31話 二年前の再来 Ⅳ
おっと、急展開だ。
人工生命体・・・それはあらゆるデータをつぎ込んだ、究極の生物兵器。
だが突然、研究が中止されたしまった。
その理由は正式には公開されていない。
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「そろそろ最奥につくだろ」
「何も道中にありませんでしたね」
司達の組は、もうすでに最奥の手前まで来ていた。
実際は数十分歩いているのだが。
「司・・・誰かいるぞ」
「ああ。わかってるよ。お前ら、警戒しとけよ」
「「「了解!!」」」
廊下を抜けると、広くて暗い空間に出た。
「やっと来たね・・・立花 司。いや、被害者」
声の聞こえた方に振り向いてみると、入学式の日に由井を襲ってきた青年がいた。
「ふっ。お前、誰?」
「おっと、そう来たか・・・入学式と言えば解る
かな?」
「いや、わからん」
司は本当に忘れていたので、由井がすかさずフォローした。
「先輩。今年の入学式に、私のことをさらいに来
た人ですよ」
由井に言われてようやく司は思い出した。
「あのときのキザ男か!!」
「ようやく思い出してくれましたね」
「まさか、お前がゼロに所属しているとはな」
「ええ、まぁ。それと、貴方の知り合いが来てま
すよ」
青年がそう言うと、奥からもう一人出てきた。
「お久しぶりです。ゲイボルグの使い手・・・
立花 司さん」
「お前は・・・神器使いのキザ男!!」
奥から出てきたのは、学校で龍が相手をした神器使いだった。
「で、そのダブルキザ男俺に何のようだ?」
「そう言えば・・・私達二人共、名前を名乗って
ませんでしたね・・・」
「そう言えばそうだったな・・・渡辺の奴、お前
の名前言ってなかったからな・・・」
先に、由井を狙った方の青年が名乗った。
「僕の名前は・・・火野 晴斗といいます」
次に神器使いの方の青年が名乗った。
「私の名前は、エドガー サーチネスといいま
す。詳しくは、渡辺 龍から聞いてください」
「で、話を戻すけど・・・なんの用だ?」
「いえ、私達はただ挨拶に来ただけですよ。貴方
にようがあるのは・・・こちらの方ですよ」
そう言うと、いきなり空間が明るくなった。
すると、暗くて見えなかった奥に大きなカプセルがあった。
「こ、こいつは・・・」
カプセルを見た途端、司は表情を変えた。
「どうしたんですか師匠・・・?」
「ほう。これがここにあるとはな・・・」
スカアハはカプセルを見て、殺気をもらしていた。
「ス、スカアハさん・・・?」
ステラがスカアハにおそるおそる問いかけた。
「おっとすまない。どうやら殺気をもらしてしま
ったようだ」
その二人の変わり用を見ていた由井は驚くしかなかった。
「あの二人をこんなにするなんて・・・一体あの
カプセルの中には何があるというんでしょう
か・・・」
そのカプセルの中に入っていたのは・・・ただの青年の姿だった。
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一方そのころ、千尋&汐里ペアの方は・・・
「汐里の言うとおりでしたね」
「だろ!!流石は私というところだな」
二人は、多数の対魔術師用兵器に囲まれていた。
「それにしてはずいぶんと多いですね」
「いやいや、お前なら余裕だろ?」
「貴方にとっても簡単ですよね?」
「当然だろ」
この汐里の返事を合図に、戦闘が始まった。
「宝具展開!!」
「宝具・・・展開します」
二人はすぐに宝具を展開した。
汐里の宝具は弓、千尋の宝具は杖だった。
「おらおらぁ!!」
汐里は風の魔力で作った矢を宝具の弓で放つ。
その矢を放った瞬間、風の矢が無数に増えた。
その矢が敵を貫く。
「何度見ても凄まじいですね」
「よく言うぜ!!」
そう言う千尋は、多彩な術を使用していた。
「まずは、ルーン魔術からいきましょうか」
宝具の杖で床を叩くと、敵の下から炎が巻き起こり、敵を焼きつくしていく。
「続いて錬金術です」
再び宝具の杖で床を叩くと、今度はゴーレムがわき出て、敵を潰していった。
「そして呪術です」
千尋は紙を取り出すと、敵に向けて放った。
そしてまた宝具の杖で床を叩くと、それのついた敵は、操られたように味方を壊していた。
「お、私も負けていられないな!!」
汐里は新たに風の魔力で作った矢を放った。
その矢に当たった敵は、周辺の敵ごと吹き飛んだ。
そんな事を繰り返していると、数分足らずで片付いてしまった。
「なんだ、呆気なかったな」
「いえいえ、私達相手によく時間を稼いだ方です
よ」
「そうだな、さっさと司に合流するぞ」
「ええ。そうしましょう」
二人はそう言って、来た道を急いで戻った。
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また一方その頃、龍&皇気ペアはというと。
「おいおい・・・嘘だろ・・・」
「嘘ではないぞ、現実を見ろ」
「お前は黙ってろ!!」
二人の前に現れたのは大型の対魔術師用兵器だった。
「こいつはやばいぜ・・・」
「だが、俺達二人にとっては?」
「まぁ、余裕だな」
二人は戦闘体制をとった。
「「宝具展開!!」」
「防御は任せとけ!!」
「ああ。わかってるさ」
敵はミサイルを放ってきた。
「おいおい、こんなのウィザード二人に撃つもん
じゃないだろ!!」
だがしかし、そのミサイルは皇気の宝具の能力によって防がれる。
「少しの間止まってもらいましょう」
その隙に龍が敵に宝具の剣を刺して、能力を使って動きを止めた。
「そして、これをくらって貰おう」
龍は宝具の剣の刃に水を纏わせて、高水圧の水を0距離で放った。
敵はそこから跡形もなく消しとんで、体の半分は消えていた。
「これで、とどめってな」
そして、追い討ちを掛けるように皇気が闇の波動を放った。
これをくらった敵の体の半分は、また跡形もなく消え去った。
「ふぅー。こんなもんか」
「俺達に勝ちたければ、これをあと数万体持って
くるんだな」
「いや、それは無理だろ・・・お金的な意味で」
「だが、うまい具合に時間稼ぎをされてしまった
な」
「ああ。やはり本命は司達のルートのようだ」
「急いで戻るぞ!!」
「わかってるよ!!」
二人はこうして、他のペアと同じように来た道を急いで戻っていった。
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そして、司のグループの方は・・・
「人工生命体がいるとは聞いていたが・・・まさ
かこいつとはな・・・」
「思ったより早く貴方達が来たので、まだ未完成
ですが・・・これでも充分な戦力ですよ」
「だろうな・・・何てたって人工生命体コード
No.07。ランスロットだからな」
「そう。それこそが、この人工生命体の名前。
そして、貴方と二年前に激闘を繰り広げた怪
物」
「二年・・・前・・・?」
他の三人が二年前という言葉に反応していた。
「おや、貴方達は知らないんですね。まぁ、いい
でしょう。この事は、自分達で聞いてくださ
い」
「では、立花 司。貴方の戦いぶりを楽しみにし
ていますよ」
そう言って二人は、消えた。
「ちっ、神器の能力で脱出しやがったか」
「先輩・・・二年前って・・・」
由井が司に二年前の事を聞こうとした瞬間、空気が凍った。
「おっと、その事は後にしてくれ・・・俺はこい
つの相手をしなきゃいけないらしい」
「そのようだな」
司とスカアハが戦闘体制をとった瞬間に、カプセルが開き、中から人工生命体がでてきた。
「やぁ、久しぶりだね。立花 司・・・」
その人工生命体は不適な笑みをこぼし、そう言った。
つづく。
今回の解説。
千尋の使った術について。
ルーン魔術・・・ルーン文字を赤色で示すことに
よって発動する魔術。
通常は杖に記憶されており、その杖を使うことによって発動することができる。
ルーン魔術には詠唱を必要としない。
錬金術について・・・錬金術は何かをコストに何かを作り出す術。
今回の作中では、床の素材を使ってゴーレムを作っていた。
普通は魔方陣を必要とするが、それが記憶されているものを使えば、すぐに発動することができる。
呪術について・・・呪術は呪いの一種で、詠唱や、物に術式を書いたりして発動する。
ただし、詠唱は長いことが多いので、術式が書いてある物を携帯している事の方が多い。
今回は以上です。




