62話 復活、大和神話 Ⅳ
今のところ神話要素ゼロー。
作戦の実行の日、司達はぜんいんでミーティングをしていた。
たが、朝のことで三人組にはずっと睨まれていた。
神器達は朝のことを別に気にしていない様子だった。
「お前らのせいでこうなったんだからな」
司は神器達に向かってそういい放つ。
たが、言われた神器達に反省の色は見られなかった。
「仕方ないだろう。私は寝相が悪いんだ」
「「同じく」」
スカアハの発言に、アテナとアンドロメダも同意した。
司は寝相があまりにも悪いと思ったが、それは口に出さなかった。
「まぁ、いいや。で、篠原。基地はどこにあるんだ?」
司は早くこの話を止めたかったので、皇気に本題を切り出した。
「実は前回戦闘をした山の他にも山があったんだけど、その山の一つが丸々基地だった訳」
皇気の話を訳すと山の内部に基地がまるまる入っているらしい。
複数の山からよく特定できたと司は感心する。
そして、龍と皇気はすごい確信している様子であった。
「成る程ね。で、どうやって侵入するわけよ?」
「しっかりと入り口を見つけてあるのさ」
龍がどや顔でそんな事を言った。
司はこのどや顔を何回も見ているので、あまり反応はしなかった。
こうして司達は山に早速向かった。
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戦闘の時は気づかなかったが、山の麓に地図看板があった。
皇気の話通り、この山以外にも四つ山があり、この山を含めて火山湖を囲んでいると地図には書いてあった。
五つの山をまとめて三瓶山と呼ぶらしい。
「よく特定なんか出来たな・・・」
司がそう呟くと、龍が特定の経緯を説明してくれた。
「前回の戦闘の際、俺達は複数の魔獣をこの山に誘導していた、その最中に扉を見つけたって訳よ」
司は呆れ果てると同時に、二人の強運さを思い出した。
実は龍と皇気はかなりの強運の持ち主であり、司はトランプなどで勝った試しがないのである。
そんな事を思い出しながら歩いていると、思ったより早く入り口に着いた。
たが、入り口の扉は固く閉まっていた。
「どうやって入るんだ?」
今回は穏便に事を済ませてくれると司は思ったが、そんな事は不可能だった。
次の瞬間、龍が水の魔力剣で扉を真っ二つにした。
「もはや侵入じゃなくて、突入だな・・・」
司達は警報が鳴っているのも気にせずに基地の中に入っていった。
「階段が下に続いているな・・・」
今回はどうやら地下に施設があるらしい。
司は長い廊下から解放されたと思ったが、そんな事は無かった。
階段を降りると、見たことのある光景が目の前に現れた。
そう、また長い廊下だった。
「はぁ。また、超長い廊下かよ・・・」
「その意見には同意だ」
司と皇気はため息を吐きながらもしっかりと前に進んでいった。
たが、あっさりと前に進ませてくれるはずもない。
対魔術師用兵器がぞろぞろと出てきた。
「おっと、相変わらず数が多いな」
「たが、今回は涼がいるだろ」
龍が涼の名前を呼ぶと、涼が前に出て魔術を使った。
「アンデットパーティー」
以前にも使った魔術で、魔力のゾンビを大量に出す魔術だ。
数では兵器の方が多いが、質なら死の魔力で作った涼のゾンビの方が上だった。
「流石の性能だな。いやー、俺達は何もしなくていいや」
龍の言った通りゾンビ達だけで兵器を片付けてしまった。
司達は廊下をどんどん進んでいくが、急に敵が出てこなくなった。
「相変わらず急に敵が出てこなくなるよな」
「ああ。どうせこの先に広い部屋でもあるんだろ」
司達は流石に学習してきていた。
大体敵が出てこなくなると先にボスが待っているのである。
「たが、油断するなよ・・・」
皇気は今回の事件は神器使いが関わっていると思っているので、相手が相当手強いと予想している。
それは他の三人も同じだった。
「貴方達は随分と戦闘経験があるように見えますが、ウィザードとやらになって何年たつんですか?」
四人のやり取りを見ていたアテナが質問をして来た。
たしかに高校生にしては司の戦闘センス、龍の剣術、皇気の戦闘に対する思考力、涼の死霊に対しての知識がすごすぎる。
それを感じ取ったのはアテナだけではなかった。
「私もそれは気になりますね」
スカアハはともかく、アテナとアンドロメダは二年前の事を知らない。
というか、誰一人説明していない。
それが質問の原因だと考えられる。
「そうだな・・・俺は一年しかウィザードやってないけど、龍と皇気は今年で三年目だな。涼は二年ぐらいやってたんだっけ?」
司が思い出しながら説明してくれたが、涼だけは曖昧であった。
「ああ、二年ぐらいだな。お前が休んでる時にネクロマンサーになったんだからな」
司は二年前の事件以降ウィザードとして活動していない。
その理由を知っているのはごくわずかだ。
それを知っているからこそ、二年前の事はあまり誰も聞かない。
たが、事情を知らない二人は聞いてしまった。
「二年前に何があったんですか?」
流石にそれは不味いと他のメンバーは思った。
たが、司は軽く答えた。
「まぁ、まだ正式には二年経ってないんだけどな、人工生命体を捨て身でぶっ倒したわけよ、それでこの体になったてわけ」
ほとんど説明されてはいなかったが、実際は他のメンバーもこのぐらいしかほとんど知らないので、結果オーライだった。
ここにいる人で事実を知っているのは龍、皇気、涼、スカアハだけだ。
「なるほど、それでそんな宝具もまともに使えない体になってしまった訳ですね」
下手くそな説明だったが、全員がとりあえずは理解してくれた。
アテナとアンドロメダは今はもう詮索しなかった。
その時、皇気が皆を止めた。
「おっと、やっと敵が出てきたぜ」
皇気の言った通り、目の前には再び対魔術師用兵器が立ち塞がっていた。
今回の兵器は先程のと違い、高性能型だった。
「おいおい、こいつって最新型じゃねえか」
たが、最新型は生産コストが高いのであまり量産できない。
だから、今回も先程のと数よりは確実に少なかった。
しかし性能は段違いだった。
「こんなところでミサイルかよ!!」
最新型は火力が上がった代わりに地形を把握できていないようだった。
廊下でミサイルを発射してくるのだから、そうにちがいない。
たが、廊下の壁は無傷だったので、司達は助かった。
「ふぅ。危なかったな・・・絶対頭悪いなあいつら」
龍の高水圧の水の壁によって司達は無傷だった。
となれば、後は反撃するだけだった。
敵は司達の動きを的確に把握してきているが、攻撃を防ぎきる事は出来ていなかった。
「まぁ、所詮は機械ってことさ。こんなんじゃ俺達は止められないね」
数秒後には全ての敵が片付いていた。
あまりにもよい手際だったので、流石の神器達も称賛していた。
三人組は相変わらず唖然としていた。
「さてと、今回の前座はここまでかな」
司のいった通り、すぐ先には扉があった。
扉には魔獣実験室と書いてあった。
「さぁ、お前ら準備はいいか?」
皇気が最後に全員に確認を取る。
たが、全員からの返事は既に決まっていた。
「当然だな(です)!!」
その返事に皇気は少しにやけながら言った。
「じゃあ行くぞ!!」
皇気は勢いよく扉を開けた。
中は相変わらずの暗くて広い部屋だった。
司達が警戒しながら周りを見渡していると、急に明るくなった。
光に目が慣れ、真ん中を見てみると青年が立っていた。
「お久し振りですね、立花 司」
その青年を司は知っていた。
由井を一回襲い、更にはランスロットを再び甦らせた張本人。
「お前は、火野 晴斗!!」
その青年は名前を呼ばれると、肯定しながら不適に笑った。
つづく。
今回の解説。
魔力属性の再確認について。
基本の魔力属性は火、水、雷、風、土の五つです。
大体の人はこの属性です。
しかし、世の中には異例が存在します。
そういう魔力属性を特殊魔力属性と呼ぶ。
特殊魔力属性は闇、光、氷などがそうです。
そして、更に珍しい魔力属性も存在します。
超特殊魔力属性と呼び、死、呪、血、毒などがそうです。
作中では毒は出てきていませんが、今後登場するかもしれません。
それぞれの魔力属性がどういうものなのかは次回以降説明します。
今回は以上です。




