばある禁術を使うと、その土地に一切植物が生えなくなったりするというようなリスクがある魔術のことである。
司が本気を出して山の形を変えられる一撃を出せるのに対して、ある禁術を使えば基本魔術程度の魔力量で山の形を変えられたりする。
世界共通で封印されている魔術が禁術である。
今回は以上です。




