110話 二大組織全面戦争 Ⅲ
加奈子の新型戦闘服とは一体・・・
そして、この件を聞いてあの三人が出てこない訳がない。
ゼロから宣戦布告が来てから一日がたった。
どうやらいきなり翌日には攻めてこないようなので、ウィザード本部は対策としてすぐに市民をシェルターに避難させられるように市民に告知をした。
司達はというと、学校が休校になったので司の家に未だに滞在していた。
「告知は不味いと思うんだけどな・・・」
皇気はテレビでニュース番組を見ながらそう呟いた。
「ああ、涼の言うとおり市民が戦う前からパニッ
クになったらど うするつもりなんだ
か・・・」
「現にパニックしている都市が少なからずすでに
存在しているしな」
人はパニックになると良くないことを起こす。
それはあらゆる歴史が物語っている事実である。
ここぞというときにこそ冷静さが必要なのだ。
「これじゃあゼロだけでなく市民の行動も警戒し
なければならないじゃないか・・・」
「まったく・・・上層部は何を考えてるんだ?」
ウィザードと言っても所詮は世界連盟の一部の組織に過ぎない。
上層部とは言っても何もわかっていない政治家達ばかりなのである。
「尻拭いいつも俺達ウィザードがやってるってい
うのによ」
「渡辺、そんなの今更すぎるだろ。もう仕方ない
んだからさ、被害を最小限にすることだけを考
えようぜ」
龍はリーダー的な存在であるが、この四人組の参謀的存在はやはり皇気である。
「まぁそのためにも俺は今日加奈子さんの所に行
ってくる」
「新しい戦闘服だっけか?」
「ああ、それをとってくる」
加奈子が新たな戦闘服を開発したことは、すでに他のメンバーには教えていた。
「そういえば第一高校の奴等は何処のシェルター
に配属されたんだ?」
ふと思い出したかのように涼が質問をしてきた。
「アイツ等なら新宿のシェルターの担当だったか
な?」
「おい、何で疑問形なんだよ?」
「いやー、よく覚えてないんだこれが。でも合っ
てると思うぞ」
司がそう言うのなら恐らく会っているのだろう。
とりあえず龍達はそう思うことにした。
「とりあえずそれは香菜美達本人に直接聞いてく
れ。俺はそろそろ加奈子さんの研究所に行く」
「ああ、そっちは宜しく頼むぞ」
「任せとけって。そっちも頼んだぞ」
そう言って司は自宅を後にした。
だが、司が家を後にしてから数分後に来客があった。
「司先輩居ますか!?」
「師匠、今回の件でお話があります!!」
「つ、司さんは居ますか・・・?」
インターホンも押さずに香菜美達は入ってきた。
どうやら司は家の鍵を閉め忘れたようである。
それぞれが司に用があるようだった。
「司ならいないぞ」
「皇気さん!?何故ここに?」
「それはこっちの台詞だ。まぁ、まずは中に入っ
てから話そう」
皇気はまるで自宅のように三人を奥に案内した。
だが、三人は特に何も言うことなく付いていった。
「お前ら、噂をすれば来たぞ」
「え?タイミング良すぎだろ・・・」
「まぁ、丁度聞けていいじゃんか」
三人が奥の部屋に入ると、龍と涼がテレビゲームをして遊んでいた。
どうやら司が家を出た後からプレイしているらしい。
「え?何ですかこの状況・・・?」
「私達は大事なお話をしに来たつもりなんですけ
ど・・・」
「き、緊張感が無いというか・・・何という
か・・・」
目の前の光景を見て、三人は唖然としてしまった。
ゼロから宣戦布告がされ、東京中が騒いでいるのに対し、二人はテレビゲームをしていたのだ。
一般常識人ならありえないと必ず言うだろう。
「いつも思うんですけど、本当に大丈夫なんです
か?」
「ん?まぁ、何とかなるだろう」
「皇気さん達がそれを言うと本当に何とかなりそ
うだから困りますね・・・」
香菜美の言う通り、この四人が何とかなると言えば本当に何とかなってしまいそうに感じてしまうのだ。
「そうそう。何でお前らはここに来たんだ?」
三人が椅子に腰を掛けたタイミングで皇気は質問した。
「ゼロが宣戦布告なんかしてきたら司先輩は見境
なく飛び出していきそうじゃないですか。それ
を止めに来たんですけど・・・」
ここで三人は顔を見合わせて先程の皇気の台詞を思い出していた。
皇気は三人に司は居ないと言ったのだ。
三人が来た理由が理由なだけに、まさかと思ってしまったのだろう。
だが、その事を皇気はしっかりとわかっていた。
「安心しろ。司は加奈子さんの研究所に行っただ
けだ」
「それならもっと早くいってください」
皇気の台詞を聞いて三人は安心したようだった。
皇気は司について少し語りだした。
「大体司はゼロがウィザード本部に宣戦布告した
ぐらいじゃ動じないと思うぞ」
「そうですか?私達から見ても司先輩はゼロにか
なり因縁がありそうですけど・・・」
「確かに因縁はある。俺達も詳しくは知らない因
縁が大量にな。だが、司はけじめをつけている
からな・・・自分勝手な動きはしないさ」
皇気はまるで昔に何かあったかのように話していた。
「こ、皇気さんがそう言うのなら・・・」
司の昔からの付き合いである皇気がそう言うのであれば、信じる他ない。
「まぁ、安心しろ。今のアイツはお前らの先生み
たいなもんなんだからさ。お前らが悲しむよう
なことはしないと思うよ・・・多分」
皇気は最後に誤魔化したが、三人には十分信んじられる発言であった。
「じゃあ、私達は待つことにします。司先輩を」
「ああ、そうした方がいい。所で・・・ゲームや
らないか?」
結局どうやら皇気もゲームをやりたかったようであった。
三人はそれに呆れつつもゲームを堪能するのであった。
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一方その頃、加奈子の研究所に向かった司は・・・
「これが新しい戦闘服・・・」
「ああ、これが新しい戦闘だ!!」
加奈子が新たに開発したと言っている戦闘服に特に変わった所は無かった。
「な、何が変わったんですか・・・?」
「今回の戦闘服は持久戦を想定した構造をしてい
る」
「は、はぁ・・・」
持久戦を想定した構造と言われても、どこが変わったのか司にはわからなかった。
そこで、加奈子が一つ質問をしてきた。
「司君。もし腕や足が切断されたら普通の人間は
どうなる?」
「え?出血多量で死ぬと思いますけど・・・」
「そうだな。例え祝福の魔力で強化していても、
大きすぎる傷は直せない。そしてまずは完全に
止血をすることが最優先だ」
司はここでやっと加奈子の言いたいことがわかった。
「つまり、自動的に止血をする戦闘服という事で
すか?」
「ビンゴ!!その通りだ」
自動的に止血をするとは言っても聞こえはとても地味である。
だが、地味ではあるが戦場ではかなり役に立つ戦闘服であろう。
そう、この戦闘服のコンセプトである持久戦にこそ真の力を発揮するであろう。
「普通に優秀ですねそれ」
「そうだろう。何て言ったって私の造った物なん
だから」
加奈子は偉そうにそう言ったが、実際はその通りなのだから仕方がない。
「だが問題が一つあってな・・・この戦闘服まだ
一着しか出来てないんだ・・・」
「加奈子さんにしては珍しいですね」
「実は自動止血する機能ってかなり難しい構造だ
ったんだよね。お陰で一着造るのが精一杯だっ
た訳」
「成る程・・・」
わかったような雰囲気を出している司だったが、実際は何も理解していなかったりする。
だが、加奈子が難しいと言うのだからとても難しいということだけはわかった。
「君がこれを着て戦ったデータしだいでは量産や
機能向上もできるんだ」
「そういう事なら喜んで引き受けますよ」
「それでこそ司君だ。じゃあこれは渡しておこ
う」
司は加奈子から戦闘服を渡された。
「この戦闘服に名前とか無いんですか?」
「名前かい?じゃあ、バトルスーツβとでもして
おこうかな」
意外と格好の良い名前だったので、司は気に入った。
「じゃあ、俺は帰ります。何かあったらまた電話
したください。それとアレの事は頼みました
よ」
「ああ、わかったよ。じゃあね司君」
こうして司は加奈子の研究所を後にした。
司が去った後、加奈子は再び作業の机に着いた。
「さてと、アレの開発の続きでもしようかな。
司君も随分と無茶な物を注文してくれたものだ
よ・・・」
果たして、司と加奈子の言うアレとは・・・
つづく。
今回の解説。
新型の戦闘服、通称バトルスーツβについて。
バトルスーツβを着た人間が大きな傷を負うと、自動的に止血をしてくれる機能を持つ戦闘服である。
止血能力は凄まじく高く、完全に止血が出来ると言っても過言ではない。
腕や足が切断された場合でも完全に止血することが可能である。
今回は以上です。




