103話 対最強生命体 Ⅲ
人工生命体強すぎませんかね?
致命傷を与えてもすぐ再生。
魔術や宝具の能力を使っても効果が無い。
そう、これはただの身体能力だけがものを言う戦場なのだ。
その点ではすでに人間は負けていると言っても過言ではないだろう。
ただし、普通の人間ならばだ。
ーーーーーーーーーー
「本当にどうなってんだアイツ?」
「能力効かない、力は強い、傷は回復する。そし
てなにより速い」
司達は多数対単体だったが、苦戦を強いられていた。
何より今まで決め手となってきた技や魔術ではイェーガーを倒せない事が辛かった。
「どうするよ参謀?」
「誰が参謀だ。そういう司の方が悪知恵は凄いだ
ろ?」
「俺のは悪知恵と言うより直感だからな。あまり
今回は役に立たないかもしれないぞ。というか
そもそも悪知恵と言うのか?」
皇気と司が会話をしている間は龍、涼、アテナが攻撃を仕掛けていた。
どうやら交代で攻撃を仕掛ける作戦のようだ。
どう考えてもこれは持久戦前提前提の作戦である。
「さてと、そろそろ交代だな。行くぞ篠原、スカ
アハ」
「「了解」」
龍、涼、アテナが攻めきった丁度良いタイミングで、アンドロメダと由井によって強化された三人が攻めに入る。
そして、その間に引いた三人は休憩と観察をし、作戦を立てる。
因みに香菜美とステラは皇気に頼まれてある魔術の準備をしている。
「今わかってることはただ一つ。このままだと時
期に負けるって事だな」
「ええ。私達も体力は無限ではありませんし、貴
方達の場合宝具の展開時間がありますから
ね。このままでは不味いですね」
「だけど、あれを見てみな」
涼が指した先には、丁度司がイェーガーに宝具で攻撃を加えている光景があった。
「やはり怒涛雷撃の攻撃は効くらしい。ここが俺
達の今のところ唯一の勝機だろう」
「だがあの人工生命体はどうやら怒涛雷撃の攻撃
を受けても普段よりは遅いがしっかりと再生し
てるな」
基本的に怒涛雷撃の攻撃を食らった敵は再生しない。
だが、怒涛雷撃にも破壊出来ない物がある。
それは神器と怒涛雷撃と似た破壊の能力を持つ武器である。
前回グレントが再生した理由は神器の鎧を装備していたからである。
「ということは人工生命体も破壊の能力を持って
るってことか?」
「恐らくはそうでしょう。だけど人工生命体の方
が破壊の力が少しばかり強いのでしょう。だか
ら遅いが再生しているんだと思います」
「成る程・・・やりずらいな・・・」
そんな事を言っている間にも、別の三人は戦闘の真っ最中だった。
「ライトニングインパクト!!三連打!!」
司は強力な雷の一撃を三連続で放った。
イェーガーはそれを素手で全て防ぎきる。
イェーガーが防御体制をとって足が止まった所をスカアハが攻める。
「デッドストライクツヴァイ!!」
二本のゲイボルグから死の魔力の波動が放たれた。
だが、その攻撃すらイェーガーは素手で防ぎきった。
「マジかよ!?」
「あれを防ぐか・・・やるな人工生命体」
この攻撃が防がれる様を皇気は見て分析していた。
現状皇気ははっきり言って役立たずである。
相手が魔力を使わない以上神器は役に立たず、更には宝具の能力さえも効かないのだから。
なので皇気には頭を使ってもらっているのだ。
「司のパワーをこれ以上上げられれば・・・い
や、神器覚醒をするとこちらの人数が少なくな
り持久戦が出来なくなる・・・どうする?」
皇気は一人苦悩していた。
確信的な勝機が見えない以上持久戦をやるしかない。
勝機が見えない以上、思いきった行動をとるのは時として危険な場合もあるのだ。
「やはり当分は持久戦か・・・」
皇気は交代の合図を戦う二人に送った。
それを見た二人は作戦通り交代しようとする。
だが、イェーガーもそう何度も簡単に交代させるほど甘くはない。
「そう何度も策に乗せられるつもりは無い」
入れ替わりの瞬間を狙ってイェーガーは司に攻撃を仕掛けてきた。
だが、司もイェーガーの凄まじいスピードに既に慣れている。
最初の一撃を食らった時とは訳が違うのだ。
「慣れてしまえばこちらのもんだぜ!!」
「何!?」
司は持ち前のカウンターでイェーガーの一撃を流すと隙を作り出し、完全にフリーな状況を作り出した。
「雷光拳舜雷!!」
高速の連続攻撃をイェーガーに撃ち込んだ。
あまり効かなくとも、イェーガーが怯むには十分な技であった。
そして、怯んでいる間に交代をする。
「頼んだぜ渡辺!!」
「応!!任せときな!!」
今度の龍は手に神器であるクサナギを持っていた。
どうやら斬れるか試してみるようである。
「行くぞクサナギ。相手に不足は全くない、全力
で行かせてもらう」
「渡辺、援護は任せておけ!!」
「ええ。私も今回は援護に回ります」
アテナと涼が龍の援護に回る形で今回は行くようだった。
龍は鞘に入っているクサナギに手を掛けた。
「一刀流必殺・・・虚空!!」
一太刀と同時に二つの斬激が放たれた。
いくら人工生命体といえど、初めて見る技は対応しきれない。
「くっ!!避けきれないか!!」
斬激の一つは防ぐことに成功したが、もう一つの斬激で斬られてしまった。
そして、クサナギの能力によりイェーガーの体はバラバラになった。
「問題はこれで再生するかだよな・・・」
「まぁ、再生すると思うぞ。そもそもこんなに簡
単に終わるとは誰も思ってない」
「ええ。この程度で終わるのだったら脅威に入り
ません」
アテナと涼の言った通り、イェーガーのバラバラになった体は一瞬にして再生した。
その再生した様子はテレビには絶対映せないような光景であった。
「やはり素手では殺せないか・・・許可はでてい
る。リミッターを外す」
「おい、今リミッターを外すっていってなかった
か?」
「ああ、確かに言ったな」
すると、イェーガーは目をつぶりその場から動かなくなった。
その光景を見て司は何かを感じ取ったのか、一気に攻めに行った。
「ライトニングインパクト!!」
目を瞑っているイェーガーに放った一撃は、あと一歩の所で容易く止められてしまった。
その時のイェーガーの体からは謎の煙が出ていた。
「ちっ!!ライトニングスラッシュ!!」
司は宝具をすぐに手放し、背中のバスターソードで斬りかかった。
だが、その一撃も容易く止められてしまった。
「邪魔だ・・・」
イェーガーがそう呟いた瞬間、司が壁の方まで飛んで行った。
その光景を全員が見ていたが、誰一人何をしたのかわかっていなかった。
「さぁ、ここからが狩りの本番だ・・・」
イェーガーがそう呟いた時、端の方でとある準備をしていた香菜美とステラが準備完了の合図を出していた。
「どうやらお互いにここからが本番らしいな」
それを見た皇気は不適な笑みを浮かべた。
つづく。
今回の解説。
雷光拳瞬雷と準備させていた魔術について。
瞬雷は数ある雷光拳の一つで、敵に連続攻撃をする技である。
ただ殴るのではなく、威力よりスピードを重視しているので、威力はそこまでないが一般の魔術師ぐらいなら倒すことと可能である。
続いて準備させていた魔術について。
皇気の使える魔術は多数あるが、今回二人に準備をさせていたのは陣魔術である。
特定の空間を制限することにより効果を発揮する魔術であるが、効果は次回のお楽しみということで。
今回は以上です。




