63 話 復活、大和神話 Ⅴ
ついに、神話要素が登場!!
火野 晴斗、彼が司達の目の前に現れるのはこれで三回目だ。
だが、晴斗と司は戦闘をしたことはない。
魔術ブラストをぶつけ合ったことはあったが、晴斗の能力は司達もまだ知らない。
「久し振りだな、火野 晴斗・・・」
「まさか覚えていただけていたとは、感激です」
晴斗は明るい雰囲気でそう言っているが、攻撃をする隙がなかった。
司は前から分かってはいたが、龍、皇気、涼も理解した、晴斗はかなりの強者であると。
「よく言うぜ、キザ男」
司達は黒幕は神器使いと予想しているので、予想が的中しているとすると、晴斗が神器使いということになる。
強者の上に神器使いとなると、かなりの接戦になると思われる。
司達はそれをしっかりと理解していた。
「まぁ、今回も私達の計画を止めに来たのでしょ
う」
「まぁ、そうなるな」
その会話をした途端、晴斗のオーラが殺気に変わった。
当然、警戒していた司達もすぐに戦闘体制を取る。
司達と晴斗は一連の動作で全魔術武装をし、宝具を展開した。
晴斗の宝具はステラと同じ直剣だった。
「僕一人だけでは無いということを理解してもら
おうか」
晴斗が指をならすと部屋の床が開き、魔獣が大量に出てきた。
前回の戦闘より魔獣の数は圧倒的に多かった。
「俺に奴は任せろ。後は頼む!!」
晴斗は司に任せて他のメンバーは魔獣を倒すことにした。
「ここは成長した私達の力を見せる時ね。行くわ
よ、二人共!!」
「「はい!!」」
今まで三人組の中で宝具を展開できるのはステラだけだったが、司の知らない間に香菜美と由井も宝具を展開できるようになっていた。
「「「宝具展開!!」」」
香菜美の宝具は双剣で、由井の宝具は杖だった。
二人がいきなり宝具を展開したので、横目でそれを見ていた司は驚愕してしまった。
「いつの間に宝具展開できるようになったん
だ・・・?」
司は今すぐにでも経緯を三人組に聞きたいところだったが、今は戦闘中なので戦闘に集中することにした。
「確かお前の魔力属性は火だったな」
「ええ、そうです。これまたよく覚えていました
ね」
晴斗のことは魔力属性以外何も知らない。
いつものことだが、手探りをしながらの戦いになりそうだった。
司はとりあえず先制攻撃をすることにした。
「先手必勝!!」
司の攻撃を素早く避けると、晴斗は炎を纏った宝具で反撃してきた。
たが司の方もそれを素早く避け、今度は遠距離で攻撃してみる。
「ライトニングボルテックス!!」
この魔術はかなりのスピードで雷の槍が飛んでいくのだが、晴斗はこれも素早く避けた。
そして司に負けじと遠距離で反撃してきた。
「クロスブレイズ!!」
晴斗は炎を纏った剣で十字を描き、放った。
司もそれを軽く回避する。
「ここまでは互角か・・・」
「そうみたいですね・・・」
魔術師同士が戦い技量互角だった時、勝負を決めるのは戦闘経験と力、そして何より宝具の能力である。
お互いが睨みあっていると、いきなり晴斗に攻撃が飛んできた。
「なんだ!?」
晴斗が攻撃してきた方を見ると、他のメンバーが既に魔獣達を倒していた。
司と晴斗が戦っていたのはほんの数秒だったはずなのに、すべての魔獣が倒れていた。
「成る程・・・神器を使いましたか・・・」
良く見ると龍と皇気は神器を装備していた。
更には前回と違い神器が二人もこの場にはいる。
「前回は魔獣しか居なかったから使わなかった
が、今回は黒幕が目の前にいるんでな、出し惜
しみはしないぜ」
普通不利な状況に追い込まれると人は焦るが、晴斗は落ち着いていた。
「いやー、魔獣をこんなに早く片付けられたのは
予想外ですが、ここからは私のシナリオ通りで
すね」
とてつもないほど意味深な台詞を言った後、晴斗は宝具を解放した。
「宝具名ブレインハッカー、解放!!」
解放された晴斗の宝具はより強力なオーラを放っていた。
晴斗は何故か龍にいきなり切りかかった。
龍はその攻撃を神器のクサナギで受け止めた。
晴斗は一回打ち合うとすぐに引き下がった。
「これで不利な状況は覆せます。来い!!ネフテ
ィスの門!!」
晴斗がそう叫ぶと床から大きな門が出てきた。
そう、その門こそが晴斗の神器そのものだった。
ネフティスという名前を聞いて皇気が反応した。
「成る程、死んだ者が蘇ったのはお前のせい
か。その神器の能力は死んだ者を蘇らせるこ
とだな」
「ご名答。だが、今回蘇らせる者は一味違います
よ。来い!!八岐大蛇!!」
晴斗がそう呼ぶと門から凄まじいほど巨大な蛇が出てきた。
あまりの大きさに施設が崩壊し始めた。
「やばいな、ここを脱出するぞ!!」
皇気が脱出を指示すると全員で走った。
逃げる際、晴斗の方を司が向くと晴斗が喋った。
「私はここで退散しますが、せいぜい頑張って下
さい。破壊者立花 司」
司はその台詞を聞いてから走り出した。
全力で走ると以外と早く脱出出来た。
脱出した後、司達はすぐに山を降りた。
山を降りた後に山の方を見ると、山の中から先程の蛇が出てきた。
その蛇を見て司は理解した、蛇の正体を。
「八岐大蛇だと・・・」
にわかには信じられないが、その蛇の頭の数は八つだった。
確かに晴斗が八岐大蛇と言っていたが、実際目にするとそれを理解してしまう。
問題は八岐大蛇の大きさだった。
小さい山だが、それより巨大な蛇などこの世にはいない。
「あれを俺達で倒すのか・・・やるしかねぇな」
ここで逃げればどのぐらいの被害が出るのか予想できない。
つまりは、ここで司達が倒さなければならない。
「あれほど巨大な蛇は倒したことがないな」
「あれは魔獣ではなく神獣の類いですね」
「あれを見ると海の怪物を思い出しますね」
八岐大蛇を見た神器達からそれぞれ感想が漏れた。
神器達も理解していた、今回の敵は今までで一番の敵だと。
「お前ら・・・行くぞ!!」
「「「了解!!」」」
これから始まるのは、まさに日本の神話の再現。
場所も武器も役者も揃った、後は勝者を決するだけだ。
つづく。
今回の解説。
晴斗の宝具、ブレインハッカーの能力とネフティスの門の能力について。
そして、八岐大蛇が蘇った理由について。
ブレインハッカーの能力は触れた物や人の記憶を読み取ること、読み取るといっても多少しか読み取ることが出来ない。
だが、相手の過去や弱点を知るのには十分すぎる量の記憶は読み取ることができる。
ネフティスの門は、エジプトの神ネフティスの神器。
ネフティスは冥府の守り手という説がある。
門の能力は使い手の想像したものが実際に存在していたのなら蘇らせるという能力。
これを踏まえた八岐大蛇が蘇った理由。
龍の神器、クサナギは元々八岐大蛇の一部だった。
更にはクサナギに宿る魂はスサノオの可能性が高い。
スサノオは八岐大蛇を倒した張本人である。
つまり、クサナギと打ち合ったときにスサノオの魂から八岐大蛇の記憶を読み取り、それを想像したということだ。
読み取った記憶は脳内に直接流れるので想像するのは簡単。
これが蘇った経緯。
今回は以上です。




