56話 神話魔獣退治(後編)
最後の最後で新展開!!
冥府で司が奮闘していることは、元の世界にいるスカアハとアテナにきちんと伝わっていた。
「随分と苦戦しているらしいな」
「そうですね・・・あ、骨が折れました」
相変わらず険悪な雰囲気を出しながら会話をする二人。
平気な顔で怖いことを言っていた。
「こ、怖いこと言わないでくださいよ」
すかさず由井がそこの部分を指摘する。
「というか、師匠の状態についてわかるんです
ね」
前にスカアハが言っていたことを思い出しながら、香菜美は言った。
「ああ。冥府とはいえ、司が認識していれば此方
もわかる。つまり認識出来なくなった時、あい
つは死んだことになる」
スカアハは再び平気な顔で怖いことを言う。
由井は、その事についてはもう触れなかった。
三人組はこの発言で余計に心配になってしまった。
「ほ、本当に大丈夫なんでしょうか・・・?」
ステラのその台詞に反応したのは、京子だった。
「大丈夫だよ。だって、司だからね」
なんの根拠のない台詞だったが、その台詞だけで三人は少し安心した。
だが、スカアハとアテナは安心していなかった。
司が今どのような体の状態なのかを、一番よくわかっているからだ。
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そして、冥府の司。
「さてと、覚悟も決めたことだし、いっちょ行き
ますか」
向かってくるケルベロスを正面に捕らえ、司はそう言った。
司の一撃は、魔力を十分に貯めなければいけないので、ケルベロスの動きをどうにかして止めなければならない。
「グルァァァ!!」
ケルベロスはいきなり爪で司を引き裂こうとした。
前の攻撃は避けれなかったが、一度受けた攻撃を直撃する司ではなかった。
「同じ攻撃はあまり通用しねぇぞ!!」
司はギリギリだったが回避に成功し、ケルベロスの動きを止めるために足を狙いに行く。
「ライトニングインパクト!!」
確実に動きを止めるために必殺技を使ったが、ケルベロスの足は無事だった。
無傷ではない、耐久力が下がったとはいえ、やはりケルベロスの耐久力は尋常では無いということである。
「くそっ!!やはり固いな・・・」
ダメージで動きを止められないとなると、何かしらの魔術で止めるしかない。
しかし、ケルベロスを止められそうな魔術は、詠唱魔術か陣魔術ぐらいである。
だが、そんな魔術を唱えている暇はケルベロスの前には無い。
「どうにかしないとな・・・」
司は早速悩んでしまった。
なにしろ、ケルベロスの動きをなんとしても止めなければ話にならない。
しかも、周りには建造物がない平地。
つまり、地形を利用した戦いも出来ない。
そして何より、ケルベロスがゆっくり考えさせてくれない。
「グルォォォ!!」
ケルベロスは長い尻尾で薙ぎ払ってきた。
司はそれをうまく避け、今度は頭を直接殴った。
すると、少しケルベロスのうごきが止まった。
「まさか・・・頭が弱点か・・・?」
だが、ケルベロスの頭は三つ。
つまり、三つ同時に攻撃しなければならない。
そして、なにより・・・
「あ、やべぇなこれ」
司のタイムリミットも近い。
本当にそろそろ決めなければ不味い。
つまり、これがラストチャンスになる。
「考えている暇はない。やるしかない!!」
司は魔力を込め、雷の衝撃波で薙ぎ払った。
衝撃波は三つの頭すべてに当たった。
ケルベロスは衝撃波を食らって怯んだ。
「もらった!!」
司は魔術武装を解いた。
魔術武装に使っていた分の魔力を宝具に注ぐ。
守りに使っていた魔力をすべて攻撃に変換する。
魔力武装は宝具を扱うときの体への負担を減らすためにするもの。
魔力武装をしなければ、まともに宝具を扱うことはできない。
つまり、これは捨て身の作戦。
「お前が死ぬか、俺が死ぬか・・・勝負!!」
ケルベロスは怯みから解除されており、司が技を放とうとした途端に、ブレスを吐いてきた。
司はそれを押し返すように技を放った。
「ライトニングインパクト・フルフォース!!」
全身全霊を込めた一撃を司は放った。
司のタイム一撃とケルベロスのブレスはぶつかり合ったが、司の一撃が一瞬にして押し返した。
ケルベロスを司の一撃が飲み込んだ。
そこで、司は意識を失った。
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「こ、ここは・・・?」
司が目を覚ますと、視界には天井が広がっていた。
「どうやら・・・ケルベロスはなんとか倒せたら
しいな・・・」
司には実感か湧かなかったが、とりあえず安心した。
だが、司は冷静になって、自分の周りの状況を見た。
「なん・・・だと・・・」
司は動揺した。
理由は簡単、謎の女性に膝枕されていたからだ。
「ふふっ、やっと起きましたね。どうですか?び
っくりしました?」
その女性外見はというと、髪の色は水色で、どこか大人びていた。
司はまだ知らない。
この女性がこの後、波乱を呼ぶと。
つづく。
今回の解説。
ライトニングインパクト・フルフォースについて。
司の全魔力を宝具に注ぎ込むことによって放つことのできる捨て身の技。
「ゼロインパクト」と原理は同じだが、こちらは防御力0なので、本当に危険。
今回は魂だけの状態だったから体は無事であったが、普通は無事ではすまない。
これは本当の最終兵器なので、今回は特例だった。
今回は以上です。




