57話 相変わらずの神器達
今回の新キャラは、この作品の中でも逸脱していると思う。
膝枕で起こされるという体験は、滅多にできるものではない。
だが、司にとっては二回目の体験だったりする。
普通ならば嬉しい体験だが、司にとっては前回の経験上、素直に喜べないのである。
「あの・・・どちらさまですか?」
たが、司は膝から離れない。
相手が美女な上にタイプなので、口調も変わっていた。
「私の名前はアンドロメダ。よろしくお願いしま
す」
「ア、アンドロメダ!?」
余りにも予想外の名前だったので、司は驚愕の声を出してしまった。
「はい。これからは立花 司の神器として契約さ
せていただきます」
とても丁寧な口調でそう言った。
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
余りにもアンドロメダの口調が丁寧だったので、司も丁寧な口調になってしまった。
「そんなに丁寧で無くてもいいですよ」
司の口調を不思議に思ったのか、アンドロメダが指摘してきた。
「それじゃあ・・・よろしくな、アンドロメダ」
「ええ。こちらこそよろしくお願いします」
二人は握手を交わした。
丁度その時、扉が開き中に皆が入って来た。
誰が入って来たかというと、スカアハとアテナだった。
「なるほど。また、神器が増えたか・・・」
「帰ってきたと思ったらこれですか・・・」
どうやら二人だけだったようだ。
二人は司の状態がわかるので、帰ってきたこともわかったようだ。
「おう。他の皆は?」
「お前に変化があったから、黙って来た」
何故か二人は神器が新しくとりついた事もわかったらしく、どうやら司に気をきかせてくれたらしい。
「で、こいつは誰だ?」
スカアハがアンドロメダを指差しながらそう言った。
「アンドロメダですね・・・」
スカアハの質問に答えたのは、アテナだった。
どうやらアテナはアンドロメダと顔見知りのようだった。
「まさか貴方が神器になっているとは・・・」
「お久し振りですねアテナ様」
アンドロメダはアテナにお辞儀をした。
司はここで一つ疑問に思った。
「たしかに、どうしてアンドロメダが神器なん
だ?」
アンドロメダは神話では戦う描写もなく、武器を使う描写もない。
なのに、なぜか神器としてここに存在している。
「お前って、どんな神器なんだ?」
この質問にアンドロメダは目を輝かせて答えた。
「はい、鎖です」
アンドロメダの武器は鎖だった。
たしかに、アンドロメダと鎖は縁のあるものだが、武器として使うものではない。
しかも、アンドロメダは鎖に縛られただけなので、まず神器になることはない。
「なるほど・・・貴方らしいですね・・・」
何故かわからないが、アテナは納得していた。
司達にはわからなかったので、聞いてみることにした。
「なんで、鎖なんだ?」
アンドロメダは、また目を輝かせて経緯を説明してくれた。
「はい。私は崖に鎖で縛られたときに気づいたん
です。気持ちいいと・・・」
この返答に思わず司とスカアハは声が出た。
「「は!?」」
だが、そんなことはお構いなしにアンドロメダは説明してくる。
「あのきつい縛り方が凄いよかったんです。も
う、あれから鎖は常に肌身離さず持っていまし
た。そして気がついたら、神器になっていまし
た」
もう司とスカアハは何も言わなかった。
そう、二人は確信した。
アンドロメダはドMということが・・・
「はぁ。また変わった奴がきたな・・・」
司の新しい神器は、相変わらず何処か可笑しい神器だった。
やはり、司の気苦労は絶えなさそうだ。
これからのことをどうしようかと悩んでいると、アンドロメダがスカアハとアテナと会話していた。
スカアハとアテナは仲が悪いが、アンドロメダと二人はすぐに打ち解けていた。
「お前はいい奴だな。何処かの自称守護神と違って」
「そうですね、アンドロメダはいい人ですよ。
・・・どっかの自称女王と違って」
また、喧嘩が始まってしまった。
たが、今回は違った。
「お二人とも、喧嘩は駄目ですよ」
なんと、アンドロメダが仲介してくれたのだ。
これは司にとってかなり嬉しいことだった。
二人はアンドロメダに言われただけで、喧嘩をやめた。
「よくやった、アンドロメダ」
「いえいえ。喧嘩を止めただけですので・・・」
アンドロメダはドMだったが、そこを除けば普通にいい奴だと司は思った。
「いやー。初めてまともな神器かもな・・・」
その一言が余計だった。
スカアハとアテナはその言葉を聞いた瞬間、司の方を睨んできた。
「それは聞き捨てならないな・・・」
「それは、どういうことですか・・・?」
二人は司に、ターゲットをロックオンした。
司はそれを感じ取ったのか、弁解の言葉を考えていた。
「お前が生きているのは私のお陰なんだぞ」
スカアハは、自分が司に貢献したことを主張してくる。
それはアテナも同じだった。
「私のギリシャでの活躍を忘れましたか?」
確かに二人は目覚ましい活躍をしたが、問題は性格と司に対しての仕打ちだ。
そして、何よりスカアハとアテナはすぐに喧嘩をするので、司にも止められないときがあるのだ。
「だって、お前らすぐに喧嘩するじゃん・・・」
喧嘩の事を指摘すると、二人は口を揃えて言った。
「「こいつ(この人)が悪い(んです)!!」」
司はやはり仲が良いのではないかと、思わず考えてしまう。
アンドロメダも同じ事を考えていたのか、それを口に出してしまった。
「もしかして、お二人とも実は仲が宜しいんですか?」
この台詞に二人は再び口を揃えて返答した。
「違う(います)!!」
「馬鹿、そんな大きな声を出したら皆が来ちゃうだろ」
だが、他のメンバーが来ることはなかった。
司はそれに疑問を覚えた。
「なんでだ?」
それに答えたのはアテナだった。
「この部屋には結界が張られているので、声が外に聞こえること
はありません」
司はそこでふと思い返した。
確かに、先程以外にも大きい声をだしたが、誰一人来なかった。
「俺はそんなところで放置されていたのか・・・」
司は泣きたくなった。
それをアンドロメダが慰めてくれた。
「司、大丈夫ですよ・・・」
何が大丈夫なのかはよくわからなかったが、司は少し安心した。
「やっぱり、アンドロメダが来てくれてよかったよ」
司は再び、余計な一言を言ってしまった。
それを聞いた二人は、ついに実力行使で来た。
「「司ーーー!!」」
そんな二人を見た司は逃げようとしたが、流石に逃げられなかった。
外に音が聞こえないので、司は存分に二人に攻撃された。
そう、誰も助けには来なかった。
「くそったれーーー!!」
室内だけに、司の叫びが響いた。
この攻撃は数分で終わったが、アンドロメダがまた慰め、司がまた余計な一言を言って二人にまた攻撃されるということを数回繰り返したらしい。
果たして、次回で司は生きているのか・・・
つづく。
今回の解説。
アンドロメダについて。
アンドロメダはギリシャ神話に登場するエチオピアの女王。
母親に神より美しいと自慢したために、崖に鎖で繋がれた。
この作品では、その時に快感に目覚めたらしい。
その際、ペルセウスに救われ、ペルセウスの妻となった。
アテナにより死後は星座になったとも言われる。




